まだ寒い初春、布団のぬくもりと人の温度の中で目覚めた時、僕は傍らにいた女性を見つめ途方に暮れた。
「…何で慧音が隣に」
そう、隣にはワーハクタク、上白沢慧音がすやすやと幸せそうな寝顔を晒していた。
「何があったかな、昨日」
必死に記憶を手繰り寄せる。
確か、あれは昨日の朝位だったか、僕は朝寝をしていたような記憶がある。
暦の上では春とは言えども、やはりこの時期の朝は布団からの脱出には相当の決心が無ければ難しいものである。
「…寒いなぁ、今日はこのまま布団に入って過ごそうか」
布団から頭の上半分だけを出しながらそんな事を呟く。
だが実際は起きて身支度を整え店を開けないといけない、一人暮らしで誰からも雇われていない身分だから店の休日は自分で決められるのだが。
「今日も誰も来ないと思うしなぁ…」
未だ暖かみを残している湯たんぽに足先を絡めつついつ布団から出ようかと思案する。
しかしこの冬の布団の暖かさと言うのはどうしてこうも万人を惹き付けて止まないのか。
ひょっとしたら布団と言う物体そのものには何か特殊な力があるのだろうか、それならば。
「…考えてみる価値はありそうだな」
そう呟き僕はこの布団から抜け出すことを諦めた。
布団からの脱出を諦めてはや数時間。
僕は布団の持つ力について何の解決を見ることなく寝ころんでいるだけであった。
「何か、どうでも良くなった」
体全体を包み込む暖気と何かに包まれている安心感、これはある種の到達と考えても良いのかもしれない。
「待てよ、ひょっとしたらこの感覚が布団の持つ能力なのかもしれない、な」
一筋の光を見た気になり僕は急いで紙と鉛筆を持ちより書きまとめようとした。
「ま、良いか」
本当に、書きまとめようとして諦めただけになった。
「しかし身の回りにこれ程まで探究心を擽るものがあったか、まるで宇宙だ」
と、その時だった。
襖が開かれ冷たい空気とともに何者かが入ってきたのは。
「…朝から何をしているかと思えばごろ寝か、良い身分になったな、霖之助」
「おや、慧音じゃないか、寺子屋はどうしたんだ」
其処にいたのは里で教師をしている上白沢慧音だった。
「寺子屋は休みだ、それよりどうしたんだはこっちのセリフだ、朝っぱらから仕事もせず寝ているとは」
「これは知的欲求を満たすためだよ、研究さ、何故冬の布団は出るのが億劫になるのか、そして離し難いのか」
「朝寝・朝酒・朝風呂は身上を潰すぞ」
そう言いながら慧音は布団の横に帽子を置いて座り込んだ。
「…それにしてもお前がそうやって寝て、私が傍で座っている、なんだか懐かしいな」
「懐かしい?何がだい」
「ん?お前が風邪をひいたとき、私が看病してやったろ」
「あぁ、そんなこともあったね」
里にいた頃風邪をひいたとき、確かに慧音に看病された記憶がある。
彼女の言うとおり、懐かしい思い出だ。
「僕が良いっていうのに君は毎日のように押し掛けてきてね」
「そんな言い方があるか?折角見舞いに来てやっていたのに」
「まぁ君の作ってくれたお粥は美味しかったよ」
「そうだったのか、安心したよ、お前はあの時はただ頷くだけだったからな」
僕の記憶ではそんなに失礼なことをした気はしなかったが、歴史に強い彼女の意見の方が信憑性が増すだろう、不本意だが。
「僕はそんな無礼な男だったか」
「責めてるわけじゃない、私だって好きでやっていたんだ」
「そうか」
「そうだ」
しばらくの沈黙の後、慧音は僕の額にその冷たい掌をあてがいながら聞いてきた。
「布団の力について結論は出たか?」
「いいや、出そうにない」
「何か手伝えることはないか?」
「特には無いね」
布団の中からの暖気で上昇した体温を慧音の手が冷やす。
嫌では無い、むしろ気持ちが良いくらいだ。
「慧音はどう思う」
「どう思うって、何が?」
「冬の布団さ、どうしてこんなに出難いのだろう、君の意見を聞かせてくれないか」
「さぁな、私のモットーは早寝早起きだ、いくら寒くとも長寝はしない」
聞く相手を間違えたようだ、僕は肩を竦めながら笑った。
「考えてみれば慧音はサボりとは無縁だったね」
「それが当たり前だと思うのだが」
一瞬だけ呆れる様な表情を見せた後、慧音は若干笑いながら再度僕に問いかけた。
「で、布団の力について結論は出たか?」
「出そうに無いな、暖かくて眠くなってきたよ」
「そうか」
「うん」
「私も興味が出てきた」
「は?」
一瞬何やら訳の分からない言葉が出てきたため僕は上半身を起こし慧音を見据えた。
「なんて言ったんだ?慧音」
「だから、私も興味が出てきたぞ、布団の力とやらに」
「君の家の布団でやればいいじゃないか!」
「断る!」
駄目だ、目がマジだ、こうなったら手がつけられない。
そう思ったが早いか、慧音は胸元のリボンを解くと僕の布団へ入り込んできた。
「この布団は一人用だ!狭すぎるぞ!」
「ならこうすれば良いじゃないか」
慧音は言いながら僕に体をぴったりと、隙間なんて無いくらいに近付けた。
「確かにお前の言うとおりだ、暖かくて気持ちいいな、これじゃ抜けられないのも無理はないな」
そう言って更に彼女は僕を抱きしめる。
接していなかった最後の部位、顔と顔の距離が遂に零になった。
顔を少しでも離そうとする僕を慧音はがっしりと掴み離そうとしない。
「なに離れようとしてるんだ、狭いんだろ?」
「だからと言ってこの距離は近すぎやしないか?」
「気にするな」
事の顛末を思い出した僕は頭を抱え呟く。
「…あぁそうだ、あのまま寝たんだった」
何時間くらい寝たのだろう、そう思いつつ僕は慧音を揺り起こす。
「慧音、起きろ、朝だぞ」
「…うぅん、わかった」
ぽすん、と言う音と共に慧音を覆っていた布団が落ちると、僕は固まった。
白く透き通った肌、綺麗なピンク色の二つのゲフンゲフン。
つまりは、慧音は全裸だった、そして、僕も全裸だった。
やってくれると
信じてた
省みぬなら
向こうで待つよ
慧霖成分補給できました、有難う御座います!
反省もしない?
なら、もっとやって下さいお願いします
まさか先生g(ry
モンハン面白いですからね。仕方無いですね!
オチで不覚にも笑ってしまったw
>>唯様
待つならば
もう暫しまで
待たれたい
具体的には
三年半か
いえいえこちらこそありがたいお言葉です。
>>2様
えぇ、悪気はありませんし、反省もしません。
…もっとやってくれって、良いんですか?
>>名無し様
まぁ、状況的には先生が霖之助さんの服を(ここから先は粛清されました
>>奇声を発する程度の能力様
お楽しみでしたね、えぇ
>>5様
そうなんです、モンハン面白すぎるのがいけないんですよ。
>>6様
そのオチにするのは僕としては余りやりたくなかったんですねぇ。
>>7様
おぉ分かってくれる方がいたとは嬉しいです。
>>8様
えぇつまり逆(粛清されました
楽しんでいただけて嬉しいです。
>>9様
こういう場合、先生の方が強いんですよ。
何がって?そりゃあフッフーンですよ。