Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

わたしにしかくなんてない

2011/02/16 02:46:32
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ゴォン……ゴォン……
背後から大時計の鐘が聞こえる。終業だ。
「やうやう白くなりゆく山ぎは、ってね。……ふぁあ。夜勤は辛いわ。」
大きな欠伸を一つすると、門番は今夜も一晩守り通した仕事場を後にする。
尤も、この館に打ち入ろうなんて輩は、どこぞの職業魔法使いくらいであるが。

ゴォン……
「美鈴さん、お疲れ様です。」
「ええ、ありがとう。貴女達も頑張ってね。」
日中の警備に当たる妖精メイド達と、すれ違いざまに他愛無い挨拶を交わす。

美鈴の自室は、館とは別に設えられた小屋である。
一般の妖精メイド達は相部屋で寝泊まりするのだが、彼女には、曲がりなりにも一人部屋が与えられているのである。
小屋と言っても別段みすぼらしい訳ではないが、かと言って立派、という程でもない。
紅白のいる神社よりは過ごしやすそうかな、と美鈴は思うくらいである。

ゴォン……
6つ目の鐘が鳴り終わると同時に、小屋の扉を閉める。
「しばらく夜勤続きかぁ……。」
ストーブに火を入れ、帽子をベッドに投げると、体を清める為に浴室に向かい、服を脱ぎ捨てて洗濯籠に入れる。
「……寒い。」
シャワーから出る水が温くなるまで、裸体を刺す寒気と戦わねばならない。
冬が嫌だなぁ、と思う瞬間である。



湯浴みもそこそこに、引っ掴んだ寝巻にそそくさと着替えると、ベッドに倒れこんだ。
「……寒い。」
如月も中ほどに差し掛かり、年間を通して最も寒いと言われる季節である。
今年も例外ではなかったようで、冬の妖精の無邪気な笑い声が聞こえるようである。
しかし、湯浴みで火照った身体と寒気が中和されて、夏に涼風を浴びるような、程よい心地である。寒いのだが、心地よい。
このまま今晩の夜勤に備えて寝てしまおう……。
「おやすみなさい。」
誰に言う訳でもなく一人ごちると、美鈴は布団に潜って、動かなくなった。



「パチュリー、美鈴いるか?」
「……やかましいのが来たわね。小悪魔、追い出しておいてちょうだい。」
「つれないぜ。」
「門に立っていなかったのかしら?」
「いなかったな、ついに館を追い出されたか?」
「それはないわね、うちの門番は案外優秀だって話よ。……それと、人の本に勝手に手を出さないでもらえるかしら。」
「じゃあ、どうしたんだ。あいつに用があって来たんだが。……それと、本は人間様に読んでもらって初めて意味を成すんだぜ。」
「そうね……そうしたら、夜勤かしら。もし夜勤なら、今頃自室で寝てるわよ。……じゃあ私が読んでいる限り、本は意味を成さないと言うのね。って、何持ち帰ろうとしてるのよ。」
「そうか、じゃあ、あいつの部屋に出向くとするぜ。……外の小屋だっけか?酷い扱いだ、そのうち使用人に反乱起こされるぞ?それから、この本は借りてくぜ。」
魔理沙は箒に跨ると、開けっ放しにしてきたドアへ引き返す。
「使用人は2人を除けば妖精メイドよ、反乱を起こす前に全部忘れるわ……って、本、もってかないでー。」

パチュリーには返事もせず、はやる気持ちを抑えて美鈴の自室である小屋へ向かう。
今頃彼女は何をしているだろうか?
疲れて寝ているかな?
邪魔じゃないかな?

……。



ドンドンドン。
「……むぅ。」
ドンドンドン。
「騒がしいわね……。」
めーりん!おい!寝てるのか!
「寝てるわよう……。」
どうやら、魔理沙が来たらしい。開けない訳にも行くまい。
お天道様も幾分高くなっている。ぼちぼち、眠れたらしい。
「今開けるわー。」
ドアノブを捻る。開かない。鍵をしていたのを忘れていた。
鍵を開け、もう一度捻る。
「おはよう。」
「おはよう美鈴、もう昼だけどな。」
へへっ、とお天道様に負けないくらい、眩しい笑顔。
「美鈴はお寝坊さんだな。」
「夜勤だったのよ。ま、立ち話もなんだし、上がりなさいな。」
「邪魔するぜ。」
「邪魔な訳ないわ。」
起こしてしまった罪悪感のあった魔理沙は、美鈴の言葉に肩の凝りが取れたような心地になった。



「温いぜ。」
ストーブからの温風に手を寄せる。
「散らかっていて、ごめんなさいね。」
「甘い甘いこんなの、散らかっているうちに入らないぜ。」
箒をドアの横に立て掛ける。壁に引っかかりが無いので、倒れてしまう。
仕方ないので、部屋の隅に置くことにした。
「貴女は職業柄、ね。」
蒐集家で魔法使いの部屋だ、パチュリーには小悪魔がいるからいいが、片づける人がいないのでは、その様子は想像がつくだろう。
「私も使用人が欲しいぜ。」
「早いところ使い魔でも召喚できるように努力することね。」
「当然だ。呼び出したら、思いっきりこき使ってやるぜ。」
「反乱されない程度にね。」
「おう。」
さっきもどこかで聞いた言葉だな、と魔理沙はふと思った。



他愛無い世間話でも、愛しい人とすると、時が過ぎるのも早いものだ、と魔理沙は思う。
メイドがどこからか私たちを見ていて、嫉妬のあまり時間を操っているのではないかと疑う程に、時間の流れが早く感じられる。
……それは無いか。嫉妬というよりは、騒がしいネズミを追い出す、と言ったところかな。
「魔理沙」
しかして、恋の魔法使いも、板についてきただろうか。実が名に伴う日が来るとは、思わなかった。
「まーりさっ」
「おぉ、なんだ。ボーっとしちまってた。」
この一言、幸せを感じる時だ。いままで名前を呼ばれるのがこんなにも嬉しい事とも思わなかった。
1回目の呼びかけで返事をしなかったのも、もう一度呼んで欲しかったからだ。
面と向かって、名前を呼んでほしい、なんて恥ずかしくて言えない。
「何よ、わざわざ会いに来た癖に、上の空なの?」
「悪い。」
「で。私は仕事までにもうひと眠りするけど、一緒に、寝る?」
「……いいのか?」
上目遣いで美鈴を見る。
嬉しいお誘いではあるが、なんとも気恥ずかしいのだ。

……前言撤回。恋の魔法使いが板につくのは、もう少し先になりそうだ。
「初初しくて可愛いわね、もう。」
「うっ、るさいなあ……」
帽子を深く被り直す。可愛い、という言葉に妙に反応してしまって、いけない。

「ほら、いらっしゃい、魔理沙。」
「……あぁ。」

身体は素直だ。返事をする前から、美鈴を求めて、ベッドに向かっている。

「めいりん」






日が傾く頃には、後日また遊びに来るという約束だけ取り付けて、魔理沙は小屋を出て行った。
今日のところは、あんまり邪魔して仕事に差し支えるといけないから、だそうだ。
その心遣いが嬉しいやら、少しばかり、胸が痛むやら。

とかく、日が沈んで暫くすれば、また夜勤が始まる。
それまで、身体を動かすことにした。
今日も一日が終わり、そして仕事が始まる。



明朝。
昨日と同じように、仕事が終わると、警備を引き継ぐ妖精メイドと挨拶を交わし、6つ目の鐘が鳴り終わる頃には小屋に戻った。
ストーブに火を入れ、帽子をベッドに投げ、浴室に向かい、服を脱ぎ捨てる。
洗濯籠は空だ。昨日の服は、門番をやっている間に妖精メイドが片づけてくれたようである。

昨日と同じように湯浴みを終えると、ベッドに腰掛ける。
「早く来ないかな……」
昨日と違うのは、今日が、如月の、14日ということである。



昔、外の世界でバレンタインという名の神父が、結婚を禁じられた兵士達を不憫に思って、こっそり想い人と結婚させてやっていた、という。
ところがそれが発覚し、バレンタイン神父は処刑されたそうだ。
どういう背景があったのかは知らないが、これだけしか知らない美鈴は、何ともまあ、酷い話だ、と一つため息をつく。

今日は、雪だ。
お陰で、今日の夜勤は、いつもに増して辛かった。
だが、それも忘れるほどの期待が、今日にはある。
愛しい彼女が、チョコレートを持ってきてくれる、という。

今の、外の世界では、なんでも少女は想い人にチョコレートを渡して、気持ちを伝えるのだという。何とも儚く、素敵な話である。

幻想郷にバレンタインデーは余り知られていない。
だが、この館は幸い、何年前だったかパチュリー様の話を聞いたお嬢様が、バレンタインをやる、と言いだしたので、如月の14日にはチョコレートを渡しあう風習がある。
それで、先日、バレンタインには本命のチョコレートをあげるわ、と言われたのである。
嬉しい。その一言に尽きる。

早く、来ないかな。

期待に胸を躍らせながら、ベッドに身体を預けた。



コンコンコン。
「……!」
飛び起きた。急いでドアに駆け寄る。
ドアノブを捻る。開かない。鍵をしていたのを忘れていた。昨日と同じ事をしてしまったな、と思う。
鍵を開け、もう一度捻る。
「咲夜さっ……」
しかし、開け放たれたドアの向こうにいたのは、一人の妖精メイドだった。
あからさまに落胆するのも、何か申し訳ないので、要件だけ聞くことにした。
「……っと、ごめんなさい。何か用事かしら?」
「咲夜さんから伝言です、こちらをお読みください。」
そして一枚、飾り気のない、折りたたまれた便箋を差し出された。

……なんだろう。
ただ、そう思っただけで、何の予想もせずに、折りたたまれた便箋を開く。

―美鈴へ
ごめんなさい、急用が入ったの。
今日は、貴女の夜勤までに時間が作れそうにないわ。
本当に、ごめんなさい。

咲夜


妖精メイドが、お返事は、如何致しますか、と問う。
「ちょっと、待っててね。返事を書くから、持って行ってもらえるかしら。」
妖精メイドは、一礼すると、外でお待ちします、と、ドアを閉じた。




「……咲夜さんの、馬鹿。」
自分に時間を割いてくれない咲夜さんへの恨み。
それは咲夜さんのせいではないのだと分かっているのに、という自己嫌悪。
状況を恨めど、咲夜さんは来ない。

今日は、バレンタイン。外には雪が積もっている。
バレンタインなんか、嫌いだ、と思いたかった。



その日の仕事は、まるで気が入らなかった。
別に、侵入者なんかいないから、誰も困らないのだけれど。



翌日。
やはり、仕事が終わって、湯浴みをして、ベッドに何をするでもなく腰をかけていた。

コンコンコン。
ドアがノックされる。
「……今、開けますよ。」
ドアノブを捻る。開かない。鍵をしていたのを忘れていた。
ここ3日、毎日同じ事をしている気がする。2度ある事は3度ある、ということか。
……鍵を開け、もう一度捻る。
「こんばんは。」
「ええ。こんばんは。差し入れに来たわ。夜勤前にと思って。」
手にしたバスケットを、胸の高さに掲げる。
「ありがとう、ございます。立ち話もなんですから、上がっていきませんか?」
先日同じことを言った気がする。そう気付き、ちくり、となにかが胸を刺す気がした。
「じゃあ、お邪魔するわね。」
「ええ、どうぞ。散らかっていますが、ごめんなさい。」



久々の咲夜さんの来訪に、心が躍る。筈だった。
しかし、昨日の今日だ、素直に喜べない。

昨日に限らず、ここ最近、どうにも彼女と会う機会が得られず、寂しい思いをしていたのだ。
私に時間を割いてくれないのかと、想われていないのかと、不安が募っていた。
私は、人への価値はどれだけその人に時間を割くか、で表されると思っている。
時間は全ての生みの親だ、金も、労力も、時間の使いようによって、全て生み出すことができる。
しかし、逆は出来ない。金も、労力も時間に引き換えてもらうことは出来ない。
咲夜さんでもない限りは。

……とかく、彼女が私の為に時間を割いてくれないことを、不満に、或いは不安に思っていた。
それは、お互いの仕事に都合がつかず、時間を割きたくても割けない、ということでしかなかったし、そのこと分かっていたのだが、どうしても、どうしてもそれが、私には、不満だった。不安だった。自分の中の何かが、どうしても許さないのだ。
一緒にいてくれない咲夜さんを。
或いは、会えない、という状況を。
どうしても、許せない、許さないのだ。
どうしても、思ってしまうのだ。

……私は、彼女の、恋人なのに、どうして、一緒にいてくれないのか、と。



そして、何が拙かったかって。
その思いを、昨日の手紙の返事に、書いてしまったのである。
寂しい、許せない、満たされない独占欲から来る感情を、何も悪くはない咲夜さんに、ぶつけてしまったのである。





「めーりんっ」

ドアを閉めると同時に、咲夜さんが抱きついてきた。
「咲夜……さんっ。」

「なかなか会ってあげられなくて、ごめんなさいね。」
そんな。
「昨日も、突然の事でごめんなさい。でも」
咲夜さんは悪くないですよ。私こそ……。
そう言おうとして、自分の中に渦巻く、寂しいやら、許せないやらの気持ちが、口を麻痺させた。
「あんなに言われると、悲しいわ。」
私より幾分背の低い咲夜さんは、私の鎖骨あたりに顔を埋めて、少し不満そうに言う。
「ごめんなさい。」
それしか、言えなかった。
「被害妄想が過ぎるんじゃないかしら、美鈴。」
その通りです。でも、想われてないんじゃないかって、不安だったんです。
一緒にいる時間を作ってくれないのは、愛想を尽かされたんじゃないのかって、不安だったんです。
「私だって、寂しかったのよ。」
「ぁ……。」
ああ。
会いたかったのは、私だけじゃなかったんだ。
ごめんなさい、咲夜さん。
「兎に角。」
何も、返すことが出来ない。申し訳なさと、自己嫌悪にまみれて、ますます口が重くなる。
「バレンタイン、1日遅れだけど。」
バスケットから、可愛らしく、包装された赤い小箱を取りだす。
「ありがとう、ございます。」
怒られるか、拗ねられるか、或いは愛想を尽かされたかの何れかだとばかり思っていたので、ちゃんと持ってきてくれるとは、思わなかった。
……バスケットを持っている時点で、気付くべきだったんじゃないの、私。
「……ありがとう、ございます。」
小箱を受け取る。
「……いいのよ。でも、あんまりこう言う事が続くと」
「……」
「元の、仲の良い上司部下の関係に戻りたい、って、思ってしまうわ。」
ふるふる、と首を振る。
そんな、嫌だ。
今さら引き返したく、ない。
「分かったかしら。」
「……分かり、ました。」
自分が、縮こまっていく気がする。
咲夜さんより、大きいのに、咲夜さんの言葉に、押しつぶされそうな心地がする。
「ごめんなさい、酷い事、言ってしまって。」
「……いいのよ。」
その、いいのよ、は呆れているのか、愛想が尽きた証なのか。
まだ、疑ってしまう。
咲夜さんは、この腕の中にいるのに。
チョコレートもくれたのに。
疑ってしまう。本当に、被害妄想が酷い、とまた自己嫌悪する。
「それより、ベッド、行かないかしら。」
「ええ。」
「私も寂しかったのよ。ねえ。抱いて、くれないかしら。」
「……ええ。」

身体は素直だ。返事をする前から、咲夜さんを求めて、しまっている。







「……なんか、ごめんなさい。」
ベッドの中で、2人怠惰な時間を過ごす。
「いいのよ。私が求めたのだし。」
そうは言っても、咲夜さんを汚してしまった、という感覚が拭えない。
彼女と身体を重ねるのは初めてではない。
だが、自己嫌悪の、どす黒い渦が身体の底に巻く中で、彼女を抱いてしまったことについて、汚してしまった、という気持ちになる。
「今日は良く謝るのね。」
「……これしか、言えないんです。なんて言ったらいいのか、分からなくて。」
「心変りが早い事で。昨日はあんなに怒ってたのに、ね?」
「ごめんなさい。」
「また謝る。……いいのよ、って言ってるじゃない。」
「……」
何も返せない。なんて言ったらいいのか。
駄目だ。今日一日、何も言えていないじゃないか。



「……あの。」
「なあに、美鈴。」
「好き、です。あの、」
ごめんなさい、と、好き。だけか。私。
なんて勝手なんだ。
気持ちを押し付ける。
許しを請う。
その2つだけか。
「……浮気者めっ。」
鼻の頭を弾かれた。
「きゃ……。」

―彼女は、私と魔理沙が名目上<恋人>である事は知っている。

「尤も、浮気される分には、構わないわ。……そりゃあ、寂しいけれど。」
「そのくらいで動じる幻想郷じゃないわ。」

―それを承知の上で、私と彼女…咲夜さんは、好き合っているのだ。

「しかし、私も好かれるのかしらね。嬉しいことだけれど。」
好かれる?誰に。私に。でも。
「咲夜さん、それって」
その言い方は、まるで、他にも。
「お嬢様にね、好きだって言われるのよ。美鈴には、前から私もお嬢様の気持ちには応えたいって、時々相談してたけれど。」
ああ。
「ええ、そうですね。」
なんとか、平静を装う事は出来たが。
「それだけなのだけれどね。」
「お嬢様のお気持ちに、応えて差し上げるのではないのですか?」
そんなの。
「さあ、貴女次第ね。兎に角、あんまり今回の様に冷たく扱われると、貴女に愛想を尽かしてしまうかもしれないわ?」
「……ごめんなさい。」
敵う訳ないじゃないか。
「だからー。そんなに謝らなくていいわ。……ね?」
咲夜さんが、私を、抱きしめる。
「……ええ。」
でも、彼女のその行動さえも。
「好きよ、美鈴。」
「私も。好きです、咲夜、さん。」
疑ってしまうのだ。好きなのに。彼女の私に向ける言葉は、心は。
本心なのだろうか……。





程なくして咲夜さんは館に戻った。
「お嬢様が起きだす前に。」
だそうだ。
地平線に低く満月が浮かぶ。私も直に仕事の時間だ。

……敵う訳、ないじゃないか。
恋敵は、あの、お嬢様だ。
私と、咲夜さんの、主。
そして、強大な、吸血鬼。
何を取っても、勝れるところがある気がしない。
畏怖の念すら抱く相手に。
どうしろと、言うのだ。


「……ふぁ、あ。考えても仕方ない、かしら。」
そう言って、ドアノブに手を掛ける。今日も、仕事だ。
「あれ。」
ドアノブを捻る。開かない。鍵をしていたのを忘れていた。またしても、同じ事をしてしまった。
寒さで頭がやられてるのかなー、などと思う。
鍵を開け、もう一度捻る。
「今日も頑張りますかー。」
先日の残雪を撫でて冷えた風が、身に染みる。
「しかし。」
小屋のドアを閉めて、目の前に聳える館を見上げる。
「何が、違ったのかしらね。」
「私と、お嬢様とは、何が違って」
この立場の違いは、私と、お嬢様との大きな隔たりは、格の違いは。
……どうしてなのだろう。
などと、理不尽なことを思う。
「咲夜さんは……。」
遅かれ早かれ、お嬢様の物になるのだろう。

―咲夜さんだって、浮気者じゃないか。

その事実はないのに、自分の中で、そう、勝手に決め付けて。

……これが、被害妄想なんだなぁ。
ごめんなさい。

何と言うか。
「私に、人を好きになる資格なんて、ないなぁ。」
そう、一人ごちて、今日も仕事場に向かう。


あ。
「…今日、魔理沙遊びに来るんだったっけ。」

やっぱり。
私に人を好きになる資格なんて、ないなぁ。

でも、永い永い、妖怪の一生だ。
浮気の一つや二つで、なんだ。
このくらいの愉しみ、許されたって良いじゃない。
……だめ、かな。
しかくかんけい?

思うところがあって、数時間で書きました。
こんなもん人に読ませるんじゃねえ!と言われるかもしれないですが、ご安心を。
初めて物を書きましたが、もう書くことも無い、と思いますので。
とかく、もし最後まで読んで下さった方がいらっしゃったとしたら。
感謝感激雨霰であります。

……改めて、物書きの皆様は、凄いなあ、と思います。
心から、尊敬致します。
埴輪
http://
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
おおう、これもまた…
良かったです
2.名前が無い程度の能力削除
幻想郷では、二股がスタンダードなんですね。わかります
メイマリ派な私は、魔理沙を応援しよう
3.名前が無い程度の能力削除
いつか刺される
4.こーろぎ削除
めーさく…なのか?!
おもしろかったです。続編もあるんですよね!
あと、魔理沙の視点があるのならタグにつけては?と思ったのですが
5.名前が無い程度の能力削除
美鈴ぱねぇ
というか良い意味?ですごいダメ女
6.埴輪削除
>>奇声を発する程度の能力様
ありがとうございます。
読んで下さった方に不快な思いをさせないか、ひやひやしておりました。

>>2様
読んで下さいまして、ありがとうございました。
二股がスタンダード、のつもりはございませんでした。彼女ら2人が、たまたま、そうである、というだけのはずです。
何処までを文字に書き起こすべきか…とても難しいのですね…

>>3様
ギェェ……

>>こーろぎ様
メイマリ、めーさく、(レミ咲?)、といった感じです。
え、そんな、続へうぇっ、続編ですか!? そんな、考えてもいませんでした……
しかして、そう言って頂けますのは、嬉しい限りです……>ヮ<
(タグに魔理沙を追加させて頂きました、有難うございます)

>>5様
美鈴は咲夜さんが好きですが、きっと、魔理沙も分かれるほどには嫌い、といいますか、距離をとれないのだと思います、きっと。
駄目女ですが、彼女は優しすぎるからかもしれません。