意識が高揚している。
笑いたいぐらいに、それに既に口元は歪んでいる。
一歩、たった一歩だ。
地面を蹴って、飛んで着地。
その瞬間に顔を反らして回避、それは前髪をかすめる。
バックステップで下がりながら棒を最大の間合いで横に薙ぐ。
反対向きの回転で流され逆手持ちの態勢で一撃を出してくるがそれはフェイント、二撃目の模擬専用ナイフを飛ばすのは、何となく分かる。ウドンゲさんは接近戦はほとんどしない。
右、左、後ろ後ろ、前。慣性を相殺し体重を一方向に重ねて沈む。
それは誘導する動作、そして量はともかく予想通り道を塞がれてしまう、普段なら下がるしかなかった。ウドンゲさんの高速、後に停滞する弾は迷路にピッタリだった、だから。
「……ッハ!!」
「!」
その迷路に穴を掘る、地面すれすれの低い体勢から回転。残像を残す速度の勢いと相手の進行の速度と回転の力を利用した交差法の刺突。
綺麗なカウンター、普通なら避けられないだった。
「!!」
右目が赤く染まる。集中力と一緒に全部がぶれた。
多分今のはウドンゲさんの能力で右目の視界を狂わせたんだろう。
ヤバい、楽しい。
そんな事を思いながらウドンゲさんの投げ技を受け身で回避し竹林に飛び込み辺りに座り身を隠す。
音を立てたら――――パキッ
「…ハッ!!!」
バレタ。
「NO!!」
高速で移動して距離を――稼ぎたい。
「はい、しぬよーあたるとしぬよー」
ここぞとばかりに糸を通すかのようなコントロールで弾丸が私を狙ってくる。
私はと言うと…竹林に飛び込んだことでむしろ逃げにくくなった。
なんとか脱出するがもう後は無い
ちなみに今の私の装備を挙げていこう。
もちもの
・ひのきのぼう E
・ヘルメット E
・とくしゅブレザー E
・コルトパイソン
・つきのはごろも 1/1
・こくしむそうのくすり 1/4
まあこれくらい。
ちなみに薬だがなんかえりーんが困ったら飲めって言ってた。
―――生薬「国士無双の薬」
自分の攻撃力と防御力を強化する。スペルカードの威力も上昇する。 重複可能で2本目、3本目と追加で飲むとさらに攻撃力もUP
模擬戦が始まる前に飲んだら凄かった。
でなきゃ、先程のフェイントの後の投げナイフや今の弾丸もかわせてはいない。
「仕方ない…、一八だ!!当たれ!!」
その場に落ちている折れた竹を二、三本『少し上』に投げる。
そして―――
「――――…」
呼吸が止まり目が細まる、パイソンから装弾された全ての弾が放たれる。
竹に3発、ウドンゲさんに3発。
目くらましと威嚇。
そして待ちに待ったこの一歩!!!!
以前、博麗の巫女ですら反応できなかった超亜音速移動。
「喰らえ!!」
そこから軌道を上に跳ね上げ腕に巻きつけた月の羽衣の推進力を利用したアッパーを繰り出す。
ウドンゲさんを狙った拳は抵抗なくすり抜けた。
位相変化、だがそれほど持たないだろう。
手に持った棒を等間隔に握り締め構える。
ウサギは総じて耳がいい。
だから跳んだ、落とし穴に。
ターン!!!
「チッ」
……………
「ライフル怖い…」ガクブル
撃たれれば痛いもの、痛いの怖い。
仕方ないこうなったら4本目飲んでから速攻で…!!
――――ただし4本目を飲み終わると、薬が爆発すると共に効果終了。当たれば大ダメージ。取り扱い注意。
「にぎゃーーーーーーー!!!!」
本日の訓練終了。
「ハロー、生きてる?」
「ハロー…しっかり生きてます…」
こうして二匹は地上で手をつないだ。
「お帰り」
「師匠、ただいま帰りました」
「永琳様、これを」
そう言ってレイセンは月の羽衣を差し出した。
前回の時とは違い、今回は事情があるので月の羽衣を永琳に管理を任せている。
(訓練の時に出したあの突き…全力を込めて出してみたけど…)
レイセンは因幡から渡されたタオルで軽く汗を拭いている鈴仙をみる。
(あの時の突きには未だ敵わない…)
そもそもレイセンが何故地上にいるのか。
それは一言で表そう。
彼女は永遠亭を強襲した。
博麗の巫女が解決に躍り出た満月の夜に匹敵するウサギたちの大騒ぎ。
何者かが強襲を仕掛けてきたのだ。
それこそがレイセンである。
『伝令、伝令。強襲確認、被害確認、破損確認、進行確認、該当不確認』
『伝令、伝令。現在誘導中』
『伝令、伝令。編成中、要求希望』
電波とは違う誰でも聞ける思念をばら撒き交信ともいえぬ因幡達の会話を乱雑に続けるその中を歩き続けるモノが居た。
『伝令、1~5番、敗残。現在再編成中』
「次」
『伝令、15~20番、封鎖中』
「次」
『伝令、23~26番完了』
「指示、四周」
『指示、了解』
見た瞬間に目の前が暗くなる。
まさに瞬殺。
もともと血塗れになり黒ずんで乾いていたそのブレザーは血糊の乾燥した屑が落ちるだけで乱れてすらいなかった。
「23、4、5、6。四方より拘束する」
「……」
そしてまた瞬殺を繰り返す。
そしてついに現れた。
「伝令、全軍後退、繰り返す、全軍後退。予備待機」
兎角同盟リーダー、鈴仙・優曇華院・イナバだ。
「何部隊死んだのかしら?」
「………」
「当たらないわよ」
「………」
瞬殺のその速度が空振りになる。
すべてカスりさえせずに見当違いの方向へ逸れていった。
鈴仙お得意の幻術。
そしていつの間にか強襲者はある一室に追いつめられていた。
だが相手もバカではない、すぐに対策を練られ有利ながらも少しずつ追いつめられていた。
高速の規則を持った移動で床を跳ね壁を跳ね天井を跳ね音を響かせる。
「……」
そしてそれを耳で捉え検討を付け場所を絞る。
相手の目が赤く光る
「――ヤバッ!」
―――赤眼「望見円月(ルナティックブラスト)」
命名したのは鈴仙だがこれはもともと月のウサギが使う通信手段を技に転化したもの、これにより相手が月のウサギと確信した。
「…何してるのよ」
遅れて八意永琳がゆっくりと表れた。
さすがに相手も動揺して手を出さない。
同時に鈴仙にも手を出すのを遠慮するかのように牽制していた。
「…さっさと仕留めるわよ」
そう言って永琳はスペルカードを取り出す。
「天網蜘網捕蝶の法」
そしてもう一枚
天呪「アポロ13」
スペルカードの二枚同時発動は明らか遊びじゃ済まないかもしれないが今回は別らしい。
(まあ師匠の弾幕は相手の動きを封じるのが多いし大丈夫かな…)
結果、何度か命中しそうになりながらも避け切った。
(…師匠が遊んでる、こんなときでも余裕そうだなぁ)
別に遊んでいるわけじゃないが相手はさすがにふらふらだった。
「いい加減倒れたら?」
「…それもいいかもしれない」
「あ…」
聞き覚えのある声
もしかして
「けど未だ倒れられない!!」
「確かに未練はない!!」
「だが今『この場所』で生きたいと願うのは間違いだろうか!!!」
「でも何が何だか分からない!!!!」
「私は知らない!!!!」
「分からない!!!!」
「貴女が誰だかは知らないし分からない!!!!」
「でもこの場所が最後なんだ!!!」
「後ろなんて無いんだ!!!!」
―――イマナンテイッタ?
推理も途中で思考を切り一気に相手の距離を詰める。
―――私と同じ恰好をした貴女が
相手もそれを見て後の先で対応を開始する。
―――自分の居場所を投げ捨てて
ガードと牽制と殴打の構えの動作を一つに、左腕を前に振り上げる。
―――その癖自分だけが不幸の主人公のように甘え喚き散らす
「…そんなの」
―――自分勝手、逃走者、臆病者、狂ってる―――同族嫌悪
「ふざけるなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
―――八つ当たり
そして放たれた拳はレイセンの的確なはずのガードをすり抜けそのまま顔面を強打しもんどりうって相手を昏倒させた。
普通に殴るよりも近い距離から思いっきり弦を引くように右腕を振りかぶり「今から殴る」といった覇気を叩き込みガードを誘う。
ガードを出すときは誰でも油断する、そこを狙う。
ボクシングで言う「ジョルト」に近い、肩から相手に叩きつけるように殴る強力だが隙の多い技だ。
それを使う、相手との距離が近い状態でジョルトを後ろに引いた右足で調整しつつ殴る。
もちろんガード来る、鈴仙は相手の腕に触れた瞬間に腕に力を入れ筋肉を硬直させることで腕を揺らす、そしてその硬直を解除するために手首を捻りながらジョルトを再開させる。この動作に一瞬の遅れも許されない。
ジョルトの威力は腰と全体重を込めた後ろに引かない拳だ、最悪へろへろでもかくんと曲がらなければ問題はない。
つまり相手のガードへ鈴仙の拳が軽く接触した状態から二つの振動を腕に与え、任意の方向にずらし伸ばし切って居ない腕をガードからずらした直後に相手へジョルトを叩き込んだだけである。
もちろん、威力は半端なく永琳が引く程だった。
「あれはないわ」
こうしてレイセン強襲はあっさり終わりを迎えた。
逃げてきた。
どうやらそうらしい。
じゃなきゃこんなに血塗れにはならないだろう。
この子の体にはすり傷と痣以外に傷は見られなかった。
それとこの子は―――。
―――翌日、明朝
昨晩の騒動から一日、さすがに疲れが少し残る中明け方の寒さで目を覚ました鈴仙はゆっくりと立ち上がり、襖をあけた。
するとそこには
「………」
永遠亭のうち医療区画と区切ってある病室院の一室で治療を受けている筈のレイセン(ブレザーのポケットに入っていた、血が滲んであまり読めない身分証明書で判明)が部屋の前の柱によっかかって眠っていた。
若干震えているがまだ日が昇りきっておらずまだ気温が上がりきってないからだろうと予想しつつ顔を覗き込む。
「…ごめ…さ」
「…え?」
「ごめん…なさい…」
「……」
涙の筋が出来るほど泣いて泣いてこんなところまで来て何にあやまっているかは知らないが
「…ふぅ」
とりあえず寝かせてやろうと鈴仙はお姫様だっこでレイセンを自分の布団に入れた後、また眠くなったので一緒に布団に入った。
正気に戻ったレイセンが2つの意味でパニックになることはここに書くまでもないだろう。
だが事態はそう甘くはなかった。
―――月面都市
U(◕‿‿◕)U「どうしてこうなった」
「うるさい!よくも姉さんを!!」
「いいじゃないか、ちょっと最近の娯楽を教えただけだって」
「自分の姉さんが枕元で裸エプロンになって起こしに来たら誰でもこうするわよ!!」
「ウサウサウサwww」
「だいたい用があるって言うから呼んだら一体何よ!!何がしたいのよ!!!」
「…××」
「!!」
「…先日は大変だったみたいねぇ」
「…なぜあなたがその名前を発音できる…、いや出来ない方が可笑しいか…」
「その通り、あんた達ももとは地上の出身、なのに私ができない道理はない」
「…何か知っているの?」
「いんや、この前うどんげが『月の大通りでかまいたちが発生したんだって』なんて言ってたからさ、月じゃそんなの珍しくも…いや珍しいか。でもそんなことがニュースが流れるなんておかしいから呼んでもらったのさ」
「…うどんげ?月のウサギがそちらにいるの?」
「いるんじゃない?」
「…そう」
「かまいたちは赤色だってさ」
「…詳しく聞きましょうか」
「断る」
「…何だと?」
「ゆかっち~」
「はいよ~」
後ろから出てきたのは八雲紫だった。
「「んじゃあ」」
こうして二匹は去って行った。
「…え?」
「よりちゃ~ん、大切にしてた飴が盗まれた~」
「とよちゃ…オホン、姉さんまだその恰好だったんですか!?」
「…だめ?」
「…だめです」ワタシノマエイガイ
「そっか…じゃあ後でね?」
「あっ、はい…」
結果嵌められたんだかオーライ何だか分からい二人だった。
そして竹林でパイソンの357やライフル弾の跳弾に恐れないで撃ち込むレイセンと鈴仙に敬礼。
竹林や森林なんかでの戦死要因は実は跳弾が非常に多いんですよねぇ。もしくは二人ともFMJじゃなくってホローポイントとかの弾を使っているんでしょうか。
後は鈴仙の使っている銃を知りたいです。
>終わったらレミ咲書くんだ…
超期待。
読みやすくてよかったデスヨ。
>終わったらレミ咲書くんだ…
ほぅ、ならば全裸で待機だ。
……気のせいならいいんですけど、名前変わりました?
投げ槍 様
あるがてぇ…
というか私が知ってるライフルなんてM82しかないのでそれで。(前期型の方で)
唯 様
あるが(ry
靴下ぐらいは履くといい。
名前はT追加しました。