わんこ

あらすじ

　つまり最初からノストラダムスはすべてを予言していたんだよ！！








「あなたの猫度は２４点」


　猫度を上げると猫になる。
　猫度を下げると元通り。

　もっと猫度を下げたなら？
　犬になったよ咲夜さん。


「わう？」


　紅いお屋敷、紅魔館。
　銀色わんこと紅魔館。

　今日はわんこのお話です。




「…………」


　一晩過ぎたら目が覚めて。
　いつの間にやら犬だった。

　銀の毛並みに短い手足。
　ふさふさしっぽに丸い耳。
　瀟洒で小さな仔犬が一匹。
　ちょこんとベッドの上に居た。

　彼女の名前は十六夜咲夜。
　時間を操るメイド長。
　種族は人間、今は犬？

「……」

　右の前足、左の前足。
　交互に目の前持ってきて。
　ほっぺたぷにぷに確かめる。

「くしゅん」

　どこに触れても犬の顔。
　ふさふさ毛並みがこそばゆい。
　思わずかわいいくしゃみをひとつ。
　そのままころんと前回り。

　ベッドに仰向け見上げたら。
　見慣れた天井、遥かに遠い。
　ころりころがりベッドの端へ。
　気づかずストンとおっこちた。

「きゃん！」

　あら小町？
　いえわんこ。

　床に落っこち頭をぶつけ。
　しばらく頭をうーんと押さえて。
　いたいのいたいのとんでいけー。

「……わふ」

　痛みも引いたら頭も冴えて。
　しっかりばっちり現状把握。
　どうやら夢ではないみたい。

　いったいどうしてわんこになった？
　原因究明、すぐ判明。


（昨日のアレだわ）


　思い出す。

　昨日もいつものノーレッジ。
　素朴な疑問に小首をかしげ。
　ばったり出会うとこう言った。


「あなたの犬度は今何点？」


　猫度があるなら犬度もあるさ。
　あの子の犬度を測ってみよう。
　二人で秘密の実験開始。
　人には言えないないしょの小部屋。
　みっしり密室ノーレッジ。




「ぱ、パチュリー様……わ、私、もう……もう……」
「ふふ、いつもの強気はどこへいったのかしら？」
「あァ……んっ……」
「あら、こんなにこぼして……いけない子ね」
「んふ…ぁ……ぱ、パチュリー様ぁ…」
「可愛い子……さ」
「んぅ…」
「もっとわんこそばを食べなさい」



　１０１杯目のギブアップ。

　たっぷり摂取のわんこ分。
　けれどもさっぱり成果が出ずに。
　犬度は全然測れない。

　しょんぼり落ち込む魔女を宥めて。
　別れてお部屋で一眠り。
　そして目覚めて銀色わんこ。
　わんこそばって偉大だね。


「くぅ」


　頭もお尻も手も足も。
　どこをとっても銀色わんこ。
　それでもハートは瀟洒な彼女。
　十六夜　咲夜は慌てない。

　魔女に会えれば大丈夫。
　身振り手振りで事情を説明。
　あっという間に元通り。


「わふ」


　そうと決まれば、こうしてられない。
　善は急げの一直線。

　凛々しいお顔で尻尾を立てて。
　ちいさなわんこの大冒険。
　目指すは図書館、魔女の部屋。

　紅くて広くて大きなお屋敷。
　短いあんよじゃ大変だけど。
　ここでくじける彼女じゃないわ。
　ガッツみなぎるシューターだもの。


　てちてち歩いてドアの前。
　まずは最初の大関門。
　見上げるドアノブ高い位置。
　ぴょんと跳ねても届かない。


「うぅ～」


　けれども泣かない銀色わんこ。
　低くうなって床に伏せ。
　沸き立つ血潮に身を任せ。
　赴くままに、突撃だ。




「わぅ！　わぅわぅわふーん！」


　　絶　　天　狼　抜　刀　牙！




　きらり煌く流れ星。
　銀牙ひらめく紅魔館。


　ばりばりどっしゃーん。


　ぐるぐる回って体当たり。
　赤いヒグマも倒す牙。
　部屋のドアでも粉みじん。


「わふ！」


　ドアの残骸踏みしめて。
　ちょっと胸張り誇らしげ。


　ちいさなわんこの大冒険。
　まずは最初の第一歩。


　てちてち進んだ廊下の先に。
　なにがあるかはお楽しみ。

つづくのであった。