「紫の金髪が羨ましいわ」
雲ひとつない空の下、そんなことを私はつぶやいていた。
雲がないと言ってもその上にあるのだから当たり前だけど。
「突然何かしら?」
背中合わせに座っている紫は振り向かずに訊ねる。
私はそれに応えず、独り言のように続ける。
「太陽みたいにきれいで眩しくて、羨ましい」
手を伸ばして一房彼女の髪を取る。
丁寧に手入れされたそれは、触れると細くて柔らかい。
日にかざすと透き通って美しい。
少し動かすと、安心するような匂いが香る。
「あなたの髪も綺麗よ」
「そうかしら」
「ええ、青空みたいでとても」
そう言われても、多彩な表情を見せる彼女の髪が私には羨ましい。
私の髪は冷たい憂鬱な色だから。
空は天候に合わせて表情を変えるけど、天界の空は青しかない。
雲がかかることもなく、ただただ何処までも青いだけの空。
私はあまりその空が好きではなかった。
誰もいない、寂しさを思い出してしまうから。
知らず、溜息が漏れていた。
「青のイメージは何かしら?」
「なによ突然」
「いいから。何が思い浮かぶ?」
「寂しい、憂鬱、空」
「そう」
そんな私の返答にはお構いなしに紫は続ける。
「青のイメージはあなたの言ったそれ以外にも、安全、無限、不安などがあるわ」
「それがどうしたのよ」
「黄色のイメージは希望、解放、危険」
「ふぅん」
私は髪をいじりつつ相づちを打つ。
1を言うために10を語る奴だけど、今日は一体何が言いたいのか。
「あなたの髪は青。私の髪は金、つまり黄色」
「それが?」
「二つが混ざれば、不安は希望に、無限は解放され、危険は安全に変わる」
紫は私の髪を絡めるように指に巻く。
きっと錯覚なのだろうけど、どうしてかこそばゆい。
「へえ」
「それに、太陽みたいだと言ったけど。太陽だけでは輝けない、青空があるから輝くのよ」
だから、あなたは青で傍にいるのが丁度いいの。
話は終わりとばかりに紫は黙りこむ。
私は膝に顔を埋めて言う。
「相変わらず小難しいこと考えるわね」
「性分でしてね。なかなか治りませんわ」
「……ふん」
まどろっこしい奴だ、本当に。
これだけ言ったことは結局一言で済むことなのだ。
本音を語るには建前を語りつくさねば満足できない、面倒くさい。
ま、今はそれに感謝しよう。
面と向かって言われたなら何をしでかすか自分でもわからない。
背中合わせのこの状況がありがたかった。
「言いたいことははっきり言いなさいよ」
「あなたならわかると思ったのだけど?」
「当たり前じゃない、私を誰だと思ってるの」
「そう、よかった」
振り向かないまま差し出された手を握る。
紫の背中に体重をさらに預ける。
私と対して変わらない大きさの背中は抱きとめるように私を受け入れる。
握られた手は決して離さないというように固く握られた。
「私の傍にいなさい」
「初めからそう言えばいいのよ」
青はもう独りではなかった。
雲ひとつない空の下、そんなことを私はつぶやいていた。
雲がないと言ってもその上にあるのだから当たり前だけど。
「突然何かしら?」
背中合わせに座っている紫は振り向かずに訊ねる。
私はそれに応えず、独り言のように続ける。
「太陽みたいにきれいで眩しくて、羨ましい」
手を伸ばして一房彼女の髪を取る。
丁寧に手入れされたそれは、触れると細くて柔らかい。
日にかざすと透き通って美しい。
少し動かすと、安心するような匂いが香る。
「あなたの髪も綺麗よ」
「そうかしら」
「ええ、青空みたいでとても」
そう言われても、多彩な表情を見せる彼女の髪が私には羨ましい。
私の髪は冷たい憂鬱な色だから。
空は天候に合わせて表情を変えるけど、天界の空は青しかない。
雲がかかることもなく、ただただ何処までも青いだけの空。
私はあまりその空が好きではなかった。
誰もいない、寂しさを思い出してしまうから。
知らず、溜息が漏れていた。
「青のイメージは何かしら?」
「なによ突然」
「いいから。何が思い浮かぶ?」
「寂しい、憂鬱、空」
「そう」
そんな私の返答にはお構いなしに紫は続ける。
「青のイメージはあなたの言ったそれ以外にも、安全、無限、不安などがあるわ」
「それがどうしたのよ」
「黄色のイメージは希望、解放、危険」
「ふぅん」
私は髪をいじりつつ相づちを打つ。
1を言うために10を語る奴だけど、今日は一体何が言いたいのか。
「あなたの髪は青。私の髪は金、つまり黄色」
「それが?」
「二つが混ざれば、不安は希望に、無限は解放され、危険は安全に変わる」
紫は私の髪を絡めるように指に巻く。
きっと錯覚なのだろうけど、どうしてかこそばゆい。
「へえ」
「それに、太陽みたいだと言ったけど。太陽だけでは輝けない、青空があるから輝くのよ」
だから、あなたは青で傍にいるのが丁度いいの。
話は終わりとばかりに紫は黙りこむ。
私は膝に顔を埋めて言う。
「相変わらず小難しいこと考えるわね」
「性分でしてね。なかなか治りませんわ」
「……ふん」
まどろっこしい奴だ、本当に。
これだけ言ったことは結局一言で済むことなのだ。
本音を語るには建前を語りつくさねば満足できない、面倒くさい。
ま、今はそれに感謝しよう。
面と向かって言われたなら何をしでかすか自分でもわからない。
背中合わせのこの状況がありがたかった。
「言いたいことははっきり言いなさいよ」
「あなたならわかると思ったのだけど?」
「当たり前じゃない、私を誰だと思ってるの」
「そう、よかった」
振り向かないまま差し出された手を握る。
紫の背中に体重をさらに預ける。
私と対して変わらない大きさの背中は抱きとめるように私を受け入れる。
握られた手は決して離さないというように固く握られた。
「私の傍にいなさい」
「初めからそう言えばいいのよ」
青はもう独りではなかった。
背中合わせでの会話ってのがまたいい感じでした
しかし、二つ(の髪の毛)が混ざり合うってなんかエロい