Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

滝裏の花

2011/01/07 14:22:52
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作品集80「縁側の花」の続きというか、後日談です。







「♪♪~♪」


鼻唄を歌いながら山の上を飛ぶ。

ここ最近のお気に入りの場所へ。



九天の滝、滝壺から10mほど上のところの、その裏には、ぽっかりと小さな洞窟があった。

奥行きはほとんどないけれど、天井は高く、滝越しの日のきらきらとした光に、下の方から聞こえてくる滝壺の音。

一人でいたいとき、のんびりしたいとき、過ごすには最適の場所だ。


九天の滝には滝壺のすぐ裏に大きな洞窟があるので、こちらには気づかないのか、ほとんど誰も来ない。


「ま、私だけの秘密基地ってところかしらね」


誰に向かってなのか、文はそう言いながら洞窟に降り立つ。

今日もいい天気で、太陽光に裏から照らされた滝はとても輝いて見える。


「たとえ霊夢さんと言えどここは教えたくないですねー」


この輝きは自分だけのものにしたい。

ジャーナリストにだって、独占欲はあるのだ。


「ふう、やっぱりここは落ち着くわね……ん?」


ふと目をやると、洞窟の奥の行き止まりの壁に、一点、赤色が見える。


「あや?こんなのありましたっけ……」


近づいてよく見てみると……



「……あぁ」


文は納得がいった、という感じに笑顔を浮かべた。


「……そうですね」


壁の赤に語りかける。


「迷う必要なんて、ないはずなんですよ」


向こうもそれを望んでいるし、自分もそれを望んでいる。

なのに、なぜ逡巡してしまうのか。


「……どうしてでしょうね」


赤は何も答えない。


「……今度は、私を手伝ってくれるのですか?」


目の前の赤とは別に、目の端に赤が見えた。

そこを見ると、もう一つ赤。

答えの代わりだろうか。


「ふふ、了解、しました」













いつものように博麗神社に出向いた。

霊夢さんはいつものように縁側にいた。

いつもの会話。


「おはようございます、霊夢さん」

「あら。おはよう、文」


あの日からも全く変わらない会話。

彼女は、いらいらしているだろうか、諦めているだろうか。

表情からは読み取れない。


「霊夢さん、"リナリア"って知ってますか?」

「? 知らないわ」

「花の名前なんですよ。霊夢さんにあげようと思って。ほら、これです」


そう言って、2つの赤……リナリアを差し出す。


「……これは……」


霊夢が驚きの中、少し安堵も混ざったような顔で尋ねてくる。


「リナリア、別名……姫金魚草、ですよ。花言葉は……」


ぎゅっ……

文が言い終わらないうちに霊夢が抱きついた。


「……『私の恋を知ってください』、ね」

「……はい」

「……ばか。何が幻想郷最速よ……返事が、遅い」

「申し訳、ありません」

「そんな言葉は、いらない」

「……ええ」

「ちゃんと、返事、ちょうだい」

「……大好き、です」

「……うん、私も」


今日はいい天気。

太陽の下に、二人。

文が手に持ったリナリアは、満足そうに風に揺れた。
予定外だったけど後日談が浮かんだ。
この二人の恋には、何かしら手助けがいる気がするの。
ケトゥアン
http://twitter.com/Ketoxuan
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
どっちも素直になれそうもないからなぁ…
何かしらが必要な気がするのは同感です