12月25日、今日はクリスマスという日らしい。何とかっていう立派な人間の誕生日なんだって。だから人間はその人のために、盛大なお祭りをするんだって。
私がそんなことを知っているのは、本に書いてあったから。今思い出したのは、上が騒がしいからだ。
そう言えば、クリスマスパーティーをやるって美鈴が言ってたなぁ……凄く嬉しそうに笑ってた。人間のお祭りなのに、何でそんなに楽しそうなの?って聞いたら、「妹様もきっと分かる日が来ますよ……いえ、明日かも知れないですね」って言って、また嬉しそうに笑ってた。
そこまで思い出して、真っ暗な部屋で一人溜息を吐く。勿論、私だってパーティーには誘われている。だけど、どうして私が参加できる?確かに今は館の中なら自由に動ける。
が、それだけだ。「自由にしていい」と言われても、私は上には行かない。元々話すのが得意ではないし、メイド達だって私のことは殆ど知らない。そんな所に行ってもつまらないだけだ。
もう一度溜息を吐くと、部屋の中をグルリと眺める。私はこの部屋が大嫌いだ。暗くて寒くて、とても寂しいこの空間が大嫌いだ。だけど今の私にはここにしか居場所が無い。
いつものように図書館に行ったら、パチュリーも小悪魔もいなかった。小悪魔は兎も角、パチュリーまで上にいるのだろうかと疑問に感じたが、外に出かけているよりは、そっちの方が簡単に想像できた。
誰もいない図書館は、私の部屋よりも暗く寒く寂しかった。結局、私にはこういった場所しか用意されていないのだ。そう思うと、不意に笑えて来る。戻ろう、同じ空間なら慣れている方がましだ。
そして今、私は何とか眠りにつこうと必死で目を閉じている。今日が終われば、パチュリーは図書館に戻っている。それなら、早く眠ってしまおう。
もう何度も繰り返した答えをもう一度出し、目を瞑った瞬間ゴンゴンと耳障りな音が扉から聞こえて来た。
☆
「あら、もう眠るところだったかしら?」
小悪魔に連れてこられた一室で、椅子に座り私に視線を向けながら、パチュリーはそう言った。いつも通りの服に、いつも通りの表情。だけどいつもと違ってその手に本は無い。
代わりに握られているのは、赤い小さな箱。
「メリークリスマス、って言うとレミィに怒られるわね……ま、別にいいけど」
パチュリーはそう言って小さく笑うと、パタパタと手招きをする。訳が分からず呆然と立っていると、後ろにいた小悪魔に背中を押される。慌てて、パチュリーの前にある椅子に腰掛ける。
これは一体どういうことだろう?ここに来るまでに聞こえて来た音からして、パーティーはまだ終わってない。お姉様が途中退室なんてさせるはずないし……
「私もレミィもパーティーには参加してないわ。レミィは、キリストの誕生日なんて祝いたくないらしいし、私は騒がしいのが嫌いだしね」
まさか心の中を読まれたわけでもないだろうけど、思わず目を丸くする。そしてそれと同時に、新たな疑問が生まれる。それなら何で図書館にいなかったんだろう?
「キリストは祝いたくないけど、私のことは祝いたいらしいわ」
「パチュリーのことって?」
「人間達の伝承でね、クリスマスに生まれた男の子は悪魔に……女の子は魔女になるそうよ?だから、今日は私の誕生日らしいわ」
「誕生日なんか、覚えてないからいいんだけどね」と言って、クスクスと笑うパチュリーの姿に自分の目を疑う。彼女はこんなに楽しそうに――いや、そもそもこんなにはっきりと笑っていただろうか?確かに笑みを浮かべている所なら何度も見たが、今みたいな満面の笑みは見たことがない気がする。
ああ、当然か。だって、お姉様とパチュリーは親友で、私はただのお姉様の妹だもん。パチュリーが構ってくれるのだって、お姉様がお願いしたから。
結局、全部お姉様の物で、私はそのおこぼれを貰ってるだけなんだ……
「……違うわよ、フラン。私はレミィの頼みだから、なんて理由で貴女と一緒にいるわけじゃないわ。その考えは私とレミィ、両方を侮辱しているわよ?」
「な、何でさっきから――」
「私の考えてることが分かるのか、かしら?答えは簡単。分かり易いのよ、貴女達姉妹」
そう言うと、パチュリーは手に持った箱を、私の目の前に差し出してきた。何だろう、これ――ジッと箱を見ていると、「プレゼントよ」という言葉とともに頭に手をのせられる。
プレゼント?私がパチュリーに渡すのなら分かる。今日はパチュリーにとって誕生日のようなものらしいから。だけど、今はその反対だ。わけが分からず、?を2,3個浮かべる。
「今日は外の世界だと、『いい子にプレゼントを渡す程度の能力』がある奴が配るらしいけど、外の世界だけで手一杯みたいでね。私がいい子のフランにプレゼント……だけど、寂しくなったら我慢しない。素直に甘えるのもいい子の条件よ?」
その瞬間、視界がぼやけて水滴が数滴落ちる。
ああ、甘えていいんだ。もう一人じゃないんだ。
ありがとう、パチュリー……もう何にも怖くない。だって、私にはパチュリーがいるんだもん!
ゴシゴシと袖で目を擦り、ニッコリと笑顔を浮かべる。パチュリーは私の顔を見ると、もう一度表情を緩める。
「ありがとう、パチュリー!」
「こちらこそ……プレゼントをあげたつもりが、私の方が貰ったわ」
12月25日
パチュリーから聞いた話を調べたら、プレゼントをくれるのは“さんたくろーす”っていう人みたい。毎年、プレゼントを配るんだって。
きっと私は生まれた時から、プレゼントを貰い続けてたんだ。受け取るのが遅かっただけ。絶対に失くさないし、絶対に離れないから――さんたくろーすさん、パチュリーと一緒にいさせてくれて、ありがとう!
~フランドール・スカーレットの日記より~
私がそんなことを知っているのは、本に書いてあったから。今思い出したのは、上が騒がしいからだ。
そう言えば、クリスマスパーティーをやるって美鈴が言ってたなぁ……凄く嬉しそうに笑ってた。人間のお祭りなのに、何でそんなに楽しそうなの?って聞いたら、「妹様もきっと分かる日が来ますよ……いえ、明日かも知れないですね」って言って、また嬉しそうに笑ってた。
そこまで思い出して、真っ暗な部屋で一人溜息を吐く。勿論、私だってパーティーには誘われている。だけど、どうして私が参加できる?確かに今は館の中なら自由に動ける。
が、それだけだ。「自由にしていい」と言われても、私は上には行かない。元々話すのが得意ではないし、メイド達だって私のことは殆ど知らない。そんな所に行ってもつまらないだけだ。
もう一度溜息を吐くと、部屋の中をグルリと眺める。私はこの部屋が大嫌いだ。暗くて寒くて、とても寂しいこの空間が大嫌いだ。だけど今の私にはここにしか居場所が無い。
いつものように図書館に行ったら、パチュリーも小悪魔もいなかった。小悪魔は兎も角、パチュリーまで上にいるのだろうかと疑問に感じたが、外に出かけているよりは、そっちの方が簡単に想像できた。
誰もいない図書館は、私の部屋よりも暗く寒く寂しかった。結局、私にはこういった場所しか用意されていないのだ。そう思うと、不意に笑えて来る。戻ろう、同じ空間なら慣れている方がましだ。
そして今、私は何とか眠りにつこうと必死で目を閉じている。今日が終われば、パチュリーは図書館に戻っている。それなら、早く眠ってしまおう。
もう何度も繰り返した答えをもう一度出し、目を瞑った瞬間ゴンゴンと耳障りな音が扉から聞こえて来た。
☆
「あら、もう眠るところだったかしら?」
小悪魔に連れてこられた一室で、椅子に座り私に視線を向けながら、パチュリーはそう言った。いつも通りの服に、いつも通りの表情。だけどいつもと違ってその手に本は無い。
代わりに握られているのは、赤い小さな箱。
「メリークリスマス、って言うとレミィに怒られるわね……ま、別にいいけど」
パチュリーはそう言って小さく笑うと、パタパタと手招きをする。訳が分からず呆然と立っていると、後ろにいた小悪魔に背中を押される。慌てて、パチュリーの前にある椅子に腰掛ける。
これは一体どういうことだろう?ここに来るまでに聞こえて来た音からして、パーティーはまだ終わってない。お姉様が途中退室なんてさせるはずないし……
「私もレミィもパーティーには参加してないわ。レミィは、キリストの誕生日なんて祝いたくないらしいし、私は騒がしいのが嫌いだしね」
まさか心の中を読まれたわけでもないだろうけど、思わず目を丸くする。そしてそれと同時に、新たな疑問が生まれる。それなら何で図書館にいなかったんだろう?
「キリストは祝いたくないけど、私のことは祝いたいらしいわ」
「パチュリーのことって?」
「人間達の伝承でね、クリスマスに生まれた男の子は悪魔に……女の子は魔女になるそうよ?だから、今日は私の誕生日らしいわ」
「誕生日なんか、覚えてないからいいんだけどね」と言って、クスクスと笑うパチュリーの姿に自分の目を疑う。彼女はこんなに楽しそうに――いや、そもそもこんなにはっきりと笑っていただろうか?確かに笑みを浮かべている所なら何度も見たが、今みたいな満面の笑みは見たことがない気がする。
ああ、当然か。だって、お姉様とパチュリーは親友で、私はただのお姉様の妹だもん。パチュリーが構ってくれるのだって、お姉様がお願いしたから。
結局、全部お姉様の物で、私はそのおこぼれを貰ってるだけなんだ……
「……違うわよ、フラン。私はレミィの頼みだから、なんて理由で貴女と一緒にいるわけじゃないわ。その考えは私とレミィ、両方を侮辱しているわよ?」
「な、何でさっきから――」
「私の考えてることが分かるのか、かしら?答えは簡単。分かり易いのよ、貴女達姉妹」
そう言うと、パチュリーは手に持った箱を、私の目の前に差し出してきた。何だろう、これ――ジッと箱を見ていると、「プレゼントよ」という言葉とともに頭に手をのせられる。
プレゼント?私がパチュリーに渡すのなら分かる。今日はパチュリーにとって誕生日のようなものらしいから。だけど、今はその反対だ。わけが分からず、?を2,3個浮かべる。
「今日は外の世界だと、『いい子にプレゼントを渡す程度の能力』がある奴が配るらしいけど、外の世界だけで手一杯みたいでね。私がいい子のフランにプレゼント……だけど、寂しくなったら我慢しない。素直に甘えるのもいい子の条件よ?」
その瞬間、視界がぼやけて水滴が数滴落ちる。
ああ、甘えていいんだ。もう一人じゃないんだ。
ありがとう、パチュリー……もう何にも怖くない。だって、私にはパチュリーがいるんだもん!
ゴシゴシと袖で目を擦り、ニッコリと笑顔を浮かべる。パチュリーは私の顔を見ると、もう一度表情を緩める。
「ありがとう、パチュリー!」
「こちらこそ……プレゼントをあげたつもりが、私の方が貰ったわ」
12月25日
パチュリーから聞いた話を調べたら、プレゼントをくれるのは“さんたくろーす”っていう人みたい。毎年、プレゼントを配るんだって。
きっと私は生まれた時から、プレゼントを貰い続けてたんだ。受け取るのが遅かっただけ。絶対に失くさないし、絶対に離れないから――さんたくろーすさん、パチュリーと一緒にいさせてくれて、ありがとう!
~フランドール・スカーレットの日記より~
早くフラパチェの時代来ないかなぁ
和むフラパチェでした。