Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

常闇の妖怪のホワイトデー

2011/03/15 15:12:46
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「う~……」
「だ、大丈夫だから泣かないでルーミアちゃん」

紅魔館のキッチンで、コックスーツに身を包んだ者が2人いた。
一人は、自身の前にある食べ物か分からないものに変化してしまった材料を涙目でしげしげと見つめている常闇の妖怪ルーミア。
もう一人は、涙目になっているルーミアの隣で頭を撫でながら慰めている紅美鈴。

頭を撫でられて落ち着いたのか、彼女は「よし!」と言いながら新しい材料を手にする。
気を取り直してくれた彼女を見てホッとするが、美鈴はしかしと思う。
後ろにチラリと視線を移すと、食べ物か分からないものが山積みにされていた。

そんな光景を見ると、今日中にちゃんと出来るかな、と思う美鈴だった。






 ◆   ◆   ◆



「わはー、めーりんお姉ちゃん。こんにちわーなのだー」
「あ、ルーミアちゃん。こんにちわ」

美鈴がルーミアに会ったのは2人でキッチンに立つ数分前の紅魔館の門の前だった。
また食べ物を貰えるかなと期待しながら美鈴の傍まで降りてくると、ルーミアは美鈴が持っている袋が気になった。

「なんなのーその袋ー?」
「これですか? これはですね、クッキーの材料がが入ってるんです」
「クッキー作るの! ちょうだいちょうだい!」

ぴょんぴょんと跳ねながらねだるルーミアだが、やんわりと断る美鈴にぷぅ、と軽く頬を膨らませる。

「どうしてー?」
「どうしてって、今日はホワイトデーですからね」
「ほわいとでー? それは美味しい人類なの?」
「いえいえ、ホワイトデーは人ではありませんよ。もしかしてルーミアちゃんはホワイトデー知らないの? なら教えてあげましょうか?」

食べ物じゃないことに残念と落ち込むが、ホワイトデーというのがどういうものなのか気になったので聞くことにした。

「うん、知らないよー。だから教えてー」
「そうですね、ルーミアちゃんはバレンタインは知ってるかな?」
「知ってる知ってる! たしか、たくさんの人からチョコレートを貰うことが出来る日でしょ!」
「まぁ大体そうですね。それで、ホワイトデーはバレンタインでチョコを貰った人に御返しをする日です」
「え?」
「大抵はアメとかクッキーが御返しの定番みたいですけど、気持ちが篭っていればなんでも大丈夫だと思いますけど」
「め、めーりんお姉ちゃん!」

突然のルーミアの大声に驚いて、持っている材料を地面に落としそうになるが、寸でで足で受け止められたので地面に激突することはなかった。

「おっとっと。どうしました? 大声出したりして」
「ど、どうしようめーりんお姉ちゃん!?」

焦った顔で手を力一杯ブンブンと振っているルーミア。その姿は小鳥が必死になって飛ぼうとしている様に見えてしまい、思わず笑いそうになるが、ルーミアに失礼だと思い止まった。

「落ち着いて話してください」
「わたし、みすちーにチョコ貰ったのに御返しの用意してないよ!」

そこまで言うとルーミアは涙目になりながら美鈴に抱き付いた。

「だ、大丈夫だよルーミアちゃん。そうだ! これから私クッキーを作るので、一緒にクッキー作りましょうよ」
「一緒に?」
「そうだよ」
「うん! 一緒に作る!」
「なら急いでキッチンに行きましょう。作る時間とかを入れるとそんなに無いですからね」

そんなこんなで急ピッチによるクッキー作りが始まった。



 ◆   ◆   ◆






「10個残して全部黒焦げー……」
「でも、ちゃんとクッキー完成したじゃないですか」

日がそろそろ姿を隠そうという頃に、ようやくちゃんと食べれそうなクッキーを完成したルーミア。
美鈴は「上出来ですよ」と言うと、あらかじめ用意していたクッキー袋にクッキーを優しく入れていく。

「はい、これで完成ですよ。あとはミスティアさんに渡すだけですね」
「わはー、ありがとねめーりんお姉ちゃん!」

美鈴からクッキーを受け取ると、そのクッキーを潰さないように抱きしめながらキッチンの窓から普段のルーミアからは想像できないくらいの速さで飛んで行った。
そんなルーミアを手を振りながら見送っていると後ろから声を掛けられた。

「門に居ないと思ったら、こんなところに居たのね」
「探したんだよー、めーりん!」

振り向いてみると、そこには紅魔館のメイド長である十六夜咲夜とレミリアの妹であるフランドール・スカーレットが居た。
不思議なことに、2人は手を隠すように後ろに回して、どことなくもじもじとしていた。

「2人共どうかしましたか?」
「えっとね、ちょっと美鈴に」
「渡したい物があるんだ」

そう言うと2人同時に後ろに回していた手を出してきて、手に持っている物を美鈴に差し出す。
きょとんとしている美鈴だったが、差し出された物を受け取ると、差し出すと同時に顔を下に向けてしまった2人に「2人共顔を上げてくださいよ」と言ってから、美鈴も作っていたクッキーを2人に渡す。

喜んでいる2人に微笑んでから美鈴はもう一度ルーミアが飛んで行った方を見る。

「私のほうはちゃんと成功できましたので、アナタも頑張ってください」

美鈴のそんな言葉に2人は「どうかしたの?」と聞くが、美鈴はまた笑って「なんでもないですよ」と言った。










ルーミアは飛びながら考えていた。


自分が作ったクッキーをミスティアに渡したらどんな反応をしてくれるか。
意外と言うだろうか?

自分が作ったクッキーを食べたミスティアは何と言うのだろうか。
美味しいよと言ってくれるだろうか?


色々な思考が交差するが、まずは何よりもミスティアに会ってこのクッキーを渡したい。
彼女に渡して、彼女の喜ぶ顔を見たい。その一心で飛んでいた。
だからだろうか。ルーミアは自身に悪魔による誘惑が迫ってることに気が付かなかった。



「ふぅ~、疲れた~。ちょっと休憩しよー」

紅魔館を飛び出てから一度も休まずに飛んでいたルーミアは、普段出さないようなスピードを出して疲れきっていた。
だが、もうミスティアの屋台まではもう少しのところなので、さっきまでのようなスピードを出さなくても大丈夫と安心していた。

この安心が悪魔の誘惑の引き金だった。



ぐきゅううううう~



「なんだか安心したらお腹空いちゃった~」

しかし周りを見ても、着ている服のポケットを調べても食べ物なんて一つもありはしなかった。
ガックリとうなだれるルーミアだったが、膝の上に置いてある物に気が付く。
そう、この場には一つだけ食べ物がある。



ミスティアに渡すクッキーが。



「だ、ダメだよ! これはみすちーに渡すんだから!」

思わず袋の口を開けそうになるが、ブンブンと頭を振り回しながらそれを制止する。
しかし一向に腹の虫が治まる気配が無い。チラチラとクッキーを見ては頭を振り回すルーミア。
そんなことを数回繰り返しているとルーミアは一つ思い出した。



そういえばクッキーの味見をしていなかった。



それを思い出すと、クッキーをチラチラと見ていた目が、いつの間にかクッキーを凝視していた。
辺りを軽く見回して誰も居ないことを確認すると、袋を開けて中から狐色のクッキーを一枚取り出す。

「ひ、一つだけだから…。一つ味見するだけなんだから…」

自分にそう言い聞かせると、ルーミアはパクリとクッキーを食べた。












「ふぅ~、今日は誰も来なかったなぁ」

やっぱりヤツメウナギが獲り難い時期は書き入れ悪いね、と手ぬぐい頭巾を脱いでため息をつくミスティア・ローレライ。
頬杖を突きながら「ヤツメウナギの代わりに秋刀魚のつみれにしたんだけど売り上げ少ないもんね~。他に何かあるかな?」と一人今後の新たな食材のことを考えていると、後ろからガサガサと草が揺れる音がした。
お客さんかなと思い後ろを振り向いてみると、目と鼻を真っ赤に腫れ上がらせたルーミアが居た。

「ちょっとどうしたのよルーミア。目と鼻が真っ赤じゃない」
「わああああん! みすちー!」
「うわあ! 鼻水で服汚さないで!」

そう言うミスティアだったが、あの万年笑顔なルーミアがわんわん泣いているのだ。
どんな嫌なことがあったのかと本気で心配し始めるミスティア。

「ほらほら。落ち着いてよルーミア。何があったのか話してちょうだい」
「ぐす……ぐす……」

もしルーミアの口から誰かにイジメられたという言葉が出てきたら、ミスティアはそいつの所に行って、そいつの視界を奪ってボコボコにしてやるつもりでいた。

「クッキー…」
「よし、そいつの所にちょっと行って――ん?」

いま気が付いたが、ルーミアの手にはなにやら袋が握り締められていた。
クッキーと言ったからその袋に入っていると思ったが、中には小さな欠片しか入っておらずクッキーは一枚も入っていない。
恐らくこれがルーミアが泣いているのに関係があるのだろうが、それが一体なんなのだろうか。
うーん考えるが、その時ミスティアに電流が走り、閃くある考え。

「なるほど、そのクッキーを誰かに食べられちゃったってことね!」
「へ?」
「でも大丈夫だよルーミア! ルーミアのクッキーを食べちゃった奴は、私がちゃんと懲らしめてあげるからね! だからそいつが誰なのか教えて!」
「ち、違うよ! それみすちーにあげるクッキーだったの!」
「え? 私に? あげる?」

ミスティアはその言葉が信じられないでいた。
だってあの大飯食らいのルーミアが他人に食べ物をあげるである。
他人から貰うことはあっても、他人にあげることは断じてありえないことだ。

「なんで私にあげるつもりだったの? それと、なんかクッキーが一枚も入ってないけど」
「だって今日はホワイトデーでしょ」

そういえばそんな日があったなと思う。

「だから、バレンタインの御返しにクッキー作ったんだけど、みすちーに私に行く途中でお腹が空いちゃって、一枚食べたら全部食べちゃって……」
「た、食べたちゃった?」
「ごめんねみすちー…」

そこまで言うとルーミアはまた泣き出してしまった。
なんだか私のためにクッキーを作ってくれたとか、食べてしまったことに大飯食らいのルーミアが真剣に謝ってる姿を見た所為なのかは分からないが、気が付いたらもう私の口から出ていた。




「もうルーミア可愛いわよーーー!」
「!?」
「ルーミア可愛すぎるよーーー!」
「お、怒ってない? 私のこと嫌いにならない?」
「大丈夫だって、私はそんなことぐらいでルーミアを嫌いにならないわよ! それに、私に御返しをくれるって考えてくれた時点で嬉しいわよ!」
「そ、そーなのかー」
「でも、ルーミアの手作りクッキー食べてみたかったな」
「本当にごめんね」
「ならお互いに約束しようか」
「約束?」

ミスティアはルーミアの手を取ると「そう約束」と微笑みながら言う。

「来年、私はバレンタインに誰よりも早くルーミアにチョコを渡すから、ルーミアもホワイトデーに誰よりも早く私に渡しに来てちょうだい」

そのミスティアの言葉に、いまできる精一杯の笑顔で答える。

「うん! 絶対に渡すって約束するよ!」
「ふふふ。ありがとね。そうだ、ルーミアにちょっとお願いがあるんだけど」
「なんなのだー?」
「今日は誰もお客さんが来なくてつみれが大量に余ってるのよ。もしお腹空いてたら食べるの手伝ってくれないかなって」

ミスティアの言葉を待っていたかのようにルーミアのお腹からぐきゅううううう~と聞こえてきた。

「わはー、みすちーの料理美味しいから楽しみだよ~」
「よし。それじゃあ、食べましょう」



その夜、ミスティアの屋台からは絶えず笑い声が聞こえていた。
この2人の組み合わせって少ないんですよね。マイナーなのかな?

どうも!初めまして!そうでない方はお久しぶりです!
昨日投稿するつもりが結局出来なかった⑨のぬけがらです。

バレンタインでは触れてない2人でしたが、一度は書いてみたいカップリングと書いてみたかった話なので書いてみました。

そういえばマイナーなカプかもしれませんが自分、聖とぬえのカプも好きなんですよね。
他にはヤマメとキスメのカプとかレティとチルノのカプとか好きです。

そしてこんな駄文ですが、最後まで読んでくれてありがとうございます。
機会があればまた。それでは。
⑨のぬけがら
http://bakanonukegara.blog92.fc2.com/
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
>みすちーに私に行く途中でお腹が空いちゃって
渡し?
マイナーでは無いと思いますよ、ほのぼのしてて心が温まりました
2.名前が無い程度の能力削除
ルーミスおいしいです!!