視聴率平均１５％

「皆さん、こんにちは。
　幻想郷の歴史を偽りなく後世に伝える稗田阿求です」
（阿求さーん、もうちょっと、顔、こっちに向けてくださーい）
（えっと、こうですか？）
（はいその位置その位置ー。次のセリフ、いってみましょー）
「今日は皆さんに、平和な幻想郷で起きた、とある不幸な事件をお伝えしようと思います」
（はい、一拍おいてー）
（すー……はー……）
「これは、とある里人に起きた出来事でした。
　とは言っても、彼が何かをしたわけではない……いいえ、むしろ、他の何が彼に何かをしたわけでもない。
　そう、これは、幻想郷と言う土地がなした、一つの悲しい出来事だったのです」
（はい照明落としてー）
（シーン２、入りまーす）
「――それでは、そのお話を始めましょう……」
（はいカーット）
（すいません、文さん。お水もらえますか？）
（はいはいどうぞ）



　注：これは、事件当事者から聞いた話を基にした再現映像です




「おーい、ゲンさん。聞いたかい？　博麗のお嬢さんの神社が壊れちまったって話」
「何？　そりゃどういうことだい」
　彼の名前は大工のゲン。その名前どおり、大工の腕前は天下一品として、里だけではなく、幻想郷中に知れ渡った男性です。
　そんな彼の元に舞い込んだその一報が、不幸の始まりだったのです。
「……なるほどなぁ。
　お嬢さん、困ってるだろ？」
「ここ数日、姿を見ないんだ。友人とかの処を渡り歩いてんのかねぇ」
「不憫な話じゃねぇか。
　――よし！　俺に任せな！　あのお嬢さんには、俺らみんなが世話になってるからな！　俺が、お嬢さんの神社を直してやるさ！」
「おお、そうかい！　資材とかが足りなかったら言ってくんな！　協力するぜ！」
「ありがとよ！」
　せっかくだから、ちょっとやそっとの地震なんかじゃ、絶対に壊れないくらい頑丈にしてやろう。そうしたら、きっとお嬢さんも喜ぶだろう。
　そう、彼は善意の下、博麗神社を訪れたのです。
　その時、彼が見たものは！

（はーい、一旦ＣＭ入りまーす）
（ちょ、文！　阿求が大声出したせいで咳き込みまくって呼吸困難になってるんだけど！）
（どこの紫ですかそれ！？　永琳さん呼んで来て下さい！）

　～少女ＣＭ中～

　初版２０万部を達成した、リトルストーン先生の『お姉ちゃんは幼稚園児』の続編、『お姉ちゃんはロリ巨乳』がついに発売！
　家族をテーマ、そしてモチーフとした先生の作風はさらに洗練され、読んでいるあなたをほんわかさせること間違いなし！
（ふぐー、むぐー、むー！）
（さ、さとり様落ち着いて、カメラ回ってますよさとり様ー！）
　今回、発売を記念して幻想郷書店地霊殿店舗にてリトルストーン先生のサイン会及び先着１００名様に『お姉ちゃんはロリ巨乳』の挿絵を担当しました庚・竜胆先生による特製ポストカードをプレゼントします！
（わ、わたしはそんなの認めませんよ、今すぐ販売を取り消しなさい、ちょっと聞いてるのこいしぃぃぃぃぃぃ！）
（あややややや。すいません、燐さん、空さん。さとりさんをお外に）
（ちょ、離しなさいあなた達！　わたしはあなた達の主人ですよちょっとこらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！）
　発売日は２０１Ｘ年△月○日！　お値段はなんと二色刷り２００円、フルカラー３５０円！　
　みんな、楽しみにしててね～♪
（ずるずるずる……ばたん）

　～少女ＣＭ終了～

「なっ……こ、これは……！」
『じーんじゃをなっおせー♪　とんかんとんかん♪』
『おっにおっにこーじー♪　とんてんかーん♪』
　そう。彼がそこで見たものは、無数の小さな鬼たちによる神社の復旧作業だったのです。
　しかも、その鬼たちの腕前は、ゲンさんが認めてしまうほど見事かつ鮮やかなものでした。
　さらに彼を驚かせたのは、彼が３０年以上の修行の結果、ようやく会得したトルネード板張り補修を上回る、伝説の大工技乱れハンマー鳳凰の舞を、鬼たちが披露していたという事実でした。
「……俺の出る幕はないな……」
　彼は意気消沈して、その場を去りました。
　その後、新しく復興した神社を見た彼は『……へっ、俺の腕じゃ、ここまでのものは作れないぜ……』と、そう思ったということです。


　しかし、彼の不幸はここでは終わりませんでした。
　その後、厳しい修行を重ね、さらに腕を磨き、伝説の『番匠７２天王』を撃破したゲンさんの下に、また新たな話が舞い込んできた時のことです。
「おう、ゲンさん、聞いたかい」
「ん？　何だ、突然」
「あの、湖のところのお屋敷があるだろ。でっけぇの。
　あそこの門が壊されちまったらしいぜ」
「そりゃ難儀なことだな」
「あそこは別嬪のお嬢さんばかりの建物だからなぁ。きっと困ってるんじゃないのか？」
「そうだなぁ……。
　よし、それなら、俺が行ってちょちょいと直してくらぁ」
「お、本当かい」
「ああ。それに、あそこの姉さん方にゃ、うちの家内と娘が世話になってるからな」
　これはその恩返しさ。
　そう言って笑うゲンさんは、仕事道具を持って出発しました。
　その時、彼は内心、思っていたことでしょう。
『俺は、あの時の俺とは違う。さらに厳しい修行を積んで会得した技術がある。今の俺なら大丈夫だ』
　――それを、人は慢心というのかもしれません。けれど、私はそう思いません。彼ほどの技術を持った大工は、この幻想郷に、文字通り、数えるほどしか存在していないのですから。
　ただし、彼は忘れていました。それは、彼が『人間』であると言うことです。
　湖のお屋敷へと向かったゲンさん。その彼が、そこで見たもの……それは！

（はいＣＭでーす）
（阿求さん、ジュースとお水、どっちがいいですか？）
（そのジュースはっ！　そ、それをください！）
（はいはい）

　～少女ＣＭ中～

　皆様にご愛顧頂いております『魔界通販』に、このたび、新しい商品が加わりました。
　一大農業立国であります魔界の、美味しい季節のお野菜と果物を合計１０キロ、さらに魔界特産の魔界米１０キロがセットになりました『しんきパック』の販売を開始いたします。
　ご愛用頂いておりますお客様方からのご要望を受けまして、吟味に吟味を重ねた結果、実現しました商品となります。

「ええ、はい。私が魔界にお世話になっている間に頂きましたお野菜やお米の味が忘れられなくて。
　もう５セットも注文してしまいました。うふふ」（Ｂ・Ｈさん）
「うちのメイド達にも好評だから、これから利用が増えると思うわ。うちには野菜嫌いの子もいることだし」（Ｍ・Ｋｙｕさん）
「セットの内容がとても豪華なのにお値段が安くて助かっています。うちは食費がかかってまして」（みょんさん）
「うちの患者さん達には、美味しくて栄養のあるものを食べてもらいたいと思っていましたから、今回の新商品につきましては大変感謝しております。いつもいつもお世話になっていますよ」（つきのうさぎさん）

　すでにご好評を頂いておりますこちらの商品を、本日より一ヶ月間、送料無料サービスを開始いたします。
　ご注文の際には、番組の最後にお伝えしますキーワードをご連絡願えますようお願いいたします。
　皆さんのご利用、お待ちしております。
（……なぁ、アリス。お前のおっかさん……すごいな）
（知らない知らないうちのお母さんがこんなことしてるなんて今初めて聞いたっていうか何してるのうちの家族！？）

　～少女ＣＭ終了～

「なっ……！　こ、これは……！」
　ゲンさんが見たもの、それは、美しく補修された建物の壁と扉でした。
　しかし、彼が驚いたのはそれだけが理由ではありません。
「……お、お嬢さん……こいつぁ……一体誰が……」
「あ、はい。うちのメイドさんに、こういう大工仕事が得意な子がいまして。
　最近は彫刻とかにも凝ってるみたいなんですよね。こんな、神殿みたいな装飾されても困っちゃいますよね」
　大工としての腕前にも、彼が戦慄するには充分な理由がありました。
　しかし、彼が本当に驚いたのは、その門になされた美しい細工だったのです。
　大工である自分には、到底出来ないその芸術。その時、彼は知りました。
『ただ、建物を組み立てるだけでなく、その建物を演出するための雰囲気を作るのも、また大工の務めである』
　彼は、自分にはそれが出来ないことがわかっていたのです。いいえ、思い知らされたと言うべきでしょうか。
　まだまだ、自分の知らない世界が、この幻想郷には存在する――彼は、それをいやと言うほど思い知らされたのでした。

　そうして、失意の下に里への帰路に着いた彼に追い討ちがありました。
　この追い討ちが、彼にとっての決定打となったと言ってもいいでしょう。


「村紗船長！　人里から一報があった！
　邪悪な妖怪が里の近くに出現！　これを撃退して欲しいとのことだ！」
「わかりました。
　聖白蓮、指示を！」
「許可します」
「聖輦船、発進！」

　命蓮寺。
　多くの民が信仰の徒として集まるそのお寺が空へと浮かぶ光景を、彼は目の当たりにしてしまったのです。
　寺が船になる。
　その、ありえない現実に、彼がこの時、どんな心境になったのか……今の私には想像することが出来ません。
　そんな彼にとどめが刺されたのは次の瞬間でした。

「聖輦船、強襲＜アームド＞形態へのトランスフォーメーションを行う！　総員、席につけ！」
「聖輦船、トランスフォーメーション！」

　何ということでしょうか。
　空に浮かび上がった船が、『ガッショォォォォォォン！』とか『ガキィィィィィィン！』とかいう音を立てながら変形を始めたのです。
　そうして、巨大な人型へと――聖輦船の戦闘形態、強襲＜アームド＞形態へと変形した後、響いたのです。

「総員、対ショック、対閃光防御！」
「主砲、てーっ！」

　幻想郷の幼い人類に向けて、目覚めてくれと放たれた一条の閃光。
　そうして、再び幻想郷に平和が戻り、聖輦船は命蓮寺へと戻っていったのです。
　その光景を見たゲンさんは、決意しました。


『俺に必要なのは修行だ……！　この寺を超えるものを作るのが、俺の大工としての人生なんだ！』

　
　その後、彼は里から姿を消しました。
　彼がそのようなものを見なければ、今頃、彼は里で一人の大工として人生を過ごしていたことでしょう。
　……これは悲劇と言っていい。しかし、見方を変えれば、一人の男に、新たな人生を歩むきっかけを与えた出来事だったのかもしれません。
　彼の行方は、今も杳として知れません。
　ゲンさんが里に戻ってくるのはいつの日か――それを知るものも、また、いないのです。

（はいカーット）
（お疲れ様でしたー）
（エンディングの前にＣＭ入りまーす）


　～少女ＣＭ中～

　皆様に好評を博している命蓮寺グッズに、ついにフィギュアが加わりました。
　第一弾はこのお二人、『まじかる☆ひじりん』と『まじかる☆いちりん』のフィギュアです。
　全長３０センチという大きさ。表情一つ、視線の送り方にすら妥協しない造形、もちろん衣装と小道具も完全再現！
　さらに、要望の強かったキャストオフ機構も搭載しました！　キャストオフ機構のない『全年齢版』も用意しておりますのでお子様も楽しめます。
　お値段は、『まじかる☆ひじりん』『まじかる☆いちりん』共に、キャストオフ機構ありが４８００円、機構なしが３８００円となっております。
　また、同時発売として全長１メートルにも及ぶ、超巨大超合金『聖輦船』もお披露目いたします！
　重厚感あふれるボディ、アームド形態への変形も完全再現！　可動部は全部で２８箇所！　お値段は、頑張りました、２００００円ジャスト！
　いずれも稀代の造形師サーナ・チャコ先生完全監修！　皆様のご注文をお待ちしております。

　なお、『まじかる☆ひじりん』と『まじかる☆いちりん』のキャストオフ機構あり版は対象年齢１８歳以上となっております。
　また、今回は各製品とも先行販売と言う形になりますので、３０体限定での販売となります。ご了承ください。
（止めないで！　止めないで、雲山！　私はもうダメなの！　もう色々ダメなの！
　ああ……命蓮寺のみんな……先立つ不幸をお許しください……）
（ちょ、待ってください、一輪さん！）
（死人が出たら番組終了よ！　誰か止めてー！）


　～少女ＣＭ終了～


　～エンディング～

　次回の『あっきゅんの幻想郷バンザイ』は、最近、幻想郷で話題になっている名店をあっきゅんが訪問します。
　番組中のキーワードを伝えることで、紹介するお店にて特別サービスを受けられるキャンペーンも開催。
　次回も、ぜひ、見てくださいね♪

　今回、番組中で紹介しました『魔界通販』にて必要なキーワードは『ママ大好き♪』です。メモを忘れずに。

（ぷるるるー……ぷるるるー……がちゃ）
はーい、魔界通販でーす。あら、アリスちゃん。アリスちゃんもママのＣＭ、見てくれたのね。
すごいのよ、もうさっきから電話が鳴りっぱなしなの。
あ、ごめんね、アリスちゃん。それじゃ、アリスちゃん、キーワードをどうぞ！
……アリスちゃん？　キーワードは？　え？　注文するために電話したんじゃない？
ひどいわ、アリスちゃん！　ママ、アリスちゃんからの電話をずーっと待ってたのに！
……だって、アリスちゃん、最近、ずーっとママに何の連絡もくれないんだもの……。ママ、寂しくて……。
だから、番組であんな風にすれば、きっとアリスちゃんの声が聞けるって、ママ、思って……。ううん、ごめんなさい……アリスちゃん……。
そう……そうよね……。ママ、もっと強くならないといけないわよね。
うん、ありがとう。アリスちゃん。じゃあ、お礼に、アリスちゃんのところに、ママが作ったお野菜とお米、送るわね。きっと美味しいから、お腹いっぱい食べてね。
（……その……ママ、大好き……）
うん、うん。ありがとう。アリスちゃん。ママもアリスちゃんのこと、大好きよ。
それじゃ、またね（がちゃっ）