皆さん、こんにちは。いつでも正確確実、清く正しい真実を追い求める、まさにジャーナリストの鑑とも言える射命丸の文ちゃんです。
幻想郷でも年が明けて、早数日以上。
連日のように繰り広げられていた超弩級の宴会もなりを潜め、ようやく平穏な日々が戻ってきております。
さて、今年は我が文々。新聞飛躍の一年です。
目指せ、発行部数1万部!
――とはいえ、そんなに目を引くような事件事故が起きない、この幻想郷。誰もが手にとって面白いと思える新聞を作るのは難しいのです。
そこで私は考えました。
一年の始まりと言えばめでたいもの。つまり、めでたいものをネタにすればいいわけです。
そういうわけで、紅かったり白かったりして見た目にもおめでたい巫女さんをネタにすることにしました。
ずばり! 『あなたは紅白の巫女についてどう思いますか?』。突撃インタビュー開始です!
~Case.1 魔法使いさん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.あー、どう、って言われてもなー。別に特別なことはないぜ?(そこを何とか)
……しゃーないなー。
えっとだな、あいつと私はライバルだ。終生の。うん。そうだ。私が決めた。あいつがなんと言おうとライバルだ。
あとそれから……ま、基本的には悪友だと思ってるぜ?
それに、あいつは私が面倒を見ないとダメな奴だからな。ふっふっふ。どうだ、この時点で、すでに私の方があいつより偉いんだぜ!
今年も新年一発目の新スペカも完成したしな! 明日の勝負が楽しみだぜ!
――ちなみに、魔法使いさんは、その新スペカを振りかざして勝負を挑んだものの、MPが足りなかったようです。
~Case.2 メイドさん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.どう……ね。普通よ。彼女は特にお嬢様のお気に入りなのだし、基本的に礼儀はわきまえているし、悪い相手ではないわ。
日頃のぐーたらな生活はどうかと思うけれど、それは彼女のプライベートだもの。こちらが、特に何かを言う必要はないでしょう?
……そうね、私個人としてなら、手のかかる妹分みたいな感じかしら。
とはいえ、彼女は結構鋭いから。お嬢様の遣いで神社とかに足を運んだ際には、たまに掃除とかを、こっそりしてあげてるのだけど、次の日には『ありがとう』ってお礼を言いにくるのよ。
ああいうところは、素直に好感を持ってるわ。それに、見ていて、色々と手のかかる子だから。
付き合っていて、かわいいな、と思うことも多いわね。
――ああ、これから彼女のところに行くのなら、頼まれていたものが手に入ったから取りに来てね、って伝えてね。
~Case.3 人形遣いさん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.そうね。いい友人だと思っているわ。それに、最近は、ずいぶんかわいい感じになってきたし。
一昔前は、口を開けば、ただ憎たらしいところが多かったんだけど、最近はそうでもないのよね。
咲夜さんに頼みたいことがあっても言い出せない時なんかは、私のところに来ることも多いわよ。
最近だと……そうね、ケーキの作り方なんて学びに来てたわ。誰に食べさせるのかは知らないけどね。
私にとって?
……そうね。言うなれば、先輩と後輩かしら?
何となく、目の届くところに置いておきたくて、何となく世話を焼きたくなっちゃうような。そんな感じね。
けど、そういうことを言うと恥ずかしがって怒るのよね。ああいうところもかわいいわ。
――そうそう。この前、頼まれていた本、読み終わったから貸してあげるって伝えてきてね。
~Case.4 庭師さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.あの、こういうことって私じゃなくて幽々子さまの方が……え? 幽々子さまが『私に答えろ』って? ……もう。
えっと……そうですね。私がお付き合いしている方々の中では、比較的、まともだと思います。はい。
以前、こちらが迷惑をかけた負い目もあるのですけど、あの方はそういうところはさっぱりしていて、今になっても何かを言ってくることもなくて、正直、助かってますよ。
……まぁ、うちを夏の避暑地にしようとするのは勘弁して欲しいですけどね。
あと、やっぱり、笑顔がかわいいと思います。
私がお土産とかを渡すと、嬉しそうに笑って『ありがとう』って言ってくれるんです。
本当に、あの顔を見られるだけで、よかった、って思えますよ。ああいう素敵な笑顔を浮かべられるのは才能ですよね。
……個人的に、ちょっぴり羨ましいです。
――あ、そうだ。この前、霊夢さんがうちに忘れ物していったんです。あとで届けてもらっていいですか?
~Case.5 うさぎさん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.言い方は悪いけど、うちのいいお客さんかな。二日酔いでよく来るんですよね。そのたびに師匠に怒られてます。
あんまりにもよく来るものだから、私が以前、「ちょっと医療費、おまけしましょうか?」って聞いたら「んなのいらない」って断られたことがありますね。あれには驚きました。
彼女の性格からすると、『是非とも!』って言ってくると思いきや。理由は、『私はそういうところには、ちゃんと筋道を通すの』っていうことでした。
そういう人って、今、すごく貴重だと思うんです。意外と古風な人ですよね。
ああいう一面も持ち合わせているところは魅力的だと思いますよ。びしっと一本、筋が通っていると言うんでしょうか。普段からはとても想像が出来ないんですけど。
そういうところは羨ましいですね。私って、周りに流されやすいので。
……ちょっと憧れちゃったのは内緒ですよ?
――そうだそうだ。師匠から、今度の宴会に彼女を誘うように言われてたんだ。
あの、すいませんけれど、この手紙、渡してきてもらっていいですか? すいません。
~Case.6 子鬼さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.どう、ねぇ。見てて楽しい。それが一番かな。
私ら鬼にとっちゃ、一にお酒、二にお酒、三四がなくて五に楽しいこと、ってなもんでさ。
退屈は敵だよ。その点、彼女を見てると飽きないよね。それだけでも、付き合ってる意義があるってもんだよ。
それに、何だかんだで面倒見もいいしねぇ。私の目から見ても、彼女は好かれてると思うよ。誰からもね。
ま、その分、気が多くなるのも結構、結構。
あれだね。私から言わせてもらえば、私と彼女のスタンスは、つかず離れず、ってところかね。
そのくらいの微妙な距離感が心地いいよ。それに何より、それくらいが一番からかいやすいしね。
怒らせると、また面白いしさ。
――今度、また一緒に宴会しようよ、って伝えてきてね。よろしく~。
~Case.7 閻魔さま~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.そうですね。それについて、私がしっかり語ると長くなってしまうので手短にまとめさせて頂きます。
彼女は、全く、以前の彼女と変わりない……と、思いきや、最近はずいぶん変わってきたように思えます。
それがいいか悪いかは、もっとしっかり問答してみる必要があると思いますが、彼女の内面からしてみれば、きっと、悪いものではないでしょうね。
もっとも、彼女はそれを否定するでしょうけれど。それもまた、人間の要なのでしょう。
私の前では一切の嘘は通用しません。
いつか、彼女が私の元に来た時に、私が胸を張って『天国行き』を告げられるよう、しっかりと徳を高め、善行を積み重ねておいてもらいたいですね。
――……ところで、小町は見なかったでしょうか? え? 神社に行ってる? 最近、居心地がよくなってきたからってまた……。
親しみやすくなったのも罪なのかもしれませんね……。
~Case.8 管理人さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.う~ん……どう、と言われても。わたしの力を知っているのなら、その質問は無意味だと思うんですけど……。
そう……ですね。わたしの目から見て、ですけれど、変わり者だと思います。
いや、まぁ、幻想郷の人々の大半が変わり者だというのは認めますけれど、その中でもトップクラスという意味です。
どんな感じに……ですか。普通の変わり者よりも、斜め上の方向に変わり者、という感じですね。
必要以上のコメントは、彼女の内面にも関わってきますから避けますけれど、わたしはあんな感じの変わり者は悪くないと思ってますよ。
うちもそういう変わり者の巣窟ですから。波長が合う、というのでしょうか。
一緒にいて気兼ねせず、それでいて、適度にこちらも節度を守ることが出来る。そんな感じの変わり者です。
疎遠とか、つきあいが薄い、とか。そんな感じじゃないんですよ? 説明をするのが難しいですけど。
まぁ、総じて、わたしは彼女を好意的に見ています。のんびりしたい時は、あの神社に行ってみるのが最高です。
――最近、こいしが神社に入り浸っているようで。迷惑をかけて申し訳ありませんと伝えておいてください。
~Case.9 尼さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.私とは相容れないところもあると思いますが、それでも、お付き合いを拒む理由にはならないと思っています。
それに、この世界のルールに関しては、彼女の方が詳しいことも多くて。よくお世話になっています。
口では『面倒くさい』って言うんですけど、だけど、ちゃんと面倒を見てくださってまして。本当に助かっていますよ。
価値観の違いについては、こちらも多くは申しません。必要以上の押しつけは悪にしかなりませんから。
それでも、いつかはお互いがわかり合って、今よりももっとお近づきになりたいなとは思っています。
……ただ、人の命は有限。その日が来ることはないでしょうね。
でも、私は彼女とお知り合いになれてよかったと思っています。そういうところはさておきとして、楽しさを、私に与えてくれていますから。
加えて、彼女のいいところは、悪いことを次の日に引きずらないことですね。
そういう点に関しては、私も彼女に及ばないと思っています。だから、言うなれば、目指す一つの高みでもありますね。
もっとも、普段はそんな難しいこと、考えていませんよ。うふふ。
――先日お招き頂いた宴会、とても楽しかったです。今度はうちにも、是非、遊びに来てくださいとお伝えください。
いやいや、皆さん、意外と巫女さんには好意的な印象を持ってるんですね。飾っているという感じもありませんでしたし。
これは聞いてよかったかも……っと。
~Case.10 隙間妖怪さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.唐突ね。いきなり、人の顔を見て近づいてきたらと思ったら。
別に、何とも思わないわ。私が彼女に求めているのは、この世界を維持するための、結界の要としての役割だもの。
確かに、先代の巫女と比べると、まだまだなところがあるけれど。それは時間が解決してくれるでしょうね。
もちろん、そうならなければ、私がしつけるし、教えてあげるわ。
偉そう、余計なお世話、なんて彼女は言うだろうけど、そういう風に私に世話になるあなたが悪いのよ、なんてね。
私から見た彼女はこんな感じかしら。
普段は、結構、あきれているのよ。これでもね。
けど、言い換えてみれば、それでも面倒を見てしまうのは、『ダメな子ほどかわいい』というところかしらね。
「さて、こんな感じでよろしい?」
「あ、はい。ありがとうございました」
「そう。それじゃ……え? 何よ、藍。
え? 霊夢が『冬物のセーターがどこにあるかわからない』って?
ああ、もう。それは先週、タンスの一番下の段に入れておくからねって言っておいたでしょうに。
ほんとにもう。
さては、あの子、またタンスの中にごちゃごちゃに洗濯物を突っ込んだんでしょう。どうしてこうなのかしら」
「……えーっと」
というわけで、隙間妖怪さんは帰って行っちゃいました。
あとは…………………ああ、そうだ! 一番、大切な人を忘れていました!
ちょっと長くなっちゃいそうな気もしますけど、あそこからなら我が家も近いから大丈夫ですよね!
よーっし、それじゃ、急げ文ちゃーん!
~Case.11 洩矢の巫女さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.え? 霊夢さんについて、ですか?
えっと……そう……ですね。やっぱり、うん。この世界において、わたしの先輩ですから。普段から尊敬してますし、目標としていますよ。
……え? それもいいけど、本音を、ですか?
えっと……それじゃ。
やっぱり、霊夢さんと言えば、付き合っていて、とっても楽しい人っていう感じだと思うんです。
どんな感じかというと、昨日、霊夢さんのところに遊びに行ったんですけれど、その日はたまたま霊夢さんが麓の村の方々とお祭りの予定を立てていまして。わたしもそれに横から参加させて頂いたんですけれど、予定を立て終わって、村の方々が帰ってから、『早苗はどんなのがいい?』って聞いてきてくれたんです。それでですね、わたし、色々考えていたことを話したんですけれど、霊夢さん、『あ、それいいね。やろうか』って言ってくれて! わたしの提案をあっさり受け入れてくれたんです! 嬉しかったですよ~。だってだって、以前の霊夢さんなら、『そんな面倒なことやるの?』って、絶対に渋い顔してましたよ? それなのにですよ! で、ついついその後も話し込んじゃいまして。わたし、外の世界にいた時も割とお喋りな方だったんですけれど、霊夢さんとお話をしていると、ついつい時間が過ぎるのを忘れちゃいまして。だって、楽しいんですもん。それに、ほら、お互いのお仕事にもつながるお喋りじゃないですか? だから、お互い、熱も入っちゃうんですよ。それで、結局、その日はお泊まりになっちゃいました。てへへ。
あ、お泊まりと言えば、聞いてください文さん! 霊夢さん、その日、わたしにお料理を教えてくれたんです。わたし、お料理作るのがちょっと苦手で……。だけど、やっぱり、結婚したら妻が料理を作るのは当然じゃないですか? え? 誰が妻で誰が旦那だって? もう、文さんったら!(ばっし!) 言わせないでくださいよ~!(ばっしばっし!) もう、照れちゃうじゃないですかっ!(ちょ、痛い痛い!? 早苗さん、叩かないでください!) それでそれで、料理を作っていた時なんですけどね、手取り足取り教えて頂いたのも嬉しかったんですけれど、わたし、つい包丁で指を切っちゃったんです。そしたら霊夢さんが、指先をぱくって! ぱくってしてくれたんですよ! きゃー!(どばしっ! いったー!?) もう、もう、もう! 漫画とかアニメの中でのみのシチュエーションだと思っていたのにっ! 事実は小説よりも奇なりですよ! もう、わたし、顔が真っ赤になっちゃって、隠すのが大変でしたよ~。その後、絆創膏を巻いてもらったんですけれど、何だかそれがすごく嬉しくて。つい、外すのを忘れてて、つい先日までつけっぱなしにしちゃいました。えへへ。
それでですねそれでですね。わたしが作ったお料理、霊夢さんが教えてくれたことをしっかりと実践できたみたいで。自分で食べてもすっごく美味しかったんです。神奈子さまですら、『早苗に野菜炒め以外を教えるのは難しいよ』って仰っておられたのにですよ!? 教え方は一緒なのに! 不思議ですよね~。で、霊夢さんと一緒に晩ご飯を食べたんですけど、『美味しいよ』って言ってくれたんです! これ以上ないですよね! 最高のほめ言葉ですよね! 嬉しくて嬉しくて、笑顔以外の顔が出来ませんでしたよ!(ばしばし!)
それから、お風呂に入ったんです。あ、その日は寒かったから、わたしと霊夢さん、一緒に入ったんですよ。そしたらですね、霊夢さんが、わたしのことをじーっと見てくるんです。それで、わたし、『どうしたんですか?』って聞いたんですよ。そしたら、霊夢さんったら、『早苗は美人でいいよねぇ。というか、私もそれくらい、胸が大きくなりたいよ』なんて。個人的に、大きな胸の霊夢さんもいいんですけれど、今くらいがちょうどいいと思うんです。わかりますか? 文さん。スレンダーの魅力、って。真っ平らとかお子様体型とかじゃなくて、スレンダーなんですよ。きゅっとくびれて引き締まった体なんて、抱きしめたら、絶対に気持ちいいですよ! 適度な柔らかさと適度な堅さというんでしょうか! 抱き枕向けだと思うんです! あ、だけどだけど、霊夢さんも絶対に美人だと思うんですよ。日本的な。特にですね、文さんにはわからない……というか、これ、私だけの特権だと思ってるんですけれど。お風呂に入ってる時の霊夢さんって、髪の毛をアップにしてるんです。そのアップにした雰囲気も抜群として、最高なのは、うなじから肩のライン……ちょうどこの辺りですね。ここが最高なんです!(ばしん!) 白い素肌がお湯の温かさでほのかにピンク色になってて、水滴と汗が伝う、このライン! わかりますか!? わかりますよね! あ、わかんなくてもいいですよ! わたしだけがわかっていればいいんです、えへへ。羨ましいですか? 羨ましいですよね~。えっへん! もう、そのラインの感じが! エロいんです! これ以上ないくらい! わたし、そういうフェチ趣味とかないんですけど、ついうっかり凝視してしまいますよ!(ばっしばっし!) ついうっかり、指先でなでちゃいますよ! そしたら霊夢さん、『ひゃんっ!』ってかわいい声を上げて! 怒るんですよ! ほっぺた膨らまして! 『えっちなことしないでよ』って! えっち、ですって! きゃー!(ずばしっ!) そこでわたしは気づきましたよ。わたしって、ふっくらふくよかな女性らしい体型の方より、霊夢さんみたいなスレンダー美人に惹かれるんだ、って! わかりますか!?(わかります、わかります! わかりますから叩かないでください、痛いですよー!) その後も、お背中流してあげたら、『自分で出来るからいいよ』って照れたり、お風呂上がりにタオルでお体をふいてあげたら『そこまでしなくてもいいよ』って照れくさそうにしてたり! かわいいですよね~。もう!(ずばしっ!)
それで! ここからが聞き所ですよ、文さん! あ、ちょっとどこ行くんですか? ここからがいいところなんですから!
あ、そうですね。お茶、用意してませんでしたね。美味しいお茶とお菓子がありますから、ちょっと待っててくださいね。
――がたん。とたとたとた……。
「……今だ、射命丸! 今なら逃げ出せ……!」
「お待たせしましたー」
「って、早っ!?」
「はい、どうぞ」
「……ど、どうも……」
じゃあ、続きを話しますね。
その日の夜はとても寒かったんです。どれくらい寒いかっていうと、お風呂から寝室まで歩くだけで風邪を引いちゃいそうなくらい。
それくらい寒かったから、布団は二枚敷いたんですけど、やっぱり寒くて。それでついつい、うっかり霊夢さんの布団に潜り込んじゃいまして。霊夢さんったら『そっちが早苗の布団』って言うんですけれど、拒否はしないんですよ。だからわたしも、ついついその好意に甘えて、霊夢さんに身を寄せちゃうんです。わかりますか? この気持ち。かわいい子に意地悪したくなっちゃうあれですよ。それに霊夢さんって、結構、以前から独り寝は寂しいなって思うこと、多かったらしいですよ。あの神社にいつから一人暮らししているかはわかりませんけれど、やっぱり寂しくなっちゃうこともあったらしくて。そりゃそうですよね。霊夢さんくらいの年齢なら、まだまだ家族が恋しいですもんね。だから、わたしが隣に寝てると、何だかんだで『ありがとう』なんて言ってくるんですよね。また、その時の顔がかわいいんですよ!(ばしっ!) 普段の霊夢さんのかわいさじゃないんですよ! もう、女の子のかわいさ、って言うんですか!? ああ、言葉に出して表現できないのがもどかしいなー! かわいさの中のかわいさとでも言っておきましょう! そんな顔を浮かべて、わたしににこって微笑んでくれるんです!(ばしんばしん!) だからわたしも、ついつい、霊夢さんのこと、ぎゅって抱きしめちゃいますよ! そしたら、あったかいんですよ~。お風呂に入って、体があったまっているっていうのもあるんですけど、それ以上のあったかさが肌に伝わってくるんです! 人肌さいこー!(どばしっ! あっちゃー!?) あ、文さん、何やってるんですか! お茶こぼしちゃって! やけどしちゃいますよ! 今、ふきん持ってきますね! はい持ってきました!(早っ!?) もう、危ないなぁ。
あ、それでですね。わたしがそうやってぎゅっと、つい抱きしめちゃう理由はですね、やっぱり、霊夢さんがかわいいのが悪いんですよ! 他人の責任にしちゃいますよ! つい! だって、抱きしめずにはいられないんですよ! あのかわいさ! だけど、それ以上のことが出来ないのが、まだまだ、わたしがダメな理由ですよねぇ……。電脳紙芝居の主人公たちってすごいですよね。たとえそういう状況になったとしても冷静さを忘れないんですから。わたしなんて、もう舞い上がっちゃって、寝顔を凝視するくらいしか出来ませんよ。霊夢さんって、普段はとっても鋭くて、警戒心だって高いのに、わたしがぎゅってすると、すぐにうとうとしてきて、それで、すやすや寝ちゃうんですよ。お母さんにだっこされた赤ちゃんって、きっとあんな感じなんでしょうね。それで、また、寝顔がかわいいんですよね~。普段の霊夢さんの五割増しですね。いや、もしかしたら倍でドンですね。それくらいかわいいですよ! 見てみます!? この前、写真撮ったんです! え? いらない? 何だ、残念。ま、それはともあれとしてですよ。そのまま、わたしはついつい、寝顔を観察して、霊夢さんの柔らかさとあったかさを堪能して、はぁ……幸せぇ……。
それでようやく、次の日に話は移るんですけどね。その次の日、わたしと霊夢さん、里の方に出て行って、お祭りの予定を詰めるついでに、美味しいって評判の甘味処に行ってきたんです。また、その時のエピソードもあるんですよ! 聞きたいですか?(あ、いえ、もう結構……) そっかぁ、そんなに聞きたいんですかぁ(いや、あの、だから……) 仕方ないですね! じゃあ、これは内緒の内緒ですよ!? 話しちゃいますね!(え? ちょ……)
~文々。新聞冬の特集号 紅白の巫女特集!~
(前略)
そこで、今回は、この幻想郷において一番の有名人である博麗神社の巫女、博麗霊夢について、彼女と交友関係のあるもの達を中心にアンケートを採ってみることにした。
皆、好意的に本紙記者の質問に答えてくれたおかげで、充実したコーナーの作成が出来たのは幸いである。
(中略)
以下に、頂いたアンケートの回答を記載する。ここまで皆に愛されている博麗の巫女に、今年も幸多きことを。
(中略その2)
洩矢の巫女:彼女のことが大好きです!
(なお、洩矢の巫女のアンケート回答は非常に熱烈かつ多くの回答を頂くことが出来ましたが、紙面の都合上、本紙記者の独断にて要約部分を抜粋することにしました。ご容赦ください)
(後略)
幻想郷でも年が明けて、早数日以上。
連日のように繰り広げられていた超弩級の宴会もなりを潜め、ようやく平穏な日々が戻ってきております。
さて、今年は我が文々。新聞飛躍の一年です。
目指せ、発行部数1万部!
――とはいえ、そんなに目を引くような事件事故が起きない、この幻想郷。誰もが手にとって面白いと思える新聞を作るのは難しいのです。
そこで私は考えました。
一年の始まりと言えばめでたいもの。つまり、めでたいものをネタにすればいいわけです。
そういうわけで、紅かったり白かったりして見た目にもおめでたい巫女さんをネタにすることにしました。
ずばり! 『あなたは紅白の巫女についてどう思いますか?』。突撃インタビュー開始です!
~Case.1 魔法使いさん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.あー、どう、って言われてもなー。別に特別なことはないぜ?(そこを何とか)
……しゃーないなー。
えっとだな、あいつと私はライバルだ。終生の。うん。そうだ。私が決めた。あいつがなんと言おうとライバルだ。
あとそれから……ま、基本的には悪友だと思ってるぜ?
それに、あいつは私が面倒を見ないとダメな奴だからな。ふっふっふ。どうだ、この時点で、すでに私の方があいつより偉いんだぜ!
今年も新年一発目の新スペカも完成したしな! 明日の勝負が楽しみだぜ!
――ちなみに、魔法使いさんは、その新スペカを振りかざして勝負を挑んだものの、MPが足りなかったようです。
~Case.2 メイドさん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.どう……ね。普通よ。彼女は特にお嬢様のお気に入りなのだし、基本的に礼儀はわきまえているし、悪い相手ではないわ。
日頃のぐーたらな生活はどうかと思うけれど、それは彼女のプライベートだもの。こちらが、特に何かを言う必要はないでしょう?
……そうね、私個人としてなら、手のかかる妹分みたいな感じかしら。
とはいえ、彼女は結構鋭いから。お嬢様の遣いで神社とかに足を運んだ際には、たまに掃除とかを、こっそりしてあげてるのだけど、次の日には『ありがとう』ってお礼を言いにくるのよ。
ああいうところは、素直に好感を持ってるわ。それに、見ていて、色々と手のかかる子だから。
付き合っていて、かわいいな、と思うことも多いわね。
――ああ、これから彼女のところに行くのなら、頼まれていたものが手に入ったから取りに来てね、って伝えてね。
~Case.3 人形遣いさん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.そうね。いい友人だと思っているわ。それに、最近は、ずいぶんかわいい感じになってきたし。
一昔前は、口を開けば、ただ憎たらしいところが多かったんだけど、最近はそうでもないのよね。
咲夜さんに頼みたいことがあっても言い出せない時なんかは、私のところに来ることも多いわよ。
最近だと……そうね、ケーキの作り方なんて学びに来てたわ。誰に食べさせるのかは知らないけどね。
私にとって?
……そうね。言うなれば、先輩と後輩かしら?
何となく、目の届くところに置いておきたくて、何となく世話を焼きたくなっちゃうような。そんな感じね。
けど、そういうことを言うと恥ずかしがって怒るのよね。ああいうところもかわいいわ。
――そうそう。この前、頼まれていた本、読み終わったから貸してあげるって伝えてきてね。
~Case.4 庭師さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.あの、こういうことって私じゃなくて幽々子さまの方が……え? 幽々子さまが『私に答えろ』って? ……もう。
えっと……そうですね。私がお付き合いしている方々の中では、比較的、まともだと思います。はい。
以前、こちらが迷惑をかけた負い目もあるのですけど、あの方はそういうところはさっぱりしていて、今になっても何かを言ってくることもなくて、正直、助かってますよ。
……まぁ、うちを夏の避暑地にしようとするのは勘弁して欲しいですけどね。
あと、やっぱり、笑顔がかわいいと思います。
私がお土産とかを渡すと、嬉しそうに笑って『ありがとう』って言ってくれるんです。
本当に、あの顔を見られるだけで、よかった、って思えますよ。ああいう素敵な笑顔を浮かべられるのは才能ですよね。
……個人的に、ちょっぴり羨ましいです。
――あ、そうだ。この前、霊夢さんがうちに忘れ物していったんです。あとで届けてもらっていいですか?
~Case.5 うさぎさん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.言い方は悪いけど、うちのいいお客さんかな。二日酔いでよく来るんですよね。そのたびに師匠に怒られてます。
あんまりにもよく来るものだから、私が以前、「ちょっと医療費、おまけしましょうか?」って聞いたら「んなのいらない」って断られたことがありますね。あれには驚きました。
彼女の性格からすると、『是非とも!』って言ってくると思いきや。理由は、『私はそういうところには、ちゃんと筋道を通すの』っていうことでした。
そういう人って、今、すごく貴重だと思うんです。意外と古風な人ですよね。
ああいう一面も持ち合わせているところは魅力的だと思いますよ。びしっと一本、筋が通っていると言うんでしょうか。普段からはとても想像が出来ないんですけど。
そういうところは羨ましいですね。私って、周りに流されやすいので。
……ちょっと憧れちゃったのは内緒ですよ?
――そうだそうだ。師匠から、今度の宴会に彼女を誘うように言われてたんだ。
あの、すいませんけれど、この手紙、渡してきてもらっていいですか? すいません。
~Case.6 子鬼さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.どう、ねぇ。見てて楽しい。それが一番かな。
私ら鬼にとっちゃ、一にお酒、二にお酒、三四がなくて五に楽しいこと、ってなもんでさ。
退屈は敵だよ。その点、彼女を見てると飽きないよね。それだけでも、付き合ってる意義があるってもんだよ。
それに、何だかんだで面倒見もいいしねぇ。私の目から見ても、彼女は好かれてると思うよ。誰からもね。
ま、その分、気が多くなるのも結構、結構。
あれだね。私から言わせてもらえば、私と彼女のスタンスは、つかず離れず、ってところかね。
そのくらいの微妙な距離感が心地いいよ。それに何より、それくらいが一番からかいやすいしね。
怒らせると、また面白いしさ。
――今度、また一緒に宴会しようよ、って伝えてきてね。よろしく~。
~Case.7 閻魔さま~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.そうですね。それについて、私がしっかり語ると長くなってしまうので手短にまとめさせて頂きます。
彼女は、全く、以前の彼女と変わりない……と、思いきや、最近はずいぶん変わってきたように思えます。
それがいいか悪いかは、もっとしっかり問答してみる必要があると思いますが、彼女の内面からしてみれば、きっと、悪いものではないでしょうね。
もっとも、彼女はそれを否定するでしょうけれど。それもまた、人間の要なのでしょう。
私の前では一切の嘘は通用しません。
いつか、彼女が私の元に来た時に、私が胸を張って『天国行き』を告げられるよう、しっかりと徳を高め、善行を積み重ねておいてもらいたいですね。
――……ところで、小町は見なかったでしょうか? え? 神社に行ってる? 最近、居心地がよくなってきたからってまた……。
親しみやすくなったのも罪なのかもしれませんね……。
~Case.8 管理人さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.う~ん……どう、と言われても。わたしの力を知っているのなら、その質問は無意味だと思うんですけど……。
そう……ですね。わたしの目から見て、ですけれど、変わり者だと思います。
いや、まぁ、幻想郷の人々の大半が変わり者だというのは認めますけれど、その中でもトップクラスという意味です。
どんな感じに……ですか。普通の変わり者よりも、斜め上の方向に変わり者、という感じですね。
必要以上のコメントは、彼女の内面にも関わってきますから避けますけれど、わたしはあんな感じの変わり者は悪くないと思ってますよ。
うちもそういう変わり者の巣窟ですから。波長が合う、というのでしょうか。
一緒にいて気兼ねせず、それでいて、適度にこちらも節度を守ることが出来る。そんな感じの変わり者です。
疎遠とか、つきあいが薄い、とか。そんな感じじゃないんですよ? 説明をするのが難しいですけど。
まぁ、総じて、わたしは彼女を好意的に見ています。のんびりしたい時は、あの神社に行ってみるのが最高です。
――最近、こいしが神社に入り浸っているようで。迷惑をかけて申し訳ありませんと伝えておいてください。
~Case.9 尼さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.私とは相容れないところもあると思いますが、それでも、お付き合いを拒む理由にはならないと思っています。
それに、この世界のルールに関しては、彼女の方が詳しいことも多くて。よくお世話になっています。
口では『面倒くさい』って言うんですけど、だけど、ちゃんと面倒を見てくださってまして。本当に助かっていますよ。
価値観の違いについては、こちらも多くは申しません。必要以上の押しつけは悪にしかなりませんから。
それでも、いつかはお互いがわかり合って、今よりももっとお近づきになりたいなとは思っています。
……ただ、人の命は有限。その日が来ることはないでしょうね。
でも、私は彼女とお知り合いになれてよかったと思っています。そういうところはさておきとして、楽しさを、私に与えてくれていますから。
加えて、彼女のいいところは、悪いことを次の日に引きずらないことですね。
そういう点に関しては、私も彼女に及ばないと思っています。だから、言うなれば、目指す一つの高みでもありますね。
もっとも、普段はそんな難しいこと、考えていませんよ。うふふ。
――先日お招き頂いた宴会、とても楽しかったです。今度はうちにも、是非、遊びに来てくださいとお伝えください。
いやいや、皆さん、意外と巫女さんには好意的な印象を持ってるんですね。飾っているという感じもありませんでしたし。
これは聞いてよかったかも……っと。
~Case.10 隙間妖怪さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.唐突ね。いきなり、人の顔を見て近づいてきたらと思ったら。
別に、何とも思わないわ。私が彼女に求めているのは、この世界を維持するための、結界の要としての役割だもの。
確かに、先代の巫女と比べると、まだまだなところがあるけれど。それは時間が解決してくれるでしょうね。
もちろん、そうならなければ、私がしつけるし、教えてあげるわ。
偉そう、余計なお世話、なんて彼女は言うだろうけど、そういう風に私に世話になるあなたが悪いのよ、なんてね。
私から見た彼女はこんな感じかしら。
普段は、結構、あきれているのよ。これでもね。
けど、言い換えてみれば、それでも面倒を見てしまうのは、『ダメな子ほどかわいい』というところかしらね。
「さて、こんな感じでよろしい?」
「あ、はい。ありがとうございました」
「そう。それじゃ……え? 何よ、藍。
え? 霊夢が『冬物のセーターがどこにあるかわからない』って?
ああ、もう。それは先週、タンスの一番下の段に入れておくからねって言っておいたでしょうに。
ほんとにもう。
さては、あの子、またタンスの中にごちゃごちゃに洗濯物を突っ込んだんでしょう。どうしてこうなのかしら」
「……えーっと」
というわけで、隙間妖怪さんは帰って行っちゃいました。
あとは…………………ああ、そうだ! 一番、大切な人を忘れていました!
ちょっと長くなっちゃいそうな気もしますけど、あそこからなら我が家も近いから大丈夫ですよね!
よーっし、それじゃ、急げ文ちゃーん!
~Case.11 洩矢の巫女さん~
Q.あなたは紅白の巫女さんについてどう思いますか?
A.え? 霊夢さんについて、ですか?
えっと……そう……ですね。やっぱり、うん。この世界において、わたしの先輩ですから。普段から尊敬してますし、目標としていますよ。
……え? それもいいけど、本音を、ですか?
えっと……それじゃ。
やっぱり、霊夢さんと言えば、付き合っていて、とっても楽しい人っていう感じだと思うんです。
どんな感じかというと、昨日、霊夢さんのところに遊びに行ったんですけれど、その日はたまたま霊夢さんが麓の村の方々とお祭りの予定を立てていまして。わたしもそれに横から参加させて頂いたんですけれど、予定を立て終わって、村の方々が帰ってから、『早苗はどんなのがいい?』って聞いてきてくれたんです。それでですね、わたし、色々考えていたことを話したんですけれど、霊夢さん、『あ、それいいね。やろうか』って言ってくれて! わたしの提案をあっさり受け入れてくれたんです! 嬉しかったですよ~。だってだって、以前の霊夢さんなら、『そんな面倒なことやるの?』って、絶対に渋い顔してましたよ? それなのにですよ! で、ついついその後も話し込んじゃいまして。わたし、外の世界にいた時も割とお喋りな方だったんですけれど、霊夢さんとお話をしていると、ついつい時間が過ぎるのを忘れちゃいまして。だって、楽しいんですもん。それに、ほら、お互いのお仕事にもつながるお喋りじゃないですか? だから、お互い、熱も入っちゃうんですよ。それで、結局、その日はお泊まりになっちゃいました。てへへ。
あ、お泊まりと言えば、聞いてください文さん! 霊夢さん、その日、わたしにお料理を教えてくれたんです。わたし、お料理作るのがちょっと苦手で……。だけど、やっぱり、結婚したら妻が料理を作るのは当然じゃないですか? え? 誰が妻で誰が旦那だって? もう、文さんったら!(ばっし!) 言わせないでくださいよ~!(ばっしばっし!) もう、照れちゃうじゃないですかっ!(ちょ、痛い痛い!? 早苗さん、叩かないでください!) それでそれで、料理を作っていた時なんですけどね、手取り足取り教えて頂いたのも嬉しかったんですけれど、わたし、つい包丁で指を切っちゃったんです。そしたら霊夢さんが、指先をぱくって! ぱくってしてくれたんですよ! きゃー!(どばしっ! いったー!?) もう、もう、もう! 漫画とかアニメの中でのみのシチュエーションだと思っていたのにっ! 事実は小説よりも奇なりですよ! もう、わたし、顔が真っ赤になっちゃって、隠すのが大変でしたよ~。その後、絆創膏を巻いてもらったんですけれど、何だかそれがすごく嬉しくて。つい、外すのを忘れてて、つい先日までつけっぱなしにしちゃいました。えへへ。
それでですねそれでですね。わたしが作ったお料理、霊夢さんが教えてくれたことをしっかりと実践できたみたいで。自分で食べてもすっごく美味しかったんです。神奈子さまですら、『早苗に野菜炒め以外を教えるのは難しいよ』って仰っておられたのにですよ!? 教え方は一緒なのに! 不思議ですよね~。で、霊夢さんと一緒に晩ご飯を食べたんですけど、『美味しいよ』って言ってくれたんです! これ以上ないですよね! 最高のほめ言葉ですよね! 嬉しくて嬉しくて、笑顔以外の顔が出来ませんでしたよ!(ばしばし!)
それから、お風呂に入ったんです。あ、その日は寒かったから、わたしと霊夢さん、一緒に入ったんですよ。そしたらですね、霊夢さんが、わたしのことをじーっと見てくるんです。それで、わたし、『どうしたんですか?』って聞いたんですよ。そしたら、霊夢さんったら、『早苗は美人でいいよねぇ。というか、私もそれくらい、胸が大きくなりたいよ』なんて。個人的に、大きな胸の霊夢さんもいいんですけれど、今くらいがちょうどいいと思うんです。わかりますか? 文さん。スレンダーの魅力、って。真っ平らとかお子様体型とかじゃなくて、スレンダーなんですよ。きゅっとくびれて引き締まった体なんて、抱きしめたら、絶対に気持ちいいですよ! 適度な柔らかさと適度な堅さというんでしょうか! 抱き枕向けだと思うんです! あ、だけどだけど、霊夢さんも絶対に美人だと思うんですよ。日本的な。特にですね、文さんにはわからない……というか、これ、私だけの特権だと思ってるんですけれど。お風呂に入ってる時の霊夢さんって、髪の毛をアップにしてるんです。そのアップにした雰囲気も抜群として、最高なのは、うなじから肩のライン……ちょうどこの辺りですね。ここが最高なんです!(ばしん!) 白い素肌がお湯の温かさでほのかにピンク色になってて、水滴と汗が伝う、このライン! わかりますか!? わかりますよね! あ、わかんなくてもいいですよ! わたしだけがわかっていればいいんです、えへへ。羨ましいですか? 羨ましいですよね~。えっへん! もう、そのラインの感じが! エロいんです! これ以上ないくらい! わたし、そういうフェチ趣味とかないんですけど、ついうっかり凝視してしまいますよ!(ばっしばっし!) ついうっかり、指先でなでちゃいますよ! そしたら霊夢さん、『ひゃんっ!』ってかわいい声を上げて! 怒るんですよ! ほっぺた膨らまして! 『えっちなことしないでよ』って! えっち、ですって! きゃー!(ずばしっ!) そこでわたしは気づきましたよ。わたしって、ふっくらふくよかな女性らしい体型の方より、霊夢さんみたいなスレンダー美人に惹かれるんだ、って! わかりますか!?(わかります、わかります! わかりますから叩かないでください、痛いですよー!) その後も、お背中流してあげたら、『自分で出来るからいいよ』って照れたり、お風呂上がりにタオルでお体をふいてあげたら『そこまでしなくてもいいよ』って照れくさそうにしてたり! かわいいですよね~。もう!(ずばしっ!)
それで! ここからが聞き所ですよ、文さん! あ、ちょっとどこ行くんですか? ここからがいいところなんですから!
あ、そうですね。お茶、用意してませんでしたね。美味しいお茶とお菓子がありますから、ちょっと待っててくださいね。
――がたん。とたとたとた……。
「……今だ、射命丸! 今なら逃げ出せ……!」
「お待たせしましたー」
「って、早っ!?」
「はい、どうぞ」
「……ど、どうも……」
じゃあ、続きを話しますね。
その日の夜はとても寒かったんです。どれくらい寒いかっていうと、お風呂から寝室まで歩くだけで風邪を引いちゃいそうなくらい。
それくらい寒かったから、布団は二枚敷いたんですけど、やっぱり寒くて。それでついつい、うっかり霊夢さんの布団に潜り込んじゃいまして。霊夢さんったら『そっちが早苗の布団』って言うんですけれど、拒否はしないんですよ。だからわたしも、ついついその好意に甘えて、霊夢さんに身を寄せちゃうんです。わかりますか? この気持ち。かわいい子に意地悪したくなっちゃうあれですよ。それに霊夢さんって、結構、以前から独り寝は寂しいなって思うこと、多かったらしいですよ。あの神社にいつから一人暮らししているかはわかりませんけれど、やっぱり寂しくなっちゃうこともあったらしくて。そりゃそうですよね。霊夢さんくらいの年齢なら、まだまだ家族が恋しいですもんね。だから、わたしが隣に寝てると、何だかんだで『ありがとう』なんて言ってくるんですよね。また、その時の顔がかわいいんですよ!(ばしっ!) 普段の霊夢さんのかわいさじゃないんですよ! もう、女の子のかわいさ、って言うんですか!? ああ、言葉に出して表現できないのがもどかしいなー! かわいさの中のかわいさとでも言っておきましょう! そんな顔を浮かべて、わたしににこって微笑んでくれるんです!(ばしんばしん!) だからわたしも、ついつい、霊夢さんのこと、ぎゅって抱きしめちゃいますよ! そしたら、あったかいんですよ~。お風呂に入って、体があったまっているっていうのもあるんですけど、それ以上のあったかさが肌に伝わってくるんです! 人肌さいこー!(どばしっ! あっちゃー!?) あ、文さん、何やってるんですか! お茶こぼしちゃって! やけどしちゃいますよ! 今、ふきん持ってきますね! はい持ってきました!(早っ!?) もう、危ないなぁ。
あ、それでですね。わたしがそうやってぎゅっと、つい抱きしめちゃう理由はですね、やっぱり、霊夢さんがかわいいのが悪いんですよ! 他人の責任にしちゃいますよ! つい! だって、抱きしめずにはいられないんですよ! あのかわいさ! だけど、それ以上のことが出来ないのが、まだまだ、わたしがダメな理由ですよねぇ……。電脳紙芝居の主人公たちってすごいですよね。たとえそういう状況になったとしても冷静さを忘れないんですから。わたしなんて、もう舞い上がっちゃって、寝顔を凝視するくらいしか出来ませんよ。霊夢さんって、普段はとっても鋭くて、警戒心だって高いのに、わたしがぎゅってすると、すぐにうとうとしてきて、それで、すやすや寝ちゃうんですよ。お母さんにだっこされた赤ちゃんって、きっとあんな感じなんでしょうね。それで、また、寝顔がかわいいんですよね~。普段の霊夢さんの五割増しですね。いや、もしかしたら倍でドンですね。それくらいかわいいですよ! 見てみます!? この前、写真撮ったんです! え? いらない? 何だ、残念。ま、それはともあれとしてですよ。そのまま、わたしはついつい、寝顔を観察して、霊夢さんの柔らかさとあったかさを堪能して、はぁ……幸せぇ……。
それでようやく、次の日に話は移るんですけどね。その次の日、わたしと霊夢さん、里の方に出て行って、お祭りの予定を詰めるついでに、美味しいって評判の甘味処に行ってきたんです。また、その時のエピソードもあるんですよ! 聞きたいですか?(あ、いえ、もう結構……) そっかぁ、そんなに聞きたいんですかぁ(いや、あの、だから……) 仕方ないですね! じゃあ、これは内緒の内緒ですよ!? 話しちゃいますね!(え? ちょ……)
~文々。新聞冬の特集号 紅白の巫女特集!~
(前略)
そこで、今回は、この幻想郷において一番の有名人である博麗神社の巫女、博麗霊夢について、彼女と交友関係のあるもの達を中心にアンケートを採ってみることにした。
皆、好意的に本紙記者の質問に答えてくれたおかげで、充実したコーナーの作成が出来たのは幸いである。
(中略)
以下に、頂いたアンケートの回答を記載する。ここまで皆に愛されている博麗の巫女に、今年も幸多きことを。
(中略その2)
洩矢の巫女:彼女のことが大好きです!
(なお、洩矢の巫女のアンケート回答は非常に熱烈かつ多くの回答を頂くことが出来ましたが、紙面の都合上、本紙記者の独断にて要約部分を抜粋することにしました。ご容赦ください)
(後略)
面白かったです
ニヤつかせて頂きました!
サナレイちゅっちゅ
早苗さんから愛が溢れてますなぁ
紫ってばおかんやなー
とか思ってたら早苗さんなげぇwwww
愛が溢れすぎている。
三原則には同意せざるを得ない。
文……無茶しやがって……
三日ですんだのが奇跡だと。