Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

爪切り。

2011/03/15 19:42:54
最終更新
サイズ
10.47KB
ページ数
1

分類タグ


・この作品は私の過去作と大体繋がってます。
・が、とりあえず「ぬえが守矢神社で同居中」ということを理解していれば大丈夫です。



「~~♪」
「……」

……さっきからずっと、私に視線がささる。
自意識過剰とかそういうのじゃない。
明らかに、こっちに向けているのだ。しかも、何か期待を込めて。

……んで、とりあえず私はずっと無視ってる。気付かないフリをしている。
理由は簡単。
だって、その視線を送ってる人物は―――早苗。
青白巫女服を着てる、守矢神社の巫女。
その実態は、なんにでも興味を持ち染まりやすく、常識が通用しない破天荒な行動をとり、一度狙った対象をとことんいじりたおして、とか。
……うん、今更ながら巫女とは思えないね、こいつ。
だからつまり、早苗からこういう視線向けられたら反応したらいけない。
ロクなことが起きないから。
どうせまた何かの影響を受けて、それを実行しようとしているのだろう。
横に外の世界の雑誌が見える辺りからよくわかる。早苗と結構な時間を過ごしている私の勘。
ちなみにこの雑誌とかはたまに隙間妖怪から貰っているようだ。
早苗の外の世界にいた頃のお気に入りだとか。

話が逸れた。
まぁとりあえず、こういうのは絶対まずは私で試そうとする。
早苗曰く、私なら気軽にできるようだ。
……仮にも自分の……その、…ぃ…とである相手を、実験台に使うのはどうなんだろう。
これも信用の証なのかな。
だとしたら、少し、嬉しいけど、な。
いやでもできればやめて欲しいけど。

だからいつも私はできるだけ気付かないフリをしている。
そして諦めさせようと思っている。
……んだけど、相手はあの早苗。
そう簡単に諦めるわけがなく。

「……なに?さっきから」

結局私が折れるのだ。
そう言うと早苗は待ってましたと言っているかのよ「待ってました!!」……実際に言って、

「ぬえ、爪切らせてください」

……いつも通りよくわからないことを頼む。

「……どういうこと?」
「ですから、爪を切らせてください、と」
「いやそうじゃなくて、なんでってこと」
「それは秘密です」
「……はぁ?」

相変わらずよくわからない。
そんなこと言われてやる人がいるのか。

「じゃあやだ」
「そんなひどい」
「どこの姫よ。ていうか私以外の誰かに頼めばいいじゃない」
「……そしたら、ぬえが嫉妬するじゃないですか」
「は、はぁ?そんなわけない!」
「じゃあ、前に私がこういうことをぬえ以外の人にお願いしようとしたときに、急にわって入ってきてその人を追い返したのは誰ですか?」
「うぐっ」

何も言い返せない。
だって、……あまり言われたくないけど事実なんだもん。
しょ、しょうがないじゃん!
早苗が私以外の誰かとすごく楽しそうにしてたらそりゃ嫉妬ぐらいするさ!
当たり前だ!不可抗力!!
……ちなみに、その追い返した相手は小傘。
いつもいじったりしてるけど、それなりに仲はいい、つもり。悪戯仲間だし。
でもあの時は何故か、気付けば追い返してた。
よく考えれば楽しそうにしてたのは早苗だけで、小傘は一方的にさでずむされてただけな気がするけど。
……うん、あの時はごめんね、小傘。

「……それに、今回のは誰かに頼めません」
「え?」
「ぬえに、ぬえだけにしか、お願いできないのです」
「うっ……」

あぁ、そんな目で見ないでよ。
そんな早苗の真剣な目で見られたら、余計に断れなくなるじゃない。
それを少しカッコイイかも、って思ったのは内緒。
……余計に早苗の虜になりそうになったのはもっと内緒。

「爪切り一つでそんな大袈裟に……」
「それほどマジなのです。真剣と書いてマジと読む」
「それ、ふざけてるようにしか聞こえない。……でも、いいよ」
「……え?」
「だから、爪切りぐらいならいいよって」
「本当ですか!?ありがとうございます、ぬえ!!」
「お、おぉう……落ち着いて」












「はい、それでは手を出してください」
「……はいはい」

そんなこんなで爪切り開始。
早苗はスッゴいワクワクしながら、早く切りたい、早く切りたいって言ってるようで、なんか怖い。
……でもまぁ、早苗ならうまく切ってくれるだろう。
私、信じてるよ、早苗。

「……ってさっきから何やってるの?」
「~~……、はい?」
「いやだからさ、なんで私の手をつついてるのかなって」

早苗は一向に爪を切る気配を見せず、さっきから私の手を新しいおもちゃのようにつついたり、割れ物を扱うかのように包んだり。
……その、くすぐったい、いろいろと。

「いえ、ぬえは手のほうもちっちゃいなぁって」
「は?……って手のほうもってどういうことよ!!」
「だって、ぬえってば背も私よりちっちゃいですし。やっぱり悪戯好きって子供っぽいところが原因なのですかね」
「んな!?わ、悪かったわね悪戯好きで!!」

ちくしょう、さっきの私の気持ち返せ!
悪かったわねちっちゃくて!
ていうか悪戯好きは絶対関係ないと思うな!!

「それに胸も」
「黙れもう!!!」
「でもそんな貧乳なぬえが好きです」
「うるさいうるさいうるさぁい!!!」

ちくしょう!!
こいつはどれだけ私の精神を削れば気が済むんだ!!
いいもん!そのうち早苗よりおっきくなってみせるんだから!!
私にかかればそれぐらい……!!
「あぁもう!爪切るんでしょ!それなら早くしようよ!!」
「はいはい、わかりました」

そう言いながら早苗は胸元から爪切りを……ちっ、嫌がらせかこの野郎。
キッて睨んだら、ものすごく微笑ましい顔で見られた。
ちくしょう、こいつ絶対わかってやった。
だって普通はそんなところに物を入れるわけがない。

「では、切りますね」
「……はいはい」



パチン
パチン



案外、早苗は普通に、綺麗に切る。
早苗のことだから、ふざけて切ると思ったのに。

「……はい、終わりましたよ」
「ん、ありがと」
「では、逆の手を出してください」
「はいはい」

それに、私の爪を切るときの早苗の顔は真剣で。
さっき以上に真剣で。
私の手も、本当に柔らかく持って、いつものような様子とは全く違って。

「……そんな態度ができるならいつもそうしなさいよ」
「――、何か言いましたか?」
「いや、別に」
「?」

ま、いつもそんな早苗は面白くないけど。
ふざけあえる早苗のほうが、一緒にいて楽しいし。
こんな真面目すぎる、カッコイイ早苗は、たまに出して私が惚れ直すぐらいでいい。
そのほうが、なんか素敵じゃん。

「――、終わりましたよ、ぬえ」
「ん、これで終わりね」
「いえ、まだまだです」
「……は?」
「まだ足が残ってるじゃないですか」
「……いやいやいやいい!足はやらなくて!自分でやる!!」

手はまだしも、足までやるなんて聞いてない!
それに足はだめ!
自分で言うのもなんだけど、足を触られるのは弱いから!!

「だめです。私に任せてください」
「嫌!ぜっっったいに嫌!!!」

これ以上ここにいたら間違いなくやらされる!!
ここは逃げなきゃ……あれ?
ふすまが、開かない……?

「こんなこともあろうかと、お札でしっかり閉じてあります」
「いつのまに!?準備万端にも程があるよ!?」
「さぁ、観念してください」
「ひっ……!」












「……うぅ」
「では、切りますね~」
「さ、さっさとして」

ここはもう大人しく爪切りされるしかなくなった。
どうか早く、何事もなく終わって。
神様、お願い。こいつも神様だけど。



……パチン
「ひぁっ」
「……ぬえ?」
「な、なんでもない、続けて」

危ない危ない。
つい変な声が出てしまった。
これを早苗にバレたらどうなるか……。
パチン
「んあぁっ」
「……」
「な、なに……?」
パチン
「やぁっ」
「……ふふふ」
「な、なにその目怖い……」

……早苗の目は、新しいおもちゃを見つけたような目をしてて。
これはまずい。私のいろんなものがまずい。

「ぬえってば、足の爪が弱いのですね」
「そ、そんなこと……ひぁぁっ、足なでないで!」
「足の爪、というより足が、ですね」
「ち、違う!!」

ちくしょう、やっぱり、切らせるんじゃなかった。
また、早苗に、弱みを握られたような気が。
……、って

「さ、さっきから、あっ、足触らない、で、」
「こんなかわいいぬえを見て、触らないわけがないじゃないですか!」
「か、かわいく、やぁっ!」
「さて、爪切りましょうか」
「ちょ、や、やめ……!!」
「暴れないでください。爪切りにくいです」
「じゃ、じゃあ、なでるの、やめっ」

バチン

「―――!!!??」
「……あ」












「……バカ」
「ご、ごめんなさいってば、ぬえ」
「……ふんっ」

案の定、深爪。
今はティッシュを指に巻いて、血が収まるのを待つ。
早苗はさっきから謝ってるけど、今は許さない。

「ぬ、ぬえ~……」
「……ふんっ」

……ちょっとかわいい声出したって無駄。
今の私はいじいじモード。
ちょっとやそっとじゃ許さない。
だって、明らかに早苗が悪いんだもん。

「……」
「ごめんなさいもうしません許してくださいぬえ~……」
「……やだ」
「そんなぁ……」

……まぁ、許してもいいんだけど。
実際のところ、もうあまり怒ってないし。
こんなに謝られたら、そりゃ怒る気もなくなる。
……でも、まだまだ許さない。
だって、さっきから私に泣きそうな目で謝ってる早苗、見ててかわいいから。
こんな早苗、滅多に見れないし、そんな簡単に許すなんてもったいない。
それにいつもは私がいじられてるけど、今だけは私が上にたってるようで。
この優越感をもう少し味わいたい。今なら早苗にも勝てそうだし。
……そうだ、ついでに聞いてみよう。

「ねぇ、早苗」
「……はい?」

さっきからずっと疑問に思ってたこと。

「なんでさ、爪切りしたい、なんて言ってきたの?」
「そ、それは……」

早苗はちょっと口籠もる。
なんだろう、そんな言いにくい理由でもあるのかな。
……ま、この状況なら言わざるを得ないだろうけど。

「……ぬえと、ずっと一緒にいたかったから」
「……え?」
「ですから、外の世界の雑誌に載ってたおまじないです!お守りを作って中に相手の爪を入れると、その相手とずっと一緒にいれるっていう……!」
「……」

……やっぱり、勝てない、や。
こんなことを、必死に言われて、誰が勝てるというのだろう。
少なくとも、私には無理だ。
……全く。
でもせめて、これだけは。

「早苗」
「……はい?」
「私が早苗の傍から、離れると思う?」
「え……」
「だからさ、そんなおまじないしなくたって、私と早苗がずっと一緒にいるってのは変わらないんじゃない?」

自分でも、相当恥ずかしいこと言ってる気がする。
でも全て、早苗が悪い。
こんなこと言わせるようにした、早苗が。

「……ま、でも」
「……?」
「そういうのをしたほうが、早苗らしいし」
「……えっと」
「作りたいなら、作っていいよ。もう怒ってないし」
「ぬえ……!!」

さっきまでとはうってかわって、満面の笑顔な早苗。
そんな早苗を見てると、私までつられて笑顔をうかべる。

「ま、だからさ、早苗」
「はい?」
「続き、お願い。もう、血も止まってるし。中途半端ってのも嫌だしね」
「……もちろんです!」

おまじない、ね。
元からわかってることをおまじない、したら。
そしたら、そのわかってることがさらに強くなるのかな。
まぁ、どうなるにしても悪い方向にはならないだろうし。
早苗とずっと、ずっと、一緒に入れますように、と。
ガラにもなく、心を込めてみたり。
別にいいよね。たまには。





「あー、そうそう、切る前に」
「はい?」
「足をなでたりするの、禁止。深爪したくないから」

もうあんな痛い思いはやだ。
あの話をしたあとだからやらないだろうけど、念のため。

「そこは大丈夫ですよ、ぬえ」
「ん、それならいい」
「もう爪切りは使いませんから」
「……は?」

なに言ってるのだろう。
爪切りなしでどう切るというのだ。

「私の口で、切りますから」
「……はぁ?」
「なんでも、口に含んで、なめて柔らかくしたら噛み切れるらしいですよ」
「……えっ」

えっと、つまり、早苗は私の指をなめ回すということで……

「ちょ、待っ、それもだめ!普通に切って!!」
「また深爪させますよ?」
「なんで!?」
「ねっ、もう拒否権ありませんから。あ、ちなみに逃げることも不可能ですからね」
「なんかいつのまにロープで縛られてるし!?」
「では、始めますよ……」
「やっ、め……!!」



爪切りの最中、私が何度か子供は見てはいけないような痙攣を数回起こしたのは
言うまでもない。
終わった後、私が暫くの間立てなくなったのも言うまでもない。
「そういえば早苗」
「はい、なんでしょう」
「これ、ホワイトデーだから。今回はちゃんと渡すわ」

前回はバカのせいで渡せなかったからね。
今回は無理矢理手伝わせた。

「あ、ありがとうございます、ぬえ。……食べていいですか?」
「うん、いいよ」
「ん、……おいしい」
「当然よ。私が作ったんだから」

内心、スッゴいドキドキしてたけど、よかった。
こういうのをおいしく食べてもらえるのって、やっぱり嬉しい。

「……隠し味にぬえのジュースとか入れたらもっとおいしくなると思いますね」「どんなジュースよそれ!?」
「えっ、それはもちろん、ぬえの下は「それ以上言うな!!!」
「冗談です」

いきなり何を言うのだろう。
冗談に聞こえないし。

すると、早苗も何か取り出して、

「……私からも、はい」
「えっ……なんで?」
「バレンタイン、私も貰いましたので」

……でも、私、バレンタインの日に、

「……渡してないのに?」
「ぬえの気持ちを貰いました」
「な、なによそれ……」

……こういうことを素で言うのだから、早苗はずるい。
勝てるわけがない。

「……でもありがとう」
「どういたしまして」
「少し食べていい?」
「もちろんいいですよ。隠し味に私のジュ「ごめん、返す」
「冗談ですよ」
「……冗談に聞こえないから」

一回病院で見てもらったほうがいい気がする、こいつ。
とりあえず、一口。

「……ん、おいしい」
「ありがとうございます」

うん、おいしい。
さすが早苗、こういうのも上手い。

……ふと早苗が私の手から一個取って、口に含む。

「?……さな、んっ!?」

すると、急に早苗がキスしだして。
急なことでされるがままにされると、今度は

「ん、はむっ……」
「んんぁっ!?」

急に口の中に甘いものが。
……これは、早苗の作ったチョコ?
……甘い。

「口移し、一回やってみたかったので。どうですか?」

すごく、甘い。
これはお菓子の甘さだけじゃなくて。
それこそ、口の中がとろけそうになるぐらいに、

「……甘すぎる」
「うふふ、ほら、ぬえも」
「い、嫌に決まってるでしょ!?」

こんなこと続けたら、絶対私の体が持たない。
いろいろな意味で。

「……ならせめて、あーんで」
「は、はぁ!?」
「嫌なら口移しですが」

どうしますか?
なんて、聞いてくる早苗。
……そりゃ、答えは決まってるようなもので。

「……あ、あーん……」
「うふふ、あーん……」

暫く、二人で、甘い、甘い時間を過ごした。

--------------------------------------------------------------------
「あなたの神社が見る度にいつもピンクのオーラを纏ってる件」
「気のせいですよ、文さん」


というわけで、いろいろあって某氏に任された爪切り。
後半、大分おかしな展開になってるけど、そこは気にしてはいけない。
おまけで、昨日はホワイトデー、ということで、書いてみたものを。
おまけにしては長すぎるけどそこも気にしてはいけない。

相変わらずの懲りずにさなぬえ。
だんだん広まってきて私歓喜。めっさ歓喜!
この調子でどんどん広まっていくといいな!

では~
自由人サキ
http://twitter.com/sananuelove
コメント



1.ケトゥアン削除
やっぱり早苗さんは破天荒で、この二人は仲良くないと!
元気をいただきました!
2.歩く情緒不安定削除
うん、良かった
3.名前が無い程度の能力削除
二人の関係が可愛いな!