「……は?」
この巫女は急に何を言い出すのか。
ここ三日ぐらい、私は妖怪の山内の仕事で大忙しだった。
いつもはほっぽらかしてる私も、元旦での仕事は無視できなかった。
これを無視すれば上から何を言われるか。
そんなこんなでその仕事がやっと終わって、久しぶりに博麗神社へ行った。
そして、霊夢さんに新年の挨拶をしてのんびりしてたらいきなり上の台詞だ。
「いきなり何をいいだすのですか?」
「だから、バトルしようぜ!!」
……いろいろツッコミ所がある。
この巫女は新年早々頭がやられてしまったのだろうか。
「だからつまり、弾幕勝負しましょうってことよ」
「あぁ、そういうことですか。あの台詞はなんなんですか」
「なんかね、紫に教えてもらった」
あの隙間妖怪は何を吹き込んでいるのだろうか。
「ちょっと今退屈なのよ。試したいものもあるし、バトルしようぜ!!!」
「いや、まぁいいですけど。その台詞はやめましょう」
「では、いきますよ霊夢さん!」
「いつでもかかってらっしゃい!」
新年初の弾幕勝負だ。負けるわけにはいかない。
だから、
「先手必勝!こちらからいきますよ!!突風『猿田彦の先導』!!」
自ら竜巻を纏い、持ち前のスピードを活かして体当たり。
スピード十分。我ながら今年も絶好調だと認識。
対する霊夢にはすんでのところで回避される。
まぁこれに直撃するほど甘くはないと思っていたが。
「っと……いきなり飛ばすわねあんた……」
そういいながら霊夢は自分のふところに手を忍ばせる。
―――来る!!
そう身構えていた私だが、霊夢が出したのは
霊夢のトリックルーム! ▼
「……は?」
霊夢は時空を歪めた! ▼
「あのー、霊夢さん?」
「ふふふ、驚いた、文?」
いや、そもそもなんだそれは。
なんだこのふきだしみたいなものは。
ていうか時空を歪めた、って私の身には何も起こっていない。
とりあえず距離をとって様子見……って
「……あれ?」
景色が変わらない。
というか、まるで私が極端に遅くなったみたいで。
「どう?このわざはね、5ターンの間、動きの遅い者から先に行動できるのよ!」
「ちょっ、まずターンってなんですか!?そんな勝負じゃないですよね!?」
「うっさい黙れ」
「ひどっ!?」
ちくしょう、なんだこの巫女は。
本格的に頭がやられたのではないだろうな。
「それじゃあ私のターンからね!!」
「え、ちょっ、まっ霊夢さん!?」
「問答無用!!!」
霊夢のせいなるほのお! ▼
「ちょ、霊夢さん、それ反則です!!あっ、ひっ!」
急所に当たった! ▼
文は倒れた! ▼
文は目の前が暗くなった! ▼
「……う、ん……?」
「あ、目覚めた?」
「あ、霊夢さん……」
目覚めれば見たことのない天井……というわけでもなく、博麗神社。
横にいる霊夢さんはいつもの様子の霊夢さんで。
「……夢?」
「なにが?」
「あ、いえ、なんでもないです」
うん、夢だろうな。
あんなわけのわからない戦いなんかが初戦で、さらにそれが負けるなんて信じたくない。
そうだ、夢だ、夢に決まってる。
「あ、そうそう」
「はい?」
「勝ったから賞金貰ったわよ」
「夢じゃなかった!?」
「64000円」
「しかも多い!?ちょっ、せめて一桁減らしてくださいよ!金欠で死んじゃいます!」
「大丈夫、文を信じてるわ」
「そこ信じなくていいですよ!?」
なんとか12800円にまけた。
新年早々なんという出費だ。
……あの巫女の笑顔を見たらどうでもよくなったけど。
特にすることもなく博麗神社でのんびりしていたら、
「おーい!霊夢ー!!」
「あの声は……」
「魔理沙、ね」
「おぅ霊夢。……と、ブン屋もいたのか」
「こんにちは、魔理沙さん」
「ねぇ魔理沙、」
「うん?」
あ、嫌な予感。
これはもしかして。
「バトルしよ……もが」
「はいはい、今日はもうやめましょう」
「なによ文、負けたからって」
「負けた負けてないの問題じゃないです。魔理沙さん、お気にせずゆっくり……」
「バトルしようぜ!!」
「うぉい!?」
まさかの魔理沙さんからの申し込み。
「そうこなくてはね!」
「おぅ、もちろんだ!!」
「あーもう好きにしてください……」
「さて、先手必勝だ!!」
先手をとったのは魔理ささんだ。
まぁ魔理沙さんなら霊夢さんより素早さは高いだろう。
「いくぜ!!」
魔理沙のコメットパンチ! ▼
「まさかの物理!?」
「だってスピードスターなんて使いにくいじゃないか」
いや確かに同じ星だけども!星がでるけども!
「くっ、……さすが、やるわね魔理沙」
このままでは素早さ的に霊夢が不利だ。
だが、霊夢にはあの技がある。
「でもここからよ!!」
霊夢のトリックルーム! ▼
「なに!?」
霊夢は時空を歪めた! ▼
「ふふん、これで次からは私が先手ね!!」
「くそぅ!やられたぜ!」
どうでもいいけどこれ、一対一じゃあまり意味がない気がする。
「ではこちらからね!」
霊夢のサイコキネシス! ▼
「くっそ!」
魔理沙の特防が下がった! ▼
やっとまともな戦いになってきた。
最初からまともじゃなかった気もするけど。
「だが、これはどうだ!!」
魔理沙のかみなり! ▼
「えっ!?」
効果は抜群だ! ▼
あ、ちゃんとそういうのあるんだ。
「うぅ……!」
「へへっ、どうだ!」
「まさか魔理沙がそんなわざを持ってるなんてね……。でも、まだまだよ!」
霊夢のサイコキネシス! ▼
「ぐっ!」
「特防は一段階下がってるはず!これで倒れて!」
「……へへっ、まだまだだ!」
魔理沙さんはなんとか耐えれたようだ。でも、様子を見れば瀕死寸前だ。
しかし、次は魔理沙さんのターン。
「これで終わりだ!!!」
魔理沙のはかいこうせん! ▼
「くっ……!」
「霊夢さん!?」
これが当たれば霊夢さんは間違いなく倒れる。
先程のかみなりでもう瀕死寸前のはずだ。
……が、
しかし、魔理沙の攻撃ははずれた! ▼
「なに!?」
「……ふふふ、ひかりのこなを持ってるから回避率が上がってたのよ!」
「なんだって!?」
「まさか命中の低いかみなりが当たるとは予想外だったけどね!」
しかし、ここでその効果を発揮するとは、さすがは霊夢さんだ。
運のよさがハンパない。
「これで終わりね!」
霊夢のサイコキネシス! ▼
魔理沙は倒れた! ▼
霊夢は戦いに勝利した! ▼
「くそぅ、やられたぜ……」
「まぁ、結構危なかったけどね」
「お疲れ様です、二人とも」
「まぁね、私なんかが負けるわけないんだから」
「へっ、次は勝つぜ」
終始よくわからなかったけれど、まぁ楽しかった。
妖怪の山での疲れを十分癒せたから、まぁよしとしよう。
たまにはこんなわけのわからない日もいいかもしれないし。
「そういえば魔理沙」
私が感慨深く思ってたら、急に霊夢さんが思い出したように言う。
「まだ賞金貰ってないんだけど」
「ん、あぁ、そうだったな。ほら」
霊夢は640円手に入れた! ▼
「少な!?」
「えっ、いつもこんなもんよ?」
「あぁ、普通の額だが?」
「じゃあ私の64000円ってなんですか!?100倍ですよ!?」
「特別待遇よ」
「もっとマシな待遇にしてくださいよ!?」
早苗さんつよすwww
みんなでパーティー組み始めるとすごいことになりそうだ
まあ文と霊夢が仲よさげな雰囲気を感じ取れたので満足です。
途中何回か笑いました。
ありがとうございます。