Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

=うそつき

2011/01/17 20:18:12
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 マエリベリー・ハーン(メリー)がまどろみのなかから覚醒すると、枕元に桜の花びらが一枚落ちているのが目に入った。
 ピンク色のもう天然ものではない桜の花びらがいったいどこから入ってきたのだろうかとまだぼんやりする頭のなかでメリーは考える。
 メリーの住むアパートの庭には人工の桜の木があって、それがちょうど満開になっているので、きっとその花びらはその木から落ちたものだろうと思ったけれど、メリーの部屋は二階にあって、たしかに部屋の窓は換気のために開けていたけれど、カーテンは閉めてあったし、桜の木からもほんの少し距離もあって、だけど春一番の風が吹いたのかななんてことをメリーが思っていると、
「よく寝た?」
 という声がしてメリーは飛び起きると、キッチンのほうから宇佐見蓮子が寝室のほうを見ていた。
「どうして蓮子がここにいるの?」
 メリーは慌ただしく立ち上がると、蓮子のいるキッチンに向かう。
 蓮子はキッチンにあるテーブルにノートと参考書を広げていた。傍らには小型の音楽プレイヤーと携帯電話も置かれている。蓮子はメリーを見あげると、
「だって大学の図書館は人がいっぱいいて集中できないんだもん」
 と甘えた口調で言った。そうじゃなくて、とメリーは言う。
「どうやって入ったの?」
「前に合鍵の置き場所を教えてくれたのはメリーじゃない。郵便受けの下にある鉢の下でしょ?」
 蓮子がそう言うと、メリーは自分の記憶のなかを探ってみたけれど、蓮子に合鍵の置き場所を教えた記憶はどこにもなくて、メリーは蓮子に「いつ教えたの?」と尋ねる。
「大学のカフェテラスで。何の話をしていたときだったかな……。だけど、春の新作ケーキを一緒に食べていたときだから、そんなに前のことじゃないよ」
 メリーはそのときのことを思い出そうとして、その場面を頭のなかで描く。
 大学のカフェテラスで新作のケーキを食べながら談笑するメリーと蓮子。お互いにだらだらと喋っていて、日は傾きはじめ、あたりがほのかに橙色に染まりはじめている。そういう場面があたかもあったかのように想起されて、メリーはそれが本当にあったことのような感じがしてきたし、蓮子もあったと言っているのだから、なんだかそれは本当にあったことのような気がして……
「ほら、メリー、寝ぐせになってるよ」
「え? 本当?」
 メリーがブロンドの髪の毛を触りながら「どこ?」と言うと、蓮子が立ち上がって、「ここ」と言ってメリーの手を取り場所を教える。メリーはびっくりした様子で蓮子を見たあと、頬を赤く染めながら、
「私、ちょっと寝癖直してくる」
 と言って、蓮子からはなれる。蓮子はメリーに「珈琲飲む?」と尋ねたけれど、メリーは何も言わず洗面所に入っていった。
 蓮子はそれを見て首を傾げたあと、キッチンに立ち珈琲を入れる。ひきたての豆の匂いがして、少しずつドリップされた珈琲が下へ落ちてくる。それがちょうどマグカップ二杯分たまったころにメリーは洗面所から帰ってきた。
「メリーも飲むでしょう?」
 蓮子はそう言って、テーブルのうえにマグカップを置く。
「そういえばさ、メリー」
「蓮子は私の寝顔見たの?」
 メリーは蓮子の話をさえぎるようにして言った。蓮子は少し驚きながら、
「どうしたの急に?」
「だって……。その……恥ずかしいじゃない」
 メリーは顔を赤くして下を向くと、いれたての珈琲に口をつける。蓮子は、
「……見てないよ」
 と言った。
「本当?」
「本当だよ。私が合鍵で入ったときにキッチンから寝室が見えたけれど、なんかメリーが横になっていたみたいだから、寝室には入らなかったよ」
 そう、とメリーは言う。「ならいいのよ」
「まあ、いまの時期は眠くなっちゃうからね。春眠暁を覚えずとも言うし」
 そう言って、蓮子はぐっと伸びをしたあと、大きなあくびをした。机に広げていたノートと参考書を閉じ、「それよりもさ」と言って、蓮子は楽しそうに新しい境界の話をする。
 メリーは楽しそうに蓮子をぼうっと見ている。
「ねえ、メリーちゃんと聴いてる?」
「あ、ごめんね。ちょっと考え事してて」
「なんか今日のメリー、変だよ」
 メリーは珈琲に口をつける。ほろ苦さが口に広がり、ほんの少しだけ意識が明瞭になる。
「ねえ、アパートの前に桜の木があるじゃない」
「あるね、人工の桜の木」
「あそこから風にのって私の部屋まで花びらって飛んでくるかしら?」
 メリーがそう言うと、蓮子は首をかしげて、
「うーん、ものすごく強い風が吹けば飛んでくるかも知れないけれど。どのくらいかまではちゃんと計算してみないとわからないなあ」
 と言ったあと、ノートを広げてそこに式を書き始める。メリーはすらすらと書いていく蓮子の手を見ていた。
「あの桜の木からメリーの部屋までどれくらい?」
「どのくらいかな……。実際に見てくればいいんじゃない?」
「そっか」
 蓮子は立ち上がって、メリーの寝室のほうに行く。そのとき、メリーは蓮子の背中に桜の花びらがくっついているのを見つけて、もしかして部屋にあった花びらは蓮子の背中にくっついたのが落ちたものかもしれないと思い、もしそうなら蓮子はメリーの寝顔を見たことになる。それもとても近い距離で。
 メリーは蓮子のノートに書かれた途中の数式を見たあと、寝室にいる蓮子に視線を向ける。
 蓮子は寝室の窓から身を乗り出している。ときおり、蓮子の髪の毛とカーテンレースが風に吹かれて舞う。
 メリーは蓮子のノートを自分のほうにたぐり寄せる。
 計算中の数式に勝手にイコールを書いてやると、メリーは答えに「うそつき」と書いた。
はじめましてなつめです。
ディテール等々、おかしな点があると思われます。人物設定が特に二次設定に毒されています。
よろしくお願いします。

追記
1/18 感想ありがとうございます。誤字脱字を修正しました。
なつめ
http://
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ストンと綺麗に落ちてよかったです。

誤字報告、
>どのくらいかまではちゃんと計算してみたいとわからないなあ
>みたい
2.名前が無い程度の能力削除
この雰囲気好きだわ
3.奇声を発する程度の能力削除
良い秘封でした
4.名前が無い程度の能力削除
いいね
5.名前が無い程度の能力削除
お話の内容は良かったのですが、文章が読み辛かったです。
ひとつの文に内容を詰め込まずに、分割すると良いと思います。
6.名前が無い程度の能力削除
>「あの桜の木から蓮子の部屋までどれくらい?」

メリーの部屋?
それとも俺の読解力か?

面白かったです
7.名無し程度の能力削除
良かった