美鈴の部屋は質素で必要最低限の物しか置いていない。
女の子なのだからぬいぐるみの一つ位はあってもいいじゃないとレミリアは思う。
先ほど霧化して不法侵入した事などどこ吹く風で彼女は部屋を見回した。
まずはテーブルの上にある美鈴の変えの帽子を発見し、それを手に取る。
そのまま顔をうずめる様にしてすんすんと匂いを嗅いだ。
「美鈴の匂いね」
当たり前の事をそう呟く。
そのまま帽子を抱えて再び視線を動かすと、今度はまたまた質素なベッドが目に入った。
レミリアはそのまま躊躇い無くベッドに身を投げ出すと大きく息を吸い込んだ。
「ああ……」
どこか恍惚とした様子でそう声を漏らす。
「美鈴に包まれているみたい」
そのまま全身で何かを感じる様にシーツを体に擦りつける様に動かした。
「……美鈴」
固く目を閉じて切なげに呟いてしばし……
「………」
不意にレミリアは目を開くと、先ほどの様子はどこへやら物憂げな様子で身を起こす。
そのまま何かを待つようにしばしドアの方に視線をやって……
「来ないわねえ……」
そんな言葉がレミリアの口から漏れた。
一連のこの行為は美鈴が戻ってくる事を見越して起こした行動であったのだ。
つまりは部屋に戻ってみると美少女が自分のベッドの匂いを堪能しているという、そんな萌えシチュエーションを仕掛けてみるつもりだったのだ。
気持ちを抑えられらなくなったいじましい美少女の思い余った末の暴走。これならば美鈴も落ちるだろうと確信を持って挑んだのだ。
なのに肝心の美鈴がやって来ない。
……実は先ほどまでこっそりと使い魔を飛ばして美鈴の様子を窺っていたのだ。
彼女は門番業務を終えて、シャワーを浴びて、今部屋へと向かっているはずだった。
本当ならば美鈴は部屋についていて、ベッドのレミリアを発見しているはずだったのだ。
そして今頃は……
(美鈴……美鈴……)
(お嬢様……)
(え?……め、美鈴……)
(………)
(ち、違うの!これは……)
(仕方ないお嬢様ですね、ああ……とんだ変態です)
(嫌、なにを……)
(そんな変態さんにはお仕置きが必要ですね)
(あああ……)
と、本来ならばそうなっているはずであったのにとレミリアは呻く。
「何やってるのよ」
そう不機嫌そうに呟いて、それから右手を何かを掴むように中空へと伸ばして握る。
そして開いたその掌には小さな蝙蝠が握られていた。
蝙蝠は数度、羽をはばたかせるとそのままふらふらと飛んでいく。
途中で霧化してドアをすり抜けてそのまま紅魔館の廊下へと、美鈴の気配を追って飛んでいく。
それを見届けるとレミリアは再びベッドに身を投げ出した。
くぁっと欠伸を漏らす。
「ん、なんだか拍子抜けしたら眠くなってしまったわ」
昨日、ゲームをやり過ぎたからかしらとひとりごちる。
密かに河童たちに資金提供をして開発させたメイプラスというゲームで、これが面白くてやめられなかったのだ。
内容は単純なもので、紅魔館の門番である美鈴との恋愛ゲームである。
内臓タイマーによる時間に合わせてに起きる様々なイベントに加えて、現実では到底見れない美鈴の仕草や要素を堪能できるのだ。
そして開始時に美鈴のタイプを選ぶ事が出来るという画期的なアイデアが盛り込まれていて何周しても飽きる事は無い。
母性あふれる古参美鈴やおっちょこちょいなヘタレ美鈴。
やや意地悪な中華不良小娘や、小動物的なちめーりんなど。
まさにレミリア殺し、美鈴好き垂涎のゲームであった。
「でも、現実の美鈴には敵わないのよね」
やはり触れる事の出来る方がいい。
ゲームの中の美鈴達は皆レミリアに夢中であるがそれだけである。
現実の美鈴はどこか醒めていて、レミリアに対する態度もそっけない。
そんな美鈴だからこそ好きなのである。
時折見せる自分への好意などを感じた時はどうしようも無いほどに胸が躍るのだ。
いつか必ず、自分の物にしてみせると一目見た時からそう決めていて……
「あらぁ……」
残念そうな呟き。
先ほど飛ばした使い魔が美鈴を見つけたのだ。
場所は図書館。
様々な蔵書が眠るその一角で美鈴が本を眺めていた。
「こうなると長いのよね」
おそらく暇つぶしの為の本を漁っているのだろう。
ああ見えて美鈴は本が好きで、目移りしてしまう様だ。
あれこれ手に取り、戻してまた取って、なかなか決められそうにない。
「こりゃしばらく来ないか」
当てが外れたとレミリアは思う。
そのまま再びくぁっと欠伸をする。
湧きあがってくる睡眠の欲求のままにレミリアは目を閉じた。
まあいいと、ならばこのまま寝てしまおうと。
どうせ美鈴の部屋だし、見つかっても何もないだろう。
呆れた様子を見せて放っておいてくれるはずだ。
……できれば襲ってくれると嬉しいが美鈴に限ってそれはあるまい。
それならば起きた時には多少すっきりしているだろうし、愛しの美鈴にアプローチを掛けるのは此方からで良いと。
意識が暗闇に飲まれていく心地良い感覚に、レミリアは抵抗もせずに身をゆだねた。
部屋に戻ってさあ読書、と言うところで美鈴は困惑を浮かべていた。
ベッドの中央にはまるで我がものであるかのように主人が寝息を立てている。
ついでに何故か自分の変えの帽子を抱えていた。
「……まったく」
美鈴はそう呆れたように溜息を吐いた。
なぜこのような状態になったのか、おおよその見当は付く。
恐らく何時もの……気まぐれに仕掛けてくる萌えシチュエーションとやらの演出だろう。
準備を整えて美鈴を待っているうちに眠ってしまったと、恐らくそんな感じだと理解する。
美鈴は眉根を寄せたままベッドの傍へと寄るとどうしたものかと顎に手をやった。
起こすべきか寝かせておくべきか……まあ、実害は無いのでこのままでも良いかと。
「……ん……ぁ……美鈴」
不意にレミリアがそう漏らして、美鈴はレミリアに視線を向ける。
相変わらず彼女の眼は閉じられていて寝息は穏やか。とても寝ているふりであるとは思えない。
念のために気の力を使って探ってみても完全に熟睡している事が見て取れた。
「寝言、か」
自分の名前を呼ばれて少々気恥しげな様子で美鈴はレミリアを見下ろす。
レミリアが自分に好意を持っている事は理解していた。
それも恋愛と言う種類の好意であった。
真祖の吸血鬼である彼女がどうして自分の様な木端妖怪に惚れたのかは分からない。
以前に酒の勢いで聞いたら理由などないと、一目ぼれだと言いきられて……
「………」
何故か嬉しいと、そう思ってしまった事を美鈴は思い出した。
少なくとも自分には幼児性愛や同性愛の性癖など無かったはずなのに、柄にもなく照れてしまった。
ただ美鈴自身、自分がレミリアをどう思うのか測りかねている事もあり明確に返事をしたことも無いが。
ともあれこのまま寝かせておこうとベッドの傍を離れかけた美鈴の裾をレミリアが掴んだ。
「お嬢様?」
起こしてしまったかと呼びかけても返事は無い。
相変わらず安らかに眠っている。
となるとこれは寝相なのかと。
仕方ないお嬢様だと手を外そうとしてもしっかりと握っていて離しそうにない。
困ったように立ち尽くして、それから溜息をついてベッドの縁へと腰を下ろした。
「寝ている時まで絡んできますか……」
そのままレミリアを寝ているレミリアを見下ろして美鈴はそう呟いた。
僅かに顔をほころばせて、どこか微笑ましそうな笑みを美鈴は浮かべる。
「……美鈴」
再びレミリアがそう呟いて、美鈴が驚いた様子を見せて、本当に寝ているのかとその顔を凝視する。
すぅすぅと寝息を立てる唇は半ば開かれていて微かに八重歯が覗いていた。
何時もはくりくりと動いているその赤い瞳は閉じられていて、安らかで、何時もは感じない彼女の美しさが際立って見える。
こんな表情を以前見た事があると、美鈴は思い出していた。
何時であったか、あれは確か……。
(先ほどの続き、しましょう)
あれはたしか、雨の降りしきる門番詰所での事。
(抵抗……しないのね?)
頬に添えられたレミリアのひやりとした掌。
真近に迫る、彼女の瞳を閉じた顔。
あの時、邪魔が入らなければどうなっていたのか……
どくり、と心臓が脈打つのを美鈴は感じた。
どうなっていたのか、そんな事は分かり切っていた。
「あ……」
美鈴が戸惑った様な声を漏らす。
その瞳が映すのは静かな、あの時と同じ表情のレミリア。
それをしばし眺めて、美鈴は己の唇に指を当てて。
それから半ば無意識に手を伸ばしてレミリアの頬へと手を添えた。
「お嬢様……」
呟いたその声は押し殺されていて、何かに耐えるかのように。
瞳を閉じて、伸ばした腕を止める様にと。
しばしの逡巡の後、美鈴は添えた手を動かしてレミリアの頬を撫で顎を擽った。
「私は……」
どくり、どくりと心臓が鳴っていた。
この人はと、美鈴は思う。
五百年生きている割には子供っぽくて、迷惑ばかりかけてきて。
でも、時折妙に悟った様な態度を見せて、何よりもまっすぐで。
ああ、うらやましいと、そう思ってしまった事がある。
何かあっても何時も興味の無いふりをして、気だるげな態度で誤魔化してばかりいる自分には眩しくて。
だからこそ、あの時は素直になろうと決めたはずだったのに。
気持ちを測りかねていた?本当は分かっていたはずなのに。
彼女にちょっかいを出されるたびに悪い気がしなかった。
それどころか一目ぼれと言われた時には嬉しいとさえ感じていた。
あの、雨の門番詰所で、抵抗せずに受け入れようと思っていた時から自分の気持ちは分かり切っていたはずなのに。
「お嬢様……私は……貴方が……」
美鈴がレミリアに顔を寄せていく。
直前で止まって、躊躇うように唇を噛んで。
それから……
本当に軽く、触れるくらいに唇を重ね合わせた。
「んぁ?」
目を覚ましたレミリアはふと美鈴の顔が傍にある事に気が付いた。
しばし寝ぼけ眼でそれを観察、やはり綺麗だなとそう思う。
「わ!?」
それから慌てて身を起こした。
それから着衣を確認する。
「ああ、これは……」
と、レミリアが呟いて。
「別に何もなかったわね」
恐らく、美鈴は門番が終わって疲れてしまったから寝たのだろう。
自分の体は子供で、美鈴に性的に意識されるような魅力は無いはずだ。
……少々悲しい。
ともあれ美鈴にとっては意識するほどの事でもなかったのだろう。
予想通りとはいえ、いままであれだけ好意を伝えて来たのだ。
美鈴の方も自分に少しくらい気持ちが寄ってきていると、そう思っていたのに。
だからこそ寝ている自分を見て、少しくらいなにか悪戯でもしてくれればとそう思ったのだが。
「まあ、何時も通りか」
まだまだ努力が足りない。
もっともっと美鈴に好意を伝えねばいけない。
ふと、レミリアは美鈴の顔をまじまじと見つめた。
普段は絶対に見せない。どこか安らかな無防備な寝顔。
仕方ない、今はこれで満足しておこうと。
「ふん、人の気も知らないで」
人差し指でつん、と美鈴の額を突いて再びベッドに身を横たえる。
「キス位してくれてもいいじゃない」
そう呟いて、レミリアは再び瞳を閉じる。
いまはこの心地良い眠りを堪能しよう。
現実してくれないのであれば先ほどの様に夢の中で。
ああ、夢の中の美鈴はとても優しいキスをしてくれて、だからこそ起きぬけに慌ててしまったのだからと。
-終-
女の子なのだからぬいぐるみの一つ位はあってもいいじゃないとレミリアは思う。
先ほど霧化して不法侵入した事などどこ吹く風で彼女は部屋を見回した。
まずはテーブルの上にある美鈴の変えの帽子を発見し、それを手に取る。
そのまま顔をうずめる様にしてすんすんと匂いを嗅いだ。
「美鈴の匂いね」
当たり前の事をそう呟く。
そのまま帽子を抱えて再び視線を動かすと、今度はまたまた質素なベッドが目に入った。
レミリアはそのまま躊躇い無くベッドに身を投げ出すと大きく息を吸い込んだ。
「ああ……」
どこか恍惚とした様子でそう声を漏らす。
「美鈴に包まれているみたい」
そのまま全身で何かを感じる様にシーツを体に擦りつける様に動かした。
「……美鈴」
固く目を閉じて切なげに呟いてしばし……
「………」
不意にレミリアは目を開くと、先ほどの様子はどこへやら物憂げな様子で身を起こす。
そのまま何かを待つようにしばしドアの方に視線をやって……
「来ないわねえ……」
そんな言葉がレミリアの口から漏れた。
一連のこの行為は美鈴が戻ってくる事を見越して起こした行動であったのだ。
つまりは部屋に戻ってみると美少女が自分のベッドの匂いを堪能しているという、そんな萌えシチュエーションを仕掛けてみるつもりだったのだ。
気持ちを抑えられらなくなったいじましい美少女の思い余った末の暴走。これならば美鈴も落ちるだろうと確信を持って挑んだのだ。
なのに肝心の美鈴がやって来ない。
……実は先ほどまでこっそりと使い魔を飛ばして美鈴の様子を窺っていたのだ。
彼女は門番業務を終えて、シャワーを浴びて、今部屋へと向かっているはずだった。
本当ならば美鈴は部屋についていて、ベッドのレミリアを発見しているはずだったのだ。
そして今頃は……
(美鈴……美鈴……)
(お嬢様……)
(え?……め、美鈴……)
(………)
(ち、違うの!これは……)
(仕方ないお嬢様ですね、ああ……とんだ変態です)
(嫌、なにを……)
(そんな変態さんにはお仕置きが必要ですね)
(あああ……)
と、本来ならばそうなっているはずであったのにとレミリアは呻く。
「何やってるのよ」
そう不機嫌そうに呟いて、それから右手を何かを掴むように中空へと伸ばして握る。
そして開いたその掌には小さな蝙蝠が握られていた。
蝙蝠は数度、羽をはばたかせるとそのままふらふらと飛んでいく。
途中で霧化してドアをすり抜けてそのまま紅魔館の廊下へと、美鈴の気配を追って飛んでいく。
それを見届けるとレミリアは再びベッドに身を投げ出した。
くぁっと欠伸を漏らす。
「ん、なんだか拍子抜けしたら眠くなってしまったわ」
昨日、ゲームをやり過ぎたからかしらとひとりごちる。
密かに河童たちに資金提供をして開発させたメイプラスというゲームで、これが面白くてやめられなかったのだ。
内容は単純なもので、紅魔館の門番である美鈴との恋愛ゲームである。
内臓タイマーによる時間に合わせてに起きる様々なイベントに加えて、現実では到底見れない美鈴の仕草や要素を堪能できるのだ。
そして開始時に美鈴のタイプを選ぶ事が出来るという画期的なアイデアが盛り込まれていて何周しても飽きる事は無い。
母性あふれる古参美鈴やおっちょこちょいなヘタレ美鈴。
やや意地悪な中華不良小娘や、小動物的なちめーりんなど。
まさにレミリア殺し、美鈴好き垂涎のゲームであった。
「でも、現実の美鈴には敵わないのよね」
やはり触れる事の出来る方がいい。
ゲームの中の美鈴達は皆レミリアに夢中であるがそれだけである。
現実の美鈴はどこか醒めていて、レミリアに対する態度もそっけない。
そんな美鈴だからこそ好きなのである。
時折見せる自分への好意などを感じた時はどうしようも無いほどに胸が躍るのだ。
いつか必ず、自分の物にしてみせると一目見た時からそう決めていて……
「あらぁ……」
残念そうな呟き。
先ほど飛ばした使い魔が美鈴を見つけたのだ。
場所は図書館。
様々な蔵書が眠るその一角で美鈴が本を眺めていた。
「こうなると長いのよね」
おそらく暇つぶしの為の本を漁っているのだろう。
ああ見えて美鈴は本が好きで、目移りしてしまう様だ。
あれこれ手に取り、戻してまた取って、なかなか決められそうにない。
「こりゃしばらく来ないか」
当てが外れたとレミリアは思う。
そのまま再びくぁっと欠伸をする。
湧きあがってくる睡眠の欲求のままにレミリアは目を閉じた。
まあいいと、ならばこのまま寝てしまおうと。
どうせ美鈴の部屋だし、見つかっても何もないだろう。
呆れた様子を見せて放っておいてくれるはずだ。
……できれば襲ってくれると嬉しいが美鈴に限ってそれはあるまい。
それならば起きた時には多少すっきりしているだろうし、愛しの美鈴にアプローチを掛けるのは此方からで良いと。
意識が暗闇に飲まれていく心地良い感覚に、レミリアは抵抗もせずに身をゆだねた。
部屋に戻ってさあ読書、と言うところで美鈴は困惑を浮かべていた。
ベッドの中央にはまるで我がものであるかのように主人が寝息を立てている。
ついでに何故か自分の変えの帽子を抱えていた。
「……まったく」
美鈴はそう呆れたように溜息を吐いた。
なぜこのような状態になったのか、おおよその見当は付く。
恐らく何時もの……気まぐれに仕掛けてくる萌えシチュエーションとやらの演出だろう。
準備を整えて美鈴を待っているうちに眠ってしまったと、恐らくそんな感じだと理解する。
美鈴は眉根を寄せたままベッドの傍へと寄るとどうしたものかと顎に手をやった。
起こすべきか寝かせておくべきか……まあ、実害は無いのでこのままでも良いかと。
「……ん……ぁ……美鈴」
不意にレミリアがそう漏らして、美鈴はレミリアに視線を向ける。
相変わらず彼女の眼は閉じられていて寝息は穏やか。とても寝ているふりであるとは思えない。
念のために気の力を使って探ってみても完全に熟睡している事が見て取れた。
「寝言、か」
自分の名前を呼ばれて少々気恥しげな様子で美鈴はレミリアを見下ろす。
レミリアが自分に好意を持っている事は理解していた。
それも恋愛と言う種類の好意であった。
真祖の吸血鬼である彼女がどうして自分の様な木端妖怪に惚れたのかは分からない。
以前に酒の勢いで聞いたら理由などないと、一目ぼれだと言いきられて……
「………」
何故か嬉しいと、そう思ってしまった事を美鈴は思い出した。
少なくとも自分には幼児性愛や同性愛の性癖など無かったはずなのに、柄にもなく照れてしまった。
ただ美鈴自身、自分がレミリアをどう思うのか測りかねている事もあり明確に返事をしたことも無いが。
ともあれこのまま寝かせておこうとベッドの傍を離れかけた美鈴の裾をレミリアが掴んだ。
「お嬢様?」
起こしてしまったかと呼びかけても返事は無い。
相変わらず安らかに眠っている。
となるとこれは寝相なのかと。
仕方ないお嬢様だと手を外そうとしてもしっかりと握っていて離しそうにない。
困ったように立ち尽くして、それから溜息をついてベッドの縁へと腰を下ろした。
「寝ている時まで絡んできますか……」
そのままレミリアを寝ているレミリアを見下ろして美鈴はそう呟いた。
僅かに顔をほころばせて、どこか微笑ましそうな笑みを美鈴は浮かべる。
「……美鈴」
再びレミリアがそう呟いて、美鈴が驚いた様子を見せて、本当に寝ているのかとその顔を凝視する。
すぅすぅと寝息を立てる唇は半ば開かれていて微かに八重歯が覗いていた。
何時もはくりくりと動いているその赤い瞳は閉じられていて、安らかで、何時もは感じない彼女の美しさが際立って見える。
こんな表情を以前見た事があると、美鈴は思い出していた。
何時であったか、あれは確か……。
(先ほどの続き、しましょう)
あれはたしか、雨の降りしきる門番詰所での事。
(抵抗……しないのね?)
頬に添えられたレミリアのひやりとした掌。
真近に迫る、彼女の瞳を閉じた顔。
あの時、邪魔が入らなければどうなっていたのか……
どくり、と心臓が脈打つのを美鈴は感じた。
どうなっていたのか、そんな事は分かり切っていた。
「あ……」
美鈴が戸惑った様な声を漏らす。
その瞳が映すのは静かな、あの時と同じ表情のレミリア。
それをしばし眺めて、美鈴は己の唇に指を当てて。
それから半ば無意識に手を伸ばしてレミリアの頬へと手を添えた。
「お嬢様……」
呟いたその声は押し殺されていて、何かに耐えるかのように。
瞳を閉じて、伸ばした腕を止める様にと。
しばしの逡巡の後、美鈴は添えた手を動かしてレミリアの頬を撫で顎を擽った。
「私は……」
どくり、どくりと心臓が鳴っていた。
この人はと、美鈴は思う。
五百年生きている割には子供っぽくて、迷惑ばかりかけてきて。
でも、時折妙に悟った様な態度を見せて、何よりもまっすぐで。
ああ、うらやましいと、そう思ってしまった事がある。
何かあっても何時も興味の無いふりをして、気だるげな態度で誤魔化してばかりいる自分には眩しくて。
だからこそ、あの時は素直になろうと決めたはずだったのに。
気持ちを測りかねていた?本当は分かっていたはずなのに。
彼女にちょっかいを出されるたびに悪い気がしなかった。
それどころか一目ぼれと言われた時には嬉しいとさえ感じていた。
あの、雨の門番詰所で、抵抗せずに受け入れようと思っていた時から自分の気持ちは分かり切っていたはずなのに。
「お嬢様……私は……貴方が……」
美鈴がレミリアに顔を寄せていく。
直前で止まって、躊躇うように唇を噛んで。
それから……
本当に軽く、触れるくらいに唇を重ね合わせた。
「んぁ?」
目を覚ましたレミリアはふと美鈴の顔が傍にある事に気が付いた。
しばし寝ぼけ眼でそれを観察、やはり綺麗だなとそう思う。
「わ!?」
それから慌てて身を起こした。
それから着衣を確認する。
「ああ、これは……」
と、レミリアが呟いて。
「別に何もなかったわね」
恐らく、美鈴は門番が終わって疲れてしまったから寝たのだろう。
自分の体は子供で、美鈴に性的に意識されるような魅力は無いはずだ。
……少々悲しい。
ともあれ美鈴にとっては意識するほどの事でもなかったのだろう。
予想通りとはいえ、いままであれだけ好意を伝えて来たのだ。
美鈴の方も自分に少しくらい気持ちが寄ってきていると、そう思っていたのに。
だからこそ寝ている自分を見て、少しくらいなにか悪戯でもしてくれればとそう思ったのだが。
「まあ、何時も通りか」
まだまだ努力が足りない。
もっともっと美鈴に好意を伝えねばいけない。
ふと、レミリアは美鈴の顔をまじまじと見つめた。
普段は絶対に見せない。どこか安らかな無防備な寝顔。
仕方ない、今はこれで満足しておこうと。
「ふん、人の気も知らないで」
人差し指でつん、と美鈴の額を突いて再びベッドに身を横たえる。
「キス位してくれてもいいじゃない」
そう呟いて、レミリアは再び瞳を閉じる。
いまはこの心地良い眠りを堪能しよう。
現実してくれないのであれば先ほどの様に夢の中で。
ああ、夢の中の美鈴はとても優しいキスをしてくれて、だからこそ起きぬけに慌ててしまったのだからと。
-終-
ところでメイプラスとはどこで買えるのかね。
むらむらしてんなぁ、二人とも
メイプラス買いたいんですがどこにありますか?
あとメイプラスはけど本物の美鈴はもらっていきますね
ところでメイプラスは(ry
どっちもむらむらしてるのに中々進展しないのがもどかしいね
あとメイプラスは何処で(ry