フードファイト当日。既に5週目になると慣れたもので、
最初はおっかなびっくりと通っていたこの試合会場へ通じるスキマも、
今ではまるで通いなれた通学路のように、堂々と歩くことが出来るようになった。
「……」
しかし今回、ルーミアの様子がおかしかった。
いつものような明るさが無く、少し苦しそうにしているのだ。
(胸が…痛い。)
先週から続いているこの痛み。結局一週間で治ることは無かった。
常時痛み続けているわけではないものの、突然思い出したかのようにルーミアの胸を締め付ける。
そんなルーミアの苦しみをよそに、3人はスキマの出口に到達した。
そこでは相変わらずの胡散臭い笑みで八雲紫が待ち構えている。
「ようこそいらっしゃい。チャンプ…そして、勇気ある挑戦者の方。」
紫がおかしなことを言うので、ルーミアが聞き返した。
「あれ?挑戦者の人ももう来てるのかー?姿が見えないけど…」
キョロキョロと周りを見渡すルーミア。
しかしこの部屋には八雲紫とルーミア達3人しかいない。
「あら、もう来ているじゃない。…あなたの隣に。」
その言葉を聞いて真横を見るルーミア。
そこに居たのは自分の親友である……チルノ。
チルノまた自分の方を向き、ゆっくりと口を開いた。
「今回の挑戦者は……あたいだよ。」
~~ フードファイタールーミア ~~
Stage 5 裏切りの氷精
「チルノ!?」
そのチルノの言葉に驚いたのはルーミアだけではない。
一緒に居たリグルもまた、驚いて大きな声をあげた。
「チルノ!?どうして、私達友達だったじゃない!」
「だからこそよ、ルーミア、アンタを倒して、あたいがチャンプになる!!」
ビシッ、とルーミアを指差してニヤリと笑うチルノの表情は、ルーミアの親友のそれではなかった。
チャンプを倒し、自分が新たなチャンプになろうとする今まで見た挑戦者の顔そのものであった。
「チルノ…どうして…」
一方のルーミアは、まだ親友の裏切りというショックから抜け出せないでいるようだ。
茫然自失とした表情でチルノをぼんやりと見つめている。
「さて、そろそろいいかしら?」
ルーミア達の会話に紫が割って入った。
「いろいろと言いたいことはあるだろうけど、とりあえずは試合よ。
二人とも、競技場へ入って頂戴な。」
紫にせかされ、チルノとルーミアは競技場へと向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
競技場へと入り机に座るチャンプ・ルーミアと挑戦者・チルノ。
机の上に置いてあったメニューは…カキ氷。
『今回のメニューはそちらの氷精さんにちなんでカキ氷よ。
多少挑戦者に有利かもしれないけど……チャンプにとっては丁度いいハンデよね?』
紫の声がアナウンスで響く。
普段ならそうであろう、しかし今のルーミアの状態は決してベストとは言えない。
それはルーミア自身が一番よく分かっている。
『それでは……初めっ!』
――カーン!
試合開始のゴングが鳴る。カキ氷にむしゃぶりつくチルノ。
一方のルーミアは、まだチルノの裏切りのショックから抜け出せず、
開始のゴングが鳴ってもまだぼーっとしている。
「ルーミア!食べて!」
観客席からのリグルの声。
その言葉にハッとして、慌てて食べ始めるルーミア。しかし…
(うっ…!)
冷たいカキ氷を胃の中に入れた瞬間、鋭い痛みがルーミアを襲う。
ここ数日の胸の痛みは、胃の痛みだったようだ。
ルーミアはそれを周りに悟られないよう、必死でカキ氷に食らい着く。
しかし、心も身体も万全とは言えない状況での戦い。
今まで通りの戦いが出来るわけもなく…
――カーン!
前半終了。スコアは…
ルーミア:10 チルノ:18
8個差。
かなりの差をつけられ、チルノ優勢という形で前半は終了した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リグルは迷った。いつもは3人一緒に居たが、今回はチルノが挑戦者であるため、
控え室が別々である。どちらに行くべきか?
チルノの部屋に行って問い詰めるという選択肢もあったが…
「ルーミア!」
それよりもまず、自分以上にショックを受けているであろうルーミアの傍に居ることを選んだ。
「リグル…」
「しっかりしてルーミア。いつもの調子が出てないよ?」
「でも…」
「チルノが私達を簡単に裏切るはずがない。きっとなにかワケがあるはず。
ルーミアに出来ることは、チルノの挑戦を全力で受けることだよ。」
「うん。分かってるよ。分かってるけど…」
リグルの言葉は理解出来るが、納得はできない。
ずっと親友だったチルノと、何故戦わなくてはいけないのか…
一方のチルノ側の控え室。ここには珍しく、八雲紫が訪れていた。
「ふふ、予想以上だわ。あなたに声をかけた甲斐があったというもの。」
「……ありがと。」
「このまま後半も頑張りなさい。そうすれば、あなたの望む『さいきょー』の座も簡単に…」
「ちがうもん!」
紫の言葉に、チルノは大声で反論した。
「あたいの望みは、そんなことじゃないもん!」
「あら、じゃあなんだと言うのかしら?」
「アンタに言いたくない。言っても、わからないと思うよ。」
「あらあら。まあ、私としてはどんな目的であろうとチャンプに勝ってくれればそれでいいわ。
そろそろ後半が始まる。頑張って、食ってらっしゃい?」
手を振って送り出す紫。
そんな紫には目もくれずに、チルノは足早に競技場へと急いだ。
チルノとルーミア、お互いの心は晴れないまま、後半戦へと突入する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――カーン!
後半戦のゴングが鳴り、再びカキ氷を食し始めるチルノとルーミア。
ルーミア:11 チルノ:22
しかし相変わらずペースはチルノ優勢。
ルーミアの食が進まず、とうとうダブルスコアまで差を広げられてしまった。
(…ううぅ!)
それでも必死で食を進めようとするルーミアであったが、
今までよりも更に大きな痛みに襲われた。
思わずスプーンを落としてしまう。隣の様子を見ると…
「……」
「チルノ…」
チルノも食べるのを止め、ルーミアをまっすぐと見つめていた。
「やっぱり、調子悪いんでしょ?」
「あ、う、ちが…」
「隠さないでよ!あたいには分かるよ!ルーミアの胃袋はもう限界なんだ!
あたいはそんなに食べるのが早いわけじゃない。
いつものルーミアだったら簡単に勝てちゃうはずだ!」
「チルノ…」
「先週から胸を押さえて痛そうにしてたよね。
それを見てバカなあたいでも分かったよ。もうルーミアは限界なんだって。
でもルーミアは優しいからそれを隠して頑張り続けようとする、だからっ…!」
チルノは声を張り上げた。その目にはうっすらと涙もうかんでいる。
「だからっ!あたいがルーミアを倒してチャンプになるんだ!
これからはあたいががんばる!だからもう無理しないで!それ以上食べないで!」
ルーミアはチルノの言葉を聞いて、ようやくチルノの真意を理解できた。
「チルノ、そーなのかー…心配してくれてたんだなー。」
そしてルーミアが感じた感情、それは…
「よかったー……」
安堵感であった。チルノは変わったわけじゃない。チャンプと挑戦者という立場になっても、
今までとなにも変わらない親友のままだった。
だからこそ、ルーミアは言葉を続ける。
「チルノ…でも私は食べ続けるのだ。」
「どうしてだよっ!もういいじゃん!お金なら、私が稼ぐから!」
「そうじゃないのかー……もう、背負ってるものはそれだけじゃなくなってしまったのだ。
今まで私が戦って倒してきた人たちの想いも、一緒に背負ってる。
だから、私は負けるわけにはいかないのだ。」
「ルーミア…」
「だからね、チルノ…」
ルーミアはチルノの方を向き、ニカッと笑った。
「こっから、本気で行くよ?」
その言葉を皮切りに、ルーミアはカキ氷を食し始めた。
「え?……うそっ!」
それを見て、慌てて自分も食べ始めるチルノ。しかし…
ルーミア:15 チルノ:23
ルーミア:19 チルノ:25
ルーミア:24 チルノ:26
勢いは先ほどまでとは段違い。
物凄い勢いでカキ氷を食していくその姿は、今までと同じチャンプ・ルーミアのそれであった。
――カーン!
そして後半戦終了の合図が鳴る。結果は…
ルーミア:32 チルノ:28
ルーミアの勝利だった。
チルノの真意を知り、心のつかえは取れたが、胸の痛みは無くなったわけではない。
それでもルーミアは、食べること、チャンプであり続けることをやめなかった。
チルノは悔しそうにルーミアを見る。
「こんなはずじゃなかったのに…ごめん、余計に無理させちゃったね。」
「ううん、チルノの気持ちが分かって嬉しかったのだ。」
「でも、これからもまたルーミアに負担が!」
「大丈夫、忘れたのかー?」
ルーミアは涙を流すチルノを元気つけるかのように、
ニカッと笑いながらチルノに告げた。
「私の胃袋は宇宙なのかー。そう簡単には潰れない、心配ご無用なのだ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
観客席で一人見ていたリグルが二人の元へ駆けつけた。
「チルノ!ルーミア!」
そして、二人に自分の想いをぶつける。
「二人とも、私は怒ってるよ!」
「あー、その…」
「ごめんねリグル、裏切るようなことをして…」
「そうじゃない!」
リグルは声を張り上げた。
「ルーミアが調子悪いことを隠したことも、チルノがルーミアを止めるために参加したことも!
なんでみんな私に言わないの?私達親友なんだから、相談してよ!」
リグルの言葉を聞いて、チルノが反論する。
「でも、リグルに言ったら、ルーミアの肩を持ちそうだったし…」
「違うよ、でもチルノの味方もしない!」
「じゃあ、どうしたのさー?」
「決まってるじゃん!私が挑戦者になってた!」
迷わずに宣言するリグル。その言葉を聞いて、二人は
「…プッ」
「ワハハハー!」
吹き出し、笑い出した。
「ちょっと!なんで笑うのさ!」
「だって…みんな考えること同じなんだもん!」
「リグルじゃあたい以上にルーミアには勝てないよ!」
「わかんないもんね!例えばメニューがイナゴとかだったら…」
「無いってそんなの!」
屈託無く笑いあう三人。どうやら今回の騒動を経て、更に絆が深まったようだ。
その様子をモニターで眺めている二つの影があった。
「あらあら紫。今回もルーミアちゃんに勝たれちゃったわね?」
「まったく忌々しいわ。今回こそチャンプ交代だと思ったのに。
一人が勝ち続けていると競技そのものが廃れていくわ。
もうあなたの時のようなことは起こしてはならないのよ。」
「あら?なんの話かしら?」
紫の言葉にとぼけた表情を見せる幽々子。
紫はそんな幽々子を気にすることなく、話を続ける。
「こうなったら仕方ないわね。次でこの彼女の快進撃もラストよ。」
「へえ、で、最後にチャンプと戦うのは誰なのかしら?」
「決まってるじゃない。」
紫は胡散臭い笑みを浮かべながら、自分自身を指差した。
「この八雲紫が、直々にあの子の相手をしてあげるわ。」
Go To Next Stage…
最初はおっかなびっくりと通っていたこの試合会場へ通じるスキマも、
今ではまるで通いなれた通学路のように、堂々と歩くことが出来るようになった。
「……」
しかし今回、ルーミアの様子がおかしかった。
いつものような明るさが無く、少し苦しそうにしているのだ。
(胸が…痛い。)
先週から続いているこの痛み。結局一週間で治ることは無かった。
常時痛み続けているわけではないものの、突然思い出したかのようにルーミアの胸を締め付ける。
そんなルーミアの苦しみをよそに、3人はスキマの出口に到達した。
そこでは相変わらずの胡散臭い笑みで八雲紫が待ち構えている。
「ようこそいらっしゃい。チャンプ…そして、勇気ある挑戦者の方。」
紫がおかしなことを言うので、ルーミアが聞き返した。
「あれ?挑戦者の人ももう来てるのかー?姿が見えないけど…」
キョロキョロと周りを見渡すルーミア。
しかしこの部屋には八雲紫とルーミア達3人しかいない。
「あら、もう来ているじゃない。…あなたの隣に。」
その言葉を聞いて真横を見るルーミア。
そこに居たのは自分の親友である……チルノ。
チルノまた自分の方を向き、ゆっくりと口を開いた。
「今回の挑戦者は……あたいだよ。」
~~ フードファイタールーミア ~~
Stage 5 裏切りの氷精
「チルノ!?」
そのチルノの言葉に驚いたのはルーミアだけではない。
一緒に居たリグルもまた、驚いて大きな声をあげた。
「チルノ!?どうして、私達友達だったじゃない!」
「だからこそよ、ルーミア、アンタを倒して、あたいがチャンプになる!!」
ビシッ、とルーミアを指差してニヤリと笑うチルノの表情は、ルーミアの親友のそれではなかった。
チャンプを倒し、自分が新たなチャンプになろうとする今まで見た挑戦者の顔そのものであった。
「チルノ…どうして…」
一方のルーミアは、まだ親友の裏切りというショックから抜け出せないでいるようだ。
茫然自失とした表情でチルノをぼんやりと見つめている。
「さて、そろそろいいかしら?」
ルーミア達の会話に紫が割って入った。
「いろいろと言いたいことはあるだろうけど、とりあえずは試合よ。
二人とも、競技場へ入って頂戴な。」
紫にせかされ、チルノとルーミアは競技場へと向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
競技場へと入り机に座るチャンプ・ルーミアと挑戦者・チルノ。
机の上に置いてあったメニューは…カキ氷。
『今回のメニューはそちらの氷精さんにちなんでカキ氷よ。
多少挑戦者に有利かもしれないけど……チャンプにとっては丁度いいハンデよね?』
紫の声がアナウンスで響く。
普段ならそうであろう、しかし今のルーミアの状態は決してベストとは言えない。
それはルーミア自身が一番よく分かっている。
『それでは……初めっ!』
――カーン!
試合開始のゴングが鳴る。カキ氷にむしゃぶりつくチルノ。
一方のルーミアは、まだチルノの裏切りのショックから抜け出せず、
開始のゴングが鳴ってもまだぼーっとしている。
「ルーミア!食べて!」
観客席からのリグルの声。
その言葉にハッとして、慌てて食べ始めるルーミア。しかし…
(うっ…!)
冷たいカキ氷を胃の中に入れた瞬間、鋭い痛みがルーミアを襲う。
ここ数日の胸の痛みは、胃の痛みだったようだ。
ルーミアはそれを周りに悟られないよう、必死でカキ氷に食らい着く。
しかし、心も身体も万全とは言えない状況での戦い。
今まで通りの戦いが出来るわけもなく…
――カーン!
前半終了。スコアは…
ルーミア:10 チルノ:18
8個差。
かなりの差をつけられ、チルノ優勢という形で前半は終了した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リグルは迷った。いつもは3人一緒に居たが、今回はチルノが挑戦者であるため、
控え室が別々である。どちらに行くべきか?
チルノの部屋に行って問い詰めるという選択肢もあったが…
「ルーミア!」
それよりもまず、自分以上にショックを受けているであろうルーミアの傍に居ることを選んだ。
「リグル…」
「しっかりしてルーミア。いつもの調子が出てないよ?」
「でも…」
「チルノが私達を簡単に裏切るはずがない。きっとなにかワケがあるはず。
ルーミアに出来ることは、チルノの挑戦を全力で受けることだよ。」
「うん。分かってるよ。分かってるけど…」
リグルの言葉は理解出来るが、納得はできない。
ずっと親友だったチルノと、何故戦わなくてはいけないのか…
一方のチルノ側の控え室。ここには珍しく、八雲紫が訪れていた。
「ふふ、予想以上だわ。あなたに声をかけた甲斐があったというもの。」
「……ありがと。」
「このまま後半も頑張りなさい。そうすれば、あなたの望む『さいきょー』の座も簡単に…」
「ちがうもん!」
紫の言葉に、チルノは大声で反論した。
「あたいの望みは、そんなことじゃないもん!」
「あら、じゃあなんだと言うのかしら?」
「アンタに言いたくない。言っても、わからないと思うよ。」
「あらあら。まあ、私としてはどんな目的であろうとチャンプに勝ってくれればそれでいいわ。
そろそろ後半が始まる。頑張って、食ってらっしゃい?」
手を振って送り出す紫。
そんな紫には目もくれずに、チルノは足早に競技場へと急いだ。
チルノとルーミア、お互いの心は晴れないまま、後半戦へと突入する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――カーン!
後半戦のゴングが鳴り、再びカキ氷を食し始めるチルノとルーミア。
ルーミア:11 チルノ:22
しかし相変わらずペースはチルノ優勢。
ルーミアの食が進まず、とうとうダブルスコアまで差を広げられてしまった。
(…ううぅ!)
それでも必死で食を進めようとするルーミアであったが、
今までよりも更に大きな痛みに襲われた。
思わずスプーンを落としてしまう。隣の様子を見ると…
「……」
「チルノ…」
チルノも食べるのを止め、ルーミアをまっすぐと見つめていた。
「やっぱり、調子悪いんでしょ?」
「あ、う、ちが…」
「隠さないでよ!あたいには分かるよ!ルーミアの胃袋はもう限界なんだ!
あたいはそんなに食べるのが早いわけじゃない。
いつものルーミアだったら簡単に勝てちゃうはずだ!」
「チルノ…」
「先週から胸を押さえて痛そうにしてたよね。
それを見てバカなあたいでも分かったよ。もうルーミアは限界なんだって。
でもルーミアは優しいからそれを隠して頑張り続けようとする、だからっ…!」
チルノは声を張り上げた。その目にはうっすらと涙もうかんでいる。
「だからっ!あたいがルーミアを倒してチャンプになるんだ!
これからはあたいががんばる!だからもう無理しないで!それ以上食べないで!」
ルーミアはチルノの言葉を聞いて、ようやくチルノの真意を理解できた。
「チルノ、そーなのかー…心配してくれてたんだなー。」
そしてルーミアが感じた感情、それは…
「よかったー……」
安堵感であった。チルノは変わったわけじゃない。チャンプと挑戦者という立場になっても、
今までとなにも変わらない親友のままだった。
だからこそ、ルーミアは言葉を続ける。
「チルノ…でも私は食べ続けるのだ。」
「どうしてだよっ!もういいじゃん!お金なら、私が稼ぐから!」
「そうじゃないのかー……もう、背負ってるものはそれだけじゃなくなってしまったのだ。
今まで私が戦って倒してきた人たちの想いも、一緒に背負ってる。
だから、私は負けるわけにはいかないのだ。」
「ルーミア…」
「だからね、チルノ…」
ルーミアはチルノの方を向き、ニカッと笑った。
「こっから、本気で行くよ?」
その言葉を皮切りに、ルーミアはカキ氷を食し始めた。
「え?……うそっ!」
それを見て、慌てて自分も食べ始めるチルノ。しかし…
ルーミア:15 チルノ:23
ルーミア:19 チルノ:25
ルーミア:24 チルノ:26
勢いは先ほどまでとは段違い。
物凄い勢いでカキ氷を食していくその姿は、今までと同じチャンプ・ルーミアのそれであった。
――カーン!
そして後半戦終了の合図が鳴る。結果は…
ルーミア:32 チルノ:28
ルーミアの勝利だった。
チルノの真意を知り、心のつかえは取れたが、胸の痛みは無くなったわけではない。
それでもルーミアは、食べること、チャンプであり続けることをやめなかった。
チルノは悔しそうにルーミアを見る。
「こんなはずじゃなかったのに…ごめん、余計に無理させちゃったね。」
「ううん、チルノの気持ちが分かって嬉しかったのだ。」
「でも、これからもまたルーミアに負担が!」
「大丈夫、忘れたのかー?」
ルーミアは涙を流すチルノを元気つけるかのように、
ニカッと笑いながらチルノに告げた。
「私の胃袋は宇宙なのかー。そう簡単には潰れない、心配ご無用なのだ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
観客席で一人見ていたリグルが二人の元へ駆けつけた。
「チルノ!ルーミア!」
そして、二人に自分の想いをぶつける。
「二人とも、私は怒ってるよ!」
「あー、その…」
「ごめんねリグル、裏切るようなことをして…」
「そうじゃない!」
リグルは声を張り上げた。
「ルーミアが調子悪いことを隠したことも、チルノがルーミアを止めるために参加したことも!
なんでみんな私に言わないの?私達親友なんだから、相談してよ!」
リグルの言葉を聞いて、チルノが反論する。
「でも、リグルに言ったら、ルーミアの肩を持ちそうだったし…」
「違うよ、でもチルノの味方もしない!」
「じゃあ、どうしたのさー?」
「決まってるじゃん!私が挑戦者になってた!」
迷わずに宣言するリグル。その言葉を聞いて、二人は
「…プッ」
「ワハハハー!」
吹き出し、笑い出した。
「ちょっと!なんで笑うのさ!」
「だって…みんな考えること同じなんだもん!」
「リグルじゃあたい以上にルーミアには勝てないよ!」
「わかんないもんね!例えばメニューがイナゴとかだったら…」
「無いってそんなの!」
屈託無く笑いあう三人。どうやら今回の騒動を経て、更に絆が深まったようだ。
その様子をモニターで眺めている二つの影があった。
「あらあら紫。今回もルーミアちゃんに勝たれちゃったわね?」
「まったく忌々しいわ。今回こそチャンプ交代だと思ったのに。
一人が勝ち続けていると競技そのものが廃れていくわ。
もうあなたの時のようなことは起こしてはならないのよ。」
「あら?なんの話かしら?」
紫の言葉にとぼけた表情を見せる幽々子。
紫はそんな幽々子を気にすることなく、話を続ける。
「こうなったら仕方ないわね。次でこの彼女の快進撃もラストよ。」
「へえ、で、最後にチャンプと戦うのは誰なのかしら?」
「決まってるじゃない。」
紫は胡散臭い笑みを浮かべながら、自分自身を指差した。
「この八雲紫が、直々にあの子の相手をしてあげるわ。」
Go To Next Stage…
でもチルノええ子や
ラスボスはゆかりんか
しかし、チルノはええ子や……