Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

にとりのポン菓子

2011/01/28 04:42:56
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妖怪の山にドンッという爆発音が響いた。
鳥たちが驚いてギャアギャア騒ぎながら飛び立つ。

「なにかしら」
早苗が首を伸ばすと木々の間から上がる白い煙が目に入った。
爆発音だけなら弾幕ごっこや河童の発明じゃないかと思って気にせずいられるが
煙が上がっているという事は山火事の可能性もあるので、安心していられない。
河童が消してくれるかも、とも思ったがとりあえず様子は見ておこうと思い、
風を集めてふわっと浮かび上がると白い煙を目指した。

早苗の通った後に落ち葉が舞う。
もう紅葉も一番綺麗な時期を終えた。
煙が上がっているのは滝の方だ。

「あらっ!」
目指していた場所にたどり着くと少し煙い位で白い煙はもうほとんど消えている。
そしてそこに河童の姿が見えたので、早苗はほっとした。
「にとりさん、何を?」
「おー、早苗、いいところに来たね」
早苗は音を立てずに地面に降り立つ。
にこにこするにとりの横には少し焦げた謎の機械が置いてある。

「火事でもあったのかと思ってすっ飛んできたら・・・新しい発明ですか?」
「発明ってほどじゃないよ、お菓子作ってただけさ」
「お菓子!」
早苗は思ってもなかった言葉に頬を染め、目を輝かせた。
にとりは早苗の嬉しそうな顔が面白いのか、声をあげて笑う。
足元の桶に米より少しふっくらした粒がどっさり入っている。
「椛が帰ってくる前にもう一度やるからちょっと離れてな」
そう言うとにとりは自分の身長ほどあるかという足のついた釜の口に、ズタ袋に入った米をざーっと入れた。
蓋を閉めると釜がひとりでにくるくると回り始める。

「秋の神から米を貰ったんだ、今年は豊作だって」
「ええ、うちでも頂きましたよ、お米がこんな事になるんですか?」
早苗はにとりの足元の桶を指差す。
「そうそう、外から来たマシンみたいなんだけど、マシンって言うほどのもんじゃないけどさ、一度分解して大きいのを作り直したんだ」
腕まくりをして手袋をはめたにとりは横に置いてあった釜よりもっと大きい長方体の金網を取り付け、トンカチを手に握る。
「離れて離れて」
にとりが腕を上げて早苗を機械から遠ざける。
早苗は二、三歩後ずさるが、機械がどうなるのか見たくてうずうずしていた。

にとりは釜の上に付いている突起部分にトンカチをコンっとぶつける。
その瞬間、ドンッと、さっき聞いた爆発音が辺りに響き渡り、白い煙が立ち込めた。
「きゃっ」
早苗は思ってもなかった事に驚いて目を瞑った。
耳がキーンと鳴る。
「大丈夫?」
「は、はい、びっくりしただけです」
にとりの声を聞いて恐る恐る目を開けると
白い煙は空へと消え、視界が鮮明になった。
「あっ!」
早苗の驚いた声が響く。
さっきまで何もなかった金網の中に白いふっくらした粒がたくさん入っている。
にとりは金網を取り外してざーっと桶に移した。
「すごい!どうやったんですか!?」
こぼれて地面に落ちた米粒を拾ってまじまじと見つめる早苗の瞳はさっきよりもキラキラ輝いている。
「密封した釜の中で圧力をかけて膨らませるんだ、あの爆発は米の水分が蒸発しながら弾けるから起きるんだよ、びっくりしただろ」
早苗はうんうんと頷く。
「一瞬でできたから魔法かと思いましたよ」
「あはは、魔法かあ、まあ魔法みたいなもんだよね」
にとりが笑う。
そこへ白い天狗が袋を抱えてやってきた。

「あれ、早苗さん」
「こんにちは椛さん」
とん、と地面に降り立つ椛は早苗に小さく会釈した。
「水あめをかけたら完成さ」
椛は水あめを取りに行っていたらしい。
袋の中から大きな甕が出てきた。
にとりは甕にたっぷり入った水あめを柄杓で掬い、桶に入ったふっくらした米にかける。
「早苗、良かったら混ぜてくれないか」
「え?は、はい」
これだけ見物してしまった以上、断るわけにはいかない。
というより、早苗の中で手伝い気持ちの方が勝っていた。

早苗は腕まくりをして桶に入った水あめのかかった米を混ぜる。
甘い匂いが立ち込めた。
にとりと椛も一緒になってかき混ぜる。
「外の世界じゃポン菓子って言うんだって」
「あれ、なんだか聞いた事あります、あ!ポン菓子!」
何か思い出したように声をあげた早苗の頭の中には赤いニンジンの姿が浮かんでいる。
「お菓子のコーナーに置いてあった赤いニンジン、あれの事ですね!」
「ニンジン?」
椛がきょとんとした顔で早苗を見る。
「あっ、外ではニンジンの形をした袋に入ってるんです」
「へえ、外の本に作り方は書いてあったんだけどそんな事は書いてなかったなあ、変なの」
「どうしてニンジンなんですか?」
「さあ?それは私も分からないです」
「早苗は食べた事あるの?」
「ええ、小さい頃に・・・でもずっと食べてなかったからどんな味か忘れてしまいました」
「もう外界にはないのかな」
「どうでしょう、そういえばあの赤いニンジンの姿も、しばらく見ていなかったような気がします・・・」
早苗は外の世界の事を思い出す。
スーパーのお菓子売り場の端っこに置いてある赤いニンジン、
自分が大きくなるにつれて見なくなっていった事。

十分混ぜ終わると、後は乾燥を待つだけ。
にとりがせっせとポン菓子の機械を片付ける。
「早く食べたいなあ」
早苗がうきうきしながら桶を見つめる。
「あやややや、何かと思えば」
頭上からする声に顔を上げると、射命丸文が三人を見下ろしていた。
椛が露骨に嫌そうな顔をする。
「変な爆発音は弾幕ごっこではなく、お料理でしたか、それともお料理ごっこ?」
つまらなそうにため息を吐く文は持っていた羽団扇で顔を仰ぐ。
「あっち行け」
椛はしっしと手を払う。
「まあまあ、手伝ってもらおうよ」
にとりが椛の肩を揉んでその場を収めようとした。
椛はまだ少し嫌そうな顔をしつつも、言葉を飲み込んだようだ。
「手伝うって、何を?」
「その羽団扇でパタパタやってください、あとは乾燥させるだけなんです、甘いお菓子ですよ」
「ふうん、お菓子ねえ、私もそんなに暇じゃないのよ」
なんて、ちょっと嫌そうな口ぶりの文だが、
降りてきて桶の前に座り羽団扇を振って優しく風を起こした。
「これお米?」
「ポン菓子って言うんですよ」
隣に座って完成を待つ早苗が少し得意げに言う。
「後で私にもちょっと頂戴」
羽団扇をぱたぱた仰いで背を向けたまま、文はぽつりと呟いた。
「いいですよ」
頷くにとりはその後ろ姿を指差して椛に「ね?」というように笑いかける。
すると椛もふふ、と微笑んだ。

いい塩梅になってきたのか、にとりが手でポン菓子を掬う。
「うん、ばっちし」
乾いたらしい。にとりは掬ったポン菓子を口に入れた。
「美味い」
「あー、私も、私も食べていいですか!」
早苗が目を輝かせながら言うと、にとりが「どうぞどうぞ」と手を広げて勧めるので
早苗も椛も文も手を出して少し掬って口に入れる。
口に広がるのは刺激的な甘さではなく、素朴な味わい。
三人が顔を綻ばせるのでにとりもにこにこ笑う。
「まだあったかい」
「うん」
早苗は「ああ懐かしい」と、いつか食べた味を舌で思い出していた。


秋の終わりを感じさせる風が吹き抜ける。
夕焼けが一番オレンジに輝く頃、
にとりが「次はニンジン型の袋も用意するよ」、なんて言いながら紙の袋に詰めたポン菓子は
それぞれ早苗、椛、文が持って帰った。
椛が持って帰ったポン菓子ははたてに、
文は霊夢に、霊夢から萃香にも届いた。
それからにとりは魔理沙の所に持って行くついでに
秋の神様にもお菓子を届けたらしい。

早苗の持って帰った物は二人の神様の口へ。

「ポン菓子かあ」
神奈子がポン菓子を食べる、その横顔は早苗とよく似ていた。
処女作です。
誤字脱字あるかもです。

感情表現をなるべく省いた単調なものを目指しました。
ポン菓子機械の説明がめちゃくちゃなので知らない人にはわけわからん文章になってしまっているかも。
nini
http://
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
初市なんかで売られていたのを思い出しますね。
確かに味はよく思い出せないけど、食べると懐かしい気分になれるお菓子ですね。
2.名前が無い程度の能力削除
>手伝い気持ち

手伝いたい気持ち
あたりの誤記でしょうか。
それはさておき懐かしいですね、ポン菓子。
軽トラの荷台に装置を載せて巡回してた記憶があります。
3.名前が無い程度の能力削除
あったなあ人参の袋に入ったアレ

小さい頃食べましたよ 今もあるのかな
4.奇声を発する程度の能力削除
懐かしいなぁ…
また食べたいです
5.名前が無い程度の能力削除
農業祭とかでよく見るね、懐かしい
6.名前が無い程度の能力削除
今も駄菓子屋とかにニンジンのがありましたね。周りに聞いても誰も何故ニンジンなのかは解りませんでしたが。
近所の公園で何年か前までやってたなぁ…
7.名前が無い程度の能力削除
近所に機械乗っけたトラックが来たことがあったなあ……
面白かったです。
8.名前が無い程度の能力削除
初投稿お疲れ様です。
ほのぼのと食べ物は好物です、ご馳走様でした。
機械を大きくしたら、なんとも大きい轟音になるでしょうねw

出来立ては希少だけど、にんじんならまだ外界の駄菓子屋やスーパーの駄菓子コーナーにあるんだぜ?
…ところで姉妹品のだいこんを見た者はおらんかね。
9.名前が無い程度の能力削除
懐かしいものを見た。
そういえば最近食べてない。
にんじん…探してみるかぁ。
10.名前が無い程度の能力削除
円盤型や円柱型は結構見かける。ふと食べたくなる味。
11.名前が無い程度の能力削除
妖精達なんかは、ハムスター級にほっぺた膨らませながら笑顔でがっついてるイメージが容易に想像できるw
ぜひ作ってあげてくれにとりさんや。