Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

よっちゃん神霊が依り憑くとかマジパネェッス!

2011/05/05 18:23:00
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「これは、由々しき事態だわ……!」

 幻想郷はるか上空、月の都。『綿月 依姫』は呟き通りの、己の力では如何ともし難い現実に直面
していた。

 だが、彼女は己を依り代にし、八百万の神の力を使用することができる存在。己の力では、でなく
己の力以外を借りれば問題は解決できる。依姫は神を降ろす儀式に入る。四方に陣を敷き、精神統一
する。念を込めて印を切り、神に捧げる祝詞を紡ぐ。

 やがて周囲に神妙な気配が満ち、依姫は何ものかの到来を肌で感じ取る。巻き起こる、風。
 


「我を呼ぶのは何処の人ぞ」



 厳かな声で、現れ出でた影が問う。依姫は静かに片膝をつき、神に恭順の意を示す。

「ここは月の都。私は神依る月の姫、綿月依姫と申します」
「……ほう!? 月からの呼び出しとは珍しいね」

 晴れ渡る神気の向こうから、意外そうな顔を見せたのは紛れもなく『八坂 神奈子』。乾を創造する
程度の能力を持つ偉大なる神である。

 乾、すなわち天に纏わる全ての物を生み出す力。おそらくその力を必要とされているのだろうと、
そして自らの力が必要なほど逼迫した状況であろう事を神奈子は感じとる。自らが住まう幻想郷の
遥か上に浮かぶ月にまで呼び出されたのだ。ならば全力で応えてやるしかないと、自信の満ちた
笑みを浮かべた。

「私は……今は八坂神奈子と名乗っている神だ。さて、何を為せばいい」
「は。天を司る八坂様の御力をお借りして解決していただきたい難問題がひとつ」
「うむ、よし聞こう」
「では、こちらに」

 立ち上がり、和というか中華というか、そのミックスされたような建物へ向かう依姫。豊かな
胸の下で腕を組み、悠然と後を着いていく神奈子。やがてふたりはひとつの窓の前で歩みを止めた。
閉じた丸窓の向こうにひとのいる気配がする。依姫がそっ、と音を立てないように窓を開ける。

 室内にはお菓子を食い漁ったり漫画雑誌を眠そうな顔でめくったりしている兎耳の少女達。その
中心で、テレビゲームをどろりとした顔でやっている少女がいる。

「ちょ、それないわー。今ちゃんとボタン押したんだけどぉー」
「豊姫さまちょー弱いっすーゲラゲラ」
「あ、じゃあ本気出す。ほれジョインジョインっと」
「ないわー豊姫さまガチすぎてないわー」

 その淀みきった雰囲気に、神奈子は眉をひそめる。

「姉です」

 たった四文字の言葉に、深い苦悩がありありと滲んでいた。成る程、と神奈子は得心する。この
如何ともしがたい姉妹の溝を埋めるが為に呼び出されたのか、と。天空神ではあるが、人心の
機微に疎いわけでもない。

 思えば幻想郷にも数多の姉妹がいる。そして神奈子が知る多くの姉妹が悲しいかなその間柄に
何らかのトラブルを抱えている。それらをつぶさに見てきた自分だからこそ呼ばれたのだろうと
神奈子は確信した。ならばこのぎくしゃくとした姉妹に微笑みと信頼を与えるために、己の持つ
神徳を総動員しようと考える。

「あい解った、月の巫女よ。汝が願いを聞こう」
「は。ありがたき幸せ」

 うやうやしく一礼して、依姫は切なる願いを具申する。

「それでは乾を司る八坂様にお願い致します」

 きっ、と指をさす先は、やはり窓の中に向けられたものだった。

「あの部屋の空気を、その御力を持ってまるっと新鮮なものに入れ替えていただきたい!!」

 微笑む神奈子。

「言葉どおりの意味で?」
「もちろんでございます!!」









「雪崩式トゥームストンパイルドライバーッッッ!!」
「まそっぷ!?」

 聳え立つコーナー御柱の上から必殺の一撃。まさに御柱と墓場である。
 
 そう、依姫は空気が読める子ではなかったのだ。スペルカードルールだって言ってるのに「私は
八百万の神を降ろせるんだぜチョーすげーだろー」とかやっちゃう子だったのだ。例えて言うなら
ミニ四駆で勝負だって言ったら何を思ったのか四輪駆動のレース用ゴーカートで乗りつけあまつさえ
ミニ四駆轢き潰しちゃう、そんな子だったのだ。

 月面に頭を深々と突き立てた依姫。月の裏側だって見放題だ。まぁそれも仕方ないこと。天をも
揺るがす力ある神に家政婦の仕事を頼んだのだ。そりゃまぁ依姫もRest in Peaceになる。



「あらら。これは見事なデストローイ」

 神奈子の埋葬人的決めポーズの背中側から暢気な声がした。大仰な祈りのパフォーマンスを
止めて神奈子が振り向けば、抱えた手のスナック菓子をほおばりながら、依姫の姉、綿月豊姫その人。
騒ぎを聞きつけてやってきたのである。

「こんにちは、えっと」
「八坂神奈子。神だ」
「あぁ。ということは妹が呼び出した挙句に妙なことお願いして神罰を喰らったってお約束ですわね。
遅ればせながら、私は綿月豊姫。我が妹のしたことながら、深くお詫びいたしますわ」

 相変わらずスナック菓子は手にしたままの姿だが、謝意を軽んじているわけではないと思う
神奈子。よくよく見なくとも豊姫の後ろには月の兎たちが不安そうに見ている。神奈子も喧嘩を
するわけでもないのだし、と気を緩めた。

「あいわかった。私としてもやりすぎたかな」
「あぁえぇと……、まぁあの子でしたら頑丈ですし大丈夫でしょう」

 地面に逆さに突き立った程度では月人はどうこうなるほどヤワではないらしい。うむ、と神奈子は
一つ頷いたものの手持ち無沙汰である。そのせいだか、ついついおせっかいな気持ちが沸いた。

「豊姫、といったな」
「はい」
「妹は、お前の自堕落な生活を悩んでいたぞ。私を呼び出した根幹もそこにあるのだけどねぇ」
「あら」

 ぴしゃりと言葉を投げかけられて、少しばかり目を見開いて驚き、しばし何か考えた風合いの
豊姫が口を開く。

「確かにそれは少し生活を改めるべきかも、ですね。しかし八坂大神」
「神奈子でいいよかたっくるしい」
「では神奈子さま。なかなかに漫画やゲームというものの魔力は強いものでして」
「……それくらい自制できるだろうに」

 言い訳がましさに眉をひそめて神奈子が言う。豊姫の謎の微笑みに気付かぬままに。

「ふむ……では神奈子さまならそれらに打ち勝つことができると?」
「愚問だな。たかだかヒトの作った娯楽くらいで揺るぐようでは神としてやっていけんよ」
「では神奈子さま、よろしければお手本を見せてはいただけませんでしょうか」
「ほう? 私にゲームでもやれと?」
「えぇまぁ、そうなりますかね。御心の強さを我々に知らしめ、それを以ってして正しき道をお示し
くだされば僥倖に存じますわ」

 にこやかな姿の豊姫を見やり、いささか大仰に、神奈子は頷く。

「いいだろう。御柱の如き我が心根の芯、その強き様を目に焼き付けるがよい」










『K.O.』
「ぬぁぜだ!? 何故勝てないっっっ!? お、オ・ノーレ!!」

 胸に幾つかの傷を負った仮面の男が白髪の病人に蹴散らされる。命は投げ捨てるモノっ、と
ばかりにモニタの向こうで神奈子の操るキャラが豊姫の持ちキャラにパーフェクト負けを喫した。
目下89連敗中。乾を操る大神、ヒトの娯楽に一時間弱程度で屈した。正直藁よりも弱い御柱ハート
であったらしい。

 ちなみに悔しがる様を見れば、後ろで月兎たちがぶっ通しで見ていたアニメーションの影響すら
受けたご様子。

 真っ赤な顔をしながら神奈子がまた同じキャラを選んだところに、ひとりの月兎。豊姫の前に
神奈子と対戦していた、レイセンと呼ばれている娘がおずおず声をかける。

「あのー、神奈子さん。今頃言うのもなんなんですけど、神奈子さんが使ってるキャラは最弱
キャラで、豊姫様のはその……正直反則級に強いんですけど」
「あ、ばかレイセン。なんでそれを」
「ぬぁんだとぅ!?」

 驚愕の事実に目をむく神奈子のキャラがまた空中でボコられる。

「だって豊姫さまぁ、いくらなんでも大人げないですよぅ。少しくらい手加減しましょうよ、
神奈子さんゲストなんだし」

 他の月兎もそーだそーだと付和雷同。一方的な虐殺を見せ続けられるのは少々以上に飽きた
らしい。

「しょうがないわねぇ。じゃあ別のキャラをお選びなさいませ。私もキャラを代えましょう」
「そ、そうか。なら私はこの執念が足りてそうな金髪の美形を選ぼう」
「ふむ……それなら私は切り裂く技が得意そうな……」
「とーよーひーめーさーまー」
「……はいはい。じゃあ唯一の女性キャラにするわよぅ」

 危うく強キャラを選びそうになる豊姫であったがレイセンに釘を刺された。双方キャラを代え、また
対戦が始まる。こうして豊姫の私室にまたひとり、ダメ人間……じゃない、ダメ大神が加わった
のであった。













「おい、神奈子」
「なんだようやく勝ちそうなんだから邪魔をするな……、って、を? す、諏訪子?」

 あれからどれくらい経ったのだろう。ゲームをとっかえひっかえし、あるいはアニメに没頭し、
コミックスを読破して幾星霜。まぁ実時間にすると一週間くらいか。豊姫や月兎たちがめいめい
ねっころがる部屋の中。モニタの向こうの独眼竜がレイセンの操る六天魔王に一撃必殺を決めよう
としたその時、聞きなれた声に神奈子が振り向く。そこには守矢神社の相方、坤を司る神である
『洩矢 諏訪子』。冷たい表情の後ろには依姫が立っている。

「なんだ、お前も巫女からしょうもない事を頼まれたクチか」

 レイセンを打ち倒し、一旦コントローラーから手を離した神奈子。そこに一瞥を投げかけて、
「……まぁ、そういうことになる」
と表情そのままの言葉の温度。

「この月の巫女に頼まれてね。ここのゴミを捨ててこいって」
「はぁ、なるほど。そんなことで呼ばれたのか。全く酷い話だ」

 呆れたような神奈子の言葉に、ようやく諏訪子の表情が変化する。それを笑みと表すべきか。
瞳に宿る光は氷の刃のように鋭く冷たく、纏う雰囲気も陽気さとは裏腹の暗黒のものだが。ただ
形だけは、ひとまず笑みのそれであった。

「あぁそうさ。全く酷い話もあったもんだ」

 神奈子の話を受け止めたかのようなセリフを吐いて、諏訪子は依姫のほうに振り返る。

「依姫よ。こんなつまらん事はさっさと終わらせたい。先に言うた通りに私の好きなように片付ける
が、構わんね」
「……は。如何様にも」

 どうやらこの部屋に着くまでになにやら片付けの算段を決めていたらしい。諏訪子の言葉に
恭しく頭を下げる依姫。それを目にしつつ、神奈はレイセンと再度対戦するためコントローラー
を握りなおした。



 その刹那。






「へ?」
「うわっ」
「きゃあ!!」



 一切合財が、落ちる。

 深い穴の中へ。








 落下の衝撃に目を白黒させつつも、神奈子はある程度事態を把握したのだろう。上を見上げる。
真四角に見える空は、明らかにこの穴が人為的な、いや、神為的か。ともあれ意図を持って造られた
ものである。その仕業の張本人、諏訪子に向けて叫ぶ。

「な、なにするんだい諏わぶっ!?」

 相方の名を呼びきる前に諏訪子の両足が神奈子の顔に深々とめり込んだ。なんと見事なるかな
ムーンサルトフットスタンプ。こんな技を使いこなせるとは神徳の高い諏訪子か福岡晶ぐらいのもの
だろう。しかも月面で月面宙返りとは洒落が効いている。

 穴の底、ぼろぼろになった豊姫やレイセンの見守る先、神奈子はゆっくりとその身を大地に
横たえた。それを見届けて、諏訪子は大きく勝鬨を上げる。

「ゴミ掃除! 終わり!!」
 






 で、諏訪子さま。本音は?

「ゲーム大会してるんだったらなんで私を呼ばないんだよぅ!!」

[email protected]
コメント



1.削除
さて、神奈子様は初心者カラーかきれいなカラーか汚いカラーか喪服か何なのか、
そして5様ムーンサルトを決めたのかどうかをkwsk
2.名前が無い程度の能力削除
NDK?
マミヤ使ってたらシンがムテキングしてきてNDK?
3.名前が無い程度の能力削除
神奈子様は弱キャラばっか使うのなwww

レイvsシンならバグ昇竜vsムテキングが見れたかもしれんのに……
4.名前が無い程度の能力削除
格ゲー初心者が触るゲームじゃねえだろwwww
同じアークゲーにしてもBBか、せめてGGあたりをだな