夜、普通に夕飯を食べて、普通にベッドに入ったのに…
「無性にお腹が空く時があるのは何ででしょー?」
こんな時の空腹感はどうにも耐え難いものである。
意識すると眠ることも出来ない。
そうなると、取るべき行動は一つ。
「誰もいませんねー?」
抜き足差し足で、向かう先はチューボーですよー、星いくつ?
「星は帽子に一個ですー」
だれに答えているのかは分からないけど夜食を求めて厨房へ。
つまり盗み食いに!
暗い廊下を灯りも無しに進んでいく。
まあ、妖怪だから暗くても問題無い。
問題があるとしたら、これをメイド長に見つかったら怒られるという事。
食事に関して、瀟洒な紅魔館のメイド長はめちゃくちゃ厳しいのだ。
それでも空腹には勝てない。
幸いに、誰にも見つからずに厨房へとたどり着いた。
しかし、中から既に気配がする。
あっちをゴソゴソ、そっちをガサガサ。
「ふむ」
中の人物を気で特定できた美鈴は、気配を消してその背後にそっと近づいた。
「何かお探しですか、お嬢様?」
「!!!ぬわt…むー?」
「静かに、美鈴です」
とっさに叫ぶ直前の口を塞いだ。
「むーむん?」
「はい」
「むぁぬむんんむお?」
「何しているのって、それはお嬢様と同じ目的ですよ」
「ぬぁんむぬむむ?」
「何のことだなんてー、お腹が空いて何か探しに着たんですよねー」
「……」
「?」
「………」
「お嬢様ー?」
「…………」
「あっ…」
「苦しかった」
「いやー、申し訳ありません」
口と一緒に鼻まで押さえていたためにレミリアは窒息しかけた。
勿論、その程度でどうかなる訳ではないが、とりあえず美鈴はストレートを一発を顔面に喰らった。
「さて、じゃあ何か食べるものを見繕いましょうか?」
「何があるの?」
「そうですね、数が分かるものだとつまみ食いがばれるので、使っても量がごまかせるものに限りますね」
そういうと美鈴は、棚や冷蔵庫(ニトリ印)の中を漁り始めた。
そして取り出したのは数種類のパン、チーズ、ハムなどだった。
「これでサンドイッチでも作りましょうか?」
「いいわね、それ」
それなりの人数がいる紅魔館だ、それらの食材はサイズや種類は揃えてある。
塊から使う分を切り取っていけば誤魔化しも効くだろうとふんだのだ。
「そうだ、ねえ美鈴? 私アレしてみたいのよ」
「アレですか?」
「アレ」
「えー、そんな段階飛ばしすぎてすよ?」
「へ?」
「それにまだ心の準備がー」
「は?」
「でも、お嬢様のお望みなら(キリッ」
「はい? ってちょっと待てー!」
「ぐふっ!」
右フックが決まった…
「何押し倒しているのよ!」
「えっ? だってアレって…」
「アレ?」
「あれ?」
「……」
「……」
「しないわよ! こんなムードも何も無い場所で!」
「すいません! 今度は場所と雰囲気を考えて押し倒します!」
「違うわよ! そんな事言っていないでしょ?!」
「でもそう聞こえ…い、痛いです、スリコギで殴らないで下さいよ、聞こえてませんから!」
○
「騒いだらお腹が空いたわね」
「そうですねー…。それで実際アレって何なんですか?」
「アレよ、こうドーンと積み重なったサンドイッチ」
レミリアが両手を立てに広げてみる。
「ああっ、タワーみたいにドーンとなっているサンドイッチですか?」
「そんなのかしら? 外からの本とかでたまに見るのよねアレ」
「まあ、確かに一度は経験してみたい物ですよねアレは、でもお嬢様食べきれないでしょ?」
「それはそれよ。それに残りはあなたが食べればいいでしょうが?」
「まあ、そうですねー」
美鈴は手を洗うとサクサクと食材を切っていく。
「美鈴、ピーマンは無しよ」
「はいはい、分かってますよ」
「マヨネーズはたっぷりとね」
「咲夜さんが作るほど美味しいかわかりませんけど」
「いいのよ、それに咲夜はこんなサンドイッチ作ってくれないでしょ?」
メイド長の作るサンドイッチは二口ほどで食べられる綺麗で上品なサンドイッチだ。
「偶にはマナー関係なく、ガッっと食べてみたいのよね」
「まあ、それは分かります」
チーズにレタス、ハム、卵、ベーコン、バターにマヨネーズ、粒マスタード。
パンに挟んだ物を乗せて挟んで乗せてを黙々と繰り返す。
勿論バランスが崩れて、倒れるなんて事になっては元も子もないので、具材の並べ方は慎重に。
結果:30センチ以上のただ積まれたサンドイッチが出来た…
「何でかしら、本で見たときはもっと美味しそうに見えたのに…」
「まあ、本というのはそういう風に撮っていますから」
「で、どうやって食べるの?」
「こう、上から取っていくといいですよ」
1つとってレミリアに手渡した。
「…って! 普通のサンドイッチじゃない!」
「まあ、なんとなくこんな感じかなーと勘で作りましたし」
「うー」
「とりあえず、食べましょう」
「いただくわ」
それぞれ愛用のカップにホットミルクを入れてサンドイッチを食べ始める。
「どうですか、お味は?」
「うん、悪くないわね、何というか大雑把な味加減が」
「褒めてます?それ…」
「一応」
「まあ、大雑把に作ったことには違いないですけど」
「あら、この卵サンドのソース…」
「オーロラソースです!」
「マヨネーズとケチャップ混ぜただけじゃない」
「でも美味しいですよ」
「まあ、確かに」
本当のオーロラソースは牛乳、トマト、チーズなどで作られている。
「このオーロラソースにいり卵を混ぜて、ご飯に乗せると美味しいんですよ」
「どんだけC級グルメが好きなのよ」
○
「ご馳走様」
「ご馳走様でしたー」
サンドイッチタワーは二人のお腹に納まった(主に美鈴の)
「こうやってコッソリ作って食べるのも中々面白いわね」
「そうですね、何かドキドキ感があって楽しいです」
(あっ)
ふと美鈴がレミリアに目をやると、口元にソースが付いている。
レミリアにそれを教えようとして、ふと思いついた。
「お嬢様、失礼しますね」
「えっ?」
ぺろ
「ふえっ?」
「うん、美味しいです」
「なななっ何を?」
「いえ、お嬢様の口元にオーロラソースが」
「く、口で言いなさいよ、そんなの!」
顔を赤くして文句を言う。
「だって、それじゃあ勿体無いじゃないですか? 美味しいのに。
あ、でもお嬢様のほうがずっと美味しかったですけどね」
「なっ、何言ってるのよ!」
さらに顔が真っ赤になった。
「出来たらもう少し、戴きたいんですけどね?」
「へっ?」
「だって、クリスマス以来、数えるほどしかありませんし」
「あう」
「ね?」
「ううっ、好きにしなさいよ」
「はい」
照れ屋でツン成分が多いレミリアには、少し図々しいくらいの押しで行かないとなかなか進まないのだ。
『それが可愛いんですよね』
そんな事を思いながら美鈴はレミリアに顔を寄せていった。
パンサンドって喉が渇きそうw
サンドウィッチで思い出すのはとあるゲームにライフ全回復するチート性能のやつがあるんです。
美鈴ならやってくれる筈。
さて、私もサンドイッチを食べようかな。
今吐いた砂糖を挟んで……
しょうがない、紅魔館の冷蔵庫から取ってきた牛乳に今吐いた砂糖入れて温めて飲もう。
美鈴とお嬢様が台所でコソコソしてるのを想像するとなんか微笑ましいですねw
ちっちゃいめーさくもいいけどこれはこれで胸がときめきますなぁ
いや、なにも変わらないかw
でかいのは本当にどうやって食べるのやら…
咲夜さんの目が鋭すぎるwwwwww