幻想の家、マヨヒガ。
魔理沙がその屋敷に寄ったのは単なる暇つぶしだった。
ぽかぽかと暖かい春の陽気に誘われて、普段は行かないような場所まで足を伸ばしてみたついでであった。
だが、魔理沙のその行動は失敗であった。
もっと気を配るべきだったのだ。そこが幾年を経た、狡猾な知識を溜め込んだ大妖怪の棲家であることに。
「藍ー。これ子供殺しといてー」
「親どーします?」
「あー、殺しといた方がいいかしら」
「一回後腐れのないように全滅させから考えた方がいいんじゃないですか?」
「じゃあそーしといて」
魔理沙が漏れ聞いたその会話だけは、彼女を金縛りするのに十分な情報を持っていた。
スキマ妖怪、八雲紫
その式神、八雲藍
普段から宴会で顔を合わしていたし、霊夢と仲睦まじい様子を幾度となく見かけていたから気にしていなかったのだが彼女らも確かに妖怪であった。
妖怪は人を食う。
そんな単純なことをすっかり忘れていたのだ。
二人がこうして気楽に人間を殺そうとする会話を聞くまでは。
「おいおい洒落にならないぜ……」
いくら霊夢と仲がいいからといって彼女たちが人間を食べない理由はない。
確かに宴会では料理を口にしていたし、藍はあぶらあげに執着していたが、彼らも妖怪である以上人を食べたくなるのだろう。
だがここは幻想郷。
妖怪が人間を食べるのは禁じられていたはず。
それも紫自身が中心となってその決まりを作ったのではなかったか?
あまりのことに指先が冷たくなっていくのを感じていた魔理沙の耳に、さらに衝撃的な会話が飛び込んできた。
「こっちはどうします?」
「めくらにしといて。跡が残らないようにきちんと隠してね」
「わかりましたー」
「残りはきちんとハメ殺しといてね」
おそらく紫は人間を不具にして飼っているのだ。不具にするのは逃走防止だろう。
なにせ自分から作った決まりである。破っているのをばれるわけにはいかない。
魔理沙はそう想像して吐きそうなほどの緊張感に襲われた。
これは幻想郷が存続できるかどうかの瀬戸際だ。
すぐに霊夢と相談するべきだ。
紫たちにばれないようにゆっくりとその場を立ち去ろうとした魔理沙の背後から声が聞こえる。
「そこのバカになってる穴もきちんと埋めて塞いでおいてね?前からも後ろからもよ。もしそこから漏れたらどうなるか、
分 か っ て る わ ね ?」
魔理沙は振り返ることができなかった。
脳裏に移るのは紫のくちびる。
そこは弓のように曲げられ、笑みのかたちになっている。
そう。
まるで。
ご馳走を前にしたように。
「あー!だからきちんと埋めとけっていったじゃない!水がもれちゃうー!」
「紫様、いいかげん下手な日曜大工するのやめません?職人入れたほうが早いと思うんですけど」
「いーじゃない好きなんだから」
魔理沙がその屋敷に寄ったのは単なる暇つぶしだった。
ぽかぽかと暖かい春の陽気に誘われて、普段は行かないような場所まで足を伸ばしてみたついでであった。
だが、魔理沙のその行動は失敗であった。
もっと気を配るべきだったのだ。そこが幾年を経た、狡猾な知識を溜め込んだ大妖怪の棲家であることに。
「藍ー。これ子供殺しといてー」
「親どーします?」
「あー、殺しといた方がいいかしら」
「一回後腐れのないように全滅させから考えた方がいいんじゃないですか?」
「じゃあそーしといて」
魔理沙が漏れ聞いたその会話だけは、彼女を金縛りするのに十分な情報を持っていた。
スキマ妖怪、八雲紫
その式神、八雲藍
普段から宴会で顔を合わしていたし、霊夢と仲睦まじい様子を幾度となく見かけていたから気にしていなかったのだが彼女らも確かに妖怪であった。
妖怪は人を食う。
そんな単純なことをすっかり忘れていたのだ。
二人がこうして気楽に人間を殺そうとする会話を聞くまでは。
「おいおい洒落にならないぜ……」
いくら霊夢と仲がいいからといって彼女たちが人間を食べない理由はない。
確かに宴会では料理を口にしていたし、藍はあぶらあげに執着していたが、彼らも妖怪である以上人を食べたくなるのだろう。
だがここは幻想郷。
妖怪が人間を食べるのは禁じられていたはず。
それも紫自身が中心となってその決まりを作ったのではなかったか?
あまりのことに指先が冷たくなっていくのを感じていた魔理沙の耳に、さらに衝撃的な会話が飛び込んできた。
「こっちはどうします?」
「めくらにしといて。跡が残らないようにきちんと隠してね」
「わかりましたー」
「残りはきちんとハメ殺しといてね」
おそらく紫は人間を不具にして飼っているのだ。不具にするのは逃走防止だろう。
なにせ自分から作った決まりである。破っているのをばれるわけにはいかない。
魔理沙はそう想像して吐きそうなほどの緊張感に襲われた。
これは幻想郷が存続できるかどうかの瀬戸際だ。
すぐに霊夢と相談するべきだ。
紫たちにばれないようにゆっくりとその場を立ち去ろうとした魔理沙の背後から声が聞こえる。
「そこのバカになってる穴もきちんと埋めて塞いでおいてね?前からも後ろからもよ。もしそこから漏れたらどうなるか、
分 か っ て る わ ね ?」
魔理沙は振り返ることができなかった。
脳裏に移るのは紫のくちびる。
そこは弓のように曲げられ、笑みのかたちになっている。
そう。
まるで。
ご馳走を前にしたように。
「あー!だからきちんと埋めとけっていったじゃない!水がもれちゃうー!」
「紫様、いいかげん下手な日曜大工するのやめません?職人入れたほうが早いと思うんですけど」
「いーじゃない好きなんだから」
よかったね、霊夢。
勘違いで良かったね!
専門用語ってハメ殺しとかのこと?
子 水または電気の二次側。末端。
殺す 水または電気が配管または電源線を流れないようにすること。
めくら 蓋をする、行き止まりにする。
バカになった穴 広がるなり削れるなりしてネジ、ビス等が掛からなくなったネジ穴のことかな?
ハメ殺しはちょっとわかんないな。採光用の天窓とか高所のガラス窓とか、開けられない、動かせない窓のことをそんなふうに言うから、固定しろってことかも。
殺すとか親とか子とかよくつかうよねw
電気屋さんとかプログラマーとかねw
それぞれの業種で別の意味で同じ言葉使ってるのはやっぱ理解しやすいから?