この作品は、例の如く拙作と世界観を共有していますが、単品でもおいしく頂けるようにしてあります。今回のお話には特にこれといった注意点はありません。釣りとタグにありますが、騙す意味での釣りではありません。純粋に釣りのお話です。
服用中に、かまくら作って、わかさぎのから揚げ食べながらチルノと戯れたいと言う衝動に駆られた方は、外に雪がある事を確認してからスコップと釣竿を持ってブラウザバックをお願いします。
ある冬の幻想郷。
新年早々、魔法使い達が揃って初詣に来て、守矢神社で安産祈願のお守りを貰ったかと思ったら、博麗神社では恋愛成就のお守りを貰って苦笑いしていましたが、何故か新聞に載らなかったという珍事が発生した・・・事とは全く無縁な紅魔館の湖のほとり。
湖をのんびりホバリングする妖精がいました。
「大ちゃん、釣れた?」
「チルノちゃん、まだ始めたばっかりでしょー」
釣り竿を片手に、ホバリングするチルノと大妖精。今日は、釣りをして遊んでいるのでしょうか?だけどチルノは、ちょっとだけ不機嫌そう。はしゃぐのが大好きなチルノには、じっとしている事がつまらないようです。
「わかさぎ沢山釣って、みんなで食べるんでしょ。」
わかさぎ釣り、冬の風物詩ですね。大妖精は、釣れない事に不満げなチルノを諭します。
「さいきょーなんでしょ。頑張れ、チルノちゃん。」
「うん!!」
⑨とはさみは使いようとは良く言ったものですね。チルノは目を輝かせて、わかさぎを狙います。そうするうちに、チルノの手に僅かなあたりが返ってきました。
「お・・・引いてる、引いてるよ!」
「そのまま引き上げて、ゆっくりね。」
慎重に竿を上げると、そこには銀の輝きが美しいわかさぎが、3匹ついていました。釣れた事に喜ぶチルノは、笑顔で大はしゃぎ。
「釣れたよ、大ちゃん。あたいってば、さいきょーねっ!」
「三匹いっぺんになんてすごいねぇ。私もがんばんなきゃ。」
すると、大妖精の釣り竿も揺れ始めます。大妖精はあわてて、竿を両手に持ち替えてからタイミングを図ります。僅かな変化を見逃さなかった大妖精は、竿を軽く上げてからリールを巻きました。すると。
「よ、4匹も釣れたわ。ちょっとびっくり。」
「むっ、流石大ちゃん。やっぱりあたいの上を行こうとするね。よーし!」
この事で、チルノの闘志に火がついたみたいです。釣ったわかさぎを腰に付けていた入れ物に入れ終えたチルノは釣りを再開しました。
「こんどは大きいのが釣れたよー、参った?」
「私の釣ったのより大きいね、でも、まだまだこれからよ。」
「じゃ、どっちが夕方までに沢山釣れるか競争しよう。あたい、負けないもん。」
「うん、じゃあ夕方になったらここで。」
チルノと大妖精は、各々赴くがままに湖の上を飛び回り、わかさぎを釣りに釣りました。夕方になるころには、チルノと大妖精が持っていた入れ物はわかさぎで一杯になっていました。
「沢山釣ったわ。いざ、勝負!!」
「よーし、負けないよ、チルノちゃん。」
数を数えるにも数が多すぎて、チルノが数匹数えた所でわなわなと震え始めました、さっき数えたわかさぎをもう一度数えてしまったりして、ちょっとパニック。
「んもー、何匹か分かんなくなっちゃった。」
あまりの多さに、数を忘れてしまったようです。しばらくうんうん唸っていましたが、このままでは、日が暮れても帰りそうにありません。大妖精は、優しくチルノの肩を叩いてこう言います。
「勝負は、また次にしましょ。暗いと数えるのも大変だし、お腹も空いてきたわ。」
「うん、そうだね。」
戦い終えたらノーサイド。既に時間はサンセット。
カラスも鳴いて、お腹も鳴った。
お家に帰る時間がやってきた。
「沢山釣れたねー」
「楽しかったねー」
夕焼けが照らす帰り道。二人の入れ物にはわかさぎがぎっしり。のんびり、ゆったり飛行しながら、湖のほとりの近くにあるチルノのお家を目指します。一度はいたずら好きの妖精に壊されてしまいましたが、無事に再建されました。
「ただいまー。レティ。」
「お帰り、チルノ。」
呼んで返ってくる返事に、チルノはニコニコ。冬の間は、レティという妖怪が家に遊びにきてくれます。今日も来ていたようですね。レティも笑顔でチルノにお話します。
「今日は、何処で遊んできたの?」
「湖で大ちゃんといっぱい、わかさぎ釣ってきたよ。みんなで食べようと思ってねー」
「ええ、これを。」
各々がたっぷり入れ物に入ったわかさぎを差し出すと、レティは目を丸くしました。チルノは腰に手を当てて、えへんのポーズ。
「あたい、えらい子?」
「ありがとう、チルノ。大ちゃんもね。」
頭を撫でると喜ぶチルノ。大妖精も、満面の笑みをレティに向けて。そして、みんなで笑って。
「ご飯のおかずにから揚げ作るわ、沢山食べてね。」
「「わーい!!」」
料理は魔法、長年生きてたレティの手にかかればワカサギ料理もお茶の子さいさい。食卓にわかさぎのから揚げが添えられて、今宵の楽しい食卓の出来上がり。
「「「いただきまーす。」」」
「あたいが一番乗りーっ。」
チルノが素早くから揚げを狙いに行きます、揚げたてのから揚げをお箸でつまむと、じわりと油が染み出てきて美味しそうな匂いが辺りに立ち込めます。迷わずチルノは頭からわかさぎを一口に・・・
「あつっ!」
「チルノちゃん、ちゃんとふーふーしてから食べないと舌を火傷するよ。」
「そうね。ふーふー・・・」
揚げたてのから揚げは、ちょっと熱かったみたいですね。しっかり冷ましてから、再挑戦です。少し冷ましたから揚げを頬張り、ほかほかご飯を一緒に食べれば、そこは小さな桃源郷。
「うまー」
食卓に咲いた、チルノの笑顔は季節外れの、お花のような可愛らしい笑顔でした。チルノは、美味しいわかさぎにご機嫌のようです。
「おかわりー」
「むむっ、大ちゃん早い。あたいも負けないぞー」
「焦って食べなくても、沢山あるから大丈夫よ。ほら、チルノ、ほっぺたにご飯粒ついてる。」
―氷でできた家の中のちょっぴり冷たい食卓。だけど、笑顔の絶えない、温かい食卓には三人の笑い声と笑顔がたくさんあふれていました。
今日も、幻想郷は平和です。
ワカサギ食べたい!
ってかマリアリ何があった!?
レティはやっぱりチルノのお母さん役が似合いますよね。
タナバンさんの執筆速度パネェですw
折角の注意書きなのですし。
大妖精が挑発してチルノに釣りを頑張らせるところは妖精っぽさ出てるなぁとほのぼのさせられました。
平和だぜ…。
「奇特な」の使い方がちょっと違うような・・・w
「殊勝な人ですね」と確かに褒めては居ますが心なしか上から目線の意味になっちゃいますです