皆さんこんにちわ、私はパチュリー・ノーレッジ様に使えている小悪魔という者です。さて、本日私が皆様にお話したいのは、パチュリー様とこの館の主人であるレミリア様の妹様、フランドール様のことです。
少し前までは、お二人の仲はそれはもう大変微笑ましいもので、傍で見ていた私も何度となく癒されておりました。滅多に笑わないパチュリー様もフランドール様といる時だけは、とても楽しそうにされていました。ですが最近は……
☆
「パチュリー、本貸して」
図書館の扉を開け、そう言い放った主は一向に中には入ろうとせずに、ただ黙って立っています。いつもならば、本よりもパチュリー様とのお話を優先なさるはずなのにどうしたのだろう、と思わず首を捻ります。そんなに読みたい本があるのでしょうか?しかしそれなら、すぐに入って来るはずです。一向に動かずただ黙って立っているだけの妹様の表情を見てみますと、どこか不機嫌そうなお顔です。
パチュリー様が何かしたのでしょうか?一瞬そんな考えも頭をよぎりますが、すぐに馬鹿な考えだと思い直します。パチュリー様と妹様の普段の様子から、妹様の嫌がることをするイメージには結びつかなかったからです。まぁ、パチュリー様は鈍いお人ですから、そういう意味では簡単に想像できますが。
「……勝手に取れば?」
「中に入りたくない」
「わがままね……小悪魔、持ってってあげて」
パチュリー様に声をかけられて、ようやく私は我に返ることができました。とりあえずパチュリー様に言われた通り、妹様から欲しい本を聞いて探すことにしました。幸い妹様ご所望の本は大した時間をかけずに、見つけ出すことができました。私から本を受け取った妹様は小声で「ありがとう」とおっしゃると、お部屋へと帰って行きました。
さて、これはどういうことでしょう。妹様の様子は前述したように変わっていたのですが、パチュリー様もまたいつもとは違っていました。普段であれば妹様にあんな冷たい態度はとらないはずです。これは本格的に何かあったと考えた方がいいでしょう。
そうした時に一番早く思い浮かんだのが、喧嘩です。お二人とも我が強いため多少のすれ違いでも、加熱してしまうのでは……しかしよく考えてみると、パチュリー様は大きな間違いがない限り、相手の言葉を否定したりしません。お嬢様と会話している時はどこか子供っぽくもありますが、その他の方と話している時はあくまで受動的に相手の話に合わせています。そもそもあのお二人の間にわだかまりがあったようにも思えません。
次に思いつくのが、妹様が誰かに嫉妬なされている場合です。これは以前にも似たようなことがあり、喧嘩よりも可能性は高いはずです。因みに以前はパチュリー様の腕に皹が入ったところで、お嬢様が仲裁なさいました。ですが、最近はどうしたことか、あの薄汚いコソ泥……もとい魔理沙さんも、いい年こいて人形遊びしてる可哀想な金髪……ではなく、アリスさんもいらしてませんので、嫉妬するにしても対象がいません。
これは困りました。いくら考えても、私ではこの謎を解明することはできないようです。こういう時は誰かに相談するのがいいのですが、まさかパチュリー様ご本人にお聞きするのもどうかと思います。
そうなるとお二人のことをよく知っていて、信用に足る人物……一人思いつきました。善は急げと言いますし、早速行ってみましょう。
☆
「で、私のところに来たわけね」
私の話を聞き終えたレミリア様は心底呆れたような溜息を吐き、ガシガシと頭を掻いています。まぁ、多少アホな部分の目立つシスコンロリ吸血鬼ですが、器用貧乏で無愛想な何ちゃってメイドや脳筋の中国娘――何故か今日は言い間違いが多いですね。レミリア様の方が咲夜さんや美鈴さんよりも適任でしょう。パチュリー様の親友で妹様のお姉様なのですから。
「今物凄く侮辱された気がしたのだけれど、私の気のせいかしら?」
「まさか、レミリアお嬢様を侮辱するなど、そんな恐ろしいこと一体誰がしたのでしょう?」
私?嫌だな、変なこと言わないでくださいよ。ご主人様の親友の悪口なんて言うはずないじゃないですか、もし言ってたとしてもそれは何かの聞き間違いです。
「……パチェとフランのことだったら、心配ないわ。多分二人とも、照れてるだけだから」
「は?何ですか、それ?」
私の言葉が終わるか終わらないかのタイミングで、一冊のノートを叩きつけられました。どうでもいいですけど、この近距離でこの速さはないんじゃないでしょうか?鉄板を顔面にくらったみたいなんですけど。別にやっぱりこの人アホだな、とか思ってないですよ?ええ、本当に。
そんな私をどう思ったのか、お嬢様は手で本を捲るような仕草をしました。つまりはこのノートを読んでみろと。一体、私の相談と何の関係があるかは分かりませんが、とりあえず従っておきましょう。
『○月×日
図書館に遊びに行く途中で、いつか見た金髪の人と会った。
何でも遊びに来たのにパチュリーがいなかったかったらしい。
帰って来たら、パチュリーに実験の手伝いをしてくれないか聞いておいてくれと言われたが、誰が聞いてやるもんか!』
『○月□日
今日はパチュリーに怒られた。
あの金髪の伝言を伝えなかったのがばれたみたい。
やっぱり、パチュリーは私よりも他の人の方がいいのかな?』
……私は思わず持っていたノート落としてしまった。この内容から察するに、これはおそらく日記だろう。しかも妹様の。
妹様が日記をつけているのは、別に構わない。だが、何故これがここにあるのか?まさかとは思うが、このシスコン勝手に持ってきたわけじゃないですよね?私の視線の意味に気づいたのか、お嬢様はニヤリと口の端を上げて笑う。
「心配しなくても、オリジナルじゃないわ。フランが図書館に行ってる間に咲夜に頼んで写してもらったコピーよ」
あのメイド、仕事選べよ。
思わず頭を抱えてしまう。ああ、私パチュリー様の従者で本当によかった。もしも初めからこの館の住人だったら、多分心が砕けてた。
そう考えてペラペラと日記を捲っていく。ここまで見た中では、パチュリー様を悪く思っている様子はない。が、何ページか後に書かれていた内容に私は目を丸くする。
日付は……一週間前。そう言えば、妹様の態度が変わったのは確かにこの翌日からだった。日記もここで途切れている。
「……そういうことですか」
パチュリー様も人が悪い。言ってくれれば素直に祝福したし、邪魔にならないようにしたのに。まぁ、これで私の疑問は解決した。ペコリとお嬢様に頭を下げて、その場を後にする。
え?最後の日記の内容?
ふふふ、さて私は記憶力があまりないので……忘れてしまいましたね。
けれど、さして気にすることもないと思いますよ?私は馬に蹴られたくないですし、ね。
少し前までは、お二人の仲はそれはもう大変微笑ましいもので、傍で見ていた私も何度となく癒されておりました。滅多に笑わないパチュリー様もフランドール様といる時だけは、とても楽しそうにされていました。ですが最近は……
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「パチュリー、本貸して」
図書館の扉を開け、そう言い放った主は一向に中には入ろうとせずに、ただ黙って立っています。いつもならば、本よりもパチュリー様とのお話を優先なさるはずなのにどうしたのだろう、と思わず首を捻ります。そんなに読みたい本があるのでしょうか?しかしそれなら、すぐに入って来るはずです。一向に動かずただ黙って立っているだけの妹様の表情を見てみますと、どこか不機嫌そうなお顔です。
パチュリー様が何かしたのでしょうか?一瞬そんな考えも頭をよぎりますが、すぐに馬鹿な考えだと思い直します。パチュリー様と妹様の普段の様子から、妹様の嫌がることをするイメージには結びつかなかったからです。まぁ、パチュリー様は鈍いお人ですから、そういう意味では簡単に想像できますが。
「……勝手に取れば?」
「中に入りたくない」
「わがままね……小悪魔、持ってってあげて」
パチュリー様に声をかけられて、ようやく私は我に返ることができました。とりあえずパチュリー様に言われた通り、妹様から欲しい本を聞いて探すことにしました。幸い妹様ご所望の本は大した時間をかけずに、見つけ出すことができました。私から本を受け取った妹様は小声で「ありがとう」とおっしゃると、お部屋へと帰って行きました。
さて、これはどういうことでしょう。妹様の様子は前述したように変わっていたのですが、パチュリー様もまたいつもとは違っていました。普段であれば妹様にあんな冷たい態度はとらないはずです。これは本格的に何かあったと考えた方がいいでしょう。
そうした時に一番早く思い浮かんだのが、喧嘩です。お二人とも我が強いため多少のすれ違いでも、加熱してしまうのでは……しかしよく考えてみると、パチュリー様は大きな間違いがない限り、相手の言葉を否定したりしません。お嬢様と会話している時はどこか子供っぽくもありますが、その他の方と話している時はあくまで受動的に相手の話に合わせています。そもそもあのお二人の間にわだかまりがあったようにも思えません。
次に思いつくのが、妹様が誰かに嫉妬なされている場合です。これは以前にも似たようなことがあり、喧嘩よりも可能性は高いはずです。因みに以前はパチュリー様の腕に皹が入ったところで、お嬢様が仲裁なさいました。ですが、最近はどうしたことか、あの薄汚いコソ泥……もとい魔理沙さんも、いい年こいて人形遊びしてる可哀想な金髪……ではなく、アリスさんもいらしてませんので、嫉妬するにしても対象がいません。
これは困りました。いくら考えても、私ではこの謎を解明することはできないようです。こういう時は誰かに相談するのがいいのですが、まさかパチュリー様ご本人にお聞きするのもどうかと思います。
そうなるとお二人のことをよく知っていて、信用に足る人物……一人思いつきました。善は急げと言いますし、早速行ってみましょう。
☆
「で、私のところに来たわけね」
私の話を聞き終えたレミリア様は心底呆れたような溜息を吐き、ガシガシと頭を掻いています。まぁ、多少アホな部分の目立つシスコンロリ吸血鬼ですが、器用貧乏で無愛想な何ちゃってメイドや脳筋の中国娘――何故か今日は言い間違いが多いですね。レミリア様の方が咲夜さんや美鈴さんよりも適任でしょう。パチュリー様の親友で妹様のお姉様なのですから。
「今物凄く侮辱された気がしたのだけれど、私の気のせいかしら?」
「まさか、レミリアお嬢様を侮辱するなど、そんな恐ろしいこと一体誰がしたのでしょう?」
私?嫌だな、変なこと言わないでくださいよ。ご主人様の親友の悪口なんて言うはずないじゃないですか、もし言ってたとしてもそれは何かの聞き間違いです。
「……パチェとフランのことだったら、心配ないわ。多分二人とも、照れてるだけだから」
「は?何ですか、それ?」
私の言葉が終わるか終わらないかのタイミングで、一冊のノートを叩きつけられました。どうでもいいですけど、この近距離でこの速さはないんじゃないでしょうか?鉄板を顔面にくらったみたいなんですけど。別にやっぱりこの人アホだな、とか思ってないですよ?ええ、本当に。
そんな私をどう思ったのか、お嬢様は手で本を捲るような仕草をしました。つまりはこのノートを読んでみろと。一体、私の相談と何の関係があるかは分かりませんが、とりあえず従っておきましょう。
『○月×日
図書館に遊びに行く途中で、いつか見た金髪の人と会った。
何でも遊びに来たのにパチュリーがいなかったかったらしい。
帰って来たら、パチュリーに実験の手伝いをしてくれないか聞いておいてくれと言われたが、誰が聞いてやるもんか!』
『○月□日
今日はパチュリーに怒られた。
あの金髪の伝言を伝えなかったのがばれたみたい。
やっぱり、パチュリーは私よりも他の人の方がいいのかな?』
……私は思わず持っていたノート落としてしまった。この内容から察するに、これはおそらく日記だろう。しかも妹様の。
妹様が日記をつけているのは、別に構わない。だが、何故これがここにあるのか?まさかとは思うが、このシスコン勝手に持ってきたわけじゃないですよね?私の視線の意味に気づいたのか、お嬢様はニヤリと口の端を上げて笑う。
「心配しなくても、オリジナルじゃないわ。フランが図書館に行ってる間に咲夜に頼んで写してもらったコピーよ」
あのメイド、仕事選べよ。
思わず頭を抱えてしまう。ああ、私パチュリー様の従者で本当によかった。もしも初めからこの館の住人だったら、多分心が砕けてた。
そう考えてペラペラと日記を捲っていく。ここまで見た中では、パチュリー様を悪く思っている様子はない。が、何ページか後に書かれていた内容に私は目を丸くする。
日付は……一週間前。そう言えば、妹様の態度が変わったのは確かにこの翌日からだった。日記もここで途切れている。
「……そういうことですか」
パチュリー様も人が悪い。言ってくれれば素直に祝福したし、邪魔にならないようにしたのに。まぁ、これで私の疑問は解決した。ペコリとお嬢様に頭を下げて、その場を後にする。
え?最後の日記の内容?
ふふふ、さて私は記憶力があまりないので……忘れてしまいましたね。
けれど、さして気にすることもないと思いますよ?私は馬に蹴られたくないですし、ね。
誰か読解力を俺にください、或いは説明してください
えっと……今回は直接的じゃなくて、間接的なフラパチェを書こうとしてこんな感じになりました。最後の小悪魔のセリフは「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえ」という格言からです。言いふらして、怒られたくないってことですね。
分かり難くて申し訳ありません。
ぱっちぇさんも素直じゃないなぁ。
毒舌小悪魔ェ…
ぱっちぇさんとフランには優しいけれど、
他のキャラは嫌いな設定なんでしょうか?
小悪魔が仰ってるような「微笑ましい」風景を最初に書いておいて、
その後に(文章にあるような)「よそよそしい」風景を置いた方が
更に映えるかもと思ったり。
僕の中の小悪魔さんの設定は大体それであってます。
やはり悪魔ですから、少しくらい毒を吐いた方がいいかと思いまして。
おお、確かにそっちの方がいい感じがします。実力不足で申し訳ありませんorz
アドバイス、ありがとうございます。