文の家。泊まり込みで新聞記事作成お手伝いなう。
………ん?
じゃなくて!ライバル新聞の売れる秘訣を!盗みに来た、なう!
……なのに何してるんだろ、私。
「さて、行ってきます」
「誰に言ってるでも無いのに、馬鹿じゃないの」
「あなたがいるじゃないですかぁ」
「気持ち悪い」
「じゃあ見送りに来ないでよ。期待したのに」
「そりゃあ、残念でしたぁ」
少しうなだれて文は出ていった。扉越しの羽音が遠ざかる。
「行って……、いや、逝って……行ってらっしゃい」
……さっさと帰ってきて私を構え。
いや帰ってくるな、家捜しして参考にするもの漁るんだもの。
「でも、良心ある素敵なはたてちゃんはぁ、そういうことしないもんね!」
とりあえず自分の分、記事を仕上げよう、っと。
………ああ、そういえば、もう終わって入稿するだけだった。
時計が進むのが遅い、昼下がり。
お昼ご飯作ろう。
作った。
「いただきます」
何で二人分作ったんだ、私。
しかし、遅い。
昨日はもっと早くて面食らった位なのに。
いつの間にか夕方。
羽音がする。耳に馴染んだ文の羽音。
扉が開く。安心と怒り。あれ、なんで?
しかしやっと、帰ってきた。やっっっと帰ってきた。この取材バカめ。
可愛い可愛いはたてちゃんを置き去りにして、(どうせ取材だけど)何やっていたのかしら。
ああもう!そのニヤニヤが気に入らないっ!
「皆さんご協力ありがとうございました……っと」
「文、ナニにやにやしてんの?」
「聞き込み調査もなかなか乙ですねぇ。しかし決定的証拠に欠けるので、撮影に行ってきま……ぶふう。
何するんですか」
飛び出そうとした文の足に傍にあった箒を引っ掛けてやった。
ザマミロー、漫画みたいに引っ掛かっちゃって。
「馬鹿がにやにやするのが気に入らないのよ」
「ああそうですか、はたては置いてきぼりを喰らってとってもとっても寂しかったんですね」
「そんなはずない!何よバカ文の癖に!」
「図星のクセに、酷いですねえ。
でも、この記事が上がったら、ちゃんと沢山構ってあげるから。ねぇ、はたて」
あまぁい、猫撫で声。急に近づいて、文の手が、頭を撫でてくるのだから、隙が出来て――
ちゅっ、と啄む音。唇に柔らかい感触。
唖然とする私、あいつはにこりと笑顔。
うぅ、また丸め込まれた。……やっぱり文なんか嫌いだ。
何より、こんなのひとつで舞い上がる自分が、一番嫌い。
――馬鹿あや、だいっきらい。……でも、大好きだなんて、
本音なんか、絶対言ってやらないんだから!
………ん?
じゃなくて!ライバル新聞の売れる秘訣を!盗みに来た、なう!
……なのに何してるんだろ、私。
「さて、行ってきます」
「誰に言ってるでも無いのに、馬鹿じゃないの」
「あなたがいるじゃないですかぁ」
「気持ち悪い」
「じゃあ見送りに来ないでよ。期待したのに」
「そりゃあ、残念でしたぁ」
少しうなだれて文は出ていった。扉越しの羽音が遠ざかる。
「行って……、いや、逝って……行ってらっしゃい」
……さっさと帰ってきて私を構え。
いや帰ってくるな、家捜しして参考にするもの漁るんだもの。
「でも、良心ある素敵なはたてちゃんはぁ、そういうことしないもんね!」
とりあえず自分の分、記事を仕上げよう、っと。
………ああ、そういえば、もう終わって入稿するだけだった。
時計が進むのが遅い、昼下がり。
お昼ご飯作ろう。
作った。
「いただきます」
何で二人分作ったんだ、私。
しかし、遅い。
昨日はもっと早くて面食らった位なのに。
いつの間にか夕方。
羽音がする。耳に馴染んだ文の羽音。
扉が開く。安心と怒り。あれ、なんで?
しかしやっと、帰ってきた。やっっっと帰ってきた。この取材バカめ。
可愛い可愛いはたてちゃんを置き去りにして、(どうせ取材だけど)何やっていたのかしら。
ああもう!そのニヤニヤが気に入らないっ!
「皆さんご協力ありがとうございました……っと」
「文、ナニにやにやしてんの?」
「聞き込み調査もなかなか乙ですねぇ。しかし決定的証拠に欠けるので、撮影に行ってきま……ぶふう。
何するんですか」
飛び出そうとした文の足に傍にあった箒を引っ掛けてやった。
ザマミロー、漫画みたいに引っ掛かっちゃって。
「馬鹿がにやにやするのが気に入らないのよ」
「ああそうですか、はたては置いてきぼりを喰らってとってもとっても寂しかったんですね」
「そんなはずない!何よバカ文の癖に!」
「図星のクセに、酷いですねえ。
でも、この記事が上がったら、ちゃんと沢山構ってあげるから。ねぇ、はたて」
あまぁい、猫撫で声。急に近づいて、文の手が、頭を撫でてくるのだから、隙が出来て――
ちゅっ、と啄む音。唇に柔らかい感触。
唖然とする私、あいつはにこりと笑顔。
うぅ、また丸め込まれた。……やっぱり文なんか嫌いだ。
何より、こんなのひとつで舞い上がる自分が、一番嫌い。
――馬鹿あや、だいっきらい。……でも、大好きだなんて、
本音なんか、絶対言ってやらないんだから!
さぞからかい甲斐がありそうな。