" />無理なダイエットは控えましょう! 作者: 喉飴
Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

無理なダイエットは控えましょう!

2011/04/22 05:31:19
最終更新
サイズ
12.61KB
ページ数
1
閲覧数
1620
評価数
0/0
POINT
0
Rate
5.00

分類タグ


 
 
「ふ、太いから太股って言うのよね、うん!」

 無駄に大声で、そんなことを主張してみる。
 足元には、おはようからおやすみまで乙女の大敵である体重計。そのメモリが示す数値は、明らかに、なんというか……増えてるってことを示していた。
 今はお風呂上がり。もちろんいつものリボンも、巫女服も、そして下着でさえも身につけていない。だから、目の前の数値は、どうしようもない真実だ。

「や、待とう。バスタオルのせいじゃないかしら? 水分を吸ったバスタオルを身に纏ってるから、きっとその分重くなってるだけよね!」

 そうだ、そうに決まっている。というわけで、バスタオルを洗濯籠にそぉい!
 生まれたままの状態、全裸になる。ほかほかとまだ温かさが残ってるおかげで、別に寒くはない。
 そして深呼吸をした後、ゆっくりと体重計に挑む。大丈夫、きっとこれでいつもの通りの数値になるはず。
 つい目をぎゅっと強く、閉じてしまう。
 博麗の巫女として、いろんな妖怪を退治してきた。そのときでさえ感じなかった恐怖を、何故こんなところで感じなければならないのだろう。
 そっと、目を開く。

「っ!?」

 そこには厳しい現実が!
 うぅ、受け入れなければならないのか、この現実を。コンテニューはできないのか。

「ふ、太いから、太股……よね」

 そう、だから別に悪いことではないはずだ。きっとこれが、正しいことなんだ。
 恐る恐る太股とお腹を触ってみる。
 ぷに。ふにゅ。

「……断食しようかしら」
「だめですよーちゃんと食べないと。霊夢さんは所詮人間なんですから、無茶はいけません」
「そうは言っても……」
「そんなに増えちゃったんですか?」
「2キロくらい――って、ちょっと待て」

 独り言が、いつの間にか会話になっている気がする。しかも、今この場に居たら一番厄介そうな人物の声だった気がしてならない。
 嫌な予感しかしない。
 ちらっと横を見ると、にこっと笑顔を返された。そして右手に持っているカメラで、かしゃりと一枚撮られる。
 この馬鹿鴉天狗め!

「おらぁっ!」
「おおっ!?」
「くっ、外した……っ」

 即座に回し蹴りを放ったけども、さすがに速さではあいつに勝てない。普通にかわされてしまった。

「綺麗な回し蹴りをありがとうございます。ですが、その状態で回し蹴りはいろいろと危ないかと思います。思わずシャッター切っちゃったじゃないですか、ありがとうございます」
「撮るなっ! フィルムを寄こせ、今すぐ処分するから! あと、どっから沸いて出た!」
「スクープの匂いがしたので、つい現れちゃいました。まぁまぁ、霊夢さんの恥ずかしい写真は一旦置いといてですね」
「置いておくな!」

 手を伸ばすが、ひらりひらりとかわされる。しかも、かわすたびにシャッターを切られる。
 抵抗すればするほど、恥ずかしい写真が増えてくって、何この状況。どうしてこうなった。私が何をしたと。
 とりあえず攻撃の手を止め、下着と服を着よう。

「お、やっと諦めましたか」
「安心しなさい、着たらちゃんと潰すから。それまでに、人生に悔いがないようやりたいことをやっておきなさい」
「あやややや、物騒ですねぇ。そんなことより、良いお話があるんですよ。実はですね、次の新聞の内容がダイエット特集なんです」
「……ん?」

 ぴくっと、体が反応する。
 とりあえず服を着終えて、文の方へと向き直る。いつもと同じ、貼り付けたような営業スマイルだ。ちょっと腹が立つ。

「で? 何が言いたいわけ?」
「既にいくつかダイエット方法を調べたのですが、どれが一番効果があるのか、体にどれくらいの負担がかかるのかなどは確認していないのです。自分で試そうにも、ほら、見ての通り私はそんなことをする必要がないので」
「軽く殺意が生まれたわ」

 上着の裾とスカートをめくって、わざとらしくお腹と太股を見せつけてくる。くそぅ、悔しいけど文のスタイルは素直に羨ましい。
 こいつよく見ると、肌も綺麗なのよね。それに加えて、私よりも胸おっきいし。別に文の胸が特別大きいってわけでもないけど、それでも私よりはある。素直に羨ましい。というか、妬ましい。
 自分の胸を触ってみる。ぺたぺたふにふに。……ちょっとした愛しさと切なさと心細さを覚えた。
 次に、文の胸に目をやる。服の上からだと、実際どの程度の大きさなのか、少し判断にぶれが生じそうだ。

「うぅん……」
「……あのー霊夢さん? なにゆえ思い詰めたような表情で、私の胸を揉んでいるのでしょうか?」
「はっ!」

 おおっと、無意識に文の胸を揉んでいたようだ。だが、これで分かった。文の胸は手のひらにちょうど収まるくらいで、しかも触っていて心地良い。他人の胸を触ったことなんて、よくよく考えてみれば無い。なんだか、不思議な感覚だ。
 むにゅむにゅ。ふにゅふにゅ。なでなで。
 心地良さのあまりに、しばらくそのままでいると、文に手を払われた。

「まったくもうっ、いつまで触ってるんですか」
「えー良いじゃない、減るもんじゃないし」
「じゃあ霊夢さんの胸揉んじゃいますよ?」
「揉むほどないわよこんちくしょうめ!」
「……そこに突っ込むんですか」

 苦笑いを零している文。
 事実なのだから、仕方ない。揉むじゃなくて、撫でるなら出来るだろうけど。

「まぁ胸のことなんて今はどーでもいいのです!」
「どーでもいいなら揉ませなさいよ」
「どんな理屈ですか。まず胸から離れてください。いいですか? 今はダイエットの話です」

 おぉ、確かになんかそんな話をしていたような気がしないでもない。
 しかし情報源がこいつだと、一気に嘘臭くなる。ダイエットはしたいけど、別にこいつの情報に頼らず、自分のペースで好きなようにやれば良い。

「あんたの力はいらないわ。私は私なりのやり方でやる」
「……短時間でとっても楽に痩せることが出来る、表には出ていないとっておきのダイエット術ばかりなんですけどねぇ」

 ぴくっ!
 思わず体が反応してしまう。
 いやだって、明らかに魅力的じゃあないか。罠の匂いがぷんぷんするけど、それでももしかしたらって思ってしまう。
 文はいつもの手帳で口元を隠しながら、こちらをすぅっと細い目で見ている。きっとあの手帳の下は、嫌な笑みが零れてるに違いない。私を実験台にしようって気が、伝わってくる。
 危ない危ない、その手には乗るものか。

「ふふっ、私がそんな手に乗るわけ――」
「ちなみにリバウンド対策もあったりします」
「っ!?」

 ば、馬鹿なっ! ここにきて、さらなる魅力が追加だと!?
 さすがは新聞記者なだけはある。誘いが上手い。だが、それでもこれに乗るわけには――

「今なら胸が大きくなるという噂のマッサージ方法もお付けします」
「やらせてください」

 ぺこりと一礼。
 他人を信じるっていうのも、大切よね、うん。
 そう心の中で呟きつつ、文の口元が妖しく歪んだのがちらりと見えたのは見なかったことにした。きっと気のせい。





 ダイエットその1.運動





「さあ、着替えましたね?」
「着替えたけど……何よこれ?」

 文に渡された服に着替えたは良いが、見慣れない服だ。上は地底の鬼が着ていた、薄くて白いシャツのようなものだっていうことは分かるんだけど。下は淡い青色の短パンだ。普段短パンなんて着ないから、ちょっと隙間がすーすーする。
 確かに動き易そうだけど、着替える必要性はあるのだろうか。

「その服は体操服と言いまして、外の世界だと命の次に必須のアイテムらしいです」
「まぁ別に良いけどさ。というか夜だし、ジョギングとかはしたくないわよ?」
「痩せる運動は他にもたくさんあります。どれが良いですか?」

 文から一枚の紙を渡される。何やら、いくつか項目が書いてあるようだ。

 ・ドッジボール(120分1セット)
 ・空気椅子(120分1セット)
 ・ベッドの上で行う最もポピュラーかつ代表的な運動(時間は人それぞれ)
 ・河童式体操(25分1セット1尻小玉)
 ・ラジオ式体操(10分1セット)

 えっと……いろんな意味でいくつか気になるものが。

「文、質問。ベッドの上で行う運動って?」
「あぁ、それお勧めですよ。とっても楽しいですしね。もちろんベッドじゃなくて、布団の上でも大丈夫です。ただ場合によっては大きな声が出ちゃったり、終わった後結構な疲労感が残ったりしますね」
「そ、そう……。えーと、この場合私とあんたで?」
「そうですねーそうなりますね。本当ならもう少し人数居た方が楽しいんでしょうけど」

 いや、文が嫌ってわけじゃあないけども、それでもいきなりこういうことはちょっとあれだし、これはないな。

「さすがに恥ずかしいから、これはやめておくわ」
「そうですか。確かに、ちょっとこの歳でこれをやるのは恥ずかしいかもしれません」
「え?」
「私も随分やってませんもん、枕投げ」
「…………あぁ、うん、この歳になって枕投げは無いわよね」

 そうそう、枕投げはないわね。子どもじゃあないんだから。
 別に何も考えてないし、何も勘違いなどしてない。私は最初から枕投げだと思っていたわよ、うん。

「って、誰に向かって言いわけしてるんだか私は……」
「どうしました?」
「うっさいくたばれ」
「なんで!?」

 ショック受けてる文は無視して、えーと……どれが良いかしら。体操系が簡単に済みそうだけど、河童式とラジオ式があるのね。
 ん? 河童式のこれはなんだ?

「ねぇ文、河童式の書いてある1尻小玉って?」
「あぁ、なんか体操の途中に尻小玉抜くらしいですよ」
「……ラジオ式体操で」
「りょーかいですっ!」



 その後、ラジオの声に合わせて体操をしてみたけども、やっぱりその程度ですぐ痩せるわけもなかった。
 いやまぁ、なんとなく予想は出来てたけどね。





 ダイエットその2.禁じられたもの





「やはりリスクが低い、普通のやりかたでは速攻で効果が現れるなんてことはないと思うのです。ここはあえて、リスクを冒してみませんか?」
「だからって……禁呪や禁術に手を出してまで痩せたいとは思わないわ」

 たかが数キロのために、そこまでしたいとは思わない。大体禁術などは、割に合わないリスクだったりもするし。
 だけど文は、笑顔で首を横に振る。

「いえいえ、もちろん生命に関わるような危ないことはしません。ここで言う禁術系は、我々天狗が身内で普通に使っているダイエット術だったりします」
「じゃあなんでわざわざ大層に、禁術なんて言ったりするのよ?」

 普通に使えるなら、禁術なんて言わなくても良いのではないだろうか。それになんで最初に、リスクを冒してみようなどと言ってきたのか。
 そう訊ねると、文は少し困ったような表情をした。え? 何その顔?

「いやぁ、これはあくまで天狗内でしか使ったことがない方法なんですよ」
「それがどうしたのよ?」
「霊夢さんは博麗とはいえ、ただの人間です。つまり、このダイエット方法に体がどれだけ耐えられるかどうか未知数なんですよ。なんせ、人間に試したことなんてないですからねぇ」

 あぁ、なるほど。そういうことか。
 確かに体の丈夫さや肉体の回復力などは、妖怪と人間では全く違う。けど、所詮はダイエット方法だ。そんな危険なことはないとは思うのだけど。

「具体的には、どうすれば良いの?」
「えっとですねぇ……まずはサウナへ行き、手始めに体中を縄できつく縛った上で、その状態で数えること軽く五時間――」
「うん、ごめん、それは無理」

 人間と妖怪の差というものをひしひしと感じた。





 ダイエットその3.まず精神から始めよ





「これぞ短時間で効果抜群! ゆえに最後に取っておいた、まさにとっておき!」
「……怪しい匂いしかしないんだけど」

 精神からって……病は気から、と同じような感じがする。
 胡散臭さが尋常じゃない。
 しかし文は、少しこちらを小馬鹿にするような態度で。

「分かってないですねぇ、分かってませんよ霊夢さん」

 非常にウザい。なんだこいつ。
何が分かってないと言うんだ。だって、胡散臭さの塊じゃあないか。

「だって動いても無いのに痩せるわけないじゃない」
「動くことだけが痩せる、なんて思ってはいけません。霊夢さんは侮っているようですが、この方法、かなり汗をかくんですよ?」
「一体何をしろっていうのよ」
「簡単です。霊夢さんの精神を攻めます。それだけです」
「は?」
「精神的ダメージを負って、痩せるというものです。多少精神にダメージを負いますが、肉体的にはダメージがないのでご安心を」

 いやいやいや、意味が分からない。

「では今から私が、霊夢さんの心を軽くぶった斬りますね」
「おい、何する気よ馬鹿」

 手帳をぱらぱらと捲っている文を見ていると、もはや嫌な予感しかしない。

「あ、ありましたありました」
「……何が?」
「いろいろありますよー? 霊夢さんが最後におねしょをしたのはいつだとか、霊夢さんが腋を出すスタイルを流行らせようと密かに計画してるとか、胸は揉めば大きくなるという噂を聞いて密かにこっそり揉んでいるとか――」
「うわーうわーうわー!? なんで知って……ていうか、その手帳を閉じなさいよ馬鹿ぁ!」
「痛い痛い霊夢さん痛いです。あ、ちなみに私が教えてあげる予定だった胸を大きくさせるマッサージ方法は、まさに揉むことなんで。もう教えることは無いです」
「あぁどうせ私の言動は痛いですよーだ! そしてさらっと私が期待してたことを潰したわね!?」
「いえいえ、そっちの意味ではなくて物理的に痛いのですが」

 殴る殴る蹴る蹴る。
 べしべしげしげし。
 あぁもう最悪だ本当最悪だ!

「あんたこんなことして何がしたいのよぉ!」
「でもほら、すぐに汗出るでしょう?」
「やかましいわ!」

 嫌な汗をたっぷりかいた。ちなみに結局、手帳を没収することは不可能だった。






「結局、楽に痩せる方法なんてない。地道な努力こそが、結果に繋がるということですね!」
「本当あんた何しに来たのよ……」

 なんだか文に振り回されて、どっと疲れた。
 文は何が楽しいのか、腹が立つほどに綺麗な笑顔。まぁこいつにとっては、ネタの検証が出来たってところで何も損は無いのだろう。なんか悔しい。

「でも2キロくらい、あっという間に減りますよ。それこそ一日二日で簡単に」
「……まぁ、気楽にやるわ」
「それが一番です。くれぐれも、無理なダイエットはダメですよ? 断食なんて、もってのほかです。霊夢さんは人間で、健康は財産なんですから、体は大事にしてあげてください」
「あーはいはい、分かってば。もうっ、用が済んだならさっさと帰りなさいよ」
「そうですね、思い出される前に帰るとします」
「思い出す?」
「いえいえ、こっちの話です。それでは、私はこの辺で!」
「あ、ちょっと!」

 無駄に幻想郷最速を使って、一瞬で視界から消えた。
 思い出す? はて? 何かあったっけ。
 えーと、うーんと……あ、思い出した!

「結局あいつの撮った写真処分してないじゃない!」

 あぁくそっ、やられた。
 しかし、もうこんな時間からわざわざ山まで行ってとっちめてやるのは面倒だ。かなり恥ずかしい写真ではあるが、明日にでも、もしくは次会ったときにでも夢想天生かましてやれば良いだろう。
 とりあえず今日はもう――

「疲れた……」

 このどたばたで、少しくらい痩せてると良いな。
(◕‿‿◕)<君たち人間はいつもそうだ。ダイエットをするとなったとき、いつも楽な方法を探そうとする。本当に痩せる気があるのかい? 大体1~2kg増減したくらいで一喜一憂するなんて……わけが分からないよ。しかも頑張って痩せたとしても、高確率でリバウンド……どうかしてるよ。
書いてる途中で、ふと某10-1+べぇがそんなことを脳内で囁きました。
最近体重が1キロ増えて、少し嬉しかったりします。軽すぎるので、もうちょっと体重が欲しいところです。せめて50kgは欲しいです。
さて、そんにゃこんにゃではありますが、今回のお話、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。
喉飴でしたー。
喉飴
http://amedamadaisuki.blog20.fc2.com/
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.簡易評価なし
1.無評価奇声を発する程度の能力 削除
面白かったです
2.無評価Rubyness 削除
霊夢が可愛いっ!!
というか文さん、その写真くださ(夢想天生
3.無評価名前が無い程度の能力 削除
ダイエット…ある意味女性には必ずついてまわるネタですね!
こんなところでも人と妖怪の差は生まれてしまうのか…
4.無評価オオガイ 削除
途中何度も笑いました。
面白かったです!
ありがとうございました。
5.無評価名前が無い程度の能力 削除
枕投げ・・・
あぁ、うん、枕投げね!

勘違いを思いっきりしましたw
6.無評価名前が無い程度の能力 削除
霊夢さんのお(ryは新聞を契約したら見れるんですね、わかります!
7.無評価名前が無い程度の能力 削除
見ているほうとしては(無理してやせるよりかはそのままのあなたでいて)と思いますが
当人達にとっては死活問題なんでしょうね…w
ちなみにダイエットをするとまず上のほうの脂肪からなくなるそうなので、
さらに、霊夢の胸が…w
8.無評価唯 削除
枕投げの思わせっぷりは健在www
9.無評価名前が無い程度の能力 削除
私としてはひんにゅーのほうが
おもしろかったです。でも後書きで心が痛いです……
10.無評価喉飴 削除
>>奇声を発する程度の能力様
ありがとうございます。

>>Rubyness様
きっと文さんは誰にも渡さず、個人で楽しむことでしょう(ぇ

>>3様
女性なら誰でも一度は体重を気にする気がしますっ。

>>オオガイ様
楽しんでもらえて何よりです。ありがとうございましたっ。

>>5様
枕投げですよ! 実に健全です、はい。

>>6様
なん……ですと?

>>7様
胸が減って涙目の霊夢さんが頭に浮かびますね!

>>唯様
とても健全です!

>>9様
小さくても全然良いじゃない! ですよね!
11.無評価名前が無い程度の能力 削除
あやちゃんは絶対スタイルいいだろうなあ。