『早苗、準備はいい? 天則の稼働時間は貴女の神通力をもってしても3分。心してかかるのよ!』
徐々にモニターに光がともっていく、コックピット内に洩矢諏訪子の声が響く。
「えぇ、心得ています! 3分間の奇跡、見せてしんぜましょう!」
諏訪子の声に力強くこたえるのは、守矢神社の巫女にして現神人の東風谷早苗である。
そしていま、その早苗が乗る巨大ロボットが発進しようとしているのでだった。
『オシンバラカタパルト解放。カタパルトオールグリーン。天則発進どうぞ!』
コックピットにオペレータでもある、にとりの声が響く。
薄緑の光に包まれているコックピットでその言葉を聞いた早苗は目を見開き、手に握ったレバーをさらに強く握る。
「動顛境地“東風谷の天則”。東風谷早苗。いきまーすっ!」
その言葉と共に巫女型巨ロボット、東風の天則は、守矢神社近くの大きな滝からせり出したオシンバラカタパルトの上を滑って射出されるのであった。
“東風谷の天則”
その名前の通り、早苗が考案した第3世代天則ロボット。体長は150mと小ぶりであり、動力はパイロットの神通力という代物であるが、パイロットの神通力を最大限利用しても暴走の恐れがないと一部のユーザーから莫大な信頼を寄せられているロボットである。
天則を操る早苗が向かうのは人里近くの森。そこに現れた巨大毛玉を退治にしに行くのが今回の出撃目的。
すでに博麗の巫女は破れ。普通の魔法使いも療養中の現在。巨大毛玉を倒せるのは天則を操る事のできるものだけといわれているのであった。
“巨大毛玉”
全長600mオーバーの毛玉。極小の毛玉が天文学数字個集まって出来上がった毛玉である。ただの巨大な毛玉。されど巨大な毛玉。博麗の巫女も普通の魔法使いも勝てなかった巨大な毛玉なのである。
「目標確認! 目標を撃破しますっ!」
巨大毛玉を目した早苗は、一気にスピードを上げ、巨大毛玉へと突撃していく。
「大いなる大奇跡!『ヤサカァァァ……ルミナスッ! ハリケーェェンッ!』」
巨大毛玉に突進を試みた東風谷の天則を中心に巨大な竜巻が発生し、極小毛玉の集合体である巨大毛玉を巻き上げ拡散させていく。
「どうですか! まいりました! これぞ八坂のそして洩矢しいては守矢の奇跡。東風谷の大奇跡なのです! あはっはっはっはっはっは!」
無毛の大地だけを残した元巨大毛玉が居た空間で腰に手を当て高笑いを決め込む東風谷の天則。辺りの惨状には目を向けていません。
そして、コックピット内に表示される残り稼動時間は53秒を示していた。
その時である。
突如、風が生まれ、その風に乗り極小の毛玉が再度集まり始めたのである。その集合体はみるみる内に大きくなり、東風谷の天則の背後を取るのであった。
「なっ!」
『早苗!』
『東風谷の天則。ダメージ軽微。ですが大技ヤサカルミナスハリケーンによる神通力低下が激しく稼動停止目前です』
驚き後ろを振り返る早苗だったが、ときすでに遅し。巨大毛玉の体当たりを受け一気に地面へと叩き付けられるので合った。それと同時にはいる諏訪子の早苗を心配する声と冷静に被害報告を告げるにとり。
“残り稼働時間 0:32”
「迂闊! 初手一撃必殺の大技を使ったせいで、残り稼動時間が……。やれる? 今の私にあの毛玉が倒せる? きゃぁぁぁっ!!」
表示される残り時稼働時間を目にし、走馬灯のように流れるやられ倒れる仲間の姿が、早苗の判断を曇らせ。巨大毛玉の追撃を許してしまった。
その巨躯を大いに生かしたのしかかり攻撃。
その攻撃は、早苗の闘争心をそぐにまことふさわしかった……。
「……あぁ……。あぁあ……」
稼動停止が目前へと迫る東風谷の天則へトドメを刺そうとする巨大毛玉の側面が突如爆発した。
そして、
「サナエー! 助けにきたよー」
そんな言葉と共に太陽を背に巨大な三本の足を持つ鳥型戦闘機が巨大毛玉と東風谷の天則との間に割って入る。
「うつほさん!? でもどうして!?」
「えっと……カナコが助けにきてって言ったからー」
「え? 神奈子長官が……?」
「そんな事はいいから、この“ヤタガラスの非想”とニュークリアフュージョンだよ!」
「神奈子長官……っ!?」
『……フム、許可する』
“ヤタガラスの非想”
霊烏路空が操る鳥型戦闘機。コックピットがコックピットにして動力炉。自らを動力源にして動く原子力戦闘機
『神奈子……! ニュークリアフュージョン承認! 両手足射出準備よ!』
神奈子の許可の言葉を聴くなり目に涙をためた諏訪子がにとりに駆け寄り、口早に指示を出す。
『ニュークリフュージョン承認。 みんな準備急いで! 1秒の遅れが二人の命に関わるわよ!』
その指示に従うようににとりが仲間の河童に指示を出す。射出されるのはこれから行われるニュークリアフュージョンに必要なパーツである。
守矢神社地下秘密基地がニュークリアフュージョンによって大忙しになったの時を同じく。早苗もお空の言葉にうなずきニュークリアフュージョンの準備に入った。
「グレイソォォォマッダァァァジッ!」
東風谷の天則を中心に無数の光弾が幾重にもかさなる星・・・清明紋または五芒星を描いていき巨大毛玉を弾き飛ばした。
巨大毛玉と入れ替わるようにヤタガラスの非想が東風谷の天則の周りを旋回し始める。
「「ニュークリア、フュゥゥジョン」」
二人のそんな叫びと共に二機のロボットと戦闘機に変化が現れた。
東風谷の天則は、両腕を平行に上げ、手首部分が袖の中に収納され、袴部分が展開し、足が内部に収納され大腿部を作り上げる。
ヤタガラスの非想は、機体そのものが展開し、東風谷の天則の背部へとドッキングを果す。そのまま胸部も覆いかぶさるようにドッキングを果し、上半身と上腕部を作り上げた。
それと同時である
『右腕セイギョボウ、左腕オシンバラ射出! 続いて右脚オシンバラ、左脚オシンバラ射出! 絶対に成功させるのよ!二人とも!』
守矢神社裏にある大きな湖から、お空の腕に付けられた棒に似た棒と3本のオシンバラが射出され、ドッキングを果した東風谷の天則とヤタガラスの非想の元へと飛んでくるのであった。
「「うをぉぉぉ! 右腕セイギョボウぉぉ……ドッキンぐわぁ!」」
セイギョボウをドッキングさせようと二人が息を合わせて動かそうとするが、わずかにズレ、セイギョボウが弾かれてしまう。
「「まだまだぁぁ!! 左腕オシンバラドッキング完了!! 続いてセイギョボォォォォォ!!」」
急ぎ左腕のオシンバラをドッキングさせ、左腕へと変形をはたすと弾かれ宙を回るセイギョボウを摑み右腕へ力ずくでドッキングさせる。そのまま飛んできた右脚、左脚のオシンバラとドッキングもはたす。
「右腕セイギョボウドッキング完了!」「右脚オシンバラ 左脚オシンバラドッキング完了!」「覚醒核製!! ぼくらのぉぉ!! ひそぉぉうっ! てぇんっ! そぉくぅぅぅっ!!」
すべての合体シークエンス……“ニュークリアフュージョン”を済ませ、グレイソーマタージが晴れるとそこに立つの一つの巨大ロボット。そう、ぼくらの“非想天則”なのであった。
ぼくらの“非想天則”
早苗考案で考えだされ開発された非想天則まーくすりーである。お空を動力源とした核融合炉を動力炉とした巨大ロボットで無敵の力をもっているんだぞ。
「「さぁ、お前の罪を数えろ」」
ビシッとポーズを決め巨大毛玉指差す非想天則。その姿をみた守矢神社地下秘密基地は大騒ぎであった。
『合体……成功よ……よくやったわ……二人とも……』
『す、諏訪子特別顧問! ふ、二人の心拍シンクロ率100%を超えました……な、なおも上昇中……よ、400%た、達成し、しました……』
『……私たちは新たな神の誕生に立ち会ったのかも知れないな……。そうは思わないか諏訪子』
『神奈子……あんた、まさか……』
『まずは二人の活躍を見ろ。諏訪子』
『く……』
『非想天則動きます!! 胸部装甲をはがしてます!! あぁそこすんごくがんばってつくったのにぃ!』
守矢神社秘密基地で大騒ぎしているころ、非想天則では。
「お空さん」
「わかったよー」
「「初手は一撃必殺のとっておき!」」
ふたりは呼び合うだけで、意思の疎通をこなし、自らの胸の装甲をはがし始め、核融合炉をセイギョボウライトアームでつかみ出した。
「二人の友情が」
「二人の信頼が」
「奇跡を呼ぶ」
「核融合」
「お前は真っ赤に燃えているか?」
「私は真っ赤に燃えている!」
「必殺」
「必中」
「「ばぁぁくねつっ……炉心……インパクトォ!!!」」
「我ら!」
「魔を払う!」
「奇跡の」
「核熱である!」
右腕のセイギョボウで核融合を制御され臨界点をぶっちぎった核融合炉を左腕のオシンバラで巨大毛玉の体内へとうちこむので合った。
・
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・
・
・
「という夢を見たんです!! 神奈子様、諏訪子様! 作りましょう! 非想天則まーくすりーを!!」
守矢神社、居間
東風谷早苗は朝食を食べながら興奮した様子で、今朝まで見ていた夢を二人の神様へ語り聞かせていた。
当然、神奈子も諏訪子も早苗の夢物語は話半分に聞き流していた。
これは毎朝のこと。
いつもの日課であり、日常的にある光景であるのであった。
そして、二人はいつもこいうので合った
「早く朝ごはんを食べ終えて、もう一度顔を洗ってきな」
「早く朝ごはんを食べ終えて、もう一度顔を洗ってきなさい」
矢と守が逆じゃね?
テンションぱねぇww
面白かった!
ダイターンよりでかいのかwww
こういう世界もあるのか、と素直に感じました。
久しぶりにいいテンションもらいました
こんな残念な早苗さんは、嫌いじゃないんだぜ。
>2.さん
誤字報告ありがとうございます!
>3.さん
まーくつーが非常識なサイズだったんでしょう。・・・きっと
>唯さん
うぉ、そっちの存在をしませんでした。ちょっと調べてきます!
>こじろーさん
>6.さん
混ぜすぎ不自然要注意ですかね?
しょうじき、早苗さんはこうだから好きだという誤った認識を拭い去れない……