「霊夢さん、こんばんは~」
「こんばんは~。……じゃないわよ!」
私は部屋に転送された瞬間、小悪魔に向かって紙切れを投げ付けた。
そこには昨日に行われた投票の結果が印刷されている。
「あんた3票ももらっちゃってるじゃん! もう少しで吊られるところだったじゃないの!?」
「えぇ……危ないところでした……。 チルノさんには悪いですが、彼女がいて助かりましたね」
確かに、完ステ……つまり終始無言だったチルノに6票も集中したおかげで、小悪魔は吊られずに済んだ。
チルノが村人だったら、ましてや人狼であったならラッキーだ。
他に吊られて困るのは【狩人】だけだが、チルノが役職持ちは考えられない、と皆も言っていたし、私もそう思う。
「あんたが吊られたら、私一人になるのよ? ドシロート一人でどうしろってのよ……」
「はい……すみません。明日もグレランになるようだったら、私も共有COした方がいいですね」
……あ。
そうだ。
私ったら、なんで小悪魔を責めるような事を……。
小悪魔が疑われたのは、きっと、私に「共有CO」を促そうと、危なっかしい発言をしたからに違いない。
……つまり、私のせいなのだ。小悪魔が吊られかけてしまったのは。
「……ごめん。小悪魔」
「え? 何がですか? あ、っていうか『グレラン』とか、そういう用語分からなかったですよね? 夜の会話も30分しかないんです。今のうちに色々と教えておかなきゃ……」
「うん。なんとなく皆が使っている用語について、私なりに推理してみたわ。これも小悪魔のおかげよ」
そう。昨日の会話の記録を見ていて、私は気付いたのだ。
小悪魔は必死に、怪しまれることを覚悟して、私に色々な情報を与えてくれていたという事に。
そのおかげで私は、今ここにいる。
まだ生き残っているのだ。
「二人で協力するのが【共有者】の武器ですから! さぁ、まだまだ覚えることは沢山あります。授業開始ですよ!」
そこから私は、小悪魔から“汝は人狼なりや?”について、ありとあらゆる事を教えてもらった。
専門用語やセオリー、ノウハウ。私たち共有の仕事。人狼の見分けかた。
必ずしも正解がないのが、このゲームの特徴らしい。敵も味方も生き物同士、各々の考えがゲームにどのような影響を与えるかは誰にも想像がつかないからだ。
それでも私は、小悪魔から教えてもらった事が、とても心強かった。
きっと小悪魔は教え上手なんだ。シロウトの私にも分かりやすく教えてくれる。自信をつけさせてくれる。
……このゲーム。役職とかはランダムで決めるはずなんだろうけど。
もしも紫が配役に手心を加えているのなら、私は感謝しなければならない。――小悪魔と【共有者】にしてもらった事に。
そして、2日目の夜。私たちは最後に約束をした。
「あんたも普段、魔法使いにコキ使われて疲れてるんでしょ?」
「えぇ!? いえ、そんな事は……」
「秋の味覚と紅葉狩り。私たち二人で、頂いて帰りましょう。それで日頃の疲れを癒すのよ」
「……はい! 勝ちましょう!」
すきまを通って、またやってきた。
この人狼潜む村。その討論場へと。
私は正面に座った小悪魔と、一瞬だけ視線を交わした。……良かった、私も小悪魔も噛まれなかったみたい。
やがて全員が席につく。その顔にはお互いを疑い合う、猜疑。または余裕。それぞれの表情が張り付いている。
さて、狼は最初に誰を噛んだのだろうか……。っと……
……あれ? 15人いる?
誰も、噛まれて……いない?
アナウンスが流れると同時、今日も一気に会話が流れこんできた。
パチュリー:「占いCOアリス◯よ」
早苗 :「占いCO小悪魔さん◯でした」
慧音 :「霊能COチルノは◯だった。まぁ、残念だが当然の結果だな」
大丈夫。私は落ち着けている。
小悪魔から教えてもらった通り、一日の始めは【占い師】と【霊能者】のCOから始まった。
そして占いの結果は、アリスと……小悪魔に◯か。これで今日グレランになっても小悪魔が吊られる心配はなくなった……。
昨日吊られたチルノが◯だっていうのは、当たり前かしらね。
役職のCOが終わると、村人たちは当然。死体がなかった事に話題を向ける。
鈴仙 :「うーん。狩人さんGJかしら」
妖夢 :「GJ? 狐噛み? どちらでしょうね」
咲夜 :「いや、狐噛みでしょ。狩人は共有護衛が鉄板じゃない。そこを狼が噛んでくるとは考えにくいわ」
藍 :「ふーむ。いきなり占いを噛みにいって護衛成功も考えられるが……。3日目の平和は狐噛みと考えるのが妥当かな」
妹紅 :「これがGJには思えないわ。狩人探しでグレーを噛んで、狐を引いたか。……狼さん、狐の告発は早目にね」
平和な朝。
つまり誰も噛まれなかった日。
この事態についても、小悪魔は昨日、私に教えてくれていた。
平和な朝になる可能性は2パターン。
1つ目は【狩人】が護衛している人を、人狼が噛んだ場合。(これを狩人への賞賛の意を込めて『GJ』というらしい)
2つ目は【妖狐】を人狼が噛んだ場合。【妖狐】は人狼に噛まれても死なない。
――『今日の夜、狩人さんが護衛するとしたら……。名乗りでた共有である霊夢さん。パチュリー様か早苗さんの内、狩人が真占いだと思ったほう。霊能の慧音さん。もしくは確定◯に近い星さんですかね。まぁ、あくまでも一般論で、狩人さんがどう考えるかは分からないのですが……』――
昨晩、小悪魔はそんな風に言っていた。
そこら辺が狩人の護衛するべき場所であり、人狼としても護衛される可能性のある場所。だから、そこを噛みにいくのは狼としても怖いのだ。
護衛されれば、吊りと噛みで2人ずつ減っていくはずの村人が、1人だけになる。しかも自分たちの任意で選択する「噛み」が失敗するのは狼としても避けたいのだ。
だから狼は2日目の夜、狩人が到底守らないような、グレーにいる人達を噛む可能性が高い。そしてグレーを噛んで死ななかったという事は、偶然にも狐を噛んだというのが自然。――それが狐噛みという推理のロジックだ。
やっぱり色々と小悪魔に教えてもらって良かったわ。
昨日よりも話についていけてる。
霊夢 :「狐だとしたら、藍とか。かしらね」
魔理沙 :「お前、見た目だけで言ってるだろ……」
藍 :「はっはっは。共有にメタ推理されると困るなぁ」
霊夢 :「冗談よ」
まぁ、狐が本当に狐だったら笑うしかないわね。
ちなみにメタ推理っていうのは、ゲームの中だけの情報じゃなく、例えば相手の性格とか普段の傾向から推理することらしい。でも小悪魔は「実際に顔を合わせてプレイするんだから、メタ推理も立派な推理ですよ」と主張してたけど……。
藍 :「それはそうと、占いの二人は理由無しかな?」
パチュリー:「あるに決まってるでしょ。それじゃ、私からいいかしら? 理由は単純。昨日吊られたチルノに投票した中から、発言が誘導的なのを選んだまで。まぁ結果は◯だったけどね」
アリス :「村人で悪かったわね。……まぁ、助かったわ。共有に疑われているみたいだったし、ね」
アリスが私の方をチラリとみた。
うーん、昨日あんたに投票したのは、ただのカンだ。とは言えない空気ね。
ちなみに「占い理由」は、占い師が本物かどうかを見極める重要な要素らしい。
占い師は言動や何やらから【人狼】と疑わしいところを占うワケだけど、偽物は考える必要がないから占う理由がない。だから偽の理由を作らなければならない。だが所詮、嘘は嘘なのだ。偽の理由には細かな違和感が現れることがある。
村人たちは、その瑕疵を見抜いて占い師の真偽判断の材料にするのだ。
早苗 :「2票もらっているアリスさんに◯ですか。『囲い』のように見えますね。私の理由は明確ですよ。小悪魔さんの昨日の言動は、共有を両方だそうとしていたり、共有の霊夢さんに擦り寄りしているように見えたからです。典型的な人外の行動だと思ったのですが……」
射命丸 :「囲いって疑うなら、小悪魔さんだって3票もらってますけどね。むしろ早苗さんの方が囲ったように見えますが?」
むむ、小悪魔が占われたから安心してたけど、文は小悪魔を疑っているようね。
「囲い」っていうのは確か、偽占い師が狼に◯を出して、グレランで吊られないようにすること。
占いの真偽がつかず、●も出ていない場合。村人たちは間違っても真占い師や真占い師が◯と判定した村人を吊りたくはない。そこで、まだ占われていないグレーから怪しい人物を吊り上げる。
狼としては、出来るだけこのグレランで仲間が吊られるワケにはいかない。そこで偽占い師が狼に◯を出し、グレランの選択肢から外すのだ。
――『【狂人】は誰が【人狼】か分からないから、意図的に囲いをするのは難しいです。そこは狂人の推理しどころですね。また、そういう理由から【人狼】は占いに騙りを出してくることが多いです。【人狼】は誰が【人狼】か分かっていますので、容易に囲いが出来ますからね』――
小悪魔の言葉を思い出す。
狼は占いを騙る事が多い。そう言って小悪魔は、占いの内訳を「真狼」の初日狂人じゃないか、って推理していた。下手したら「狼狂」の初日占いもある、っても言ってたわね……。
でも早苗の◯は共有者の小悪魔なんだから、今日「囲われた」としたらパチュリーの◯であるアリスしかないわね。
あくまでも「囲い」があるとすれば……早苗真のパチュリー狼、って感じかしら。
うーん。でも私以外には、この推理が出来ないのよねぇ。だって小悪魔が共有だっていう事は、みんなには秘密なんだから……。
小悪魔 :「き、共有CO! 相方は霊夢さんです」
え?
小悪魔が名乗り出た!?
あ、えーっと。
確か小悪魔がCOした時は……
慧音 :「む? 本当か。霊夢、確認を頼む」
霊夢 :「は、えーっと。相方は小悪魔で合ってるわ」
魔理沙 :「おー、昨日の投票は危なかったなぁ」
小悪魔 :「すみません。占われてしまった以上、『トラップ』も期待できそうにないので……」
早苗 :「あちゃー。無駄占いしてしまいましたか」
アリス :「共有両方でたのね。トラップ維持して欲しかったけど……」
トラップ。それが小悪魔が【共有者】である事を伏せていた理由だ。
『それで小悪魔。なんだってあなたは共有であることを伏せたのよ?』
『【共有者】は二人一組なので、3人しかいない【人狼】が騙ることは難しく、COした人はほぼ確実に本物であると分かります。だから村側からすると確実に信頼できるし、村の主軸になれるんです』
『それだったら、あんたも出た方が良かったんじゃないの? 私は出なきゃ吊られてたけどさ』
『いいえ、片方が潜んでいるというのは【人狼】からすると、特に占い騙りからすると怖いんです。プレッシャーを掛けられるんですよ~!』
偽占い師は【人狼】に◯を与えてグレランから逃せるのと同時に、無実の村人に●を与えることで「処刑」に持っていくことが出来る。
偽●を吊る流れになれば、その日は潜伏している仲間がグレランの危機に怯えることがなくなる。しかも村は貴重な吊りを無駄にする。――人狼としては実にオイシイ。
だが共有が潜んでいる場合。占い師も偽占い師も潜伏している【共有者】が誰か分からない。もしも、偽占い師が潜んでいる【共有者】に●を与えてしまったら……? 途端に共有COをされて、自分が偽物であるとバレてしまう。それは狼にとって、まるで地雷だ。――これを共有トラップという。
だから【共有者】が両方、もしくは片方だけでも潜んでいると、偽物は●を出し辛くなり、逆に本物による●が真実味を帯びてくるのだ。
しかし、こうして【共有者】がフルオープンになれば、明日から偽物は●を心置きなく出すことが出来る。【人狼】による占い騙りであれば、間違っても味方に●を出す心配がないので尚更だ。
お燐 :「うーん、参ったねぇ。明日からは●祭りになるのかな」
咲夜 :「でも早苗は『囲い』をしている確率が無いに等しい事が分かったわ。村人としては共有COしてもらって、早目に情報が増えたのが嬉しいわね」
妹紅 :「そうかな? 騙りの●出し抑制の為に潜っていて欲しかったけど……」
慧音 :「私がいるから偽占いは●を出しづらいはずだ。共有COは正解だな」
星 :「占いに狼が混じっていて、今日の平和が狐噛みならば、明日あたりに告発代わりで狐へ●を出すかもしれないですね」
鈴仙 :「そんな事を言ったら、出してこなくなるかも知れないですよ?」
アリス :「役職が偽だと宣言する告発よりは、●で告発した方が狼としても有利でしょ? 明日以降、●出しか何かで告発してくれると信じているわ」
魔理沙 :「おいおい、狐噛みが既定路線すぎやしないか? まぁ、そう考えるのが妥当ではあるんだが」
小悪魔 :「と、とにかくっ! 今日のところは◯進行ですし、グレランをいれましょう!」
霊夢 :「そうね、小悪魔に賛成~」
今日はまだゲームが始まったばかり。「吊り回数」にも余裕がある。
昨日、小悪魔に「吊り回数」の計算について習った。その基本は「2ずつ減る」だ。
昼間の投票による吊り、そして人狼による夜の噛みで、一日につき2名ずつ村人は減っていく。今日は平和だったのでチルノの分しか減らなかったが、2ずつ減っていくと仮定し今日から計算すると、ゲームセットまでは次の通りになる。
15人>13人>11人>9人>7人>5人>3人>
(>が吊りを表す)
村が4人以下の時点で狼が全部吊れなければ、基本的には村人の負け。よって最終日の吊り投票を含め、あと7回も吊りが出来る。
ここに、今日のような狐噛みや護衛成功による「平和」が入ってきたり、もしくは占い師による「呪殺」(狐を占って殺すこと)が入って一気に2人が死んだりすれば、数の変動が起きるけど……。
このままいけば、狼3人と狐1人を「7回」の吊りで始末すれば勝ちなのだ。今日はグレランで村人を吊ってしまっても、どんなに最悪の展開でも「3回」のミス猶予がある。だから今日はグレランでいいはず。
っていうか、こんなにゴチャゴチャ考えなくても、小悪魔がそう言ってるんだから、私はそれに従うまでよ。
魔理沙 :「昨日のチルノは分かりやすいスケープゴートだったな。チルノ投票者の中で、得票も少ないのに人外が混じっていそうだ」
お燐 :「そうかい? 結果として共有吊りを免れたし、チルノ吊りは村視点でも好手だったと思うけど」
早苗 :「魔理沙さんの言う通りですねぇ。6票も集まったという事は、人外による投票の臭いがしますよ」
アリス :「ふふ、そんな事を言って、チルノ投票者以外の所にごっそり人外がいるんじゃないの?」
妹紅 :「私は小悪魔に投票したのが怪しいと思うよ。悪目立ちしてたし、チルノと同じくらい分かりやすい投票先だった。それに実際のところ共有だったから吊られてたら村のダメージ大きかったしね。……おや、吊られたチルノ以外の小悪魔投票者って、慧音と早苗じゃないか。ふたりとも役職か……臭うねぇ」
妖夢 :「それはどうでしょうか? 少なくとも早苗さんは、その小悪魔さんに◯をあげているワケですから……。真が濃いと思いますが」
慧音 :「その通りだ。昨日は小悪魔が共有だとは知らなかったのだから、妹紅の推理は当て外れだぞ。私も早苗は真寄りで見ている」
藍 :「そうやって真に擦り寄ると、占われたくない人外の様に見えるよ。まぁ早苗が真だと決まったワケじゃないが」
小悪魔 :「やはり、チルノさんに投票した中に人狼がいると見てもいいかもしれませんね。もちろん、人狼3人が全員チルノさんに投票したというワケではないんでしょうけど……」
パチュリー:「驚いたわ。共有に◯を打っただけで対抗を真にみてるの? まぁ、見てなさい。今日には私が呪殺か●を引くから」
チルノに投票した人……か。
昨晩、小悪魔もこれには言及してたわね。
投票結果っていうのは、それぞれの思惑が滲み出る重要な推理材料。それだけに人狼は、その臭いを消すように、かつ自分たちに有利な投票をするものらしい。
そういう視点から昨日の投票を見てみましょう。
まず、誰もが投票するであろう完ステだったチルノ。これが人狼ではない場合、チルノは人狼にとって投票しやすいスケープゴート(いけにえ)。なぜなら、他にもたくさんの人がチルノに投票するだろうから、その足跡が残りにくい、紛れてしまう。
さらに得票にも注目。仲間からの投票がない人狼は、よほど怪しくなければ得票率が高くなることは少ない。(そこであえて、仲間に投票して疑われないようにする事もあるらしいけど)
ふむ。そう考えると「パチュリー・妹紅・妖夢・藍」がチルノ投票で自分の得票が0。「お燐」がチルノ投票で得票1。か……
パチュリーは占いだから、グレーにいるチルノ投票者は「妹紅・妖夢・藍・お燐」になるわね。
チルノに投票が集まったせいもあって、得票にあんまり差がないわねぇ……。
鈴仙 :「うーん。パチュリーさんは偽物っぽいなぁ。吊りたいですね」
咲夜 :「今? それはないわね。まぁ、私も早苗真寄りだけど」
魔理沙 :「この段階での占い吊り進言か。狐にしては露骨すぎるが……?」
小悪魔 :「ちょっと占い吊りは考えられないですね。すみませんが、却下です」
慧音 :「ふむ。私視点だと占いが●を出してくれない限り、占いの真偽はどうとも言えないな……」
射命丸 :「占いの内訳は分かりませんねぇ。役欠けは間違いないと思うんですが……」
お燐 :「真狂-真の全潜伏もあるかもしれないよ? それで、今日は占いを噛みにきて、護衛されちゃったとかさ」
お燐の言うとおり、真狂(早苗orパチュリー)-真(慧音)で狼が3人とも潜伏しているなら、狼からすると占いはさっさと噛むに越したことはないのよね。
噛まれた【占い師】は本物だったって分かるけど、それで偽物と判断される偽占い師は【狂人】。狂人が吊られても、狼としてはむしろ吊りを消費してくれることになるし。
ありうるかしらね? 狼の全潜伏、昨日の占い噛み。そして……
霊夢 :「占い護衛成功だとしたら、狩人視点ではどっちが本物か分かってるってこと?」
小悪魔 :「護衛成功なら、そうですね。でも私はないと思います、狩人のGJ。占いを噛みにくるとしたら、二日目に【狂人】が【人狼】に◯出しして、狼視点でどちらの占いが【狂人】か分かった場合です。……ですが初日は、どちらも星さんに◯でした。つまり昨日占いを噛みにきたとしたら、真か狂か判断がついていない段階で、一か八か噛みにきたことになりますから」
アリス :「小悪魔の言うとおりよ。今日は狐噛みで間違いないと思うわ」
お燐 :「そう言われると、そうかねぇ。でも全潜伏の可能性は変わらないよ」
魔理沙 :「割とあるけどな。真偽ついてなくても早めに占いを噛みにくる狼」
パチュリー:「……怖いわね。狩人にはしっかりと見極めて欲しいところだわ」
早苗 :「ふふ、真占いは噛まれることよりも、次に誰を占うかに神経を向けるべきですよ」
うーん。パチュリーと早苗は、どっちもどっち、怪しく感じるのよねぇ。
◯を出すのは、ぶっちゃけ誰でも出来る。だから次に●を出してからが勝負ね。
……といっても、私のせいで共有がどっちも出ちゃったから、偽物も●を容易に出してくるんでしょうけど。
アリス :「さて、投票時間が迫ってきてるわね」
妖夢 :「はぁ、吊られたくないですねぇ。幽々子様に紅葉狩りの権利を取ってくるように厳命されているんですよ~」
お燐 :「あーあ。そういう発言してる人に限って、吊られちゃうんだよね」
妹紅 :「ほらほら、ゲーム外の会話は禁止だよ」
藍 :「グレーは8人。狼が3人だから吊れる確率は半分を割るな」
咲夜 :「あら、狐を入れたら人外4人で五分五分の確率じゃない」
射命丸 :「騙りに狼が出ていない、かつアリスさんが囲いではない場合、ですか……。案外とあり得ますね。今日のグレランは期待できます」
魔理沙 :「慧音が偽で、チルノ人狼だったりしたら笑えるけどな」
『昼の時間が終わりました。投票の時間です。各自投票してください』
またもや、私たちは壁で仕切られた。
やっぱり慣れないせいか、会話にはあまり参加できていない。だけど小悪魔のおかげで、私も色々と推理の真似事が出来るようになった。
だから、昨日のような冷や汗ダラダラ顔面蒼白な状態ではなく、ちょっとした余裕を持って、この投票画面の前に立っている。
「さて、ちょっとまとめましょう」
夜を過ごす部屋に置いてある机。その引き出しには鉛筆と白紙があった。
昨晩にそれを見つけた小悪魔は「メモを取ると推理しやすいですよ」といって、メモの一例を見せてくれた。
それを思い出しつつ、私はポケットからそれらを取り出し、自分なりに現状を整理してみる。
―――――――――――――――――――――
霊夢のメモ 3日目
【占い】
パチュリー:星◯→アリス◯
早苗 :星◯→小悪魔◯
【霊能】
慧音 :チルノ◯
【共有】
わたし
小悪魔
【吊り】
チルノ
【噛み】
偏屈妖怪Y→平和
【グレー】
魔理沙・咲夜・鈴仙・藍・妹紅・文・お燐・妖夢(8人)
―――――――――――――――――――――
今日のグレランは、この8人の中から選ぶのか……。
慧音が真霊能だったら、残り人狼は3人。星かアリスが囲いでなかったら、この8人の中に3人の人狼がいるはず……。
私は一人ひとりの会話記録をじっくりと読みながら、色々と考えてみた。
妹紅……は、なんか違う気がする。すごい喋ってるけど、狼だったら、もっと隠れるようにヒソヒソするんじゃないかしら?
そういった意味では、魔理沙や藍はおとなしいわね。でも魔理沙はチルノに投票してないし、外そうかな。
小悪魔がいうには、人狼は「推理する必要がない」から、そういった態度の人を見つけろって言ってたけど。……そんなの分かったら苦労しないわよね。……あえて言うなら、お燐は推理してるかなぁ……あ、でも小悪魔に、それはないって推理を否定されてたし……うーん。
味方である【狩人】だって自分が噛まれないように潜んでいるだろうから、おとなしいところに投票して【狩人】を吊っちゃったら目も当てられないわよね。
うーん。それじゃあ……。ここね!
◇ ◇ ◇
博麗神社村 3日目投票結果
霊夢 (0票)→藍 | 魔理沙 (2票)→お燐 | アリス(0票)→妹紅 | 咲夜(2票)→妹紅 |
パチュリー(0票)→お燐 | 小悪魔(0票)→お燐 | 藍 (3票)→射命丸 | |
慧音 (1票)→お燐 | 妹紅 (2票)→咲夜 | 射命丸(1票)→魔理沙 | 早苗(0票)→咲夜 |
お燐 (4票)→藍 | 妖夢 (0票)→藍 | 鈴仙 (0票)→慧音 | 星 (0票)→魔理沙 |
◇ ◇ ◇
「お疲れ、小悪魔!」
「こんばんは~。噛まれなくて良かったです!」
私は部屋に戻ると、既に転送されていた小悪魔と挨拶を交わす。
今日も二人で相談だ。
「お燐が吊られたのね。小悪魔も投票してるけど、何か気になったところがあったの?」
「そうですねぇ。やっぱりチルノさんに投票した中で、得票が少ないという点。あとは比較的喋るので、グレランでの吊り逃れを意識しているように感じました」
「なるほどねぇ。これで明日、霊能が●だったらいいんだけど」
「今日は狼が吊れる確率も高かったですしね。……囲われていなければ、ですが」
「囲いは星かアリスよね? 占い両偽だとしても、狂人が都合よく星を囲うかしら? 星は村人と見て問題ないと思うけど……」
私は小悪魔と一緒になって、誰が怪しいかとか、どういう展開になるだろうかとか、会話をした。
このゲームに参加していると、本当に誰もが怪しく見えてくる。
いつも一緒に遊んでいる魔理沙だって、私を噛み殺そうとしている人狼なんじゃないかって、疑心暗鬼になる。
だから、絶対に安心できる仲間。【共有者】である小悪魔が、とても頼もしかった。
心を開いて喋ることが出来る仲間がいる。――私は恵まれた役職に就いた。
「うーむ。すごいですね、霊夢さん」
お互いの推理や見解を話し終えて、夜が残り1分となった時だった。小悪魔が、私に向かって、笑いながら言った。
私は少し戸惑いながら聞き返す。
「すごいって……。何が?」
「飲み込みが早いです。急にゲームに参加させられて、ルールすら知らなかった人とは思えない。さっきの推理だって筋が通っているし、私もその線を考えていきたいと思うほどでした」
「そうかしらねぇ? お世辞でも、そう言ってもらうと嬉しいわ。先生」
「……霊夢さんとなら、共有がふたりとも生き残って、村が勝つのも可能な気がしてきました!」
「何よ、自信なさげね。絶対に吊られないんだから、私たち生き残れそうじゃない」
「共有は狼に狙われやすい役職ですから、片方か両方は噛まれてしまう事が多いんです……。二人揃っての勝利って、あんまりないんですよね」
『まもなく夜明けです』
アナウンスが部屋に流れて、足元に違和感がやってきた。そろそろ、すきまが開く。
私たちは、また呼ばれるんだ。あの人狼が潜む“村民会議”に。
だから私は笑い飛ばした。小悪魔に笑顔を向けて。
だって別に噛まれたって、本当に死ぬワケじゃないし。
それに……
「なーに言ってるのよ。昨日も言ったでしょ? 二人で生存勝ちして、紅葉狩りと秋の味覚をゲットって」
「ええ、そうですね。頑張りましょう!」
「まぁ、紅葉狩りっていうよりは、ただの宴会になると思うけどね」
最後に小悪魔が首を縦に振るのだけが見えて、私はすきまに吸い込まれた。
そして、4日目の昼が始まる。
◇ ◇ ◇
ルール知らなくて推理出来ないのが残念なくらいだ
最後の一文でどきっとさせられました。
いい引き方。続き楽しみです。
勝敗付いたら狼側の会話も読んでみたいです
聞いたことだけはありましたが、こんなに奥深いゲームなのですね。無茶苦茶頭つかいますなこれwww
そして小悪魔が噛まれた……だと……。続きがすごく楽しみです。
ところで霊能が狂人や人狼である可能性は無いのでしょうかね。霊夢たちが慧音を疑わないところが気になります。
このゲーム見てる分には面白いんだけど自分ではとても出来る気がしねぇ。
霊夢には確定白として、小悪魔のリベンジかまして欲しいですね!
あ、最後になりましたけどとても面白かったです!
自分も齧った程度なのですが、まだまだ駆け引きの奥深さがあることを思い知らされます。
このゲーム、結果が出た後、人狼側の夜会話も知りたくなってきますよね。
場所によって多少のアレンジが入るなどもあって、本当にこれは奥が深いゲームです。
それにしても、こぁがフラグ発言すぎる(笑)
4日目昼に話が動かないと、4日目夜はもう1人の共有者の霊夢が噛まれることになりそうですが、
この話は霊夢が主人公のようなので、4日目昼は大きな動きがありそうです。
さて、どうなることやら。この後の展開も楽しみにさせてもらいます。
4日目夜霊夢噛みは、そんなに高くなさそうですね(汗)
狩人死亡状態を狙ってくるかもしれませんが。
さて、2日目夜の被害者0がどう動くやら。
あと死亡者がゲームを見て別場所で発言する考察というのも、最後に見てみたいかも。
こういうシミュレーションって考えるのが大変ですよね。続き期待しています。