Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

力の使い所を間違えるとろくな目にあわないのはこの世の理

2011/02/05 14:00:51
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「……ユキ、ユキ」
草木も眠る時間帯、マイに揺すられてユキは目を覚ました。
「ん……マイ、どうしたの?」
めっきり寒くなった気温を肌で感じながらユキは目を擦る。
「……トイレ」
「行きたいの?」
マイはこくこくと頷く。
「一人で行ってくれば……」
マイはふるふると首を横に振る。
「もしかして……恐いとか?」
マイは首を横に振る。
「じゃあどうして私を起こしたの?」
「…………」
無言のマイ。しかし足だけがもぞもぞと擦り合わされている。
「本当の事を言わないと、私はまた寝ちゃうよ」
「…………一人で廊下は恐い」
ユキの言葉に、マイはほとんど聞き取れないような小さな声で言ったが、付き合いの長いユキはしっかりと聞き取れたようだ。
「もう、仕方ないなー。マイは私がいないと駄目なんだからー」
「……うっさい」
「あー、いいのかなー?そんな口きいてー」
「…………ごめんなさい」
不服そうなマイを見て、ユキは嬉しそうに笑う。
「よし、じゃあ行こう。漏らしちゃう前に」
「……漏らすとか言うな」
もじもじと足を擦り合わせるマイに歩調を合わせ、ユキはニコニコしていた。
しばらく暗い廊下を二人で歩く。ユキもマイにちょっかいを出すとはずみでダム崩壊……という可能性を配慮して大人しくしていた。
そしてトイレの前に辿り着く。
「……待っててよ。勝手に帰らないで」
「分かってるよ。ほら、早くいっといで」
マイはもじもじとトイレに入っていく。










「……お待たせ」
用を足し、戻ってきたマイだったが、ユキの姿が見えなかった。
「……ユキ?」
名前を呼ぶが返事はない。
「……ユキ」
相変わらず静寂が続く。
「……ユキ!ユキ!」
珍しくマイは声を大きくする。
しかしユキは出て来ない。
「……ユキぃ」
泣きそうな声で呟くマイ。その背後に黒い影が忍び寄り。
「わっ!」
「~~~~~っ!!!」
悲鳴すらでない程、声にならない声を上げる。
「あはは、驚いた?」
「…………」
笑う黒い影、ユキに対してマイは、その場に座り込んでしまった。
「わあっ!マイ、大丈夫!?」
「……腰抜けた」
「そんなに驚いたの?」
「……バカ」
そう言うマイの目は涙で潤んでいた。
「ごめんね、マイ。……でもさっきの『……ユキぃ』って言うの可愛かったから、もっかい言ってよ」
「……言わない」
「お願い!」
「……やだ」
「ならこうだ!」
そう叫ぶとユキは廊下の暗闇のなかに走っていく。
「あ……ま、待って」
マイも急いで追い掛けようとするが、腰が抜けていて立ち上がれない。
「……ユキ、ねぇ」
暗闇に話しかけるがやはり返事はない。
「……ユキ、怒るよ」
廊下にはマイの声だけが響く。
「…………ユキ?聞いてる?」
やはり返事は聞こえてこない。
「…………」
やがてマイは静かに嗚咽を漏らしはじめた。
「あぁ!マイ、ごめんね!泣かないで!」
マイが泣く声を聞いて、ユキは暗闇から飛び出して抱き着いた。
「……ユキの馬鹿。もう知らない」
「ごめん!もうこんなことしないから」
「……ほんとに?」
「うん!ほんとほんと!だから機嫌直して、ね?」
「…………」
無言でユキを見ていたマイだったが、やがて右手の人差し指を自分の頬に向けた。
「……キス」
「え?」
「……お詫びのキス」
「私が……だよね?」
無言で頷くマイ。
それに対してユキは、自分からするのなら頬にキスぐらい簡単なのだが、相手に言われると何故か妙に緊張してしまうらしく、顔を赤くして唸っている。
「……早く」
「わかったよー……」
諦めたようにユキは頷くと、音も無く静かにキスをした。
「……♪」
「あはは、じゃあ部屋に戻ろうか」
「……待って」
立ち上がろうとしたユキはマイの方を向く。
「……おんぶ」
「あー、腰抜けちゃってるんだけ?」
「……誰かさんのせいで」
「だからごめんってー」
唇を尖らせたユキだったが、すぐにマイに背を向けてしゃがんだ。
「お乗りくださいマイプリンセス」
「……うむ」
ユキに体重を預けたマイは心なしか嬉しそうだった。
「よっと……うぐ……マイ、太った?」
「……太ってないもん」
「でも最近甘いものばっかり食べてるよーな」
「……その分成長してるから」
「の割には身長もおっぱいも私の方がおっきいみたいだね?」
「……ユキは頭はスカスカ」
「お腹ぷにぷにマイちゃんよりはいいもーん」
二人で楽しそうに皮肉を言い合い、廊下を進む。
「……ぷにぷにでもいいもん」
「ぷにマイ、ぷにマイー」
「……ふっ、何とでも言うがよい。私はそんなに子供じゃない」
余裕たっぷりにマイは言う。
「おでぶー」
「………………」
「うごっ……無言で首絞めないで……」
「……訂正しろ。そんなに太ってない」
言って背中からユキの首を締め上げる。
「はぃ……マイさんは……太ってまぜ……ん……」
「……よかろう」
「はあぁ……危ない……なんか仕事しないで寝てる死神が見えたよ……」
空気を吸い込み一息着くユキ。その背中にはさっきまで怒っていたが、今はすっかりご機嫌なマイが我が物顔でいる。
「それにしてもさー、久しぶりだね。私がマイをおんぶするなんて」
「……そうだっけ?」
「そうだよー。昔はのマイは一人でどっか行っちゃって、私が探しに行くとしくしく泣いてるんだもん」
「……あー」
昔の話をされ、マイはばつが悪そうな顔をする。それを知ってか知らずか、ユキは続ける。
「行く先々、絶対迷子になっちゃうんだもん。重度の方向音痴なんだろーね」
「……それは自覚してる」
「それでさ、私が大丈夫ー?って声を掛けると、慌てて涙を拭くの。もう何回目だか分かんないのに、それでも隠そうとするんだもんね」
「……あの時はばれてないと思ってた」
恥ずかしそうに呟く。
「あはは、まだまだちびっ子だったからね」
「……今もだけどね」
「そうだよねー、昔は同じくらいだったアリスも、今は私達よりおっきいもんね」
「……思えば迷子になった頃からほとんど成長してない」
「あはは、中身はもう妖艶な大人の女性だけどね。それでさ、泣いてたマイは私を見るといっつも同じ事言うんだったよね」
ここでユキはマイの真似をするように無表情になる。
「「……ユキ、迷子?」」
二人の声が重なり、ユキは「あはは」と、マイは「ふふ……」と笑う。
「マイはほんとに負けず嫌いと言うか、強がりだもんね」
「……ユキには負けたくないと思ってた」
「思ってた?なら今は?」
「……負けてもいいの。お互い苦手な所を補い合う。……私達は二人で一つだから」
恥ずかしがるでもなく、マイは言う。それを聞いてユキはいつものように笑った。
「あはは、マイもたまには良い事言うね」
「……むしろ毎日が名言」
「あはは、迷言の間違いじゃないの?」
話しているうちにユキは一つの部屋の前で立ち止まる。
「……もう戻ってきたの?」
「んーん、ここは夢子姉さんの部屋だよ。」
「……悪戯?」
「やっときますか!」
輝く笑顔で二人は頷きあう。











「夢子さん、夢子さん」
揺すられて私の意識は覚醒していく。
「ん……」
目を開けると、メイド服を着た少女が目に入る。最近入ったばかりのメイドだったはずだ。
「あ、お目覚めですか?」
「もしかして……私寝坊した?」
「は、はい……」
私に気を使いながら苦笑いする。
「悪いわね、すぐに着替えるわ」
ベッドから出てクローゼットに向かおうとすると……
「ゆ、夢子さん、その格好……」
「え?」
視線を下に向ける。
今の私の格好は水着。
紺色で上下の繋がった、俗に言うスクール水着だ。丁寧に胸には『夢子』と名前が書かれている。
「なっ!な、な、な……」
急いでクローゼットを開くが、その中にも同じような水着が並べられているだけだった。
「ゆ、夢子さん、その……わ、私は何も見てませんから……」
起こしに来てくれた子も必死にフォローしてくれようとしているが、どうしようもない。










「睡眠魔法、そろそろ解けるくらいかな?」
「……メイドが起こしに行ってた」
「あはは、それはまた面目丸つぶれだね」
パンデモニウム、屋根の上にてユキとマイは悪戯の結果について話していた。
「……おそらくもう聞こえてくるはず」
「そうだねー。さて、逃げる準備準備。今回は逃げ切れるかな?」
「……二人なら力を合わせれば大丈夫」
「そうだね、そうだよね!あはは、マイも分かってきたねぇ」

『ユキィィィィィィ!!!!!マイィィィィィィ!!!!!』

怒声がパンデモニウムに響く。
「逃げるよ!」
「……合点」
パンデモニウムの日常を彩る二人の悪戯っ子は、高く空へと舞い上がった。
「……まさか3分で捕まるとは」
「さすが魔界のナンバー2……」
「褒めても何も出ないわよ。そんな軽口叩けるのなら、覚悟は出来たのね?」
「「出来てないです」」
「それはお気の毒様……。覚悟しておくんだったわね」
「えっ?ま、待って……!」
「……ゆ、ユキ、どうしよう」
「なら5秒だけあげるわ。充分でしょう?はい、5……」
「待って待って待って!」
「……ごめんなさい」
「4」
「いや!助けて!」
「……許して」
「3」
「お願い!お願いです!許して下さい!」
「……私は死にたくない……お願い……助けて……許して……」
「2」
「もう二度しません!夢子姉さん、ごめんなさい!マイだけでも許して!」
「……私はいいから、ユキは見逃して……お願い……」
「駄目よ。1」
「マイ、ありがとう!世界で一番大好きだよ!」
「……ユキ、愛してる。来世でも一緒に……」
「……0」





「あー……ユキちゃんマイちゃん、また悪戯したのねー。アリスちゃんも夢子ちゃんへの悪戯はほどほどにね」
「ねぇ、ママ……なんか、これ……断末魔?」
鹿墨
http://haisuinozin.jugem.jp/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
恐がりなマイもいいな
2.奇声を発する程度の能力削除
この二人可愛すぎる…
3.名前が無い程度の能力削除
いつも通りの素晴らしさ。
4.名前が無い程度の能力削除
くそぉ、萌える