※前回(作品集78)、前々回(作品集76)の続き。
「ねえ、アリス。あんたって、幽香のどこが好きなの?」
博麗神社の畳臭い居間の中。
炬燵の向かい側に座った霊夢が、いきなりとんでもないことを問い掛けてきたせいで、私は口に含んでいた紅茶を思いきり咽喉に詰まらせてしまった。
せっかく持ってきた紅茶も、そんな無茶な飲み方だと美味しくなくなるわよ。
からかうような声がまた届く。
私は取り出したハンカチで口元を拭いながら、うるさい、と小さく言い返すしかなかった。
そんな人形みたいに綺麗な瞳で睨まれても全然怖くないわ。
ほんと、うるさい。
「意味が分からないんだけど」
「別に、そのままの意味よ」
「私がいつ、あいつのことを好きって言ったのよ」
「言わなくても分かるわよ。あんたら見てたら」
「……勘のいい巫女様だこと」
「あら、否定はしないのね」
花を摘みに行った話題の張本人がいつ帰ってくるかも分からない中で、このまま不毛な言い争いを続けても時間の無駄よ。
新しい紅茶をカップに勢いよく注ぎながら私は、蜜柑の皮を剥き始めた霊夢にきつく言ってやった。
どうせ霊夢は私の慌てふためく様を笑ってやろうと、こんな質問をしたんだろうが、そうは問屋が卸さない。
こうなったら、答えてやろうではないか、正直に。
「好きなところねえ」
他人に訊かれて、初めてそのことについて考えてみる。
そういえば、私はいつからあいつのことが気になり始めたんだっけ。
ことの起りは博麗神社。場所を移して私の自宅。
見る見るうちに一緒にいる時間は増えていって。
だんだんとあいつのことが、どうしようもなく気になるようになって。
そして終いには、道端に咲いた花に向ける笑顔を、自分にも向けて欲しいなどと思うようになってしまった。
いつのまにか、そうなってしまった。
そこまで己の記憶を辿ってみて、ほどなく、私の頭に一筋の答えが見え始めた。
何てことはない。それは至極単純な答えだった。
「花が好きなところ、かしら」
「はあ?」
「だって、世間様が恐れるいじめっ子が、花にはあんなに優しいのよ?」
「それがどうしたって言うのよ」
「可愛いじゃない?花が好きだなんて」
可愛いのかしら、と霊夢は明らかに渋い顔をして私の方を見据えたが、私はそんな彼女の怪訝な態度はお構いなしに話を続けた。
「そうよ、そういうことだったよ」
「あー……何だか一人で納得しちゃってるわね」
誰に対しても棘を向けるあいつが、その身を預けるただ一つのもの。
健気に咲いた花にだけ、あいつは普段では想像できないほどに優しい笑顔を向ける。
私はその表情に、その優しさに、とてつもなく魅かれてしまったのだ。
誰よりも傍であいつの冷たさと恐怖にさらされてきた私だからこそ。
「つまり、どういうことなの?」
「女はギャップに弱いってこと」
なんじゃそりゃ。
咥えていた一房の蜜柑を飲み込んでから、霊夢は呆れた表情で応えた。
その態度は分からないでもない。
私もこの馬鹿げた結論に一言もの申してやりたい。
だが、ふとした瞬間に恋の錯覚に気づくように、現実に戻されるように。
好きだなんて感情は、紐解いてみれば、からくり人形よりも単純な仕組みでしかないのだ。
それは認める。
でも何だかそれが、私の心もそうであるように思えて、どこか腑に落ちない。
――こればかりは仕方のないことなんだけどね。
けどやっぱり色々と消化不良なので、とりあえずここにはいないあいつを呪ってやることにする。
「つまりすべて幽香が悪いってことよ」
「あら、何だか聞き捨てならない言葉ね」
やけくそ気味に放った呪詛は、何に妨害されることもなく、受取人にそのまま届いてしまったようだ。
滑りの悪い障子を力任せに無理やり開けて入ってきたのは、いつもの底の知れない笑顔を浮かべたフラワーマスター様。
彼女は私の呪いを何事もなかったかのように受け止めて、何食わぬ顔で炬燵に入り込んできた。
「私が厠に行っている間に、アリスはどんな酷いことをされたのかしら?」
流れるような動作で私の淹れた紅茶を霊夢の湯呑に注いだ幽香は、それを一気に飲み干すと同時に、隣に座る私に笑顔で問うてきた。
その笑顔が薄ら寒く感じるのはきっと気のせいではないだろう。
「ただ私がアリスに質問していただけよ」
どう言い訳をしようか逡巡しているうちに、不穏な雰囲気を察知したのか、霊夢が間に入ってくれた。
さすが、博麗の巫女は空気の悪さも浄化してくれるらしい。
あとでお賽銭でも入れておこうかな。
「質問?何それ」
「幽香のどこが好きなのかって」
だがしかし、次の一言によって私は、心の中で握っていたお賽銭を遠くに放り投げることになる。
ふーん、と幽香の口角が分かりやすいほど吊り上がっていく。
一度霊夢とは地雷のことについて、夜が明けるまでじっくり話し合いたいと思う。
「ちょっと霊夢、さらっとばらさないでよ」
「アリスは何て答えたの?」
「それがね、いまいちよく分からないんだけど」
「聞けい、おのれら」
余計なことまで喋り出しそうな霊夢の口を塞ごうにも、ここから反対側に座っている彼女にはさすがに腕は届かない。
人形も魔法も仕掛けている隙はない。
万策尽きた私に抵抗する術はもうなかった。
「花が好きなところ、ですって」
ああ、知られてしまった。聞かれてしまった。
今思えば色々と恥ずかしい自論をそのまま暴露されてしまった。
自分でも分かるくらい一気に熱が集中する。穴があったら入りたい。
あとギャップがどうとかも言ってたわね、と霊夢はそんな私に構わず続けている。
それに対して、幽香は晴れやかな顔で相槌を打っている。
悪い空気をどうにかして欲しいとは確かに思ったけれど、ここまで居づらいものに変えなくたっていいじゃない。
そうこうしているうちに、霊夢はまた自ずから地雷を踏んだ。
「そういや、幽香はアリスのどこが好きなの?」
そろそろこの天然記念物な巫女様は、熨斗をつけてスキマの中に放り込んだ方がいいかもしれない。
私は背後に待機させていた上海人形に指示を出そうとして。
しかし、その手はすぐに止めざるを得なかった。
「私のことが好きなところ、かしら」
きっぱりはっきりと幽香が何の戸惑いもなく言った。
その言葉を聞いた霊夢はすぐに納得した表情になったが、私は口をぽかんと開けたままだった。
私にとって彼女の言葉は、ふわふわとした紅茶の湯気のように、まったく実体の掴めないものだった。
「それって、どういう意味?」
「そのままの意味でしょ」
「そのままの意味よ」
だから、どういう意味なのよ。
隣と向かい。すべて分かりきった様子の二人。
先ほどよりも一層、私の心にもやもやした気持ちが湧き上がってくる。
「仕方ないわね。教えてあげるわ」
それが面に出てしまっていたのだろうか。
幽香は私の方に顔を向けると、溜め息をついてから、目と鼻の先でこう言った。
そんな彼女の態度に何か一言言ってやろうかと思ったが。
けれども私の口は上手く動かなかった。
いつのまにか、温かく柔らかいものに塞がれてしまっていたからだ。
もちろんそれは手ではない。指でもない。
もっと小さくて赤いものだ。
「どう?身をもって知ってみて」
「幽香、あんた……ただアリスに口吸いしたかっただけでしょ」
「そうそう、そうやってすぐ顔を真っ赤にするところも可愛くて好きよ」
「変な奴に愛されてちゃったわね、アリス」
ちぐはぐな会話をしている二人をよそに、私の頭はすべてを煮つくしてしまうほどにぐつぐつと茹っていた。
もう、まともに二人を見ることができない。両手で火照った顔を覆う。
混乱した私に呼応するように、後ろでは人形たちが不思議な踊りを踊っている。
「あ、あんたら……」
何だか急に疲れがどっと湧いてきた。身体中が脱力しきっている。
それとなぜか家が恋しくなってきた。
それは、久しぶりに帰った実家で会ったこともない親戚に囲まれた時に感じる居た堪れなさに少し似ている。
そう、私は今、完全にアウェイだった。
「……もう帰るわ」
「あら、まだお茶も蜜柑も半分以上残っているのに」
「これ以上は私の心臓がもたない」
「胸やけに効く薬ならあるけど」
霊夢が箪笥の上に置いてある薬箱を指し示したようだが、私はそれには目もくれずに炬燵から這い出し、靴や荷物を人形たちに持たせ縁側の方へと歩いた。
二人の方は見ない。振り向かない。
こんな顔を見られたら、絶対またからかわれてしまう。
未だ私の頬も心臓もまともに機能しないほど暴走していた。
だってそれは仕方がない。
初めて彼女からはっきりと好きだと言われたのだから。
――初めての接吻だったのだから。
「ちょっとからかいすぎたかしら」
人形遣いがいなくなった神社に、巫女と妖怪の影が二つ。
雲一つない青空をそれぞれがそれぞれの面持ちで見上げてる。
「それにしても、私のことが好きなところねえ」
「……」
「それって、『こんな私を好きでいてくれてありがとう』ってことでしょう?」
「そうとも言うわ」
「もう。それなら接吻なんかでごまかさずに、正直に言ってやればよかったのに。このままだとあの娘、変な勘違いするわよ」
「はいはい。霊夢は過保護ね」
「あんたがいじめっ子すぎんのよ」
ほらとっとと追う、と霊夢は傘を広げた幽香をけしかけた。
次第に遠くなっていく妖怪の姿に向かって、後で恋愛相談料請求しようかしら、と恩着せがましい巫女は寒空の下、溜め息をつきながら柔く微笑んだ。
「ねえ、アリス。あんたって、幽香のどこが好きなの?」
博麗神社の畳臭い居間の中。
炬燵の向かい側に座った霊夢が、いきなりとんでもないことを問い掛けてきたせいで、私は口に含んでいた紅茶を思いきり咽喉に詰まらせてしまった。
せっかく持ってきた紅茶も、そんな無茶な飲み方だと美味しくなくなるわよ。
からかうような声がまた届く。
私は取り出したハンカチで口元を拭いながら、うるさい、と小さく言い返すしかなかった。
そんな人形みたいに綺麗な瞳で睨まれても全然怖くないわ。
ほんと、うるさい。
「意味が分からないんだけど」
「別に、そのままの意味よ」
「私がいつ、あいつのことを好きって言ったのよ」
「言わなくても分かるわよ。あんたら見てたら」
「……勘のいい巫女様だこと」
「あら、否定はしないのね」
花を摘みに行った話題の張本人がいつ帰ってくるかも分からない中で、このまま不毛な言い争いを続けても時間の無駄よ。
新しい紅茶をカップに勢いよく注ぎながら私は、蜜柑の皮を剥き始めた霊夢にきつく言ってやった。
どうせ霊夢は私の慌てふためく様を笑ってやろうと、こんな質問をしたんだろうが、そうは問屋が卸さない。
こうなったら、答えてやろうではないか、正直に。
「好きなところねえ」
他人に訊かれて、初めてそのことについて考えてみる。
そういえば、私はいつからあいつのことが気になり始めたんだっけ。
ことの起りは博麗神社。場所を移して私の自宅。
見る見るうちに一緒にいる時間は増えていって。
だんだんとあいつのことが、どうしようもなく気になるようになって。
そして終いには、道端に咲いた花に向ける笑顔を、自分にも向けて欲しいなどと思うようになってしまった。
いつのまにか、そうなってしまった。
そこまで己の記憶を辿ってみて、ほどなく、私の頭に一筋の答えが見え始めた。
何てことはない。それは至極単純な答えだった。
「花が好きなところ、かしら」
「はあ?」
「だって、世間様が恐れるいじめっ子が、花にはあんなに優しいのよ?」
「それがどうしたって言うのよ」
「可愛いじゃない?花が好きだなんて」
可愛いのかしら、と霊夢は明らかに渋い顔をして私の方を見据えたが、私はそんな彼女の怪訝な態度はお構いなしに話を続けた。
「そうよ、そういうことだったよ」
「あー……何だか一人で納得しちゃってるわね」
誰に対しても棘を向けるあいつが、その身を預けるただ一つのもの。
健気に咲いた花にだけ、あいつは普段では想像できないほどに優しい笑顔を向ける。
私はその表情に、その優しさに、とてつもなく魅かれてしまったのだ。
誰よりも傍であいつの冷たさと恐怖にさらされてきた私だからこそ。
「つまり、どういうことなの?」
「女はギャップに弱いってこと」
なんじゃそりゃ。
咥えていた一房の蜜柑を飲み込んでから、霊夢は呆れた表情で応えた。
その態度は分からないでもない。
私もこの馬鹿げた結論に一言もの申してやりたい。
だが、ふとした瞬間に恋の錯覚に気づくように、現実に戻されるように。
好きだなんて感情は、紐解いてみれば、からくり人形よりも単純な仕組みでしかないのだ。
それは認める。
でも何だかそれが、私の心もそうであるように思えて、どこか腑に落ちない。
――こればかりは仕方のないことなんだけどね。
けどやっぱり色々と消化不良なので、とりあえずここにはいないあいつを呪ってやることにする。
「つまりすべて幽香が悪いってことよ」
「あら、何だか聞き捨てならない言葉ね」
やけくそ気味に放った呪詛は、何に妨害されることもなく、受取人にそのまま届いてしまったようだ。
滑りの悪い障子を力任せに無理やり開けて入ってきたのは、いつもの底の知れない笑顔を浮かべたフラワーマスター様。
彼女は私の呪いを何事もなかったかのように受け止めて、何食わぬ顔で炬燵に入り込んできた。
「私が厠に行っている間に、アリスはどんな酷いことをされたのかしら?」
流れるような動作で私の淹れた紅茶を霊夢の湯呑に注いだ幽香は、それを一気に飲み干すと同時に、隣に座る私に笑顔で問うてきた。
その笑顔が薄ら寒く感じるのはきっと気のせいではないだろう。
「ただ私がアリスに質問していただけよ」
どう言い訳をしようか逡巡しているうちに、不穏な雰囲気を察知したのか、霊夢が間に入ってくれた。
さすが、博麗の巫女は空気の悪さも浄化してくれるらしい。
あとでお賽銭でも入れておこうかな。
「質問?何それ」
「幽香のどこが好きなのかって」
だがしかし、次の一言によって私は、心の中で握っていたお賽銭を遠くに放り投げることになる。
ふーん、と幽香の口角が分かりやすいほど吊り上がっていく。
一度霊夢とは地雷のことについて、夜が明けるまでじっくり話し合いたいと思う。
「ちょっと霊夢、さらっとばらさないでよ」
「アリスは何て答えたの?」
「それがね、いまいちよく分からないんだけど」
「聞けい、おのれら」
余計なことまで喋り出しそうな霊夢の口を塞ごうにも、ここから反対側に座っている彼女にはさすがに腕は届かない。
人形も魔法も仕掛けている隙はない。
万策尽きた私に抵抗する術はもうなかった。
「花が好きなところ、ですって」
ああ、知られてしまった。聞かれてしまった。
今思えば色々と恥ずかしい自論をそのまま暴露されてしまった。
自分でも分かるくらい一気に熱が集中する。穴があったら入りたい。
あとギャップがどうとかも言ってたわね、と霊夢はそんな私に構わず続けている。
それに対して、幽香は晴れやかな顔で相槌を打っている。
悪い空気をどうにかして欲しいとは確かに思ったけれど、ここまで居づらいものに変えなくたっていいじゃない。
そうこうしているうちに、霊夢はまた自ずから地雷を踏んだ。
「そういや、幽香はアリスのどこが好きなの?」
そろそろこの天然記念物な巫女様は、熨斗をつけてスキマの中に放り込んだ方がいいかもしれない。
私は背後に待機させていた上海人形に指示を出そうとして。
しかし、その手はすぐに止めざるを得なかった。
「私のことが好きなところ、かしら」
きっぱりはっきりと幽香が何の戸惑いもなく言った。
その言葉を聞いた霊夢はすぐに納得した表情になったが、私は口をぽかんと開けたままだった。
私にとって彼女の言葉は、ふわふわとした紅茶の湯気のように、まったく実体の掴めないものだった。
「それって、どういう意味?」
「そのままの意味でしょ」
「そのままの意味よ」
だから、どういう意味なのよ。
隣と向かい。すべて分かりきった様子の二人。
先ほどよりも一層、私の心にもやもやした気持ちが湧き上がってくる。
「仕方ないわね。教えてあげるわ」
それが面に出てしまっていたのだろうか。
幽香は私の方に顔を向けると、溜め息をついてから、目と鼻の先でこう言った。
そんな彼女の態度に何か一言言ってやろうかと思ったが。
けれども私の口は上手く動かなかった。
いつのまにか、温かく柔らかいものに塞がれてしまっていたからだ。
もちろんそれは手ではない。指でもない。
もっと小さくて赤いものだ。
「どう?身をもって知ってみて」
「幽香、あんた……ただアリスに口吸いしたかっただけでしょ」
「そうそう、そうやってすぐ顔を真っ赤にするところも可愛くて好きよ」
「変な奴に愛されてちゃったわね、アリス」
ちぐはぐな会話をしている二人をよそに、私の頭はすべてを煮つくしてしまうほどにぐつぐつと茹っていた。
もう、まともに二人を見ることができない。両手で火照った顔を覆う。
混乱した私に呼応するように、後ろでは人形たちが不思議な踊りを踊っている。
「あ、あんたら……」
何だか急に疲れがどっと湧いてきた。身体中が脱力しきっている。
それとなぜか家が恋しくなってきた。
それは、久しぶりに帰った実家で会ったこともない親戚に囲まれた時に感じる居た堪れなさに少し似ている。
そう、私は今、完全にアウェイだった。
「……もう帰るわ」
「あら、まだお茶も蜜柑も半分以上残っているのに」
「これ以上は私の心臓がもたない」
「胸やけに効く薬ならあるけど」
霊夢が箪笥の上に置いてある薬箱を指し示したようだが、私はそれには目もくれずに炬燵から這い出し、靴や荷物を人形たちに持たせ縁側の方へと歩いた。
二人の方は見ない。振り向かない。
こんな顔を見られたら、絶対またからかわれてしまう。
未だ私の頬も心臓もまともに機能しないほど暴走していた。
だってそれは仕方がない。
初めて彼女からはっきりと好きだと言われたのだから。
――初めての接吻だったのだから。
「ちょっとからかいすぎたかしら」
人形遣いがいなくなった神社に、巫女と妖怪の影が二つ。
雲一つない青空をそれぞれがそれぞれの面持ちで見上げてる。
「それにしても、私のことが好きなところねえ」
「……」
「それって、『こんな私を好きでいてくれてありがとう』ってことでしょう?」
「そうとも言うわ」
「もう。それなら接吻なんかでごまかさずに、正直に言ってやればよかったのに。このままだとあの娘、変な勘違いするわよ」
「はいはい。霊夢は過保護ね」
「あんたがいじめっ子すぎんのよ」
ほらとっとと追う、と霊夢は傘を広げた幽香をけしかけた。
次第に遠くなっていく妖怪の姿に向かって、後で恋愛相談料請求しようかしら、と恩着せがましい巫女は寒空の下、溜め息をつきながら柔く微笑んだ。
アリスはずっと振り回されていて欲しいw
ファーストキスが人前とはw
アリスは振り回されたり苦労しそうだw
幽アリ流行れw