この話は、ジェネリック作品集62『天子様からのプレゼント』の設定を含んでいます。
「・・・」
ここは『地霊殿』
忌み嫌われた妖怪達が住まう地下都市のさらに奥にある館です。そして私はこの館の主『古明地さとり』と申します。私は相手の【心】を見透かす能力を持っています。その為、この地下世界の住人達にも忌み嫌われています。ですので、外部との接触が無いようこの館にてひっそりと過ごしています。
本来は閻魔様より任された仕事があるのですが、現在はペット達に任せている為、いかんせんヒマなのです。普段は読書かペット達の世話をするだけの日々を過ごしています。正直ヒマです。かと言って外出する気にはなれませんし、誰が館を訪ねて来る事もありません。凄くヒマです。大事な事なので三度言いました、はい。
「・・・」
そんな私は今、読書に勤しんでいます。今読んでいるのは『東方求聞史紀』と言う名前の本です。なんでも人妖等様々な種族に関する事が記載されている面白い本です。以前、お燐が地上で死体を探している際にネズミの妖怪と鉢合わせをし、『私はどうなろうが構わない!この子達には手を出さないでくれないか!!』とか言って来たので代わりに貰った本がこれらしい。あまり外に出ない私には地上の妖怪を知る為に便利です。・・・私の立ち絵が無いのが寂しいです。
そう思いながら本を読んでいると・・・
トントン
「・・・?」
扉を叩く音が聞こえた気がしましたが、こんな館に来るのは杯を持つ鬼か以前の異変の時に現れた白黒の魔法使いぐらいです。あの二人ならこちらの返事など待たずに侵入して来るでしょう。
トントン
「・・・誰かしら?」
疑問に思いましたが、これ以上客人を待たせる訳にはいかないので玄関に急ぎました。
「大変お待たせいたしました」
急いで扉を開けましたが、相手の姿が見当たりませんでした。
「・・・悪戯かしら?」
そう思い扉を閉めようとしたその時、
「あ、あの・・・」
声は確かに聞こえました。でも姿は見えません。外に出ようと一歩を踏み出すと、
コツ
足先に硬い何かが当たりました。視線を足元に向けて見ると、こちらを見上げる緑髪の少女(幼女?)がいました。
「・・・」
「・・・」
私は踏み出した足を戻し、しゃがみ込みました。客人を見下ろした間々というのは気が引けますので
「キスメさん、で良かったかしら?」
「(コクコク)」
彼女の名前は『キスメ』
【釣瓶落とし】の妖怪で、普段は地上への出口より少し地底より辺りに『ヤマメ』と一緒にいるはず。何故こんな所に居るのでしょうか?
「本日はどうしましたか?」
「・・・」
確かこの方は余り話すのが得意ではなかったはず・・・
「ここで話すのも何ですから中へどうぞ」
「・・・お邪魔します」
-客間へ移動中-
「紅茶しかお出し出来なくてすみません。館に訪れる方は余りいないものですので」
「・・・ありがとう」
「・・・」
「・・・」
紅茶を飲みながら先程の光景を思い出します。普段はどのように移動をしているのかとキスメさんを見ていましたが、まさか桶から出てきて、中から取り出したタオルで足と桶の底を綺麗に拭かれるとは・・・そして、拭き終えたタオルは中に戻されて、桶を抱き抱えて歩かれるとは驚きでした。ぺたぺたと歩く姿は正しく幼女でしたね・・・部屋に着き、また桶に入られるのかと思いきやそのままソファーに座られた。桶は靴みたいなもの何でしょうか?
-閑話⑨題-
「・・・」
「・・・」
「無理に言葉にされなくてもいいですよ。心にて会話をしていただければ構いませんので」
「大丈夫・・・たぶん」
「そうですか。では、本日はどのような用件でこちらに?」
「・・・」
「?」
俯き何かを考えているみたいですね。失礼ですが・・・
(迷惑・・・かな?・・・教えて貰うなんて・・・)
「何を教わりに来たんです?」
顔を上げこちらを見つめるキスメさん。私とあまり面識の無い方はやはりこう言う反応をされますね。
「すみません、何時もこうしているものですから。お詫びに私の知る範囲でしたらお教えしますよ?」
「・・・チョコの作り方」
「チョコ、ですか?・・・もうそんな季節ですか。でも、何故わざわさ作ろうと?」
また俯かれましたが、今度は顔が赤いように見えますね?
「【・・・お世話になったのでそのお礼に】ですか」
「(コクコク)」
「作る理由わかりましたが、何故私のところへ?」
先程も言いましたが、地底の人々にも拒絶される嫌われ者の私のところに何故来たのだろうか?
「料理・・・色々知ってるって聞いた」
「誰からそんな事を聞いて・・・もしかして、勇儀さんですか?」
「(コク)」
時折、勇儀さんを筆頭に鬼の大群が地霊殿に押しかけ、有無を言わさず上がり込み宴会を行う事があります。そして何故か私が料理を出す嵌めになり、以前よりかなりのレパートリーが増えたのです。迷惑に感謝するのも何ですが・・・
「・・・チョコを作るのは構いませんが、キスメさんは料理の経験はどのくらいありますか?」
「日に1、2回・・・」
「得意な料理とかあります?」
「ハンバーグ・・・」
「大丈夫だと思いますが・・・取り合えず作ってみましょう」
「(コク)」
調理シーンはカットなので一言だけ。「白装束にエプロン」、結構イケますね。
「・・・出来た」
「初めて作られたとは思えない程上手に出来ましたね」
「///」
「後は冷凍庫に入れて固まるのを待つだけですので、一旦お茶にしましょう。キスメさんは先程の部屋に行かれてて下さい。紅茶を持って行きますので」
「(コクコク)」
-アタイに任せな!-
チョコレートが固まるまでの間、キスメさんと趣味や料理等の話をしていました。
話題に話が咲くと時間の流れは速いものです。
~Caution! Caution!~
「もうそんな時間ですか?タイマーがなりましたので台所へ行きましょうか」
「(コク・・・?)」
-少女移動中-
台所に着き、冷凍庫のチョコの様子を確認して、出来上がりを伝えようとキスメさんの方を見ると、ある物を見ていた。
(あれ・・・かな?さっきの音?)
「そうですよ。そちらが先程時間を教えてくれた『時限タイマー』です。かわいいでしょ?」
「でもこれ・・・」
「地上の河童に時間を教えて貰える物を作れないか頼んだんです。そして、その『時限タイマー』を作ってもらう際に形を聞かれたので頼んでみたんですよ。胸元の目玉(?)を押してみて下さい」
「?」
うにゅ~♪
「他にも色々と喋るんですよ。かわいいでしょ?」
「大事な事なので二回言いました」
「?」
「チョコ・・・」
「そうでした。・・・大丈夫です、綺麗に仕上がってますよ」
チョコレートの仕上りをキスメさんにも確認してもらう。
「カッチカチ」
「後はこれを箱に入れてラッピングするだけですね」
「・・・らっぴんぐ?」
「チョコレートを綺麗な包装紙で包んで、リボンやシール等で綺麗に仕上げる事です」
「出来るかな・・・」
「そんなに難しく考えなくても大丈夫ですよ。私も手伝いますので」
パラノイア♪
「今日は・・・ありがとう・・・楽しかった」
「私も楽しい一日でした。あの・・・キスメさん。その・・・よろしければまた・・・」
「私も楽しかった・・・また来る・・・一緒に料理、しよ」
「///ええ、お待ちしてます」
(桶に入った)キスメさんが見えなくなるまで見送り、館に入ろうとすると、
「どうしたのお姉ちゃん、顔が赤いよ?いくらする事が無いからってお酒に逃げちゃダメだよ?」
「おかえり、こいし。暇でお酒何て飲みません」
「ただいま、お姉ちゃん♪それならどうしたの?」
「何でもないのよ。それより手を洗って来なさい、ケーキがあるわよ」
「お姉ちゃんの手作りか~ほっぺたがハルトマンしないようにしないとね♪」
「お燐と空には内緒よ?」
「は~い♪」
凍らせると言えばやはりチルノかと思いましたのでw
彼女らが普段どんな感じで過ごしているのか、ちょっと興味がある自分がいるww