※注意※
この作品は作者の願望と推測の詰まった愉快な妄想話の上さらにオリ設定です。
つまり何が言いたいかと言うと書きたいから書いた、これにつきます。
それらを好まない方々は早急にブラウザバックをしていただく事をお勧めいたします。
注意はしたぞな、中傷とかは止めておくんなもし。
今は昔、相当昔。
まだ香霖堂も寺子屋も建っていない頃、慧音は里の学士として、霖之助はキリサメの名で生活していた頃の話。
この物語の主人公は若かりし頃の上白沢慧音と、霧雨道具店に勤めていた頃の森近霖之助である。
昼頃、慧音は霧雨道具店に訪れていた。
二度三度深呼吸をし、入店する。
「店主、キリサメは起きているか」
「あぁ慧音さん、今日は学問会午前で終わりでしたか。彼はまだ部屋で寝ているでしょう、何か?」
接客台で帳簿を付けている眼鏡をかけた男性こそ、霧雨道具店を一代で人里の大手にした霧雨の親父その人。
文学人のような物腰柔らかい口調と眼鏡の奥の瞳が若い慧音を見据え質問する。
「いや、今日は学問会に来なかったからその宿題を届けに来たんだ」
言いつつ風呂敷を掲げる。相当な量のようだ。
「すいません慧音さん」
「謝るのは良いが店主、普段休まないあいつが今日はどうしたんだ?」
「僕の仕事のうちの一つを請け負ってもらったんです」
「そうか、分かった」
上がるぞ、と言って勝手知ったる家の中のように慧音は扉をくぐる。
霧雨家の広い家の中の階段を上がると彼の部屋はそこにあった。
「私だ、慧音だ。キリサメ起きてるか」
『……おきてるよ』
扉向こうのくぐもった声を聞き、慧音は部屋の戸を開け、入り込む。
「入るぞ」
「もう入っているじゃないか」
布団に出来た人型のなだらかな山からの言葉を受け流しつつ慧音は座り込み包みを置く。
興味を持ち寝返りを打った霖之助が開き切っていない目でそれを見て呟いた。
「……弁当でも食べるつもりかい?」
「馬鹿者、これは学問会の宿題だキリサメ」
「あぁ、そうかい」
言って上体を起こす。
僅かながら異臭を発している霖之助に慧音は眉を顰めつつ尋ねた。
「お前風呂入って無いのか」
「…親父さんの代わりに自警団との武器取引。相当揉めてね、昨日の夕方から今日の明け方までかかったよ」
「大変だな」
「あぁ」
そう言って霖之助は立ち上がり出口へ向かう。
起きぬけの危なっかしい足取りに慧音は心配しつつ何処へ行くのか尋ねると
「表の井戸、体を洗ってくるよ」
言い終え、部屋の扉を閉め階段を下りる音が聞こえる。
服を脱ぎ捨て、井戸から水をくみ上げ頭から被る。
水でぼやけた顔を拭い、天を仰げば蒼く抜けるような空。
暫く黙りこみ、純白に輝く雲を眺める。
雲はまるでゆっくりと大空を旅しているかのように夏に近い生温い空気が連れてゆく。
「明日は暑くなるな、多分」
空に独り言をつぶやきつつ、もう一度水を被り、服に着替えた。
先程から台所からだろうか、何か良い匂いが漂ってくる。
「……戻るか」
霖之助は最後に大きく体を伸ばし、自分の部屋に戻ることにした。
霖之助が部屋に戻ると、畳に寝ころんで本を読みふける慧音の姿がそこにあった。
「…人の部屋で何しているんだ君は」
「おぅお帰り、本借りてるぞ」
慧音は手を振る代わりに足を挙げ、上体を起こし本に栞を挟む。
「さっき女将が栗を持って来てくれた、食べよう」
「あぁ、焼き栗か」
未だ暖かみを残す紙袋を机の上に置いて開き、二人は栗を食べ始める。
その夜、霧雨家の厚意で慧音は夕食を振舞われることになった。
「…はぁ~、食べた食べた。御馳走までしてもらってすまないな、キリサメ」
「礼なら女将さんと親父さんに言ってくれ」
部屋の畳に寝ころび満面の笑みを浮かべる慧音に霖之助は微笑みながら本を読む。
「何読んでるんだ」
「ん?魔界の本」
「魔界?魔界と言ったか!」
慧音は飛び起き霖之助の肩に手を置き本を覗き込んだ。
二人の距離が俄かに縮み、慧音の吐息が彼の頬にかかる。
「ち、近い…も少し離れてくれ」
「むぅ、これは英語じゃないか!読めないぞ」
慧音は依然と距離を置こうとせず、それどころか更に身を乗り出し本の文字に目を近付けた。
「そう言えば慧音は歴史と国語以外は駄目だったな」
「駄目ってわけじゃないぞ、苦手なだけだ」
「取り敢えずもう少し離れろ」
引っぺがされつつ説明してくれとせがむ慧音に溜息を吐きつつ、本の朗読を始める。
「まずは英語だけで読むぞ」
「いや良い、始めから日本語でしゃべってくれ」
「…分かったよ『魔界紳士は、博愛精神に富み弱きを助け強きをくじく。常に法を拠り所として、悪を憎み正義を貫く』つまりこれは魔界紳士はこうであれ、っていう格言さ」
「ふむふむ」
説明を聞きつつ予備の眼鏡をいじっていた慧音に霖之助は拳骨を喰らわせる。
「なにするぅ」
「説明してくれと言ったのはそっちだろう?聞かないでどうする」
頭を押さえつつ涙を浮かべる慧音を見て霖之助は少しばかりやり過ぎたかと少しばかり後悔した。
しかしそのすぐ後、慧音は霖之助の眼鏡を自らに掛け。
「似合うか?」
と尋ねる。
復活の早さが売りだそうだ。
付き合いきれない、そう感じた霖之助は適当な返事をしてまた机に向きなおる。
「…なぁ、ちょっとこっち向いてくれ」
「なんだい?こっちは忙し……」
言いきる前に、霖之助の顔面に柔らかい何かが直撃し、視界を奪った。
そして数秒して視界が晴れると、霖之助は顔に張り付いていたものが何か分かった。枕である。
「…何がしたいんだ」
「つまらないからまくら投げでもしないか」
「………ほう、僕相手にまくら投げとは良い度胸だ、受けて立とうじゃないか」
因みに枕は一個しかない。まくら投げと言えるのだろうか。
兎も角二人は一個しかないまくらを投げ合い、そして当て合った。
どれくらい経ったろうか、二人は一枚の布団の上で寝ころんでいた。
「……つ、疲れた」
「夜に…無理な運動するからだ」
二人とも肩で息をし、体力は尽きかけている。
当然だろう、あれだけ腕を振りあげ本来投げるべきものでないものを投げていたのだから。
「キリサメ、私眠い」
「…僕もだよ」
布団は一組しかないし、もう一つあったとしても出す体力気力なんて持ち合わせてない二人は、そのまま一つの布団で夜を明かすことにした。
幻想郷の夜は、静かに更けて往く。
読んでて実に楽しい。
親父さんの落ち着いた口調がお気に入りです。
>ちなみにこの発言を行った数秒後女将さんに(Nice boat.)されました
何恥ずかしがってるんですか女将さん。貴方も旦那とそういう事したから魔法に興味持った娘が生まれt(ボグシャァ
ともあれ、貴殿の作品は毎回楽しく読ませて戴いております。次回作にも期待させていただきます。