Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

身持ちの堅い女は長生きするらしいぞ

2011/03/29 18:26:28
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 ひとりで長く生きてどうすんのかしらね。女なんて




宴会が終わりが近づき、弛緩した場にゆだねて畳に転がる者が増えた。
宵の明けぬ空気だろうか、夢心地と郷愁の入り混じった神社の雰囲気だろうか、ふと、こんな話がしたくなった。
なに、乙女だてら、未来のことに、思いを馳せることがある。そんな年齢、そんな夜だった。



「めずらしいな。大概お前はこういうことに興味がない風だが、そんな話を切り出すなんて」


声をかけられた魔法使いはごろんとした目で、こちらに応えた。



 先のことなんかわからないんだから。意味なんかないわよ。なんとなくね。



魔女は興味半分、ニヤリと笑う。
見上げた月の真下に、金髪の魔法使いはいた。神社の縁側だ。
その隣に、ストンと、腰を降ろす。





「最初は咲夜じゃないかねえ。なんといってもレミリアがいるもの」


見知った魔法使いにこう言った。


「いくら愛し合ってるからって……いや、愛し合ってるからこそか」

 ええ。だと思う

軽く目をつむって二人の未来を想像してみる。
うん、妥当だ。きっとそうだろう。


「そうだな。私らの中じゃ年かさもいっとう高いし。あとは、二人の意思しだいだな…ただ」

 ただ?

「あいつは能力が反則だからなあ」

 うん。

「時を操る程度の能力だっけ。使って長引かせそうだ。ズルイよな」


それはどうだろうか。


「でも普段あれだけ嘯いてるんだもの。やっぱり一番な気がする」


遠くで、名前を呼ばれた咲夜がチラとこちらを見た。
その隣には、酒をあおって眠る吸血鬼がいた。まるで夫婦のように寄り添っていた。

「お前にそうと言われれば、そういう気がするから不思議だ。巫女の発言ってのは、根拠がないのに、信用に足るんだから困る」

魔法使いは腕を組んでゴロリとした目をこちらにやって、やるかたなくなった。



「そういえば、その館の近くの氷精はどうだ」

「あれは欄外じゃない?」

「そもそもそういう概念があるのか?あいつら」

それは妖怪全般にも言えることだと思う。
それでも最終的なところを考えると、きっと紫くらいにはなるんじゃないかな。

 意外ね。

「霊夢はどうなんだ?」

「どうなんだって何がよ」

「私はだな、案外お前は普通の人生を歩むと思っている。巫女なんてうら若き乙女しかできないどスケベなしごとだからな」

「よぼよぼ婆さんの魔法使いに言われたくないわね。そうね、その後のことなんて考えてないけど」

「だろ」

「しるかい」

「仙人にでもなりたいのか?そうじゃないなら、次はお前だろう」

「それはまあ、かもしれないけど」

「だから普通に巫女をやめて、普通に結婚して、子供を生むんだ。んで普通に死ぬんだ」

「ちょっと、勝手に決め付けないでよ。そういうアンタはどうなのよ」

「わたしはその次か、お前と一緒がいいや」

「やめてよ気持ち悪い」


 きっと、魔理沙は魔理沙しだいね。


「なになに、何の話ですか」


部屋の隅から起きた早苗がおぼつかない足取りで向かって来た。
頬がほの赤く染まっている。ちょっと、酔っている。

「決まってるだろ。花も恥らう乙女の会話で」

 決まってはいないけど。

「同僚の乙女に順番つけてるっていったら」

魔法使いはちょっとうつむいて、間が空いた。

「結婚できる順番」
「そう、それ」

早苗はスッと隣に座った。

「そうなんですか?」
「ええ」

 そうそう。

「早苗は意外と遅いと思うのよ」
「え、なんでですか!?」

 なんでってそりゃ。

親切な魔法使いが代わりに答えてくれた。


「現人神さまにゃうるさい小姑が二人もついてるだろ。しばらくはどこにも往かせてくれない」
「そんなぁ」
「覚悟しとくんだな」

早苗は落胆した。

「結婚したかったの?」

「そういうわけじゃないですけど」

 ならいいじゃない。

「その二人だけど」
「ああ、あいつら。あいつらは絶対ムリ」
「ここ一万年は無理だな。幻想郷に越してきてこっち、ますます身持ちが堅くなった。そんなことがあるのは幻想郷が滅ぶときだろうよ」
「し、しつれいですよ、お二人とも!だいいち、諏訪子さまは既婚です!」
「そうだっけ」


さなえー。
遠くから風祝を呼ぶ神の声がした。
しゃくをしておくれー。

「はーい!いま参ります」

よろよろと、早苗は席をはずした。

「妖夢は」
「ん?」
「幽々子がさびしがるな」
「うん」
「でもぜったいその後も一緒に暮らすだろう」
「そういえばそうね」
「かえって陽気になって騒がしくなるくらいかもしれん」

 あとのまとわりついてる小妖怪どもはみんな同じくらいかな。
 リグルだけはちょっと早いに違いない。
 虫だからね。
 はは、違いない違いない。


「ほら、珍しいところだと。なんて言ったっけ、あの地震の異変で」

魔法使いは天井を仰いだ。

「永江衣玖。彼女は相当遅いんじゃないかとにらんでる」
「え、なんでよ。もう大人っぽいというか、もう大人だから?」
「雰囲気はな。失礼だな、霊夢は。じゅうぶん少女で通用するぜ。でも下手したら、紫より遅れるんじゃないかと思ってる。だってほら、あいつはあの妖怪だろ」
「魚?」
「うん。それもそうだけど」
「顔がきもい深海魚だから?」
「そんなことは言ってないだろ、ひどいやつだな」

 リュウグウノツカイ。

「……ああ」

 そうね確かに、リュウグウノツカイだし。
 きっと独りで勝手に何千年も雲を漂ってるそうね。
 そういう生き物だもの。


「永遠亭の連中は最悪だな。よく退屈しないと思うよ」

 私も思う。

「女同士でお熱なんて冗談。妹紅ともずっと飽きなく殺しあってる」

 壮大な話ね。

「殺し合いが終わるころにゃ、幻想郷なんてどうなってるかね。やれやれ」

 どうせ蓬莱の薬を使うなら、夫婦で使えばよかったのにね。


「あの、結婚の話ですよね」

「うん、そうだ」
「そうそう」

いつ戻ってきたのか、早苗がいた。
その後ろ側には話題の蓬莱人どもがいて、ひとまとまりに和やかな会話をしている。

「あ」

早苗は声をあげた。

「彼岸の裁判長さんなんて、どうなんでしょう」
「あれ、早苗って閻魔に会ったことあったっけ」
「お相手がいらっしゃるんですかね!」
「いや聞けよ」
「先ほどあちらの席でお話させていただきました」
「ほんとだ」

部屋の中央付近。説法が始まってる。

「非常に、なんていうか、お堅い方でしたから」

早苗の視線はうらみがましい。
捕まったのね。

「確かに早苗の言う通り。遅そうねえ」
「そうだな。小町も映姫ほどかは分からんけど遅いだろう」
「ですよね!」
「そうだ、喜べ早苗。堅いもお堅い。お前の二柱を追い越して、この世界で売れ残りそうなほとんど唯一のやつだぞ」
「紫やあんたのとこの神様は幻想郷が滅ぶくらいの頃だろうけど、彼岸の裁判長なんて世界全部が滅ぶ頃よ」
「…そ、そこまで言ってませんよ」

案外、映姫を見取る相手は弥勒菩薩かもしれない。

「私的にはな」

魔法使いは言う。


「まず、咲夜だ。あれでいっとう人間らしい営みにこだわりがある。
 次は霊夢。巫女の役を終えたらすぐにでも里にとけ込む。そしたら次は魔理沙様だ。
 そのあとの妖怪どもは割と並列だ。といっても数百、数千年の間だがな。賞味期限がないってのは羨ましい限りだ。
 んで、天人、神様、彼岸の順。あ、永遠亭もな。」

 ずいぶん率直な意見ね。

「もちろん、きっかけはちょっとした事故なんてのもあるし、本人の意思もあるだろう」

 そうかな?


人差し指を立てて、魔法使いは教授した。
額面通りに物事が進めばこうなるんだという。いかにも彼女らしい豪胆な考えだった。
まるで、賞味期限の食品を、書いてある最後の当日までは大丈夫。
カレンダーの最後の日が来たら、きっちり夜の十二時に破いて次に進むような、そんな。


「私は」

 私はちょっと違う。
 みんな、生きてるんだからさ。


霊夢は言う。

「わたしはさ、体はどうだか知らないけど、心がきっともたないわよ。そう思う」
「うん?」
「そりゃみんな、頑丈かもしれないけど」
「なんだよ」
「特に妹紅なんて、きっと、案外早いんじゃないかな」
「そうか?」

 どうやってかなんて知らないわよ。
 でも、きっともう自我なんてなくなって、意味すらなくなってるしまうんじゃないか。

「どれだけ後か知らないけどね」

「本人にはずいぶんと余計なお世話だな」

 そうね。

「どんなに強そうな妖怪でも、独り身はきっとさびしいですからね!」

 そういうことじゃない。
 いや、そういうことなのかな。


霊夢は遠くの月を見て自分のそのときを想像した。
私はそのとき、しあわせです、と言えるのだろうか。


「で、ほんとのところはどうなのよ紫」

ぐちゃぐちゃした狭間から白い腕が生えた。一升瓶が突き出た。
頭が生えて胴が生えて、上半身が空中の何かに腰掛けた。

「貴方たち、面白そうな話をしているわね」

ドロリと、濁った瞳に射抜かれた。
赤い口が三日月に裂ける。

「お教えしていいのかしら」

魔理沙は怯えた。

「やめておくぜ」

 やめとこ。知ってもどうしようもないし。

「でしょうねぇ。その方が無難ですわ」

紫は一度、亀裂の笑みを浮かべた。

「でも残念。これを教えた時の、人間の顔って愉快で大好きなの」

紫はときどきぞっとさせる。

「はい、ぜひ教えてください!」

魔理沙は身震いした。

「いつの日か落ちるとは知らないから鳥は飛べるものよ。知らない方がいい。知ればかえって最期を早めるものですわ」

「結婚は人生の墓場と言いますもんね、わたしは反対派ですけど!」


紫は頭を捻らせて。


「ただ、そうね。実際のところ……
どうなんでしょうか。
一口に千年と言っても、実際は膨大な時間だと思います。
人格が風化してしまうほどの時間だと思います。
私はなんとなく、順番にするとこんな感じかなぁ、と。ほんとになんとなくなんですけど。


(60~80)────── 咲夜、霊夢
(80~100) ───── 魔理沙
(100~400)───── 小悪魔、リグル
(400~1000) ──── 霖之助、美鈴、パチュリー、妖夢、椛、鈴仙、お燐
(1000~2000)──── 文、にとり、橙、てゐ、お空、さとり
(2000~5000)──── レミリア、幽香、萃香、早苗、魔理沙(捨て虫)、アリス、フランドール、藍
(5000~10000) ─── 紫、天子、小町
(10000~100000) ── 神奈子、諏訪子、衣玖、幽々子、聖
(100000~100000000)  映姫、竜神様
(100000000~∞)─── 永琳、輝夜、妹紅


みなさんはどうでしょうか?
それでは。

旧題:死ぬ順
アルサ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
咲夜はもっと早くに亡くなりそうな気もするな、私的には。
まあ、数字にするのは無粋ってもんだ。
2.名前が無い程度の能力削除
パチュリーと聖の差はどこから…?
そしてこの面子の中でも何故にランクインしたんだリグル…
そして一億年じゃ弥勒は出てこないんだぜ
3.名前が無い程度の能力削除
あれ、慧音がいないぞ
人間よりちょっと長い程度だっけ
4.名前が無い程度の能力削除
衣玖さんはゆゆ様たちと一緒か・・・
レミィとフランちゃんはあと数百年な気がするぜ
5.名前が無い程度の能力削除
数字にするのは無粋ってなもんだけど、誰しもなんとなく考えたことはある話なんじゃ……と思いますね。
6.名前が無い程度の能力削除
パッチェさんとひじりんの差は…なんだろ、病弱かどうか?
7.名前が無い程度の能力削除
ひょっこりと龍神様が入っててワロタ
8.名前が無い程度の能力削除
記紀などの記述(一応東方でも言及あり)に沿えば云百万年も生きてきたことになるてゐ、神奈子、諏訪子が1000年や10万年そこらで死ぬもんでしょうかねえ?
9.名前が無い程度の能力削除
最初から最後まで主語をあいまいで、死期と婚期を同時に語る点が新鮮で面白いです
10.名前が無い程度の能力削除
私的に幻想郷は∞の∞乗年後の未来世界の惑星という壮大な妄想があるので、再生医学とかやばそうだから咲夜ぐらいで∞歳まで生きそうだ
11.Yuya削除
てゐは蓬莱人抜くとトップで長生きしてるんじゃなかったっけ