Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

縁側の花

2011/01/06 01:33:22
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朝、いつものように博麗神社に出向いた。

霊夢さんはいつものように縁側にいた。

けれどひとつだけ違ったのは、霊夢の視線の向き。


「おはようございます、霊夢さん」

「あら。おはよう、文」


ちらっと私を確認したあと、じっと庭の隅を見つめる。


「そんなに熱心に、何を見ているんです?」

「……花よ」

「花?」


確かにその庭のすみには、紫色をした、可愛らしい花が一つ。


「本当ですね。なんでこんなところにひとつだけぽつんと咲いているんでしょう?」

「知らないけど……幻想にでもなったのかもね。ここ、博麗神社だし」

「そうかもですね」


なかなかきれいだったので、一枚写真を撮っておく。

カシャッ


「あら、人妖以外も撮るのね、そのカメラ」

「む、私だって風景を撮るときはありますよっ」

「ふーん……」


なにか気になるのか、霊夢はその花を見つめ続ける。

あとで幽香さんになんて花か聞いてみよう。

そう思った矢先。


「ねぇ、文」

「はい?」

「この花、何て言うか知ってる?」


やはり、どういう花なのか、霊夢も知りたいらしい。


「いえ、知りませんね。私も、後で幽香さんにでも聞きにいこうかと思っていたところです」

「うん、わかったら教えて」

「了解です!」


霊夢はまたじっと花を見る。


「……あの、霊夢さん?」

「……なに?」

「その花が、なにか?」


そう問うと、霊夢はふっと真面目な顔をして、

「…………ると、いいのだけど」

「え?」


よく聞き取れなかった。


「いや、なんでもないわ。とりあえず幽香に聞いておいて、花言葉」

「花言葉……ですか?」

「……ほんのすこし、予感がしてるのよ」

「……それは、どちらかというと……悪い方の?」

「……分からない」

「……分かりました。できるだけ、早急に調べてきます」

「うん」


博麗神社を飛び立ち、太陽の畑に向かう。

振り返ると、霊夢はまた、花を見つめていた。









「……あら、天狗じゃない」

「どうも、お久し振りです」


太陽の畑に来るのもいつぶりだろうか。

夏はまだ遠く、ひまわりは、今は見られない。


「どうせろくなことじゃないでしょうけど、どういった用?」

「あやや、これは心外な。巫女の使いです」

「霊夢の使い?あなたが?」

「ええ、この花の花言葉を教えてほしいと」


そう言って幽香に先ほど撮った写真を見せる。


「あら……この子、どこに咲いてたの?」

「博麗神社ですけど」

「ふうーん……」


幽香はどことなく楽しそうな目で写真を見る。


「……あの、幽香さん?」

「ああ、この子はね、姫金魚草」

「姫金魚草?」

「花言葉は……そうね、『幻想』よ」

「『幻想』……ですか」

「ええ。その花言葉故に幻想郷ではしょっちゅう大量発生してしまう。だから、外から来るこの花は大結界がガードしているの」

「へえ、そんな花があったんですか。……じゃあ、むしろどうしてこれが博麗神社、いえ幻想郷にあったのでしょう?」

「さあね、自分で調べてみたら?得意分野でしょう?」

「む、教えてくださいよ」

「私から言うのは無粋というものだわ」

「……え?」

「……でも、そうね。一つヒントをあげるとしたら、大事なのはその子のいる場所よ」

「場所?」

「なぜ幻想郷の中でも、博麗神社に咲いたのか、ね。……ヒントはここまで」

「……はぁ、ありがとうございました」

「くすくす……ま、幸運を祈ってるわ」

「……?」


いろいろと腑に落ちないままに太陽の畑を後にする。

とりあえず霊夢に教えることが先決だ。








「霊夢さーん」


博麗神社に降りたって縁側に向かう。

なぜ直接縁側へ行かないのかと言われても、習慣だからとしか答えようがない。

毎日の習慣だから。


「……どう、だった?」


霊夢は、心なしか少し心配そうな顔で聞いてきた。


「えーと、姫金魚草という花で、花言葉は、『幻想』とのことです」

「……それだけ?」

「え?……まぁ、咲いたのが博麗神社である意味を考えろーとかは言われましたけど、確定情報はそのくらいです」

「…………」

「意味はよくわかりませんが、『私から言うのは無粋というもの』とか言ってました」

「はぁ……そう」

「……何か分かりました?」

「……私の心配は意味がなかったということよ」

「はぁ。杞憂に終わったのなら良かったですね」

「いいもんか……」

「え?」


霊夢はそっぽを向いてふてくされてしまった。

……私何かした?


「……あの、霊夢さん?」

「…………」

「……あの……」

「……はぁ。まぁいいわ」

「へ?」


縁側から庭に降り立ち、姫金魚草のところまで行く。

そのまま花を手折って、こちらに持ってきた。


「……この花が、なにか?」

「……あげる」

「え?」

「あげるって言ってるのよ。ほら」

「あ……」


右手を捕まれて、無理矢理に花を持たされる。


「……ありがとう、ございます」

「ん」

「……じゃあ、そろそろおいとましますね」

「……いろいろごめんね」

「えっ?」

「いや……またいらっしゃい」

「……霊夢さん?」

「……ほら、さっさと帰る」

「あ、はい、また明日!」


急かされて飛び立ちながら考える。

なんか、今日の霊夢は少しおかしかったような気がする。

やけに素直なような……







いろいろ思考が交錯するなか、家についた。

まずは部屋の奥から花図鑑を引っ張り出す。

調べるのはもちろん……


「……姫金魚草、別名リナリア。
ゴマノハグサ科の一年草。
花期は五~六月。
花の色は 赤・ピンク・黄・紫紅・オレンジ・白。
英名は、スパーレッドスナップドラゴン。
花言葉は、幻想……と?」










『私の恋を知ってください』










「……はは、馬鹿ですね、もう…………ちゃんと知ってますよ。なんで毎日欠かさず行ってるか、考えたことなかったんですか?」
たとえ博麗大結界に『幻想』で入ることは阻まれても、相手に恋を伝えられない人の所には『恋を伝えるために』ちゃんと咲き誇り、後押しする。そんな花だと勝手に解釈。

前回投稿から13時間くらい?だけどその間に1から書いたやつです。
創作意欲ってこわい。
ケトゥアン
http://twitter.com/Ketoxuan
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
なんかいいですね。こういう雰囲気。
お互い肝心なことを言葉にしないんだから…。