Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

主従宣言

2011/02/04 02:45:22
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―――咲夜。私の可愛い咲夜。

よく頑張ってくれたわね。長い間のお仕事、ご苦労様。
労うことしかできないけれど、貴女には本当に感謝しているのよ。

紅霧異変を起こしたり。永夜異変を解決しようと奔走したり。
私は楽しかったけれど、今思うと、貴女には迷惑のかけ通しだったわね。

今更だけど、ごめんなさい。……もう、届かない言葉だけれど。

覚えているかしら?貴女と主従関係を結んだ日のこと。私は、今でも鮮明に思い出せるわ。
あの日、私は貴女に、メイドとしての仕事と心構えを教えただけじゃなく、色々とワガママな注文を出したのよね。



「貴女は従者なんだから、私より先に寝てはイヤよ」
「もちろん、私より後から起きて来るなんて論外」
「食事は、どんな時にでも、とびっきりのものを作って」
「それから、いつも、いつまでも、美しくありなさい」

「でも、貴女は人間だから……。自分にできるだけでいいわ。そう、できる限り私に尽くしてくれれば、それで構わないから」

最後に一言そう付け足したら、貴女は少しだけ微笑んで「仰せのままに」と言っていたわね。



咲夜。貴女は、私があの日言った事を、いつまでも忘れずにいてくれた。

朝寝坊をしたことなんて一度もないし、それでいて、夜も毎日遅くまで仕事に励んでた。
今思えば、私は貴女の寝顔なんて、ただの一度も見たことがなかったかもしれないわ。
きっと可愛かったでしょうに、それが少しだけ心残りね。
でも、ただの人間にここまでできるものなのかと、私は密かに驚いていたのよ。

……そういえば、貴女にはこんな事も言ったんだったっけ。



「人の陰口なんて、絶対に言わないこと。そんなことは、つまらない人間のすることだわ」
「簡単よ。出会う誰をも愛すればいいの。ただ、それだけの事なのよ」



咲夜。勝手気ままな主やその友人、おまけに妹まで持って、愚痴を言う事も許されない貴女は、さぞ大変だったでしょうね。

自分で言うのも何だけど、もし私が、私のような性格の主に仕えなければならなくなったとしたら、おそらく三日と持たないわ。
他にも、パチュリーの実験が失敗して館が大変なことになったり、面倒な来客が毎日の様に現れたり。
いくら何でも、嫌になったこともあったでしょう。逃げ出したくなったときだって、きっとあるはずよね。
なのに、貴女は不平も不満もこぼすことなく、ずっと私の側にいてくれた。

咲夜。それは、あの日私が言った言葉を覚えていてくれたから?



「貴女は私のところへ家を捨ててくるのだから、帰る場所はないと思いなさい」
「その代わり、今日から私が貴女の家よ。私の行く場所が、貴女の住む場所になるのよ」



主従の契約を交わしてから、今まで。
いつだって、咲夜は私の隣で、微笑んでくれていたわね。



最後の日にも、貴女は私より早起きで。
いつもと何も変わらない、美味しい食事を作ってくれた。
もちろん、その姿はシャンとして、美しいものだったわ。

八雲藍に、魂魄妖夢。
幻想郷にも様々な従者がいるけれど、私の従者が貴女で本当に良かった。
貴女のような従者を持つことができた私は、最高の幸せ者よ。





咲夜。貴女は、あの日の約束を、たった一つだって忘れることなく守り続けてくれたわね。

だから。
私も、今こうして隣に居る貴女に、あの日に交わした『もう一つの約束』を果たそうと思うわ。

こんな約束を守ったところで、それは単なる自己満足に過ぎないかもしれない。
貴女にとっては、別段嬉しいことでもないのかもしれない。
それでも……これが、私にできる、主としての最後の勤めだと信じて。

ねえ、咲夜。貴女も覚えてるわよね?これが、あの日の約束だったでしょ?










「年をとっても、たった一日だって、私より先に逝っちゃダメ。これだけは絶対よ。死にゆく私の手を取って、涙の二つもこぼして見せなさい」
「その時には『貴女のおかげで素晴らしい日々が過ごせた』と言ってあげる。必ず、必ず言ってあげるから」










咲夜。
さよなら。貴女のおかげで、私は最後の数十年、とてもよい時間を過ごすことができた。

咲夜。
今まで、こんな私に愛想を尽かすことなく、ここまで長く付き合ってくれる従者はいなかったわ。

咲夜。
館に残った皆の事を、これからも頼んだわね。





咲夜。
……ありがとう。
(……なんてことになったら、この子はどういう表情をするのかしらね)

「お嬢様、どうかされましたか?」
「何でもないわ。それより、紅茶を淹れて頂戴。砂糖多めでね」

――――――――――――――――――――――――――

どうも、ワレモノ中尉です。

定食屋にて、『関白宣言』という曲を聞きました。
1時間後には、こんな話が出来上がっていました。
執筆速度は過去最短。歌の力すげえ。こんなにスラスラ書けたのは初めてかも。

『たまには、いつもと違う雰囲気で』ということで、珍しくギャグも何もない作品ですが。
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
それでは。

※2月6日 追記

>アジサイさん
関白失脚聞きました。若干切ないですが、これからも頑張ろうと思える良曲ですね。
ありがとうございました。
ワレモノ中尉
[email protected]
http://yonnkoma.blog50.fc2.com/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
俺より先に、寝てはいけない。俺より後に、起きてもいけない。飯は美味く作れ。いつも綺麗でいろ。出来る範囲で、構わないから。
2.奇声を発する程度の能力削除
しんみりとして素晴らしかったです…
3.名前が無い程度の能力削除
咲夜が死ぬかと思ったら逆でしかも想像でした。
4.アジサイ削除
「関白宣言」の歌のオチはひどいギャグでしたので、そういった展開になるのかと思ってました。
ちなみに「関白宣言」のオチの歌では
「オレより先に寝てもいいから夕食は残しておいてください」
みたいな感じに、立場が逆転してしまった結婚生活が歌詞になってます。
5.アジサイ削除
連続で失礼します。
オチの歌は「関白失脚」です。聴いてみてください。
6.名前が無い程度の能力削除
タイトルだけで関白宣言かなとおもったけど、やはりそうでしたかw

…サダマサシシリーズデオハナシツクッタラオモシ(ry
7.プロピオン酸削除
カリスマ崩壊なんてあり得ないね