「う~ん……目が良く見えませんね……」
「目は一番最初に悪くなると言いますしね~」
さとり様はいつものお仕事と格闘中。
資料を目から遠ざけたり近づけたり。
書類とにらめっこしているさとり様は何だか微笑ましい。
「はぁ~まだ若いと思ってたんですがね……」
「さとり様は毎日お仕事に励んでいたから仕方ないですよ!」
「……関係ありますかね?」
さとり様は可愛らしく首を傾げる。
おっと、「可愛らしく」なんて思ったらさとり様に叱られてしまう。さとり様は可愛いより格好いいと思われたいタイプなのだ。
「お燐。何か良い手を知りませんか? このままでは日常生活に影響してしまいます」
おや? 怒られない?
いつもなら、ムキになって「可愛くなどありません!」と叱られてしまうのに。
ああ、判った。今日はこいし様が久々にお帰りになったからご機嫌なんだ。
「眼鏡をお掛けになったらどうですか? さとり様なら必ず似合いますよ!」
眼鏡を装着したさとり様を思い浮かべる。
……ああ、可愛いなぁ。幼い外見に野暮ったい眼鏡。このアンバランスがまた…………
はっ!? しまった!!
「うーん……眼鏡、ですか。効果あるでしょうか」
「え、あれ?」
「どうしたのですお燐?」
「あ、いえ」
今日のさとり様は本当に上機嫌だなぁ。頭のなかはこいし様の事で一杯に違いない。
ああ見えて妹煩悩な方だからなぁ……。
「目が悪い人はみんな着けてますよ」
「ふむ。そうなのですか。では私もそうしてみましょう」
「それがいいと思います」
「では頼めますかお燐?」
「はいっ! あたいにお任せを!」
□ □ □
あたいはそれから旅に出た。そう、さとり様に似合う眼鏡を求めて。
時には紅い館の主に頭を撫でられたり、幽界のお嬢様とお茶したり、魔法の森でティータイムしたり、永遠のお姫様とTVゲームしたり、山の神社でご飯を食べたり、お寺でカレーなるものを食べたり……本当に辛く、何度も挫けそうになった。
それでもさとり様の眼鏡姿を思い浮かべると不思議と力が湧いたのだ。
気分はメロス。
走って走って走って走って手当たり次第に幻想郷を踏破した。
だが旅には終わりが来るもの。
心身共に疲れ果て、路銀も尽きかけた時、ついにあたいは見つけた。
赤いフレームに丸い縁取り。派手な装飾もなくシンプルなつくりの赤い丸縁眼鏡。
しかしどうだろう。シンプルながらも、さとり様がそれを身に着けている所を想像するだけで何か得も知れぬ湧き上がる感情がある。
これこそ至上かつ究極の眼鏡。私の追い求めたオーパーツ。
あたいはそれを……
旧地獄街道の露天店で見つけた。
……路銀が果てて適当にその辺で買った訳ではない。うん。……うん。
□ □ □
「お燐。旅に出てからも貴女の活躍は私の耳にも届いてきましたよ。本当にありがとう」
「さとり様……」
さとり様は私から受け取った眼鏡を手のひらに乗せ、品定めするような視線を注ぐ。
あたいは緊張に身を固くする。
「とても素敵な眼鏡ですね。それに手に持ってもまるで綿のように軽い」
「あたい頑張りました!」
ほっと一撫で。
どうやらお気に召してくれたようだ。
さとり様もにこやかな表情を浮かべてくれている。
こうなれば、いよいよもって楽しみだ。ようやく眼鏡を着けたさとり様を拝める事ができる。
「ありがとう、お燐。早速着けてみますね」
「は、はい!」
さとり様は眼鏡を第三の瞳に着けた。
一番良い眼鏡さとり様を頼む
「つらい」のか「からい」のか、どっちの意味にもとれますね……狙った文だと思いますが。上手いなと思いましたw
つまり何が言いたいかというと眼鏡さとりんかわいい