Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

アリ咲に見せかけてやっぱり咲アリ

2011/01/19 12:41:22
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 この話は以前投稿した『私は○○派です。』の続編です。
 先にそちらをお読みになった方がこの話をよりお楽しみいただけるかと思います。
 実は前回のを読んで、ずっと続編を楽しみにしてたんだぜという類い稀なるお優しい心
 をお持ちの方はそのままどうぞ。
 以下本文。

















 ああ、困った。

「アリスー、洗濯やっとくねー」

「え? あ、うん」

 いや、家事をやってくれるからむしろありがたいが、問題はそれではないのだ。

「……ねぇ」

「なぁに?」

 洗濯籠を持ちながらも瀟洒な立ち振る舞いをする彼女。
 にっこりと笑ってこちらを振り向く仕草は同性から見ても魅力的。
 日の光を反射してきらきらと輝く銀色の髪は、思わず見とれてしまうほど美しい。
 だが、問題はそれではないのだ。

「私、帰れって言ったよね?」

 そう、問題は帰れと言ったのにいまだこいつは泊まる気満々で家に居座っているということなのだ。
 たしかに私は彼女が客人として訪れた際に、自分の部屋へ通すほどには十六夜咲夜という女性に好意
 を抱いているし、家事を任せられるほどには信頼している。
 だがしかしだ。物事には順序というものがあるだろう。
 何の前触れもなくいきなり現れて、「お嬢様と喧嘩して屋敷に戻れないから泊めて」なんて言われて
 あっさり泊めるほどのお人よしになったつもりはない。
 私は道に迷った人間を泊めることはあるが、あれは夜に妖怪に襲われてその辺で野垂れ死にされると
 私が迷惑だから泊めるだけであって、他意はない。
 私が今回咲夜を泊めようとしない理由は二つ。
 こいつなら妖怪に襲われても軽々と返り討ちにして見せるし、昼の魔法の森くらい自分で出られる。
 それに咲夜を泊めるのは、こんなくだらない理由ではなく、ちゃんと私から誘って泊めたいのだ。

「帰れって言われてもねぇ……」

「何よ?」

「アリス、此処は何処?」

「はぁ? 私の家に決まってんでしょう」

 私はそう言った。
 すると、咲夜は呆れたように溜息を吐き、洗濯籠を机に置いてわざとらしく肩を竦めた。
 ……なんか腹立つなぁ。

「違う違う。もっと広い“此処”」

「……ああ、幻想郷ってこと?」

「そう、幻想郷よ」

「それがどうしたってのよ」

 私が聞くと、咲夜は真剣な表情で言った。

「幻想郷の人間が素直に人の言うことを聞くと思う?」

 私は幻想郷の人間代表―――霊夢と魔理沙―――の顔を思い浮かべた。
 …………うん、聞くはずがない。

「ね?」

「じゃあどうすれば帰ってくれるのかしら?」

 その言葉を聞いて、咲夜は待ってましたと言わんばかりに顔を綻ばせた。
 そして懐から白紙のスペルカードを何枚か取り出した。

「即興弾幕ごっこに貴女が勝ったら帰ってあげる。もちろん勝敗は美しさで決まるわ」

 あっ審判は私ね、と咲夜は付け足した。
 即興、ねぇ……

「普通の弾幕ごっこじゃ駄目なの?」

「それじゃあ面白くないじゃない」

 たしかに機能性より芸術性にこだわる私たちならば、咄嗟のアイディアでなかなかに面白い弾幕が
 できるだろう。
 だが―――

「あいにく今は創作意欲が湧かないのよねぇ」

モチベーションが低くては意味がない。

「そう……」

 咲夜は目に見えてわかるほどしょんぼりしていた。
 きっと今日家に来たのも7割方これが目当てだったのだろう。
 もちろん喧嘩したからというのもあるだろうが、たぶん喧嘩してなかったら普通に客人として私の家を
 訪れてこれをやる予定だったのだろう。

「まあまた別の機会にやりましょう」

「うん」

 あまりにも落ち込んでいたので、とりあえずフォローを入れておいた。
 とはいえ、実際なかなか面白そうなので、お互いベストコンディションでやってみたいものだ。

「というわけでアリス」

「ん?」

「今日泊まるわね」

「どういうわけだ」

「命名決闘、貴女自分から断ったじゃない」

「他の方法で帰ってくれる気はないの?」

「ない」

 うーん、困ったなぁ。
 私が腕を組んで唸っていると、咲夜は少し不機嫌そうな顔をして言った。

「っていうか、なんでそこまで嫌がるの?」

「いや、まあ、その……」

 ちゃんと自分から誘って泊めたい、なんて格好悪くて言えるわけがないじゃないか。
 私が口篭っているのをどういう風に捉えたのか、咲夜はどこか冷めたような、それでいて何かに
 縋るような表情をした。
 なんだこれ、こんな顔、全然咲夜らしくない。

「私のこと、嫌い?」

「そ、そういうわけじゃないけど……」

 私は初めて見る咲夜の表情に戸惑っていた。
 いつもなら「何よ、はっきりしないわねぇ。そんなだから友達いないとか言われるのよ」なんて
 冗談めかして言ってくるのに。
 そしたら私も「友達いないのとは関係ないでしょ」なんてことを言い返せるのに。
 私がどうすればいいかわからずに困惑していると、咲夜は控えめにスカートの裾を掴んできた。

「……!」

 その手は、微かに震えていた。
 咲夜は消え入るような声で言った。

「アリスも、私のこと嫌い?」

 私“も”……?
 どういう意味だ?

「アリスも、私を殺す?」

 そう言った咲夜の表情からは感情が読み取れなかった。
 それは、今まで見たことがない表情だった。

「殺すって……何言ってるの? そんなことするわけないじゃない!」

「アリスは私を殺さない?」

「当たり前でしょ! なんで貴女を殺さなきゃならないのよ。だって、私は貴女のことが……」

 そこまで言って、続きを言うのを少し躊躇った。
 “私は貴女のことが好きなのよ”
 たったそれだけのことを言うのがとても恥ずかしい。
 顔が熱くなっていくのがわかる。
 でも、恥ずかしくても言わなければ。
 今日の咲夜はなんだか様子がおかしい。とても不安定だ。
 いつものように照れ隠しをして、本音を隠してしまうと、咲夜は私の前からいなくなってしまうの
 ではないか。
 そんな風に思ってしまう。。

「私のことが……何?」

 咲夜は相変わらず感情を読み取れない表情で尋ねる。
 私は腹を括って咲夜の目を見た。
 そして、言った。

「貴女のことが……好き、なのよ……」

 蚊の鳴くような声になってしまった。
 ちゃんと咲夜に届いただろうか。
 私は咲夜を見つめた。
 咲夜は、驚いたように目を見開き、見る見るうちに顔を赤くしていった。
 咲夜もこういう顔、するんだ。

「あ、えと……」

 しどろもどろになりながら、咲夜は俯いた。

「あ、ありがとう。私も……好きよ。あと、変なこと言ってごめんなさい」

 照れながらそう言う咲夜は、正直反則的なまでに可愛かった。
 私は無意識に咲夜を抱きしめていた。
 咲夜は一瞬ビクッと体を動かしたが、抵抗する気はないのか、やがておずおずと私の背中に腕を
 回した。
 ……やばい、可愛い。
 普段は抱きしめられてばかりだったので、こうして私が咲夜を抱きしめるのはなんだか新鮮な気持ち
 だった。
 こうしていつもと逆の立場になってみると、咲夜は思ったよりもか弱いということがわかった。
 咲夜の華奢な体が、いつもよりも細く、弱々しいものに感じられる。
 それは今の彼女の不安定さがそうさせているのかもしれない。

「ごめんね、アリス。でも、もう少しだけ、甘えさせて……」

 背中に回された腕に、少しだけ力が入った。
 その行為がなんだか小さな子供のように思えて、私は思わず咲夜の頭を撫でていた。
 咲夜は気持ちよさそうにされるがままにしていた。

 そうしながら、私は今日の咲夜の不安定さについて考えていた。
 咲夜はレミリアと喧嘩をしたと言っていた。
 咲夜にとって、レミリアと喧嘩するなんてはじめての経験だったのだろう。
 なんせ今日家にやってきた咲夜は明らかに戸惑っていた。
 どうすればいいかわからなかったのだ。
 そこで私はふと思い出した。
 咲夜が外の世界からこの幻想郷にやってきたのだということを。
 人間である咲夜が、化け物しかいない紅魔館で働いているということを。
 つまり、咲夜は人間とともに過ごすことができなかったということだ。
 小さい頃、そういう環境にいたのなら、さっきの「アリス“も”」という言葉の意味も、
 「私を殺す?」という言葉の意味も理解できる。
 自分以外は敵である環境で彼女は育ってきたのだ。
 今でこそ幸せに暮らしているが、その頃のことはしっかり心的外傷(トラウマ)として咲夜の中に
 残っているのだろう。
 ならば、もしそんな咲夜がはじめてレミリアと喧嘩して館にいられなくなったらどうなる?
 きっと恐怖と不安に押し潰されそうになるだろう。
 また自分以外は頼れない環境に戻ったのだから。
 だけど、咲夜は私の家に来た。
 私を信じてこの家に来てくれたのだ。
 それなのに、私は一度咲夜を拒絶した。
 だから咲夜はあんな態度を取ったのだ。
 “お前も拒絶するのか?”と……

 私は納得した。
 だから、今日の咲夜はこんなにも不安定だったのだ。
 幻想郷の人妖は壮絶な過去を持っているやつが多い。
 咲夜もその一人だったのだ。
 ただ咲夜は他の暢気な人妖とは違い、いまだにその過去を吹っ切ることができないでいたのだろう。
 私は、私の行為が彼女の過去を吹っ切るきっかけになればいいな、と思った。
 ……レミリアと喧嘩した理由が理由なだけにいまいちシリアスになりきれないが。

「ありがと、アリス。もういいわ」

 咲夜はそう言って顔を上げた。

「もういいの? 大丈夫?」

 そう言いながら彼女を撫でていた手を止める。
 咲夜は私から離れながら、にっこりと言った。

「私は完全で瀟洒ですから」

 そう言って胸を張る彼女は、いつも通りの咲夜だった。

「そう」

 私は少し残念に思いながら、だけどいつも通りの咲夜に戻って安心していた。
 そして。

「また甘えたくなったら、いつでも胸を貸してあげるわ」

 最高の笑顔でそう言ってやった。
 咲夜は照れながら「ありがとう」と言った。

「アリス、目を閉じて」

「? いいけど……」

 なんだろう。
 そう思いながら目を閉じる。
 そして、ふわりと咲夜の香りがしたかと思うと、柔らかい羽毛のようなものが私の唇に触れた。
 軽い、本当に軽い、一瞬のキスだった。
 私は思わず目を見開いた。

「さ、咲夜!? ななな、何を……」

「今日のお礼。言葉だけじゃ、足りないでしょ?」

 そう言って咲夜は悪戯っぽく笑う。
 私はただ金魚のように口をパクパクさせることしかできなかった。

 結局、アリ咲じゃなくて、咲アリになっちゃうのね……
咲夜さんは結局その日はアリスの家に泊まり、翌朝レミリアと仲直りすべく館に帰って行きました。
後日、無事仲直りできたとの報告を受けたアリスは、紅魔館に遊びに行きました。
門を抜けると、アリスの目の前にはレミリアとフランドールを除く紅魔館の住人全員が庭に集まっている光景がありました。
「何の騒ぎ?」
アリスが聞くと、妖精メイドたちは興奮して口々にいろいろ言いました。
興奮しすぎてテンションマックスな妖精もいましたが、アリスは華麗にスルーします。
さすがアリスですね。素敵です。
そうしていると、一人のメイドが声を上げました。
「あ、お二人が来ますよ!」
すると、結婚行進曲をBGMに、タキシードを着たレミリアと、ウェディングドレスに身を包んだフランドールが現れました。
メイドたちは「お嬢様素敵ー!」だとか「妹様綺麗ー!」だとか、黄色い歓声を上げています。
アリスは呆気に取られています。
すると、横に咲夜さんが現れました。
咲夜さんはアリスの肩に腕を回しながら言いました。
「お嬢様とフランドール様のお二人はご結婚なされたのです」
アリスは咲夜さんのナチュラルなセクハラ行為をスルーしながら呟きました。

「どういうことなの……」



どうも、ものすごくお久しぶりなMK沢村です。
きっとみんなに忘れ去られて既に幻想入りしちゃってるかもしれないMK沢村です。
咲アリの続編書くとか言ってからどんだけ経ってんだ。
遅筆にも程がある。しかも完全に別物じゃねぇか。死にたい。
そんなMK沢村です。
自己主張が激しいMK沢村です。
今回は超甘々です。咲アリ咲です。うまうま。
深夜テンションなせいで後書きがおかしい。
徹夜わっほい。眠いようで眠くない。
このままのテンションで後書き書いてたらどんどんおかしくなりそうなのでこの辺でやめときます。
最後に、読んでくださってありがとうございました。
MK沢村
http://
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
・・・アリだな!
2.名前が無い程度の能力削除
ごちそう様でした
3.奇声を発する程度の能力削除
最高でした
4.名前が無い程度の能力削除
うおおおおお咲アリ咲うおおおお!
5.MK沢村削除
コメントありがとうございます。

>>1様
咲アリなだけに、ですね。わかります。

>>2様
お粗末様でした。

>>奇声を発する程度の能力様
最高の褒め言葉をありがとうございます。

>>4様
咲アリはもっと増えるべきだと思います。
6.MK沢村削除
コメントありがとうございます。

>>6様
咲アリヒャッホォォォォォウ!!
7.名前が無い程度の能力削除
アリ咲をもう一作!
8.MK沢村削除
コメントありがとうございます。

>>8様
この遅筆な私にもう一作書けとおっしゃるのですか!
よろしい、ならばアリ咲だ!
また忘れた頃に現れます。