チルノさんが、湖畔で寝転がって昼寝をしていた。
横になって、という表現を使わなかったのは言葉のままにチルノさんは四肢を投げ出して大の字で寝ていたからだ。
いつもと変わらぬ様子にしているように思えた。
でも、ほんの少しの違和感に私は気が付いた。
彼女は、「素足」だったのだ。
本当にいつも通りなら、彼女の足には白のくるぶし上の靴下と、茶色い色した小さな革靴があるはずなのに。
青と白の特徴的な柄のスカートの裾から伸びている足は、少女期ならではの肉感のないただ細いだけのもの。
それは決して悪い意味ではない。
その肉感のなさはいやらしさを伴うことがないことを証明するものでもあるのだから。
そうして、爪先にまで視線を移していく。
ふにふにと柔らかそうな指には淡い桜色の爪が大中小。
ぼんやりと眺めているうちに、私はしゃがみこんで無意識に手を伸ばしていた。
あと少しで触れる、というところで自制をかける。
しかし、その自制も長く持つはずがなく私の手は、彼女の足をすーっと往復し始める。
「…。」
しばらく撫でていたが、さすがに気づいたらしいチルノさんは目を眠たげに擦りながら上半身を起こしてこちらを見る。
まだ寝ぼけているのか、細められた瞳に映る私の姿は小さい。
「あやー…?」
「はい、なんでしょう?」
「くすぐったいよー。」
それだけなのか、言うことは。
でも、彼女らしいと思う。
チルノさんは、よいしょっと、とスカートが少しばかりめくれあがるのも気に留めず、完全に身体を起こすとこちらに寄ってくる。
「チルノさん。」
「んー?」
「なんで靴、履いてないんですか?」
気になっていたことを問うと、チルノさんはあっけらかんと答えを返す。
「え、なんだかきゅうくつだったから。」
「はあ、窮屈…。」
私は力が抜けそうになる。
「窮屈」
たったそれだけの理由で、靴は脱ぎ捨てられ、私は彼女の素足に興奮を覚える羽目になったのだから。
手にはまだ、彼女の柔い感触と心地よい冷ややかさが残っている。
その手を、ぐーぱーぐーぱーと握ったり開いたりしていると、チルノさんが下から覗き込んできた。
「あーやー。」
「はい、なんですか?」
「さっき、あやはなんでくつをむいじゃったのかきいたよね?」
「はい。」
「じゃあさ、」
この後の言葉に、私は面食らった。
逆転の発想であり、同時に彼女らしさ溢れるものだった。
「どうして、あやははいてるの?きゅうくつじゃないの?じゃまじゃないの?」
「それは…。」
理由なんていくらでもある。
足が傷つかないためだとか、おしゃれだとか、利便性や見た目のことからそれ以外のことまで回答は多岐に渡るだろう。
それでも、私はその中の一つも口に出すことが出来なかった。
彼女は、ぷらぷら、足を宙で振って揺らしてみせる。
「あや?」
「なんで、履いてるんでしょうね。」
わからないから、そう言ったのではない。
わかっていることを言葉にする、その行為を躊躇ったのだ。
結局、たくさんの回答はあれども、それは所詮「建前」と呼ばれるものであり、本質的な回答ではない。
この場合の本質的な回答とは、
「チルノさん、」
「うん。」
「私は、恥ずかしいのです。履物を脱いで素足を曝すことが。」
一番恥ずかしいのは、目の前の少女が出来ることを、己が躊躇ってしまっていることだった。
チルノさんは、それをわかっているのかわかってないのかは知らないが、こちらを澄んだ目で見つめてくる。
となると、もう何がなんだかわからなくなってきた。
所謂、混乱状態というやつである。
「チルノさん。」
「うんー?」
「足、撫でていてですか?」
私じゃできないことをしている彼女の足は、どうしようもなく綺麗に思えて。
思ったときには、口走っていた。
チルノさんは、指を唇に当てて少しの間考えてから、
「あやがしたいならいいよー。」
ただでさえ、らしくない言葉に驚いてしまっているというのに、更にそのかわり、と悪戯っぽく付け加えられる。
「あやもいっしょにしようね。」
その時私は、彼女が脱ぎ捨てたものを理解し、同時に私が履き潰してしまっていたものに気づいた。
右手は彼女の足に、左手は己の足に触れていた。
やっといまさら脱ぎ捨てられた私のものは、草の緑の中に沈んでいくのだった。
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横になって、という表現を使わなかったのは言葉のままにチルノさんは四肢を投げ出して大の字で寝ていたからだ。
いつもと変わらぬ様子にしているように思えた。
でも、ほんの少しの違和感に私は気が付いた。
彼女は、「素足」だったのだ。
本当にいつも通りなら、彼女の足には白のくるぶし上の靴下と、茶色い色した小さな革靴があるはずなのに。
青と白の特徴的な柄のスカートの裾から伸びている足は、少女期ならではの肉感のないただ細いだけのもの。
それは決して悪い意味ではない。
その肉感のなさはいやらしさを伴うことがないことを証明するものでもあるのだから。
そうして、爪先にまで視線を移していく。
ふにふにと柔らかそうな指には淡い桜色の爪が大中小。
ぼんやりと眺めているうちに、私はしゃがみこんで無意識に手を伸ばしていた。
あと少しで触れる、というところで自制をかける。
しかし、その自制も長く持つはずがなく私の手は、彼女の足をすーっと往復し始める。
「…。」
しばらく撫でていたが、さすがに気づいたらしいチルノさんは目を眠たげに擦りながら上半身を起こしてこちらを見る。
まだ寝ぼけているのか、細められた瞳に映る私の姿は小さい。
「あやー…?」
「はい、なんでしょう?」
「くすぐったいよー。」
それだけなのか、言うことは。
でも、彼女らしいと思う。
チルノさんは、よいしょっと、とスカートが少しばかりめくれあがるのも気に留めず、完全に身体を起こすとこちらに寄ってくる。
「チルノさん。」
「んー?」
「なんで靴、履いてないんですか?」
気になっていたことを問うと、チルノさんはあっけらかんと答えを返す。
「え、なんだかきゅうくつだったから。」
「はあ、窮屈…。」
私は力が抜けそうになる。
「窮屈」
たったそれだけの理由で、靴は脱ぎ捨てられ、私は彼女の素足に興奮を覚える羽目になったのだから。
手にはまだ、彼女の柔い感触と心地よい冷ややかさが残っている。
その手を、ぐーぱーぐーぱーと握ったり開いたりしていると、チルノさんが下から覗き込んできた。
「あーやー。」
「はい、なんですか?」
「さっき、あやはなんでくつをむいじゃったのかきいたよね?」
「はい。」
「じゃあさ、」
この後の言葉に、私は面食らった。
逆転の発想であり、同時に彼女らしさ溢れるものだった。
「どうして、あやははいてるの?きゅうくつじゃないの?じゃまじゃないの?」
「それは…。」
理由なんていくらでもある。
足が傷つかないためだとか、おしゃれだとか、利便性や見た目のことからそれ以外のことまで回答は多岐に渡るだろう。
それでも、私はその中の一つも口に出すことが出来なかった。
彼女は、ぷらぷら、足を宙で振って揺らしてみせる。
「あや?」
「なんで、履いてるんでしょうね。」
わからないから、そう言ったのではない。
わかっていることを言葉にする、その行為を躊躇ったのだ。
結局、たくさんの回答はあれども、それは所詮「建前」と呼ばれるものであり、本質的な回答ではない。
この場合の本質的な回答とは、
「チルノさん、」
「うん。」
「私は、恥ずかしいのです。履物を脱いで素足を曝すことが。」
一番恥ずかしいのは、目の前の少女が出来ることを、己が躊躇ってしまっていることだった。
チルノさんは、それをわかっているのかわかってないのかは知らないが、こちらを澄んだ目で見つめてくる。
となると、もう何がなんだかわからなくなってきた。
所謂、混乱状態というやつである。
「チルノさん。」
「うんー?」
「足、撫でていてですか?」
私じゃできないことをしている彼女の足は、どうしようもなく綺麗に思えて。
思ったときには、口走っていた。
チルノさんは、指を唇に当てて少しの間考えてから、
「あやがしたいならいいよー。」
ただでさえ、らしくない言葉に驚いてしまっているというのに、更にそのかわり、と悪戯っぽく付け加えられる。
「あやもいっしょにしようね。」
その時私は、彼女が脱ぎ捨てたものを理解し、同時に私が履き潰してしまっていたものに気づいた。
右手は彼女の足に、左手は己の足に触れていた。
やっといまさら脱ぎ捨てられた私のものは、草の緑の中に沈んでいくのだった。
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誘い方がまた可愛らしい…
狙ったものだとすると恐ろしい…
いや、おそらく無意識だから違うのか…