今日も今日とて博麗神社では宴会が開かれていた。
今夜の乾杯の音頭を取るのは夜雀の妖怪であるミスティア・ローレライ。
そこに大した理由は無い。
単に乾杯の音頭は参加者が持ち回りで行い、たまたま今回が彼女の順番だったというだけだ。
彼女は目の前に置かれた升を手に取り、立ち上がって集まった面々を見回す。
博麗の巫女が居て、白黒の魔法使いが居て、人形遣いの魔法使いが居て、病弱魔法使いが居て、紅魔館の主従が居て。
白玉楼の二人も居るし、もちろん妖怪の賢者とその式とその式も居る。
妖怪の山の面々は山の神様を中心に集まって、乾杯の音頭を今か今かと待っている。
その向こうでは仲が良いのか悪いのか、隣り合って座り火花を散らしている永遠亭のお姫様と竹林の焼き鳥屋を従者と人里の守護者が宥めていた。
反対側では地底の妖怪達とお寺の住人が行儀良く座っており、竜宮の使いはそわそわと落ち着きのない天人に注意していた。
ちなみに、死神と閻魔は遅れて来るらしい。
幻想郷の主だった勢力が集まった今回の宴会、特に何があるという訳ではないが何となく気合が入るというもの。
いざ、乾杯の音頭をと思ったミスティアだが、ふと気配を感じて後ろを振り向けば三月精が宵闇の妖怪と蛍の妖怪と共に賽銭箱に座って既に酒を飲み始めていた。
「ちょっと、乾杯まだなんだけど!」
「あ、そうなの? ごめんごめん、待ちきれなくて」
「おーい、まだなのかい?」
「早くしないと腕が疲れてくるじゃあないか」
新歓コンパの様なせっつく声に正面に向き直ると、鳥居の上に腰掛ける二人の鬼はちょうど三杯目を注ぎ足している所だった。
「今やるところだよ! ……ふぅ」
ミスティアは右手に持った升に目線を落とす。
鏡の様な水面が、まんまるの月を映していた。
それを見つめながら深呼吸をする。
夜の冷たい空気が肺から血管を通って、まるでふいごの様に激しく心を燃え上がらせた。
体は静かに心は熱く気合は十分。
ミスティアはゆっくりと顔を上げた。
「……よし! それじゃあみんな、お酒を持って!」
「もう持ってるよ!」
「茶化さないでよ! ……コホン。それじゃあ改めまして!」
そして升を持った右腕を高々と掲げた。
「ちんちん!」
あれだけ気合を入れておいて、やっぱり掛け声はそれなのか。
そもそも挨拶をすっ飛ばしていきなりそれなのか。
やはりミスティアはミスティアだった。
何とも言えない空気がその場に流れた。
そんな空気の中、パチンと扇子を閉じる音は静かな境内に良く響いた。
その音はとても小さいものだったが、皆の視線を集めるには十分な大きさ持っていた。
視線の先に居た彼女は普段の胡散臭さが鳴りを潜め、いっそ優雅ささえ感じさせながら升を掲げるその一挙一動に、誰もが目を奪われていた。
「ちんちん」
八雲紫は静かに、しかしはっきりとそう口にした。
「ちんちん」
「ちんちん」
「ちんちん」
そしてそれに続くようにレミリア・スカーレットは、パチュリー・ノーレッジと十六夜咲夜と共に静かにグラスを掲げた。
「ちんちん」
「ああ、ちんちん」
そんな彼女達の様子で何かを思い出したのか、洩矢諏訪子と八坂神奈子も共に杯を掲げた。
「あっ、そういえばジャッキーもテレビで言ってましたね。ならば私も……ちんちん」
そして東風谷早苗も何かに気付いたのか、ぐい呑みを持った右手を月に向かって突き上げた。
「ちんちん」
続けて、その心を読んだ古明地さとりが御猪口を掲げた。
「ちんちん?」
「ちんちん?」
「ちんちん!」
「ちんちん!」
火焔猫燐と霊烏路空はよくわかっていなかったが、とりあえず主人であるさとりの真似をした。
「さぁ、ご一緒に。ちんちん」
「え、あ、うん。ちんちん」
空気を読んだ永江衣玖は比那名居天子を促しながら静かに杯を掲げる。
「あの、藍様」
「何だい橙」
「ちんちん、って何ですか?」
「橙も成長すればいずれ解る時が来るさ。まぁ今は宴会だ、とりあえず升を持ちなさい」
「はい」
「では橙、ちんちん」
「ちんちん」
八雲藍は橙の頭を撫でながら、満月を見上げて微笑んだ。
「ちんちん」
「はいはい、ちんちん」
「ち、ちんちん……」
アリス・マーガトロイドは表情を変えずに、博麗霊夢は渋々、霧雨魔理沙は消え入りそうな声で、ほんの少しだけ頬を染めながら各々の酒器を掲げた。
「ちんちん!」
「ちんちん?」
河城にとりは普通に、鍵山雛は何故乾杯の音頭がちんちんなのか考えながら。
「ちんちんっ! ほら、はたても椛もちんちんしますよ!」
「そんな急かさなくてもいいじゃない。ほら、ちんちん」
「文さん落ち着いて下さいよ。はい、ちんちん」
いい加減酒が飲みたいと急かす射命丸文に、姫海棠はたてと犬走椛は苦笑しながら升をぶつけ合った。
「妖夢、私達もちんちんしましょう?」
「ちょ、幽々子様何を言ってるんですか!」
「何って、ちんちんよ、ち・ん・ち・ん」
「そんなはしたないお言葉を!」
「はしたない? ちんちんが? はて……ねぇ妖夢、あなたはちんちんを何だと思ってるのかしら」
「えぇ!? それは、その……もう、ちんちん! これでいいですか!」
「ええ、それでいいわよ」
何故かノリノリの西行寺幽々子は、こんな時でも従者の魂魄妖夢をからかうのを忘れない。
「ちんちん!」
「ちんちん!」
ミスティアが深呼吸し始めた辺りから殴り合いを始めた蓬莱山輝夜と藤原妹紅は、酒瓶を振り回しながら律儀にもちんちんと叫んだ。
「あの、師匠、いいんですかお二人を止めなくて」
「いいのよ、一度すっきりさせれば後は静かになるわ」
「……あなたも止めなくていいの?」
「あれは彼女達なりのコミュニケーションですからね、邪魔をするのは無粋というものでしょう」
「そういう事よ鈴仙。わかったらあなたも御猪口を持ちなさい」
「師匠がそう仰るのなら……」
「では……ちんちん」
「ええ、ちんちん」
「……ち、ちんちん」
慈愛に満ちた顔で殴り合いを見守る上白沢慧音と八意永琳を見て、鈴仙・優曇華院・イナバは自分がおかしいのかと少しだけ不安に思いながら御猪口の中身を呷った。
「じゃあ改めて! ちんちんっ!」
言葉の意味はよく解らないが、とにかく肴をつまみながらサニーミルクが一升瓶を掲げる。
「ちんちん!」
「ちんちんっ!」
「ちんちーん!」
「ちんちん!」
それに合わせてルナチャイルド、スターサファイア、ルーミア、リグル・ナイトバグも各々つまみを高く掲げた。
「姐さん、ちんちん」
「ちんちん。ナズーリンも」
「ああ、そうだね聖。ちんちん」
「……あの、普通に乾杯でいいのでは?」
「ご主人、郷に入りては郷に従え、という言葉もあるじゃないか」
「そうよ星、空気を読まなきゃ」
「私達は新参者ですから。こんな時くらいは周りに合わせても罰はあたりませんよ星」
「やれやれ、聖にまで言われては仕方ありませんね。では私も、ちんちん」
「ええ、ちんちん」
「ちんちん」
「ちんちん」
雲居一輪は杯を、聖白蓮は升を、ナズーリンはワイングラスを、寅丸星はぐい呑みを、それぞれ掲げて乾杯し、雲山は彼女たちを静かに見守っていた。
「わははは! ちんちん~! ちんちん~!」
「ちーんーちんっ! ちーんーちんっ!」
星熊勇儀と伊吹萃香、あなた達はもう黙ってて下さい。
「じゃあ皆でもう一度! ちんちん!」
「「「「「「「「ちんちん!」」」」」」」
「四季様、何ですかこれ」
「私に聞かないで下さいよ小町」
今夜の乾杯の音頭を取るのは夜雀の妖怪であるミスティア・ローレライ。
そこに大した理由は無い。
単に乾杯の音頭は参加者が持ち回りで行い、たまたま今回が彼女の順番だったというだけだ。
彼女は目の前に置かれた升を手に取り、立ち上がって集まった面々を見回す。
博麗の巫女が居て、白黒の魔法使いが居て、人形遣いの魔法使いが居て、病弱魔法使いが居て、紅魔館の主従が居て。
白玉楼の二人も居るし、もちろん妖怪の賢者とその式とその式も居る。
妖怪の山の面々は山の神様を中心に集まって、乾杯の音頭を今か今かと待っている。
その向こうでは仲が良いのか悪いのか、隣り合って座り火花を散らしている永遠亭のお姫様と竹林の焼き鳥屋を従者と人里の守護者が宥めていた。
反対側では地底の妖怪達とお寺の住人が行儀良く座っており、竜宮の使いはそわそわと落ち着きのない天人に注意していた。
ちなみに、死神と閻魔は遅れて来るらしい。
幻想郷の主だった勢力が集まった今回の宴会、特に何があるという訳ではないが何となく気合が入るというもの。
いざ、乾杯の音頭をと思ったミスティアだが、ふと気配を感じて後ろを振り向けば三月精が宵闇の妖怪と蛍の妖怪と共に賽銭箱に座って既に酒を飲み始めていた。
「ちょっと、乾杯まだなんだけど!」
「あ、そうなの? ごめんごめん、待ちきれなくて」
「おーい、まだなのかい?」
「早くしないと腕が疲れてくるじゃあないか」
新歓コンパの様なせっつく声に正面に向き直ると、鳥居の上に腰掛ける二人の鬼はちょうど三杯目を注ぎ足している所だった。
「今やるところだよ! ……ふぅ」
ミスティアは右手に持った升に目線を落とす。
鏡の様な水面が、まんまるの月を映していた。
それを見つめながら深呼吸をする。
夜の冷たい空気が肺から血管を通って、まるでふいごの様に激しく心を燃え上がらせた。
体は静かに心は熱く気合は十分。
ミスティアはゆっくりと顔を上げた。
「……よし! それじゃあみんな、お酒を持って!」
「もう持ってるよ!」
「茶化さないでよ! ……コホン。それじゃあ改めまして!」
そして升を持った右腕を高々と掲げた。
「ちんちん!」
あれだけ気合を入れておいて、やっぱり掛け声はそれなのか。
そもそも挨拶をすっ飛ばしていきなりそれなのか。
やはりミスティアはミスティアだった。
何とも言えない空気がその場に流れた。
そんな空気の中、パチンと扇子を閉じる音は静かな境内に良く響いた。
その音はとても小さいものだったが、皆の視線を集めるには十分な大きさ持っていた。
視線の先に居た彼女は普段の胡散臭さが鳴りを潜め、いっそ優雅ささえ感じさせながら升を掲げるその一挙一動に、誰もが目を奪われていた。
「ちんちん」
八雲紫は静かに、しかしはっきりとそう口にした。
「ちんちん」
「ちんちん」
「ちんちん」
そしてそれに続くようにレミリア・スカーレットは、パチュリー・ノーレッジと十六夜咲夜と共に静かにグラスを掲げた。
「ちんちん」
「ああ、ちんちん」
そんな彼女達の様子で何かを思い出したのか、洩矢諏訪子と八坂神奈子も共に杯を掲げた。
「あっ、そういえばジャッキーもテレビで言ってましたね。ならば私も……ちんちん」
そして東風谷早苗も何かに気付いたのか、ぐい呑みを持った右手を月に向かって突き上げた。
「ちんちん」
続けて、その心を読んだ古明地さとりが御猪口を掲げた。
「ちんちん?」
「ちんちん?」
「ちんちん!」
「ちんちん!」
火焔猫燐と霊烏路空はよくわかっていなかったが、とりあえず主人であるさとりの真似をした。
「さぁ、ご一緒に。ちんちん」
「え、あ、うん。ちんちん」
空気を読んだ永江衣玖は比那名居天子を促しながら静かに杯を掲げる。
「あの、藍様」
「何だい橙」
「ちんちん、って何ですか?」
「橙も成長すればいずれ解る時が来るさ。まぁ今は宴会だ、とりあえず升を持ちなさい」
「はい」
「では橙、ちんちん」
「ちんちん」
八雲藍は橙の頭を撫でながら、満月を見上げて微笑んだ。
「ちんちん」
「はいはい、ちんちん」
「ち、ちんちん……」
アリス・マーガトロイドは表情を変えずに、博麗霊夢は渋々、霧雨魔理沙は消え入りそうな声で、ほんの少しだけ頬を染めながら各々の酒器を掲げた。
「ちんちん!」
「ちんちん?」
河城にとりは普通に、鍵山雛は何故乾杯の音頭がちんちんなのか考えながら。
「ちんちんっ! ほら、はたても椛もちんちんしますよ!」
「そんな急かさなくてもいいじゃない。ほら、ちんちん」
「文さん落ち着いて下さいよ。はい、ちんちん」
いい加減酒が飲みたいと急かす射命丸文に、姫海棠はたてと犬走椛は苦笑しながら升をぶつけ合った。
「妖夢、私達もちんちんしましょう?」
「ちょ、幽々子様何を言ってるんですか!」
「何って、ちんちんよ、ち・ん・ち・ん」
「そんなはしたないお言葉を!」
「はしたない? ちんちんが? はて……ねぇ妖夢、あなたはちんちんを何だと思ってるのかしら」
「えぇ!? それは、その……もう、ちんちん! これでいいですか!」
「ええ、それでいいわよ」
何故かノリノリの西行寺幽々子は、こんな時でも従者の魂魄妖夢をからかうのを忘れない。
「ちんちん!」
「ちんちん!」
ミスティアが深呼吸し始めた辺りから殴り合いを始めた蓬莱山輝夜と藤原妹紅は、酒瓶を振り回しながら律儀にもちんちんと叫んだ。
「あの、師匠、いいんですかお二人を止めなくて」
「いいのよ、一度すっきりさせれば後は静かになるわ」
「……あなたも止めなくていいの?」
「あれは彼女達なりのコミュニケーションですからね、邪魔をするのは無粋というものでしょう」
「そういう事よ鈴仙。わかったらあなたも御猪口を持ちなさい」
「師匠がそう仰るのなら……」
「では……ちんちん」
「ええ、ちんちん」
「……ち、ちんちん」
慈愛に満ちた顔で殴り合いを見守る上白沢慧音と八意永琳を見て、鈴仙・優曇華院・イナバは自分がおかしいのかと少しだけ不安に思いながら御猪口の中身を呷った。
「じゃあ改めて! ちんちんっ!」
言葉の意味はよく解らないが、とにかく肴をつまみながらサニーミルクが一升瓶を掲げる。
「ちんちん!」
「ちんちんっ!」
「ちんちーん!」
「ちんちん!」
それに合わせてルナチャイルド、スターサファイア、ルーミア、リグル・ナイトバグも各々つまみを高く掲げた。
「姐さん、ちんちん」
「ちんちん。ナズーリンも」
「ああ、そうだね聖。ちんちん」
「……あの、普通に乾杯でいいのでは?」
「ご主人、郷に入りては郷に従え、という言葉もあるじゃないか」
「そうよ星、空気を読まなきゃ」
「私達は新参者ですから。こんな時くらいは周りに合わせても罰はあたりませんよ星」
「やれやれ、聖にまで言われては仕方ありませんね。では私も、ちんちん」
「ええ、ちんちん」
「ちんちん」
「ちんちん」
雲居一輪は杯を、聖白蓮は升を、ナズーリンはワイングラスを、寅丸星はぐい呑みを、それぞれ掲げて乾杯し、雲山は彼女たちを静かに見守っていた。
「わははは! ちんちん~! ちんちん~!」
「ちーんーちんっ! ちーんーちんっ!」
星熊勇儀と伊吹萃香、あなた達はもう黙ってて下さい。
「じゃあ皆でもう一度! ちんちん!」
「「「「「「「「ちんちん!」」」」」」」
「四季様、何ですかこれ」
「私に聞かないで下さいよ小町」
とにかく懐かしい……。
ちんちん!
ちんちん!
ちんちん!
霖之助さんならきっと驚いた後夜雀の鳴き声を思い出して納得し、そこから薀蓄に持っていける筈だ!
惜しむらくは、彼は全く宴会に出向かないという事。
さすが幻想郷は国際的だなー
始終笑いっぱなしだった……
だってタイトルと分類wwwwww
ちんちん!
国際的な素晴らしい世界ですよね。えぇ。
いや、やっぱオカシイw
俺のちんちんがゲシュタルト崩壊!