Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

フラワーマスターのバレンタイン

2011/02/20 22:34:10
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 冬の幻想郷は白銀に染まる。
 里の民家の屋根も、森の木々も、妖怪の山も例外なく、冬の白に包まれる。
 雑音は降り積もった雪に吸収され、まるで無人の様な静けさが感じられる。
 それが人が全く来ない森の様な場所なら尚更であり、魔法の森の入り口に居を構える此処、香霖堂もその例外ではない。
 店の中で音を立てる物と言えばストーブぐらいだが、長年聞きなれた僕にとってそれはあって無い様なものである。
 つまり、店の中は外と同じで静寂に包まれているのだ。違う点は精々気温ぐらいであろう。
 そしてその静寂に包まれながら、僕は何時もの様に本を読み耽っていた。

 静寂に包まれて本を読む……嗚呼、何と素晴らしい一時であろうか。
 邪魔など何も無い、落ち着いた時間。紅魔館の魔女ならこの気持ちを理解してくれるだろうか。
 この寒さでは霊夢や魔理沙もやっては来ないだろう。暖を取りに来るかもしれないが、温まりに寒い中を飛んでくる馬鹿はしない筈だと信じたい。
 そんな事を考えながら、本の頁をまた一枚ぱらりと捲った。

 ――カランカラン。

 ……と同時に扉の鈴が来客を告げ、僕のほんの一時の静寂は脆くも崩れ去った。

「いらっしゃ……おや」

 いつも勝手な紅白巫女か、それとも大体勝手な黒白魔女か。
 そう思って本から顔を上げると、そこにあった顔は予想とは随分と違っていた。

「こんにちは、霖之助」

「随分と珍しい来客もあったものだね」

 言いながら本を閉じ、しっかりと向き直る。

「今日はどういった用事だい? 幽香」

「ちょっとね」

 そう言って、幽香は持っていた日傘を払って畳む。払った時に雪が舞った事から察し、少し降っているのだろう。
 その間に僕はカップを取り出し、ストーブの上で沸かした湯を注ぎ、紅茶を淹れる。

「ほら、飲むといい」

「あら、有難う」

 紅茶に一度口をつけ、ふぅと幽香は一息ついた。

「今日は何かお求めかい?」

「ん、生憎だけど違うわ」

 そう言って、幽香はカップを勘定台に置き、懐から何かを取り出した。

「はい、コレ。今日はこれを渡しに来たのよ」

「これは……」

 僕の目に映ったのは、赤い包みに包装された手の平より少し大きいくらいの箱。
 何の変哲も無い箱だが、僕の能力はそれが何なのかを教えてくれていた。

 名称:バレンタインチョコ。

 目の前に差し出された物を見てその名が頭に浮かび、僕の頭は一瞬理解を拒んだ。

「……何? 早く受け取ってもらえるかしら」

 それを差し出す目の前の少女……幽香は催促する様にずいと手に持ったチョコレートを押し付ける。

「あ、あぁ」

 予想外の事に少し困惑しながらもそれを受け取り、勘定台の上へ置く。
 今日がバレンタインという事は早苗君から聞いて知っていたが、まさか彼女から貰えるとは思いもしなかった。

「……何よその顔。そんなに意外かしら」

「……正直、ね」

「はったおすわよ」

 そんな事を言いながら、幽香は勘定台へ腰掛ける。
 自分が座っている位置からは、その表情を伺う事は出来ない。

「山の巫女が広めてたから、面白そうだと思ったのよ」

「暇潰しには丁度良かったという事かい?」

「そ。……まぁ、チョコなんて初めて作ったから、味は保障できないけど」

 そう言って、幽香は窓の方を向いてしまった。

「フム……そうか。今開けてもいいかい?」

「え……えぇ。別に?」

 了承を得、包みを紐解く。
 箱の中には彼女らしく、花を模した小さなチョコレートが入っていた。

「これは……よく出来ているね」

「褒めても何も出ないわよ」

 そう言って、幽香は完全に後ろを向いてしまう。
 耳が少し赤い所を見るに、大方褒められた照れ隠しなのだろう。

「フム……」

 数個を手に取り、よく見てみる。
 形はばらつき大きさも様々で不恰好だが、それは手作りだという証拠でもある。
 こういう物を貰って悪い気はしない。
 しかし普通以上に嬉しいのは……彼女から貰ったからであろうか。

「じゃあ、一つ頂くよ」

「……何で私に言うのよ……どうぞ」

 言葉を聞き、一つを口に放り込む。

「ん……」

 程よい甘さ、口当たりも悪くない。
 初めて作ったと幽香は言っていたが、中々良く出来ているではないか。

「……どう?」

 少し此方を向きながら、幽香はそう訊ねる。

「あぁ、美味しいよ」

「そ。教えてもらった甲斐があったわ」

「……教わった?」

「えぇ、ちょっと紫のとこの……ッ!?」

 自分が言っている事に気付いたのだろう。
 幽香は「何でも無い」と言うと、再びそっぽを向く。

「……フム」

 少し気になったが、本人が何でも無いと言っているのだ。変な深入りは止めておくとしよう。

「………………」

「………………」

 話す事も無くなり、自然と店内は元の静寂な空間に戻る。

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

 無言に耐え切れなくなったのだろうか。
 不意に幽香が言葉を口にした。

「そ、そういえば」

「うん?」

「バレンタインがあるって聞いた時に山の巫女が言ってたんだけど」

「あぁ」

「バレンタインのチョコには『義理』と『本命』があるって聞いたんだけど、何が違うのかしら。チョコには変わりないじゃない」

「義理と本命の違いかい?」

「えぇ。聞いただけじゃよく分からないわ。貴方は分かる?」

「まぁ、早苗君……山の巫女から聞いているんでね。それなりには」

「ふぅん……ね、説明して頂戴?」

「分かった……先ず『義理』だが、これは親しい男性や普段世話になっている男性へ送るチョコレートらしい」

「そうなの」

「あぁ。次に『本命』だが、これは義理の様に親しい者ではなく、愛する人へと送るチョコレートらしい」

「愛する、人……」

「そうだね。……まぁ、あくまで彼女から聞いた事だからね。本当は違うのかもしれないな」

「ふぅん……」

 話を聞き終わり、幽香は傍らに置いていた紅茶を一口啜った。

「あぁ、そうだ」

「?」

「今の話をした上で一つ君に聞きたい事があるんだが、いいかい?」

「えぇ……?」

 何か分からないといった顔で、幽香は此方を振り向いた。

「君がくれたこのチョコレートは、本命と義理、どっちだい?」

「ッ!?」

 そう問うと、幽香は一瞬驚いた様な顔をし、直ぐに後ろを向いてしまった。

「な、何でそんな事聞くのよ?」

「いや……貰った以上はどちらか知りたいだろう?」

「ふん……義理よ、義理」

「フム、義理か」

「そうよ……馬鹿」

 何故馬鹿と言われるのか気になったが、別に大した事でもないだろう。常日頃から冗談で馬鹿と言われているのだし。

「義理、ね」

 呟き、花形のチョコレートに再度目を向ける。

「……僕の目に義理とは映らないんだがね」

「ッ――!?」

 名称:本命チョコ。

 幽香が本命と義理の違いを認識した瞬間、このチョコレートの名称はそう変わった。
 僕がその事を伝えると、幽香は後ろを向いたままわなわなと震えている。
 此処からでは顔が見えないが、耳まで赤く染まっている辺り、今顔は相当赤いのだろう。

「で、本当の所どうなんだい?」

「……ょ」

 至近距離でも聞こえないようなか細い声で幽香は答える。

「……?」

「ッ……あぁもう! 本命よ、本命! 言わせないでよ恥ずかしい!」

 此方へ振り向きながら、叫ぶ様に幽香はそう言い放つ。

「あ、あぁ……済まない。一応、本人の口から聞きたくてね」

「分かってて何で聞くのよ……! ホントに分かんないわ」

「悪かったって」

「大体、この私が態々手作りを渡してるのよ? 本命以外にありえないじゃない……」

 そう言って、幽香はくっと紅茶を飲み干した。

「……今日はもう帰るわ」

「ん、そうかい」

「えぇ」

 壁に立てかけていた日傘を手に取り、幽香は出口へと歩いて行く。

「……あぁ、そうそう」

 扉の取っ手に手を掛けた所で、幽香はそう言いながら此方を振り向いた。

「私が本命あげたんだから、ホワイトデーには貴方もそれに見合った物を返しなさいよね」

「見合った物、かい?」

「えぇ」

「フム……ホワイトデーは三倍返しが基本と聞くからね。何が見合うやら」

「……じゃあ」

 呟き、幽香は首だけ此方を向いた。

「じゃあ、今欲しい物が一つあるのよ。それでいいわ」

「欲しい物?」

「えぇ」

「……まぁ、余程高価な物でない限りは頑張らせてもらうよ」

 で、何だい?
 そう問うと、幽香は少し目線を逸らし、

「そ、それは……」

 と、少し迷った様に呟くと、此方を向き、言った。







「……指輪が欲しいわ。左手の薬指に似合う物が」
私が寝てる時に↑のプロットという名の神通力を送ってきた天狗は何処のどいつだっ!!!
深夜脳で変になって糖分が20%ぐらいしか含まれてないじゃないかっ!



先に言っておきます。ホワイトデーネタなんてありません。

どうも、最近慧霖に続いて幽香霖・映霖・雛霖がジャスティスになりつつある唯です。
魅魔様も早苗さんも好きだし、リグルも大妖精も可愛いし、慧音も満月の時は緑髪だし、緑髪好きだなぁ自分。
キスメ? 接点が(ry

はい。とっくに過ぎたしアリ霖で書きましたけどバレンタインネタで幽香霖を書かせていただきました。
ラブラブな雰囲気とリクエストされていたので、こんな感じに……矢張り夜は物書いちゃいかんね。糖分も全然だし。

特急で仕上げた故にgdgdなのは何時もの事。もう作風みたいになってるから気にしない方がいいのかな。
中傷の類は無しの方向でお願いします。

まぁ、何はともあれ少しでも楽しんで頂けたなら幸せです。

今回も誤字脱字その他ありましたらご報告下さい。
最後に、ここまで読んで頂き有難う御座いました!

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コメント



1.投げ槍削除
最後の一言にときめいたッッッッッッッッ!
さぁて、こんなオチにしたからにはホワイトデーも書いてもらいますよ?
2.奇声を発する程度の能力削除
甘いのぜー
3月14日に期待
3.名前が無い程度の能力削除
>ホワイトデーネタなんてありません

振り、で・す・よ・ね・?
4.名前が無い程度の能力削除
その電波は私のものだっ!
いやー、貴方様に受信していただいて感動ですよ!

…さて、次はホワイトデイの電波を飛ばすか
5.名前が無い程度の能力削除
なにこのゆうかりんマジ乙女^q^

あと最後の一言、これプロポーズじゃ(マスパ

来月に期待している^^
6.名前が無い程度の能力削除
おいおいこれで20%じゃ3/14の幽香霖は我が身を裂く甘さを期待するほかありませんね
7.名前が無い程度の能力削除
霖之助もげろ
8.華彩神護.K削除
仕業じゃ!天狗の仕業じゃ!!
あれ?白いよ?目の前が(ry
9.淡色削除
最後の一言に全私が悶えた(ぉ
実にGJと言わざるを得ない。
さて、唯さんは3月の14日にはきっとやってくれると信じて、
その日まで待機してるとしまs(ry
10.名前が無い程度の能力削除
かわいすぎる……かわいすぎるっ!
11.名前が無い程度の能力削除
糖分が少ないですとな!?

十分甘くて美味いじゃないですか!
貴方の味蕾は逝かれてますな…。
12.けやっきー削除
>で、本当の所どうなんだい?
何とまぁ意地の悪い…w

にやにやさせてもらいました!
13.名前が無い程度の能力削除
やったー!結婚キター!!
最後の一言にシビれた!これはホワイトデーに期待するしかない!
14.すいみんぐ削除
最後のゆうかりんの一言にグッと来ました。
ホワイトデー、楽しみにしてます。
15.削除
遅れてしまいましたが、返信です。

>>投げ槍 様
ホワイトデー……ですか

>>奇声を発する程度の能力 様
期待されても困りますよっ!

>>3 様
いえ、本当に無いんです!

>>4 様
天狗様は貴方でしたか!
残念ですが、ホワイトデー用のアンテナは用意していないんです……

>>5 様
あぁ、事実を言われて恥ずかしくなって顔真っ赤に染めたゆうかりんにやられたんでs(ダブルスパーク

>>6 様
身を裂く甘さってどんなですかw

>>7 様
ど、どこがっ!?

>>華彩神護.K 様
目の前が白い……あぁ、そっちはまだ雪が降ってるんですね。

>>淡色 様
すみません……信じられても困るんです……

>>10 様
幽香は可愛いです。ハイ、そりゃあもう!

>>11 様
医者曰く、手遅れらしいですw

>>けやっきー 様
大人っぽいんだけどちょっと子供っぽい、それが霖之助だと思います。

>>13 様
だから期待されても困るんですってばぁ!

>>すいみんぐ 様
た、楽しみにされましても……

読んでくれた全ての方に感謝!