幻想郷
紅い、紅い大きな屋敷に住む一人の従者と一人の門番のお話。
従者と門番は出会ってからすぐに仲良くなり、時々ケンカしたりしましたが、すぐに仲直りするほどの仲良し。
みんながみんな、仲が良いと評判のふたり。
ある日ふたりはいつも世話になっているお礼をしたいと思いました。
しかし、ふたりにはお礼をするためのお金がありません、
困り果てたふたりはどうすればいいのか考えました。
「そうだ、自分が持っているこれをお金にすればいいんだ」
・・・・・・・・・・・・・・・
数日後、
門番はずっと大切にしてきた家宝の服をお金にかえて従者へのお礼を
従者は大切にしてきた古い懐中時計をお金にかえて門番へのお礼を
それぞれ買っていきました。
「きっと彼女は喜んでくれる」
二人の目にはまるで相手が喜ぶ顔が見えているようにも思えました。
さらに数日後、
従者と門番はそれぞれ紅いリボンがついた箱を交換しました。
「開けてもいい?」
従者は聞きました。
「どうぞ、開けてください」
門番は答えました。
「私も開けていいですか?」
門番は聞きました。
「ええ、開けてください」
従者は答えました。
お互いは胸をドキドキさせながらリボンを解き、一緒に箱を開けました。
従者の手には銀色の懐中時計
門番の手には緑色のチャイナ服
そう、お互い同じようなものをお金にかえ、お互い持っていたものと似たものを買ってきていたのです。
「・・・・・・・・・実は」
事実を告げようとする従者、
「私・・・・・・・・・」
門番も同じように言葉を続け
「私・・・その懐中時計を買うために、家宝にしていた服を売ってしまいました」
「私もその服を買うために、大切にしていた懐中時計を売ってしまったの」
お互いの言葉・・・それを聞いてふたりは呆然と相手の顔を見つめてました。
・・・・・・・・・・・・
しばらくして、
「・・・・・・でも、私はあなたに感謝しています」
門番は目の前の従者に笑顔でそう告げました。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
従者は何も言いませんが門番に笑顔を見せています、多分同じ気持ちなのでしょう。
「私はあなたから『気持ち』という最高のプレゼントを頂いたのですから」
門番は従者をそっと包み込むように抱いて囁きました。
「私もあなたからの『気持ち』を・・・宝物よりもずっと大切なものを頂きました」
それに応えるように従者も門番の身体を包み込むように抱きました。
・・・・・・そんな二人を大きな紅い月が優しく見守っていた夜の出来事でした。
「・・・・・・って、そんな事もあったわね」
「はい、そうですね」
ここは門番、紅 美鈴の部屋。
綺麗なティーカップが二つ添えられたテーブルの向こうに座っているのは従者、十六夜 咲夜。
お互い仕事が終わって今はゆったりとした紅茶の時間。
「あの時の懐中時計、今も持っているわよ」
「・・・私はあの服を着たのはいいんですけど、転んで汚した時は咲夜さん怒ってましたよね」
「当たり前でしょ、私からのプレゼントを汚すなんて許すと思っているの?」
「まぁ、あの時は不可抗力で・・・・・・許さないですよね、はい」
ずずず・・・申し訳なさそうにしゅんとしている美鈴は紅い紅茶をすすっています。
その様子を見ている咲夜も『まぁ、済んだ事だし・・・』という表情で紅茶を静かに飲んでいます。
「さて・・・夜の紅茶の時間もそろそ・・・」
ドサッ・・・
ティータイムの片付けをしようとした咲夜を突然美鈴は何も言わずに掴んで押し倒しました。
「・・・・・・美鈴?」
「咲夜さん、今日が『あの日』だったの覚えていたんですね」
「・・・・・・ええ」
そう、今日珍しく美鈴の部屋に咲夜が来たのは丁度お互いの気持ちを交わした日だったから、
「だから・・・今度は服とか宝物じゃなくて・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
お互いが感謝と・・・・・・
「私、咲夜さん自身が欲しいな」
「・・・・・・・・・・・・ふふ」
好意を交わした・・・・・・あの日
「私なんかでいいの、美鈴」
「私は・・・・・・咲夜さんだから、欲しいのです」
美鈴の目には宝石のように綺麗な眼をした咲夜の顔、
咲夜の目には鮮やかな目をした美鈴の顔と・・・・・・・・・
『嗚呼・・・今夜も、私達を見ているのですね・・・・・・』
そう・・・・・・
二人を見守るかのように、『あの日』と同じように大きな紅い月が見守っていました。
END
紅い、紅い大きな屋敷に住む一人の従者と一人の門番のお話。
従者と門番は出会ってからすぐに仲良くなり、時々ケンカしたりしましたが、すぐに仲直りするほどの仲良し。
みんながみんな、仲が良いと評判のふたり。
ある日ふたりはいつも世話になっているお礼をしたいと思いました。
しかし、ふたりにはお礼をするためのお金がありません、
困り果てたふたりはどうすればいいのか考えました。
「そうだ、自分が持っているこれをお金にすればいいんだ」
・・・・・・・・・・・・・・・
数日後、
門番はずっと大切にしてきた家宝の服をお金にかえて従者へのお礼を
従者は大切にしてきた古い懐中時計をお金にかえて門番へのお礼を
それぞれ買っていきました。
「きっと彼女は喜んでくれる」
二人の目にはまるで相手が喜ぶ顔が見えているようにも思えました。
さらに数日後、
従者と門番はそれぞれ紅いリボンがついた箱を交換しました。
「開けてもいい?」
従者は聞きました。
「どうぞ、開けてください」
門番は答えました。
「私も開けていいですか?」
門番は聞きました。
「ええ、開けてください」
従者は答えました。
お互いは胸をドキドキさせながらリボンを解き、一緒に箱を開けました。
従者の手には銀色の懐中時計
門番の手には緑色のチャイナ服
そう、お互い同じようなものをお金にかえ、お互い持っていたものと似たものを買ってきていたのです。
「・・・・・・・・・実は」
事実を告げようとする従者、
「私・・・・・・・・・」
門番も同じように言葉を続け
「私・・・その懐中時計を買うために、家宝にしていた服を売ってしまいました」
「私もその服を買うために、大切にしていた懐中時計を売ってしまったの」
お互いの言葉・・・それを聞いてふたりは呆然と相手の顔を見つめてました。
・・・・・・・・・・・・
しばらくして、
「・・・・・・でも、私はあなたに感謝しています」
門番は目の前の従者に笑顔でそう告げました。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
従者は何も言いませんが門番に笑顔を見せています、多分同じ気持ちなのでしょう。
「私はあなたから『気持ち』という最高のプレゼントを頂いたのですから」
門番は従者をそっと包み込むように抱いて囁きました。
「私もあなたからの『気持ち』を・・・宝物よりもずっと大切なものを頂きました」
それに応えるように従者も門番の身体を包み込むように抱きました。
・・・・・・そんな二人を大きな紅い月が優しく見守っていた夜の出来事でした。
「・・・・・・って、そんな事もあったわね」
「はい、そうですね」
ここは門番、紅 美鈴の部屋。
綺麗なティーカップが二つ添えられたテーブルの向こうに座っているのは従者、十六夜 咲夜。
お互い仕事が終わって今はゆったりとした紅茶の時間。
「あの時の懐中時計、今も持っているわよ」
「・・・私はあの服を着たのはいいんですけど、転んで汚した時は咲夜さん怒ってましたよね」
「当たり前でしょ、私からのプレゼントを汚すなんて許すと思っているの?」
「まぁ、あの時は不可抗力で・・・・・・許さないですよね、はい」
ずずず・・・申し訳なさそうにしゅんとしている美鈴は紅い紅茶をすすっています。
その様子を見ている咲夜も『まぁ、済んだ事だし・・・』という表情で紅茶を静かに飲んでいます。
「さて・・・夜の紅茶の時間もそろそ・・・」
ドサッ・・・
ティータイムの片付けをしようとした咲夜を突然美鈴は何も言わずに掴んで押し倒しました。
「・・・・・・美鈴?」
「咲夜さん、今日が『あの日』だったの覚えていたんですね」
「・・・・・・ええ」
そう、今日珍しく美鈴の部屋に咲夜が来たのは丁度お互いの気持ちを交わした日だったから、
「だから・・・今度は服とか宝物じゃなくて・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
お互いが感謝と・・・・・・
「私、咲夜さん自身が欲しいな」
「・・・・・・・・・・・・ふふ」
好意を交わした・・・・・・あの日
「私なんかでいいの、美鈴」
「私は・・・・・・咲夜さんだから、欲しいのです」
美鈴の目には宝石のように綺麗な眼をした咲夜の顔、
咲夜の目には鮮やかな目をした美鈴の顔と・・・・・・・・・
『嗚呼・・・今夜も、私達を見ているのですね・・・・・・』
そう・・・・・・
二人を見守るかのように、『あの日』と同じように大きな紅い月が見守っていました。
END