「ねぇ、咲夜」
「なんでしょう?」
「貴女の時間を操る能力って、一体どうなっているの?」
「申し訳在りませんが、自分でも判っていません。情けない事ですが」
「あらそう。ならパチェに聞きましょう。貴女もどう?」
「お伴させて頂きます」
「なに?咲夜の能力?」
「ええ、判らない?」
「……残念だけど、判らないわ。それは多分誰にも判らない事だと思う」
「あら、そんなことは無いんじゃない?」
「勘が鋭いわね、レミィ」
「でしょう。だいたい貴女が言ってるじゃない?『誰にも判らない事だと思う』事が判っているなら、それの抽象的な輪郭は代入できると言う事よね」
「ええ、そう。多分レミィが納得できる説明は持っていると思うわ」
「じゃあお願い」
「スケールのデカイ話になるわよ」
「まず、咲夜の能力についての確認から。貴女は時間を止められるのよね」
「はい、そうだと思っています」
「じゃあ、その空間的範囲は自由に規定出来るの?」
「そうですね。離れた位置にあるモノの動きを止めることだって出来ますし、空間延長もその一環だと」
「ふむ、……じゃあ結論から言うけど、多分貴女は時間を止めている訳ではないわ。あら?そんな驚かないわね」
「いえ、そんな事は。でもなんとなくはそっちの方が正確な気がしてました。時を停止するというよりも……」
「その指定した場所の時間進行を”限りなく遅くする”、止める場合ならね。実際咲夜が時間を止めるとしても、その空間は微妙に進行している訳。零点何秒とか言う次元じゃあ無いわ。私達が知覚出来ない、というのも憚られる程末端の速度、こう言うと普通逆の意味だけど、要するに時間の果て」
「なんだ、じゃあ咲夜が止めてると言ってた時間も実は動いてるんだ。そう考えるとあんまり凄い気がしないわね」
「ん、いやレミィ。この場合は特別よ。ここまで来るともう動いているなんて言えないわ、実際止まっているの表現の方が正確なくらいなのよ。だから咲夜の能力が馬鹿げてるくらい凄いものなのは変わらないわ」
「えぇ?でも貴女はさっき動いてるって言ったじゃない。それはやっぱり止まってる事とは別でしょう」
「それはそう、正しいわよ。止まっていると動いているはイコールじゃない。だからこれはあくまでも私の仮定の話。全ては理論上にて結論される」
「ええ、それで続きは」
「それでね、ああ、時間が限りなく遅いとどうなるかを説明して置こうかな。咲夜が屋敷の部屋を大きく出来る理由、それは部屋の時間を滅茶苦茶に遅らせている訳だけど、良い?時間の流れが遅いものは、恒久的時間進行に身を置く私達にとってどんどん大きくなるものなの」
「なるほど、ええ」
「咲夜、意味分かんの?」
「いえさっぱり」
「ええと、分かり易く言うとね。象が居るでしょ、象は私達よりも大っきいわよね、それで私達よりも長生きする、つまり象が過ごしている時間は私達よりも遅いのよ」
「余計分からない」
「分かろうとする努力をして。そんな顔しないでも言いたい事は分かるわ。恒久的時間を私達は共有しているってさっき言ったのに、何故象と私達の時間がズレているかよね」
「それもあるけどー」
「良いから言わせて。矛盾している事は言って無いわ。象も私達も恒久的時間を過ごしているのは同じ。違うのは認識の問題、これは凄くへんな言い方だけど、私達が認識する1時間と象が思っている1時間は違うと思わない?」
「あ、そういうこと」
「それで、それは寿命によって変わるのよ。ほらそんな顔しない。地球があるでしょう?地球の寿命、正確に言うと違うけど……、それはもうとんでもなく長いわけよね。私達から見ればその永い時間も地球から見れば普通。まるで私達は体皮に付いた顕微鏡でやっと見える微生物みたいなものよ」
「もう良いや、先進んで」
「そうそう、そうした方が良いわ、これはあくまで仮定の話だからね。……だからもし拡大させた部屋が視覚を持っていたら私達はとんでもなく速くちょこまか動いている筈よ」
「……ねぇ。要するに時間を止めると大きくなるんでしょう?だったらもし咲夜が世界中の時間を止めたら世界中が大きくなっている訳?私も?パチェも?」
「そうだけど、そうなると今度は逆よ。私達には同じ時間が流れている訳だから、逆に咲夜が超高速で存在する事になる。となると私達大きくなるというよりも、咲夜がとっても小さくなる」
「そうなの咲夜?」
「……いえ、パチュリー様、恐れながらそのような事は在りませんでした。私には時を止めている間も普通の世界に見えましたわ」
「あらそう、じゃあ話は簡単だわ。今までの話の中で出てきた”時間”を虚数にするだけだから」
「……」
「こうなると凄いわよ。もう実数時間には留まらない訳だから、正直言って何でもアリね。そのまま神になったようなもんだわ」
「パチュリー様、説明をお願いします。お嬢様が可愛くなってしまいますわ」
「なっ……まだ大丈夫よ!」
「そうね、実数時間ってのはまぁそのまま普通の時間よ。ていうか今まで取り扱ってた時間の事。虚数時間っていうのはその反対。つまりこの”現実”には無い時間だわ」
「? 咲夜は能力使っている間どっかトリップしちゃってるって訳?」
「そっちじゃないの。まぁある意味そう言えるけど、場所が変わる訳じゃないの。あくまでも時間というものが違うだけ。」
「それはさっきまで言ってきた事じゃない、時間は個々によって違うって。ああもう私が違うのは判るけど」
「そう、それは間違い。レミィが言うのは時間の認識についてだわ。個々の恒久的時間に対する認識の違い。そうじゃなくて、もはや恒久的時間や、そもそも時間とは異なる虚数時間ね」
「微妙」
「進めた方が良いわ。実数時間と違って虚数なら実数の世界、つまり現実とは乖離してるから、正直何してもそれが出来るの。想像や夢と同じね、貴女もこの瞬間に自分の寝室に行って好きなだけ寝て起きて時間を巻き戻してまた咲夜と一緒に私の処へ尋ねてくるっていう、実数時間つまり現実に有り得ないことだって想像の中なら全然出来るでしょう」
「うんうん」
「一つ良いですか。それは何故想像する事が可能なのでしょうか」
「えっ、なにその質問!?」
「良い質問ね。それは実数時間には影響しないからよ。想像する、つまり虚数時間で成し得たことは現実には何一つ起こってないでしょう。貴女がたとえ50年かけて全人類を殺したと言う想像をしたってその想像を1秒でしたのだったら現実では1秒しか経過してないし増してや貴女は一歩も動いていない。想像は現実に反映されないから矛盾は発生しない訳」
「あ、初めてわかった気がする!」
「では……つまり私は妄想家だったと?」
「いいえ、違うわ。今言ったのは単なる例え、虚数時間がどんなものかは私にだって定義出来ないわ。ただ虚数時間がそういうようなものだって言っただけ。貴女は現実に干渉しているじゃない。実際に実数時間の極限値0の間に虚数時間に於いて行動し実数時間の0時間後ではそれが反映されている」
「ねぇそれじゃあ矛盾よ。虚数時間ってのは想像とかって言える世界でしょ。それが現実化したらヘンじゃない」
「……」
「どったのパチュリー」
「いや、だから今までの説明だと咲夜の能力は虚数時間に実数時間の咲夜が介入できるって話でしょう。そうするとつまり咲夜にはどう見えるかっていうと、見た目は普通の世界に居るように見えるのよ。つまり虚数時間に居る訳だから本来なら実数時間に於いて時間を遅延した際に発生する筈のモノの肥大化というのは起こらない訳。それでさっき咲夜の言った時間を止めた際にもモノの肥大化は見受けられなかったっていう事実には説明がつけられたって言うわけ」
「良いじゃない、分かるわよ私」
「……」
「でもそれだと、今度は見た目以外の話ね。実数時間で進行している咲夜が虚数時間で進行している世界に干渉する事はできないから……」
「分かった!何も出来ないんだ。ていうか、全く身動き取れない……?」
「いや、動く事は出来る筈。虚数時間には制約がある訳じゃなくて、逆にルールが何も無いんだけど……。ていうかレミィの言い方だとそもそも存在自体出来ない事になるわ。そうじゃなくて動けるし、見えるけど。触れられないの」
「なにそれ素敵」
「……ふむ」
「蜃気楼みたいなモノよね。それのもっとすごいバージョン。そこには実際にある、でも絶対に触れる事は出来ない……あれれ」
「……なら……私も虚数なら良い訳ですわ」
「なにそれコワイ」
「え、それはちょっと……。だって貴女は実数なのよ?それが虚数になる事なんて出来ないし、そもそも虚数だったら実数の私達と会話なんで出来ないじゃない」
「あら……パチュリー様、お気付きで無かったのですか。貴女は虚ですよ?今私が能力使ってますもの」
「」
「……え?」
「嘘ですよ~。即席で考えた嘘です。なんか言いたくなっちゃいまして」
「……なんて事言うのよ……。流石におかしくなりそうだったわ。ほら、レミィなんて魂抜けてるわよ」
「うふふ、失礼しました。ですが、虚数時間を進行するモノ同士ならお互いに干渉は可能なのですよね」
「そうよ。例えば紅い本を手に取るの事を想像するのなら、紅い本とそれを手にする人っていうのは虚数同士干渉し合った結果、紅い本は持たれてその人は紅い本を手にしているわね」
「では、虚数時間なら世界が時を止める事で肥大する事も無く又時を止めた人間はその虚数時間上に干渉する事は可能ですわね?」
「そうよ。でもそんなこと言ってもらちが明かないでしょ」
「パチェ、パチェ……!」
「あら、レミィおはよう。魂戻った?」
「パチェ……私、見ちゃった」
「レミィ?何を言って」
「お嬢様には先見の明がございますものね。視えたのですね?」
「え、咲夜」
「ではパチュリー様、例えば私の能力が虚数時間を操る程度の能力だと仮定しましょう」
「咲夜、貴女ウソでしょ、ねぇ」
「……レミィ?」
「さて先程のパチュリー様の説明では虚数時間は人間の空想妄想、その他の思惑、のようなものでありますが、実際そのようなものであるのです。うまく言えませんが、互いに干渉しない無限多重世界。人々の空想によって咲夜は時を止め、また干渉をすることが出来るのです。また多重世界の名前は『東方project』と言います」
「……アナタ、さっきからなに言って」
「さて、説明が下手でご理解されにくいと思います、つまりですね、この私も含めてこの世界はある一人の筆者によって妄想された虚数時間なのです」
「パチェっ、ダメよ、この先は!!」
「それでは、わたくし十六夜咲夜めの、時間を操る程度の能力を使ってこの虚数時間の幕引きとさせて頂きます。なお、虚数時間は実数時間には影響を与えないというので私の能力を使いでもしない限りこの世界は壱佰壱拾八字後消散する運命にあるのですが人々が一日に何億何兆とも知れずに消えていく妄想想像空想幻想夢想その他の虚構と全く同義なので悲しむ事もありません。そうです、私達は所詮使い捨ての人形なのですから。ではお嬢様、パチュリー様、また今すぐにでも別の世界でお会いしましょう。ごきげんよう」
「いやっ、パちx
「咲夜!あなた
だから咲夜の能力はおかしい物とした
おかしいからおかしいことを大量に受け入れている多重世界にしか存在できず、その世界とは要するに東方世界だ。
以上をただひたすら冗長に書き並べただけ。
作品というのは、ここから一歩先に踏み出すか、これを使って起承転結を創り上げることだと思います。
ただ落書きとして放り投げなさったのなら、ごめんなさい。この感想は的はずれでしょう。
ただ、現状この作品は、僕が嫌悪するヤマなしオチなしイミなしの百合と、根っこの部分がおんなじかと思われます。……別に、それでもいいんですけど。