博麗心得ノ十一

「博麗よ健やかであれ」


　これは、博麗神社の居間に飾られている博麗心得の第一項である。
　以下「博麗よ強くあれ」「博麗よよく遊べ」などと来て、全部で十項目ある。
　博麗の巫女は、この博麗心得を遵守する事により生涯を何の悩みとも、何の不安とも無縁に過ごす事が出来る。


　博麗の巫女は、外の世界のみなしごから選ばれる。
　選ばれた子供は一定の儀式を済ませた後、博麗神社より霊力を、妖怪の賢者より博麗の名を授かる。　
　「博麗よ健やかであれ」この言葉と共に博麗の巫女は妖怪達、また里の人間達の愛情を受け何不自由なく成長していく。
　そう、何不自由なく。


　博麗神社には様々な人妖が訪れる。それは例えば、神であったり、鬼であったり、悪魔であったり。
　博麗の巫女はそう言った者達と交わりながら、流される事無く自分を保っている。だから、博麗の巫女は代々人気が有る。そうしてまた、博麗神社には人妖が集まる。
　しかし、誰が来ようと博麗の巫女は心を動かされはしない。これこそが、博麗の巫女の神性なのだ。皆は口々に言う。


　博麗の巫女は、誰とも交わらない。否、誰とも交わる事が出来ない。
　何故なら、巫女には悩みなんて無いから。不安なんて無いから。地べたを這いずり回り、もがき苦しむ凡愚の事などは、分かりはしないから。
　博麗の巫女は常に守られる。その才によって。博麗の巫女は常に守られる。妖怪の賢者によって。



　博麗の巫女は、誰の事も理解する事は出来ない。
　「博麗の巫女よ孤独であれ」それが隠された十一番目の心得。
　だからこそ博麗は、空に浮き続ける。

こんな決まりを作ったのは誰なんでしょうね。