ひとりで長く生きてどうすんのかしらね。女なんて
宴会が終わりが近づき、弛緩した場にゆだねて畳に転がる者が増えた。
宵の明けぬ空気だろうか、夢心地と郷愁の入り混じった神社の雰囲気だろうか、ふと、こんな話がしたくなった。
なに、乙女だてら、未来のことに、思いを馳せることがある。そんな年齢、そんな夜だった。
「めずらしいな。大概お前はこういうことに興味がない風だが、そんな話を切り出すなんて」
声をかけられた魔法使いはごろんとした目で、こちらに応えた。
先のことなんかわからないんだから。意味なんかないわよ。なんとなくね。
魔女は興味半分、ニヤリと笑う。
見上げた月の真下に、金髪の魔法使いはいた。神社の縁側だ。
その隣に、ストンと、腰を降ろす。
「最初は咲夜じゃないかねえ。なんといってもレミリアがいるもの」
見知った魔法使いにこう言った。
「いくら愛し合ってるからって……いや、愛し合ってるからこそか」
ええ。だと思う
軽く目をつむって二人の未来を想像してみる。
うん、妥当だ。きっとそうだろう。
「そうだな。私らの中じゃ年かさもいっとう高いし。あとは、二人の意思しだいだな…ただ」
ただ?
「あいつは能力が反則だからなあ」
うん。
「時を操る程度の能力だっけ。使って長引かせそうだ。ズルイよな」
それはどうだろうか。
「でも普段あれだけ嘯いてるんだもの。やっぱり一番な気がする」
遠くで、名前を呼ばれた咲夜がチラとこちらを見た。
その隣には、酒をあおって眠る吸血鬼がいた。まるで夫婦のように寄り添っていた。
「お前にそうと言われれば、そういう気がするから不思議だ。巫女の発言ってのは、根拠がないのに、信用に足るんだから困る」
魔法使いは腕を組んでゴロリとした目をこちらにやって、やるかたなくなった。
「そういえば、その館の近くの氷精はどうだ」
「あれは欄外じゃない?」
「そもそもそういう概念があるのか?あいつら」
それは妖怪全般にも言えることだと思う。
それでも最終的なところを考えると、きっと紫くらいにはなるんじゃないかな。
意外ね。
「霊夢はどうなんだ?」
「どうなんだって何がよ」
「私はだな、案外お前は普通の人生を歩むと思っている。巫女なんてうら若き乙女しかできないどスケベなしごとだからな」
「よぼよぼ婆さんの魔法使いに言われたくないわね。そうね、その後のことなんて考えてないけど」
「だろ」
「しるかい」
「仙人にでもなりたいのか?そうじゃないなら、次はお前だろう」
「それはまあ、かもしれないけど」
「だから普通に巫女をやめて、普通に結婚して、子供を生むんだ。んで普通に死ぬんだ」
「ちょっと、勝手に決め付けないでよ。そういうアンタはどうなのよ」
「わたしはその次か、お前と一緒がいいや」
「やめてよ気持ち悪い」
きっと、魔理沙は魔理沙しだいね。
「なになに、何の話ですか」
部屋の隅から起きた早苗がおぼつかない足取りで向かって来た。
頬がほの赤く染まっている。ちょっと、酔っている。
「決まってるだろ。花も恥らう乙女の会話で」
決まってはいないけど。
「同僚の乙女に順番つけてるっていったら」
魔法使いはちょっとうつむいて、間が空いた。
「結婚できる順番」
「そう、それ」
早苗はスッと隣に座った。
「そうなんですか?」
「ええ」
そうそう。
「早苗は意外と遅いと思うのよ」
「え、なんでですか!?」
なんでってそりゃ。
親切な魔法使いが代わりに答えてくれた。
「現人神さまにゃうるさい小姑が二人もついてるだろ。しばらくはどこにも往かせてくれない」
「そんなぁ」
「覚悟しとくんだな」
早苗は落胆した。
「結婚したかったの?」
「そういうわけじゃないですけど」
ならいいじゃない。
「その二人だけど」
「ああ、あいつら。あいつらは絶対ムリ」
「ここ一万年は無理だな。幻想郷に越してきてこっち、ますます身持ちが堅くなった。そんなことがあるのは幻想郷が滅ぶときだろうよ」
「し、しつれいですよ、お二人とも!だいいち、諏訪子さまは既婚です!」
「そうだっけ」
さなえー。
遠くから風祝を呼ぶ神の声がした。
しゃくをしておくれー。
「はーい!いま参ります」
よろよろと、早苗は席をはずした。
「妖夢は」
「ん?」
「幽々子がさびしがるな」
「うん」
「でもぜったいその後も一緒に暮らすだろう」
「そういえばそうね」
「かえって陽気になって騒がしくなるくらいかもしれん」
あとのまとわりついてる小妖怪どもはみんな同じくらいかな。
リグルだけはちょっと早いに違いない。
虫だからね。
はは、違いない違いない。
「ほら、珍しいところだと。なんて言ったっけ、あの地震の異変で」
魔法使いは天井を仰いだ。
「永江衣玖。彼女は相当遅いんじゃないかとにらんでる」
「え、なんでよ。もう大人っぽいというか、もう大人だから?」
「雰囲気はな。失礼だな、霊夢は。じゅうぶん少女で通用するぜ。でも下手したら、紫より遅れるんじゃないかと思ってる。だってほら、あいつはあの妖怪だろ」
「魚?」
「うん。それもそうだけど」
「顔がきもい深海魚だから?」
「そんなことは言ってないだろ、ひどいやつだな」
リュウグウノツカイ。
「……ああ」
そうね確かに、リュウグウノツカイだし。
きっと独りで勝手に何千年も雲を漂ってるそうね。
そういう生き物だもの。
「永遠亭の連中は最悪だな。よく退屈しないと思うよ」
私も思う。
「女同士でお熱なんて冗談。妹紅ともずっと飽きなく殺しあってる」
壮大な話ね。
「殺し合いが終わるころにゃ、幻想郷なんてどうなってるかね。やれやれ」
どうせ蓬莱の薬を使うなら、夫婦で使えばよかったのにね。
「あの、結婚の話ですよね」
「うん、そうだ」
「そうそう」
いつ戻ってきたのか、早苗がいた。
その後ろ側には話題の蓬莱人どもがいて、ひとまとまりに和やかな会話をしている。
「あ」
早苗は声をあげた。
「彼岸の裁判長さんなんて、どうなんでしょう」
「あれ、早苗って閻魔に会ったことあったっけ」
「お相手がいらっしゃるんですかね!」
「いや聞けよ」
「先ほどあちらの席でお話させていただきました」
「ほんとだ」
部屋の中央付近。説法が始まってる。
「非常に、なんていうか、お堅い方でしたから」
早苗の視線はうらみがましい。
捕まったのね。
「確かに早苗の言う通り。遅そうねえ」
「そうだな。小町も映姫ほどかは分からんけど遅いだろう」
「ですよね!」
「そうだ、喜べ早苗。堅いもお堅い。お前の二柱を追い越して、この世界で売れ残りそうなほとんど唯一のやつだぞ」
「紫やあんたのとこの神様は幻想郷が滅ぶくらいの頃だろうけど、彼岸の裁判長なんて世界全部が滅ぶ頃よ」
「…そ、そこまで言ってませんよ」
案外、映姫を見取る相手は弥勒菩薩かもしれない。
「私的にはな」
魔法使いは言う。
「まず、咲夜だ。あれでいっとう人間らしい営みにこだわりがある。
次は霊夢。巫女の役を終えたらすぐにでも里にとけ込む。そしたら次は魔理沙様だ。
そのあとの妖怪どもは割と並列だ。といっても数百、数千年の間だがな。賞味期限がないってのは羨ましい限りだ。
んで、天人、神様、彼岸の順。あ、永遠亭もな。」
ずいぶん率直な意見ね。
「もちろん、きっかけはちょっとした事故なんてのもあるし、本人の意思もあるだろう」
そうかな?
人差し指を立てて、魔法使いは教授した。
額面通りに物事が進めばこうなるんだという。いかにも彼女らしい豪胆な考えだった。
まるで、賞味期限の食品を、書いてある最後の当日までは大丈夫。
カレンダーの最後の日が来たら、きっちり夜の十二時に破いて次に進むような、そんな。
「私は」
私はちょっと違う。
みんな、生きてるんだからさ。
霊夢は言う。
「わたしはさ、体はどうだか知らないけど、心がきっともたないわよ。そう思う」
「うん?」
「そりゃみんな、頑丈かもしれないけど」
「なんだよ」
「特に妹紅なんて、きっと、案外早いんじゃないかな」
「そうか?」
どうやってかなんて知らないわよ。
でも、きっともう自我なんてなくなって、意味すらなくなってるしまうんじゃないか。
「どれだけ後か知らないけどね」
「本人にはずいぶんと余計なお世話だな」
そうね。
「どんなに強そうな妖怪でも、独り身はきっとさびしいですからね!」
そういうことじゃない。
いや、そういうことなのかな。
霊夢は遠くの月を見て自分のそのときを想像した。
私はそのとき、しあわせです、と言えるのだろうか。
「で、ほんとのところはどうなのよ紫」
ぐちゃぐちゃした狭間から白い腕が生えた。一升瓶が突き出た。
頭が生えて胴が生えて、上半身が空中の何かに腰掛けた。
「貴方たち、面白そうな話をしているわね」
ドロリと、濁った瞳に射抜かれた。
赤い口が三日月に裂ける。
「お教えしていいのかしら」
魔理沙は怯えた。
「やめておくぜ」
やめとこ。知ってもどうしようもないし。
「でしょうねぇ。その方が無難ですわ」
紫は一度、亀裂の笑みを浮かべた。
「でも残念。これを教えた時の、人間の顔って愉快で大好きなの」
紫はときどきぞっとさせる。
「はい、ぜひ教えてください!」
魔理沙は身震いした。
「いつの日か落ちるとは知らないから鳥は飛べるものよ。知らない方がいい。知ればかえって最期を早めるものですわ」
「結婚は人生の墓場と言いますもんね、わたしは反対派ですけど!」
紫は頭を捻らせて。
「ただ、そうね。実際のところ……
宴会が終わりが近づき、弛緩した場にゆだねて畳に転がる者が増えた。
宵の明けぬ空気だろうか、夢心地と郷愁の入り混じった神社の雰囲気だろうか、ふと、こんな話がしたくなった。
なに、乙女だてら、未来のことに、思いを馳せることがある。そんな年齢、そんな夜だった。
「めずらしいな。大概お前はこういうことに興味がない風だが、そんな話を切り出すなんて」
声をかけられた魔法使いはごろんとした目で、こちらに応えた。
先のことなんかわからないんだから。意味なんかないわよ。なんとなくね。
魔女は興味半分、ニヤリと笑う。
見上げた月の真下に、金髪の魔法使いはいた。神社の縁側だ。
その隣に、ストンと、腰を降ろす。
「最初は咲夜じゃないかねえ。なんといってもレミリアがいるもの」
見知った魔法使いにこう言った。
「いくら愛し合ってるからって……いや、愛し合ってるからこそか」
ええ。だと思う
軽く目をつむって二人の未来を想像してみる。
うん、妥当だ。きっとそうだろう。
「そうだな。私らの中じゃ年かさもいっとう高いし。あとは、二人の意思しだいだな…ただ」
ただ?
「あいつは能力が反則だからなあ」
うん。
「時を操る程度の能力だっけ。使って長引かせそうだ。ズルイよな」
それはどうだろうか。
「でも普段あれだけ嘯いてるんだもの。やっぱり一番な気がする」
遠くで、名前を呼ばれた咲夜がチラとこちらを見た。
その隣には、酒をあおって眠る吸血鬼がいた。まるで夫婦のように寄り添っていた。
「お前にそうと言われれば、そういう気がするから不思議だ。巫女の発言ってのは、根拠がないのに、信用に足るんだから困る」
魔法使いは腕を組んでゴロリとした目をこちらにやって、やるかたなくなった。
「そういえば、その館の近くの氷精はどうだ」
「あれは欄外じゃない?」
「そもそもそういう概念があるのか?あいつら」
それは妖怪全般にも言えることだと思う。
それでも最終的なところを考えると、きっと紫くらいにはなるんじゃないかな。
意外ね。
「霊夢はどうなんだ?」
「どうなんだって何がよ」
「私はだな、案外お前は普通の人生を歩むと思っている。巫女なんてうら若き乙女しかできないどスケベなしごとだからな」
「よぼよぼ婆さんの魔法使いに言われたくないわね。そうね、その後のことなんて考えてないけど」
「だろ」
「しるかい」
「仙人にでもなりたいのか?そうじゃないなら、次はお前だろう」
「それはまあ、かもしれないけど」
「だから普通に巫女をやめて、普通に結婚して、子供を生むんだ。んで普通に死ぬんだ」
「ちょっと、勝手に決め付けないでよ。そういうアンタはどうなのよ」
「わたしはその次か、お前と一緒がいいや」
「やめてよ気持ち悪い」
きっと、魔理沙は魔理沙しだいね。
「なになに、何の話ですか」
部屋の隅から起きた早苗がおぼつかない足取りで向かって来た。
頬がほの赤く染まっている。ちょっと、酔っている。
「決まってるだろ。花も恥らう乙女の会話で」
決まってはいないけど。
「同僚の乙女に順番つけてるっていったら」
魔法使いはちょっとうつむいて、間が空いた。
「結婚できる順番」
「そう、それ」
早苗はスッと隣に座った。
「そうなんですか?」
「ええ」
そうそう。
「早苗は意外と遅いと思うのよ」
「え、なんでですか!?」
なんでってそりゃ。
親切な魔法使いが代わりに答えてくれた。
「現人神さまにゃうるさい小姑が二人もついてるだろ。しばらくはどこにも往かせてくれない」
「そんなぁ」
「覚悟しとくんだな」
早苗は落胆した。
「結婚したかったの?」
「そういうわけじゃないですけど」
ならいいじゃない。
「その二人だけど」
「ああ、あいつら。あいつらは絶対ムリ」
「ここ一万年は無理だな。幻想郷に越してきてこっち、ますます身持ちが堅くなった。そんなことがあるのは幻想郷が滅ぶときだろうよ」
「し、しつれいですよ、お二人とも!だいいち、諏訪子さまは既婚です!」
「そうだっけ」
さなえー。
遠くから風祝を呼ぶ神の声がした。
しゃくをしておくれー。
「はーい!いま参ります」
よろよろと、早苗は席をはずした。
「妖夢は」
「ん?」
「幽々子がさびしがるな」
「うん」
「でもぜったいその後も一緒に暮らすだろう」
「そういえばそうね」
「かえって陽気になって騒がしくなるくらいかもしれん」
あとのまとわりついてる小妖怪どもはみんな同じくらいかな。
リグルだけはちょっと早いに違いない。
虫だからね。
はは、違いない違いない。
「ほら、珍しいところだと。なんて言ったっけ、あの地震の異変で」
魔法使いは天井を仰いだ。
「永江衣玖。彼女は相当遅いんじゃないかとにらんでる」
「え、なんでよ。もう大人っぽいというか、もう大人だから?」
「雰囲気はな。失礼だな、霊夢は。じゅうぶん少女で通用するぜ。でも下手したら、紫より遅れるんじゃないかと思ってる。だってほら、あいつはあの妖怪だろ」
「魚?」
「うん。それもそうだけど」
「顔がきもい深海魚だから?」
「そんなことは言ってないだろ、ひどいやつだな」
リュウグウノツカイ。
「……ああ」
そうね確かに、リュウグウノツカイだし。
きっと独りで勝手に何千年も雲を漂ってるそうね。
そういう生き物だもの。
「永遠亭の連中は最悪だな。よく退屈しないと思うよ」
私も思う。
「女同士でお熱なんて冗談。妹紅ともずっと飽きなく殺しあってる」
壮大な話ね。
「殺し合いが終わるころにゃ、幻想郷なんてどうなってるかね。やれやれ」
どうせ蓬莱の薬を使うなら、夫婦で使えばよかったのにね。
「あの、結婚の話ですよね」
「うん、そうだ」
「そうそう」
いつ戻ってきたのか、早苗がいた。
その後ろ側には話題の蓬莱人どもがいて、ひとまとまりに和やかな会話をしている。
「あ」
早苗は声をあげた。
「彼岸の裁判長さんなんて、どうなんでしょう」
「あれ、早苗って閻魔に会ったことあったっけ」
「お相手がいらっしゃるんですかね!」
「いや聞けよ」
「先ほどあちらの席でお話させていただきました」
「ほんとだ」
部屋の中央付近。説法が始まってる。
「非常に、なんていうか、お堅い方でしたから」
早苗の視線はうらみがましい。
捕まったのね。
「確かに早苗の言う通り。遅そうねえ」
「そうだな。小町も映姫ほどかは分からんけど遅いだろう」
「ですよね!」
「そうだ、喜べ早苗。堅いもお堅い。お前の二柱を追い越して、この世界で売れ残りそうなほとんど唯一のやつだぞ」
「紫やあんたのとこの神様は幻想郷が滅ぶくらいの頃だろうけど、彼岸の裁判長なんて世界全部が滅ぶ頃よ」
「…そ、そこまで言ってませんよ」
案外、映姫を見取る相手は弥勒菩薩かもしれない。
「私的にはな」
魔法使いは言う。
「まず、咲夜だ。あれでいっとう人間らしい営みにこだわりがある。
次は霊夢。巫女の役を終えたらすぐにでも里にとけ込む。そしたら次は魔理沙様だ。
そのあとの妖怪どもは割と並列だ。といっても数百、数千年の間だがな。賞味期限がないってのは羨ましい限りだ。
んで、天人、神様、彼岸の順。あ、永遠亭もな。」
ずいぶん率直な意見ね。
「もちろん、きっかけはちょっとした事故なんてのもあるし、本人の意思もあるだろう」
そうかな?
人差し指を立てて、魔法使いは教授した。
額面通りに物事が進めばこうなるんだという。いかにも彼女らしい豪胆な考えだった。
まるで、賞味期限の食品を、書いてある最後の当日までは大丈夫。
カレンダーの最後の日が来たら、きっちり夜の十二時に破いて次に進むような、そんな。
「私は」
私はちょっと違う。
みんな、生きてるんだからさ。
霊夢は言う。
「わたしはさ、体はどうだか知らないけど、心がきっともたないわよ。そう思う」
「うん?」
「そりゃみんな、頑丈かもしれないけど」
「なんだよ」
「特に妹紅なんて、きっと、案外早いんじゃないかな」
「そうか?」
どうやってかなんて知らないわよ。
でも、きっともう自我なんてなくなって、意味すらなくなってるしまうんじゃないか。
「どれだけ後か知らないけどね」
「本人にはずいぶんと余計なお世話だな」
そうね。
「どんなに強そうな妖怪でも、独り身はきっとさびしいですからね!」
そういうことじゃない。
いや、そういうことなのかな。
霊夢は遠くの月を見て自分のそのときを想像した。
私はそのとき、しあわせです、と言えるのだろうか。
「で、ほんとのところはどうなのよ紫」
ぐちゃぐちゃした狭間から白い腕が生えた。一升瓶が突き出た。
頭が生えて胴が生えて、上半身が空中の何かに腰掛けた。
「貴方たち、面白そうな話をしているわね」
ドロリと、濁った瞳に射抜かれた。
赤い口が三日月に裂ける。
「お教えしていいのかしら」
魔理沙は怯えた。
「やめておくぜ」
やめとこ。知ってもどうしようもないし。
「でしょうねぇ。その方が無難ですわ」
紫は一度、亀裂の笑みを浮かべた。
「でも残念。これを教えた時の、人間の顔って愉快で大好きなの」
紫はときどきぞっとさせる。
「はい、ぜひ教えてください!」
魔理沙は身震いした。
「いつの日か落ちるとは知らないから鳥は飛べるものよ。知らない方がいい。知ればかえって最期を早めるものですわ」
「結婚は人生の墓場と言いますもんね、わたしは反対派ですけど!」
紫は頭を捻らせて。
「ただ、そうね。実際のところ……
まあ、数字にするのは無粋ってもんだ。
そしてこの面子の中でも何故にランクインしたんだリグル…
そして一億年じゃ弥勒は出てこないんだぜ
人間よりちょっと長い程度だっけ
レミィとフランちゃんはあと数百年な気がするぜ