Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

私の好きなこと、あなたの好きなこと。

2011/02/09 12:10:11
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誰にだって今はまっていることの一つか二つくらいあるだろう。
ソレは空いた時間の中で見つけたり、長年続けてきた習慣から成ったりするが、大半の拠り所は遊戯である。
そして一度はまると、止めたくともなかなか止められなかったりする。
ペットに猫とカラスが居るのだが、猫は趣味のように死体を集めては、奇怪な容姿や奇抜なポーズをとった物を選別して、燃やさずに自室へ飾ったり、カラスは神の力を気に入り、威力や質力を味わうために試し打ちしている。お家を壊したことがあって、少し迷惑してるけど。

唯一の肉親である姉は、よく分からない。
読書家であり、四六時中読書に耽っているのだが、はまっているという訳ではなさそうだ。純粋にただの暇つぶし。
ペットの世話ってのも有りだけど、半ば義務みたいなものなので適切かどうか言い難い。放任主義で最低限の餌やりと、偶に戯れてやるくらいしかしてないけど。

そもそも姉にはまっていることなどあるのだろうか?
こう思うのも、姉が好きこのんで物事に打ち込むタイプとは言えないからだ。だけれど無気力というわけではない。
最低限の義務や仕事はちゃんとこなすし、ペット達が起こした事件もすべて迅速かつ穏便に対処してくれる。
もしかしたら莫大な時間を持て余しすぎて、飽きてしまったのかもしれない。物事に熱中できなくなってしまったのかもしれない。はまってることなど無いのかもしれない。

そして私は、そんな姉を驚かせるのが大好きなのだ。







ゆらりと後ろに立つ。お姉ちゃんは読書中である。集中しているのか、周りが見えていないみたいだった。辛抱強くそのまま待つ。タイミングが大事なのだ。
読み終わったのか、本をたたんだ。読書後の余韻に浸っている、今だ!

「わっ!!」
「きゃあ!?」

とっても可愛らしい悲鳴を漏らした。
これこれ。これがたまらない。

「おねーちゃんっ」
「こ、こ、こいし!?またあなたですか!」

お姉ちゃんは相当驚いたみたいで、涙目になり、胸に手を当ててた。
ふふふ。今日も大成功。

「し、心臓に悪いですよ!?もっと普通に出てきなさいと言ったでしょう!?!?」
「馴れないお姉ちゃんもお姉ちゃんだよ。私が神出鬼没なのは分かってるくせに」

私は隣に座る。お姉ちゃんは呆れた声で、

「あなたの行為がだんだんエスカレートしてる気がします」
「だって面白いんだもん。はまっちゃったんだもん」
「はまった?」
「うん。お姉ちゃんの驚く顔を見るのが」
「なんと悪趣味な。あなたの能力ですると、気配がないからお化けが突如目の前に現れるみたいですよ。軽くホラーですよ。落ち着いていられませんよ」
「暇に生きるお姉ちゃんに、栄養剤を贈ってあげているんだよ。何もすることのない時間の方が多いんだから、ちょっとはスリルとか臨場感、味わえるでしょ?」
「むむむ……。反論したいのですが、当たっている部分もあります。」
「でしょ?お姉ちゃんの人生に花を添えてあげてるのだ。こいしちゃんはお姉ちゃんのためにしてるのだ」
「そうなんですか?」
「いや、私がしたいってのもあるけど。むしろそっちのが強いかも」
「やっぱり悪趣味です」


姉はあまり感情を表に出す方ではなかった。覚りとして生きてきたのがそうさせたのかはしらないけど、表現できたとしても、顔を見ると乏しくて、本当にそうなのか分かりづらい。
そんな姉を驚かせると、普段は聞けない可愛いらしい悲鳴をあげて、眠たそうな目元を大きく広げる。姉の内面が表れる。そして不思議な達成感と独占欲が沸くのだ。
このような表情をさせられるのは私だけなのだ。他の誰かが意図的に驚かせるのは、まず不可能なのである。驚かそうとする前に覚られてしまうのだから。
だけれど、姉の読心も、私の無意識では無意味なのだ。驚き顔は私だけのものである。そう思うとますます止められなくなるのだ。


「そんなに面白いですかね。驚かせるの」
「結構ね」
「へえ」
「成功するとすっごく嬉しいの」
「そうですか。あなたが楽しそうで、なによりですよ」


そう言ってお姉ちゃんはテーブルの上の紅茶を飲んだ。
口元が僅かに緩んでいたので嬉しいんだな、と思う。お姉ちゃんの心を読めたみたいで、私は顔を綻ばせる。お姉ちゃんと通じ合えてるみたい。







私が心を閉ざしてからは、元々硬い姉の表情が更に硬くなっていた。姉は無愛想な表情を振りまいて、ペット達にいらぬ誤解を与えていたこともある。
だけれど、あの変な人間達が地底に来てから、みんな変わった気がする。少なくとも私は変わった。第三の目が少しだけ緩んだ。少しだけ、昔に戻っている。
目を閉ざしていた私は、姉とこのように接しなかった。ふらふら出歩いて気が向いたら帰る。姉と会っても一言二言会話を交わすだけでまた家を出た。
無意識だから、なんて免罪符にできる訳ないのに。ただ、姉と関わる勇気が持てなくて逃げていた。

あの異変の後、このままじゃ駄目なんだと思った。地上の面白い人間や妖怪が色んなきっかけを作ってくれたけど、その後を紡ぐのは私なんだと思った。
私はロウソクの灯火ほどの勇気を胸に、計画を企てた。

それがお姉ちゃんを驚かそう作戦である。

(ふふふ。大成功したんだよね)

始めてみたら姉は吃驚仰天。しでかした私に制止の声や非難の声をあげるも、その声色は優しいものだった。硬い表情も綻ばせて。
ずっと昔の私達だった。ぎこちなさは残っていたけど、昔交わし合ったやりとりだった。







(あの時が一番驚いてたなー。お姉ちゃん)

にへへっと口元から笑声が漏れる。
お姉ちゃんはそんな私に、

「何考えているんですか。さっきからにやにやと」
「別にー?お姉ちゃん可愛いなあって」
「そうですか」

お姉ちゃんがそっぽ向いた。照れ隠しなのかな?顔が赤い気がする。

「ふふふふふ」

そんな姿を見て、私は緩む口元を止められなかった。

あの時のお姉ちゃんすごく可愛かったなあ。目に涙浮かべちゃって。結局泣いちゃったんだよね。今日のも可愛かったけど、あの時はすごくって。妹の前で泣くとは思っていなかったみたいでさあ。顔真っ赤にして怒ってたんだよね。


まあ、そんな感じで始めたんだけど、スキンシップの枠内では留まらなかったりする。
すっぽりずっくりはまってしまって、主に私の願望(姉を泣かせる)の方に重点が偏ってきている気もしなくもないが、昔の私たちに戻れる行為なので悪いことではない。
犯罪的思考も顔を除かせているのだが、最初の頃のぎこちなさもかなり薄れてきたし、姉も私とフランクになれる機会なので、断じて悪いことではないのだ。決して!
もっとたくさん驚かせよう。泣かせよう。それこそお姉ちゃんにベソかかせるのだ。子犬のように可愛い目で泣かせるのだ。叱って、貰うのだ……!


「ふふふふふ……!」
「な、なんか行き成り、怖いですよ、こいし」
「次どう驚かせようか考えてるだけだよ?」
「は、はあ」

ぱっと、花の笑顔で返事した。腑に落ちないながらも納得してくれた。
ふふふ。私を信じてくれるなんて、さすが私のお姉ちゃんね……!

(今度はどうしよっかなー。お姉ちゃんのスカートとかを……、)

この先考えるだけでもわくわくします。お姉ちゃんを驚かせたい。泣かせたい。
こうして考える時間も愛しいです。お姉ちゃんを思っていると閉じた心が少しずつ開けてきそうで、そのうち昔に戻れそうです。
だからね。お姉ちゃん。私のとっておきのスキンシップで、


「こいし」
「?」


ちゅ。



本当に自然で不意打ちだったので、何が起こったのか分からなかった。

「え?え?え?なに、なに??」
「あら。本当に面白い顔していますね」
「はい?はい?」
「いや、だから…、私もしてみようかと……、ねえ?」

自分がした時もこんな顔なんだろうなあ。
悪戯が成功した、お姉ちゃんのしてやったり顔が目の前にあった。

そして私は、思い出して理解した。お姉ちゃんの仕業を。ふにゅっとした唇の感触を。

「あわわわわ…っ!?、お姉ちゃんっ……、お姉ちゃんが、!?!?」
「か、かわいっ……。た、確かに。これは、クセになる……!」
「!?!?」

顔が熱い。頭が混乱する。って、お姉ちゃんは何言ってるんだ。
私の挙動不審を見て、お姉ちゃんは破顔した。なかなか崩れないはずの硬い表情は、呆気なく崩れて。さっきの私みたいに口元をにやにやさせていた。
普段の物静かで動じないお姉ちゃんはどこいった。私が驚かせるよりも率直に内心を開けてるじゃないか。
私の真似事のくせに、私とベクトルが逆なのが無性に腹立だしい。負けたような気がしてならない。
ああもう!そんなに楽しそうな顔しないでよ!


「お、お姉ちゃんの……、」




誰にだって今はまっていることの一つか二つくらいあるだろう。
ソレは空いた時間の中で見つけたり、長年続けてきた習慣から成ったりするが、大半の拠り所は遊戯である。
そして一度はまると、止めたくともなかなか止められなかったりする。


「馬鹿馬鹿馬鹿!お姉ちゃんの馬鹿!すっごく驚いたんだからね!!」
「すみません。でも、悪い気はしませんねえ」
「ど、どっちが?!」
「さあ」


私は姉を驚かせることにはまっており、姉もまた、私を驚かせることにはまってしまったみたいだ。
ただし、


「またあなたが気づかないようにやりましょう。あなたの驚き顔、とっても可愛いですよ」
「わ、わたしが爆発しちゃうよ!」

私とは違う方法で。






アレンジを加えた物真似は、さとりの十八番ですよ?>さとり
ZOO
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コメント



1.名前が無い程度の能力削除
実は打たれ弱いこいしちゃんかわいいです。
ずっとにやにやしてました。
古明地姉妹かわいい!
2.奇声を発する程度の能力削除
こいしちゃん可愛いよ!!
3.oblivion削除
悪戯好きなところは似たもの姉妹ですねぇへっへっへ
ぐへへ
4.名前が無い程度の能力削除
とても良かったです。
さとこいはいいものだなあ。
5.ワレモノ中尉削除
頬がニヤニヤしたまま戻りません。
どうしてくれますかいいぞもっとやれ。
6.名前が無い程度の能力削除
グッジョブb