Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

雪女と天人が殴り合っておでんを食べに行く御話

2011/02/13 22:18:34
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「此処も久しぶりね」

 雪が降り積もった幻想郷の中を私は楽しげに歩いていた

 冬、それは私が幻想郷で活動できる季節

「うんうん、今年も良い感じに雪が積もっているわね」

 辺り一面に降り積もる雪を感じながら

 レティ・ホワイトロックは幾つかの楽しみを胸に

 笑顔で雪道に足跡をつけていた

「皆元気にしてるかしら?」

 一番初めに楽しみにしているのは幻想郷にいる知り合い達に会う事

 レティに懐いているチルノやルーミアを筆頭とするちびっ子達

 冬に宿を借りれる親友である秋姉妹や

 冬の間の組み手の相手をしてくれる紅魔館の門番である紅美鈴

(今年はどんなどたばたがあるかしら?) 

 毎年起こるどたばたを楽しみにしつつ

「そうそう、今年の人気グルメは……っと」

 もう一つの楽しみを思い出し懐から本を取り出す

 毎年、幻想郷での人気の料理を食べる事も

 幻想郷に冬にしかこれない者の楽しみ方の一つである

(そして最後は……)

 レティが本を閉じると背中に担いでいた荷物入れに入れて

 後ろに振り向き、声をかけた

「出てきたら?」

 レティがそう声をかけて暫くすると

 振り向いたレティの目の前に空から大きな石と

「す、少しはやるみたいね」   

「まあ、貴方が居た場所の下に影があった訳だし」

 自分が隠れている事にばれた事に恥ずかしそうにする

 青い髪の女の子がその大きな石の上で腕を組んでいた

「ま、まあいいわ、それよりもそこの妖怪」

「はいはい、なにかしら?」

 ふふんと得意気に此方を指差している女の子に

 ちびっ子達の面倒をみる時と同じように優しくレティが返すと

 女の子が胸を張って言葉を続けた

「黒幕って二つ名を自称しているようね」

「……そんな事も言ってたっけ」
 
 レティにしてみれば、少しだけ恥ずかしい過去なのだが

 まあ、確かにそんな事を言っていた事を思い出して頷く

「ふん!ただの妖怪風情にそんな自称は勿体無いわね」

 目の前の女の子が大きな石の上から飛び上がり

「だからこの私がその二つ名を奪ってあげる」

 レティの前に立ち塞がるとそう宣言した

「なるほど、つまりそれは……」

 その言葉に、背負ってた荷物をそっと雪の上に置き

 手にバンテージをグルグル巻きつけて答える

「私と戦いたいって訳ね?」  

「はっ!妖怪風情が天人に敵うと思っているわけ?」

 


 幻想郷での楽しみの最後の一つが早くもやってきた事に

 レティは少しだけ口元に笑みを浮かべて

「かかってきなさい御嬢ちゃん」

「我名は比那名居天子なり!さあ恐れ慄きなさい!」

 戦いの幕が切って落とされた 





     ・・・





「ぐずっ……うぅ~」

「ごめんごめん」

 それから暫くする頃、ボロボロになったレティが

 涙目の天人を治療し終えて一緒に歩いていた

「でも、本当に天人って強いのね……久しぶりに本気になっちゃったわ」

 天子の治療したレティもその体に焼け焦げた後や

 頭に大きな岩にぶつけられたような怪我

 そして、腕に数箇所の裂傷が見られていて

 決して無事そうには見えない姿である

「……ぐずっ……」

「ほらほら泣かない泣かない、戦いってそういうものでしょ?」

 だがレティの言葉に涙目で頷く天子もまた

 額には大きな絆創膏が張られていて

 その首には包帯が巻かれ、かなり痛々しいものであった

「なんなのよ……」

 負けた相手に治療されてバツが悪そうな天子がぼやくように口を開く

「私の『無念無想の境地』が効かなかったあの技は」

『無念無想の境地』とは天子の攻める時の切り札であり

 ただでさえ強靭な体を持つ天人の天子が

 相手の攻撃を受けると言う覚悟で相手に突っ込んでいくという

 被弾覚悟損害度外視の相打ち戦法に持ち込むものであるが
 
「ごめんごめん、硬い天人の貴方を倒すには」

 突っ込んできた天子に対して、レティが取った方法は   

「しつこいと思えるぐらいのねちっこい投げしか思いつかなかったのよ」



   ―――

「無念無想の境地!これで貴方の攻撃なんて……」

「キャッチ」

「って……えっ?」

 打ち合いに来た天子をレティが両手で掴む

「頭突き!」

 ゴツッ!と言う音が天子とレティの頭から響き渡る

「っ!?ま、まだまだ……「もう一発!」~~っ!」

 少しだけひるんだ天子にレティが更に一本足頭突きを決めると

「パワーボム!」

「くっ……ちょ、調子にのら…「高角度ボム!」りゃう!?」
 
 そのまま両腕で天子を脇から抱えあげて

 切り株を引っこ抜くように強引なパワーボムを二連続で叩き込むと

「ふんふんふんふんふん!」  

「~~~~~~っ!?!?」

 更に地面に背中からたたきつけた天子の足を掴み

 そのまま手を離さずにジャイアントスイングで大回転をくわえて

「だあああっ!」

「づぁっ?」

 高速で回転している天子を空中に放り投げつつ

 レティ自身もそれを追うように飛び上がり空中で掴むと

「スーパーデンジャラスジャイアントブリーカー!」

「がはっ!?」

 捻りを加えた背骨折を天子に叩き込んだのだ



   ―――



「あんなの反則よ反則!」

「まあ、弾幕ルールじゃない事は確かね」

 負けた事を悔しがる天子の愚痴を聞き流しながら

 レティが目的の場所である里に向かって歩き出す

「でもね?天人が『弾幕ルールじゃないから普通の妖怪に負けました』っていえる?」

「そ、それは」

 レティの言葉に天子が悔しそうな顔をする

 天人がその辺の一般妖怪に負ける事は屈辱

 それも、弾幕ルールからギリギリ外れた肉弾戦となれば

 天人にとって有利な戦いのはずである

「ルール外の事を非難するよりもっと己の未熟さを知る事が大切ね」

「う、うるさい!もう一回勝負よ!?今度は負けないんだか……わっぷ!?」
 
 事実を指摘された天子が真っ赤になって

 レティに再び戦いを挑もうとするのをみて

「ちょ、ちょっと!なにするのよ!?」

「ふふっ、似てるわねあの子に」

 レティが笑いながら天子の頭に手を置いて

 くしゃくしゃと頭を撫でる

「くっ!い、一回勝ったからっていい気に……」

 天子が真っ赤になりながらレティの手をのけようとするが

 それよりも先にレティが手を離すと

「弾幕ルールじゃなかった事を謝るわね」
 
「えっ?……ま、まあ私も謝ってくれるのなら……」

 レティに突然謝られて天子が少し慌てるが

 腕を組んでレティを許そうとした時だった

「と言う訳で……よいしょっと」

「きゃあ!?」

 レティが天子を片手でヒョイと持ち上げて自分の肩に乗せる

「な、なにするのよ!お、降ろしなさいって」

 いきなりの事に驚く天子を無視して

 レティが里に向かって歩き出しながら答えた

「今から里で行きつけの御店に食べに行くんだけど」

「食べに行くの!?」

 食べると言われて天子の目が輝く

 天界にある物よりも下界の物の方が美味しい物が多い事を知っているから 
 
「貴方も来る?お詫び代わりに奢るけど」

「行く~♪」

 レティの申し出に一もニも無く答えた



 そしてそれから半刻後

「もしかしてあの御蕎麦屋さん?」

「あそこは駄目、高い癖に安物の蕎麦粉使ってるから」

「だ、だったらあの定食屋さんかな?」

「ん~残念ね旧伽羅亭は何時開いているかわからないのよ」

 その道筋を見ていた天子が不思議そうな様子で尋ねた

「ねぇ」

「ん?なにかしら」

「お店は何処にあるの?」

「もうすぐのはずよ」

 既に里の中にはたどり着いているのだが

 目的のお店の姿は一向に見える気配が無い

 奢ってもらえるからと着いてきた訳であるが

「おなか減った~!早く御店に連れて行って~!」

 もともと我慢するのが苦手であるが故に我慢の限界であった   

「まあまあ天人は長生きなんでしょ?もっとのんびりと行きましょうよ」

「そんな古い天人と同じ考えは嫌よ!」

 そんな天子に対してレティは飄々とした様子で宥めながらゆっくりと歩く

「それに、もう里の中心街からかなり離れているじゃない」

「そうみたいね」

「そうみたいって……こんなところにお店なんて…むぎゅっ!」

 天子がそう言ってレティに食って掛かろうとした時だった

 目の前を歩いていたレティが突然立ち止まった為に

 天子がレティの背中に顔からぶつかった

 その事を何か抗議しようと鼻を押さえながらレティを見ると

 天子に笑いかけながら何かを指差す姿が見えた

「どうやら見つけれたみたいね」

 里の中心から少し離れた寂れた裏路地にその御店は

「おでん屋さん?」

「ええ、おでん屋さん」
 
 おでん屋『寅仮面』と名の打たれその屋台はあった

「へぇ、屋台なんだ」

「さあ、中に入りましょう」
 
 人気の御店と聞いたのでてっきり大きな御店だと思っていた天子が少し驚いている間に

「マスター!とりあえず適当にオススメ二人前ね」

 レティが手馴れた様子で御店の中に入っていたのを見て

 天子も慌てて屋台の中に入っていった
 




     ・・・





「おいしい!」

「ふふっ、天人様の口に合ったみたいね」

 屋台の中で出されたガンモドキを口に含んだ天子が

 開口一番に叫んだ言葉がそれだった

「ちょっと熱いけど濃い目の出汁がじゅわ~って!」

「このダイコンも美味しいわよ?」

「食べる!」 

 目を輝かせてネタを食べる天子を微笑ましく見ながら

「マスタ~何時もの焼酎『竜虎乱舞』お願い」

 レティも何時も飲んでいる焼酎を頼むと

 御店のマスターがスッとコップを差し出す

「やっぱりこれね」

 それをグッと飲み干すと御店の奥にあるメニューを指差した

「マスター?牛スジと蒟蒻追加」

 その言葉にマスターが頷こうとした時

 ゴボ天をハフハフ言いながら食べていた天子が顔を上げた

「あ、私もそれ食べたい!」

 その言葉にレティが苦笑するとマスターに小さく呟いた

「……二人前追加ね」

 その言葉にマスターも何も言わずにただ頷いて二人の前にお皿を出した



 それを食べながら天子が楽しそうにレティに質問を開始する

「そういえばレティって何の妖怪なの?あっ、卵も頂戴?」

「ん、雪女よ?冬の間だけ幻想郷に来てるんだけどね……ロールキャベツ追加ね」

「へー……どうやって生活してるの?」

「ん~、基本的に冬特有の資源と物々交換かストリートファイトの賞金かしら?」

「ストリートファイト?……スイマセン!はんぺんってやつ頂戴」

「まあ、相手を倒すって言うルールと自分のプライドかけた戦いかしら?」
  
「カッコイイ!」

「貴方もやってみる?……マスター『竜虎乱舞』追加!」

「やれるの!?」

「ええ、此処のマスターにお願いしたら色々教えてくれるし……ね?」

「本当!?」

「ふふっ、マスターも昔は名の知れたファイターだったしね」



 おでんを突付きながらレティと天子の二人が

 和気藹々と会話と食事を楽しむ

「そういえば」

「むぐ?」

 そんな時だった、レティがふと思いついた考えを天子に伝えたのは

「天人って世俗の欲から放たれて不老不死になった存在よね?」

「……むぐぅ!?」

 はんぺんと蛸足を食べて幸せそうな顔をしている天子に対して

 ちびちびと『竜虎乱舞』を飲んでいたレティが口を開いた

「なんで地上に降りてきたのかしら?」

 レティの言葉に天子が食べる手を止めて

 言い辛そうにテーブルを見つめる

「何か訳でもあるの?」

 優しい言葉でレティが天子に問いかけるが

 天子は少しだけ肩を緊張させただけで何も言わない

 その様子にレティがポンと手を叩くと

「貴方も飲みなさいこの焼酎」

「えっ?」

 スッと自分が飲んでいた焼酎を差し出した

「酔った勢いで吐き出してスッキリしちゃいなさいよ」

 その言葉に天子が暫く考えながら頷くと

 手渡されたコップを掴みグッと飲み干した





     ・・・





「なるほどね親の上司の付き人だったおかげで両親が天人になれたけど、そのせいで子供の貴方が周りの天人から馬鹿にされていると」

「そーなの!だから~おとーさんが悪いの!」

 レティと一緒に『竜虎乱舞』を飲み干しながら天子が呟く

「おと~たんが……ヒック……もっと『比那名居』の名前を大事にしろ~って……」

 そこまで言うと、天子がテーブルに突っ伏した

「ちょ、ちょっとちょっと……大丈夫?」

 突っ伏した天子に少しだけ驚くレティだが

 そんなレティを尻目に天子が呟く

「おとーたまわ~……わたしより~……『比那名居』の名前の方が~大切なんだ~って……ひっく」 

 そこまで言うと天子がそのまま静かになる

 大丈夫かとレティが天子に近づくと

「むにゃむにゃ……おとーさん」

 寝息を立てはじめたのを見てほっとため息をついた

「はぁ、困った天人のお子様ね」

 その姿を見てレティが天子に膝枕をして

 御店のマスターに目配せをすると

 マスターが頷きレティに毛布を手渡してくれた

「ごめんなさいね?マスター」

 手渡された毛布を眠ってしまった天子にかけると

「全く本当にチルノちゃんと同じで意地っ張りね」

 その頭にそっと手をのせて撫でる

「本人にわかってるのかしらね?」

「む~……パパ~♪」

 膝の上で幸せそうに寝ている天子の頬を突付きながら

 その寝言に頬を緩ませた

「マスター、御酒の御代わりとなにか適当に……」

 そこまで伝えてから首を振った

「……やっぱり御酒だけでいいわ?良い肴が膝の上にあるから」

 寝ている天子を肴にしてレティは再びちびちびと御酒を飲み始めた


「やれやれ、今年の幻想郷の冬はこの子の面倒も見る事になるかもしれないわね」

 そんな呟きをしながらレティがこれから起こりそうなドタバタに心を躍らせながら

「……マスター?飲み代なんだけど、すぐに稼げそうな会場教えてくれない?」

 自分の財布を見て、申し訳なさ気にツケにする事を決めたのだ
「あっ?此処かしら会場」

 次の日、レティは御店のマスターのオススメで

 非合理に行われている格闘大会

 妖怪だろうが人間だろうが構わない勝てば良いと言うその大会には

 多額の賞金がかけられている
 
 その大会に初参戦のレティが決勝に進んでいた

「筋肉大乱闘!」

 そして決勝戦で開幕から強引に突っ込んで行くと

 右フック、左フック、ハンマーパンチからのローキック

 そしてしゃがみ左アッパーを決めてよろめいた相手に対して

「スーパードロップキーック!」

 真正面式のドロップキックで相手を蹴り飛ばすと

 無事に優勝して賞金を手に入れて再び夜におでん屋さんに向かうと 

「はい、これでツケ完済ね」

 マスターにそれをポンと渡した

 その時、珍しくマスターが屋台から出てきてレティに声をかけた



「いやいや、流石御強いですね……」

 久しぶりに声を聞かせたマスターが拍手をしてくれると

「血が騒ぎました、どうです?一勝負御相手願えませんか?」

 レティの前で戦いの構えを取る

「そうね、天子とあの子達が此処に来るまでもう少し時間があるから」

 それに対してレティも口元をニヤリとさせてから

「是非お願いするわね」

 己の手にバンテージをグルグルと巻きつけ始めたのだ







 どうも、名も無き脇役です

 注意してください!家のレティさんはトップアスリートで

 世界のヒーローとも対等に戦えるはずです(多分)

 はい、おでん屋さんの『寅仮面』です

 店長さんは表の顔は、顔を隠しておでんを作るマスターですが

 裏の顔はたまに格闘大会に出て優勝を得るグランドマスターです

 なお、優勝賞金は恵まれない子供達や寺子屋に寄付するイケメンさん

 
 さて?本当はこの後天子がレティの教えと共に

 紅魔館の門の前や地下などに向かって

 幻想郷の様々な所で様々な格闘技の経験を積み

 一人の格闘家になっていく『天子格闘王への道』  

 と言う案がありましたが流石に作品を書く為の技量が足りないので諦めます 

 よろしければ誰か書いてください、お願いしますから  
名も無き脇役
http://
コメント



1.削除
甘いしアスリートだしもう何か自分でもよくわかんないけど幸せです!
2.奇声を発する程度の能力削除
甘くて素敵
3.名前が無い程度の能力削除
あなた以外に、それを書ける人などいるはずがない! 時間がかかってもかまいません! また新たな脇役ワールドを見せてください!
4.名前が無い程度の能力削除
あなたが書かなきゃ誰が書くのか(バンババン)!
レティさんの男前っぷりに乾杯!マスター、竜虎乱舞!
5.名前が無い程度の能力削除
脇役さんのおかげで今日も良い夢見れそうです。
夢の中でレティさんに甘えてきます。
6.名前が無い程度の能力削除
みっさーわ!みっさーわ! あれ、なんだろう目から水が。
7.名前が無い程度の能力削除
レティさんと寅仮面さんかっけえ