Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ポジショニング・トラブル

2011/02/18 17:33:36
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※ このお話は、拙作の甘リアリシリーズの続きものとなります。

















「今日は私、後ろの方がいいんだぜ!!」
「何言ってるのよ、後は私じゃないとダメよ。」



 一組のカップルが誕生したバレンタインが終わった冬の終わりの幻想郷。ちょっとだけ片付いた霧雨邸に魔法使いが二人。この度おめでたく結ばれて、幸せ一杯の二人が、二段ベッドの中で何やら相談をしている。

「私が後ろの方がいいわ。それとも、私が後ろじゃ・・・嫌?」
「嫌じゃないぜ、勿論。前から背中越しに感じるアリスは暖かくて優しいからな。だが、今回ばかりはこうはいかん!さぁ、大人しくうんと言うがいい。」
「うん・・・だけど、私、魔理沙程慣れては無いわよ?もしかしたら・・・魔理沙を傷つけちゃうかもしれないわ。」
「別にいいんだぜ、アリスになら何されても。あ、でも魂抜いて人形に入れるとかは簡便してくれよな、私の全てを使ってお前を愛せなくなるからな。」
「なっ・・・魔理沙にそんな事できる訳無いでしょ!!」
「なら、大人しく後ろの方の件、頼むんだぜ。」

 
 両手を頭の上に回して、ふふ~んと魔理沙が鼻歌を歌う。前回はベッドの上下では議論が平行線を辿ってしまい、止む無く折衷案で妥協する事にしたが、今回は優位に議論を進める事ができている。鼻歌は、攻め方次第では自分の欲求を通す事ができそうな手ごたえを得た故の行動である。当のアリスは顔を赤くして、モジモジしているだけ。
魔理沙は追い打ちをかけるべく、横を向いてアリスの顔を見つめて話を始めた。

「腰を打ちつけたあの時に気が付いたんだよ、後ろの方が思いっきり背中に私の全てを預ける事ができるし、なによりアリスの背中とシャンプーの香りとかがだな、とっても心地いいんだぜ。」
「でも魔理沙、前言ってたわよね?背中から感じているあの柔らかさだけは私がしてやれそうにないんだぜって。魔理沙が後だと、それは味わえないわよ。」
「うっ!?」
「さぁ、魔理沙、大人しく後ろを譲りなさい。」

 似ていない声マネをされて動揺する魔理沙。仕掛けた筈なのに綺麗に切り返されてしまった、流石はアリス、ブレイン派を自称するだけの事はある。魔理沙の仕草、嗜好を読み切った完璧な切り返しに満足するアリス。しかし、負けず嫌いの魔理沙がこの程度で下がるはずがない。魔理沙はアリスの胸に飛び込んで、暫くモゴモゴ動いてからそっとアリスの耳元で囁いた。


「・・・しかし、アリスが前だと最中に疲れた時、私の背中に顔をうずめて休む事は許されないんだぞ。」
「・・・っ!?」
「知ってるんだぜ、結構そうしてること・・・でも、それはとっても嬉しい事なんだぜ。」

 
 再度逆転、どや顔の魔理沙。脹れっ面をするアリスをチラッと見る。勝負あったかなぁと、魔理沙は考えていたが、アリスの事だからまだ何か言ってくるんじゃないかと思いながら身構えて待つ。アリスは魔理沙の両肩を掴んで、にっこり笑って。


「でも魔理沙が後でお願いって言うと、私にイニシャチブ渡す格好になるわ。つまり、私に好きにされても良いってことよね。」
「む・・・だが別に良い、アリスにされた事は愛の必要経費として清算されるんだぜ。」
「魔理沙がもうやめてって言う位、激しくしちゃおうかしら?人形使いの器用さ、見くびってもらっちゃ困るわ・・・」
「・・・あまり激しいのは簡便して欲しいんだぜ。いくら愛の必要経費と言えども・・・それは・・・・・。」

 
 魔理沙の反応にアリスはニヤリとした。効果があったようだ。今度は魔理沙が俯き、何かをぶつぶつ言いながらアリスの胸に頭を埋める。魔理沙が背中に回そうとした手をアリスが受け入れ、お互いに抱き合う格好になる。暫くアリスに甘える素振りを見せた魔理沙は、ぽつぽつと言葉を紡ぎ出す。


「けどさ・・・アリス、後ろだと背中はきっと寒いと思うんだぜ。私がくっついてれば、湯たんぽいらずでポカポカだぜー。」
「それは魅力的だけど、魔理沙に擦り寄れる事には、変えられないわ。魔理沙の背中、暖かいもん。」


 アリスが魔理沙の背中に手を回して、ぎゅっぎゅっとしてアピールする。すっかり温まった寝床の中で、議論は平行線を辿る一方。この状態はもう慣れたとは言え、ここで下がりたくないのは、魔理沙もアリスも同じであった。お互いに言葉を失い、規則正しい呼吸と、伝わる温もりを感じながら、様子を窺う二人。膠着状態を打破すべく、アリスが先に魔理沙の背中をさすりながら、そっと話を切り出した。


「ねぇ、どうしても後ろが良いの?」
「あぁ、これは絶対に譲る事ができないんだぜ。」
「だーめ、私に譲りなさい。」
「むー」

 ちょっと困った・・・というか、少し不満そうな表情をする魔理沙。しばらくそのままアリスを見つめていると、魔理沙を想う気持ちが根底に強くあるアリスの表情が少しだけ申し訳無さそうな顔に変わった。
 ここで魔理沙の目が光る。これを好機とみなしたのだ、魔理沙は上目使いで涙を浮かべ、何かを要求するようなかよわき乙女の顔をして、アリスに最後の一押しをかける。



「お願い・・・アリス・・・・・後ろ、譲って?」



 これが魔理沙の作戦であった、平行線のまま終わった前回の教訓を元に、アリスの性格を計算に盛り込んだ「お願いすれば折れてくれる可能性」を上げる、と言うものである。一か八かという感じはあったが、いずれにせよ平行線を辿るだけで、妥協した段階で前に行かなくてはならない魔理沙にとっては最善の手段である。アリスが折れてくれる可能性にかけて、魔理沙はアリスをおずおずと見つめ続けた。


ピチューン!!

 
 暫しの空白の後、アリスの中で何かが弾け飛んだ。アリスは魔理沙を思いっきり胸元に抱き寄せて、暫くぎゅーっとしてから、愛しさ全開の顔を向けて、魔理沙に告げる。


「分かった・・・今日は魔理沙が後ろでいいわよ。」
「ホントか、大好きだぜ、アリス。そうと決まれば、早速始めよう!」

 
 ぱぁあと明るくなる魔理沙。そして、魔理沙は勢い良く布団を足で蹴っ飛ばし、華麗に身を起こす。少しだけ悔しそうな顔をしているアリスを組みふせて、満面の笑みを向けた魔理沙は高らかに宣言する・・・






「と、言う訳でよろしくな。今日の買い出しは私が箒の後ろだぜ!」
「はいはい。じゃ、準備して出ましょうか。」

 

 

 手を繋いで、仲良く寝室を出る二人。お昼寝後の寝ぐせを直して、玄関先へと向かう。既に箒を跨いで嬉しそうに待っていた魔理沙が、ちょいちょいっと指で前を指す。ふっと笑ったアリスは、前に腰かけてそっと箒に魔力を流して、空に浮かび上がった。


「所で・・・魔理沙。今晩、上か下か・・・どうする?」
「うーん・・・今日は、アリスに任せるんだぜ・・・私のワガママ聞いてくれたから。今日は、アリスに譲るんだぜ。」
「ありがと、魔理沙。」
「それに・・・だ、前か後ろも考えておく必要もあるんじゃ・・・ないか?」
「もぅ、魔理沙ったら・・・」
 
 飛び上がった2人が勢い良く飛び出す前にこんな事を呟いていたのであるが、その真相は誰も知らない。


「ヤッパリバカジャネーノ!!ネェ、ホーライ。」
「マァマァ、シャンハイ、マスターハシアワセソウダシ、イインジャネーノ?」

 
 主不在の霧雨邸にひそひそと人形達の会話が、誰に聞かれる訳でもなく消えた、ある冬の終わりの何でもない魔法使い達の物語。

―今日も幻想郷は平和である。
 実は箒の前か後ろか考えてたはずが、最後の最後にトンデモナイ事をさらりと言ってしまったでござるの巻。自己主張はするけど、最終的にお互いに譲り合うのが、この二人の愛情の表れなのです。
 
 どうも、狩場での味方の援護のため、ガンランスで前に出たら、後ろからランスにオカマ掘られて吹っ飛んでしまいました、味方に後ろを任せて自分は前に出たがる男・タナバン=ダルサラームです。

 このお話は「上」を取りたいオトシゴロから構想はあったのですが、予想に違わぬ展開になってしまいました。ディベートする人の心理描写、二転三転する感情の表現って難しいですねぇ。この所、地の文を人物視点にしていたので久々に三人称視点に戻してみましたが、ちょっと書かないだけでも、違和感を感じるのが書くことの奥深さを物語っています。

また、次回作もお付き合い頂けると嬉しく思います。

ツイッター →tanaban0831(フォローはお気軽に)
タナバン=ダルサラーム
http://atelierdarussalam.blog24.fc2.com/
コメント



1.斎藤削除
うp乙です!
オチが分かっていても、魔理沙の「お願い」にニヤニヤせざるを得ないのはアリスだけではないはずw
2.名前が無い程度の能力削除
可愛すぎて悶えそうです。
3.名前が無い程度の能力削除
うあああああああああマリアリ可愛いよ!!ピチューン!!
4.奇声を発する程度の能力削除
うおおおおお!!!素晴らしい!!!
5.名前が無い程度の能力削除
簡単な感想でもうしわけないですが良かったです 可愛い
6.名前が無い程度の能力削除
マリアリバカップルきたこれ!可愛すぎてたまらんですなー
7.名前が無い程度の能力削除
ふひひ。可愛いわぁ
朝から笑顔でありがとうございますっ
8.名前が無い程度の能力削除
氏の向上心とマリアリと甘さが加わる事で私はみなぎる