トンネルを抜けると其処は雪国だった、こんな書き出しで始まる小説を過去に読んだことがある。
この節を借りて現状を説明するならば…
『玄関を開けると其処は南国だった』
…がぴったり当てはまる。
今僕の目の前には花輪を被ってウクレレ弾きながら上機嫌の天子が居る。
「…天子、何やってるんだい?」
「南国気分」
と漢字四文字で返答してくれた彼女の肌は見事な小麦色だった。
「色々突っ込みたいことは山ほどあるけど絞るとすればこれかな、そのライトは何処から貰ってきたんだい?」
カウンターの上に置かれていたのは電灯のような物で近くに転がっていた箱には日焼けマシンと書かれていた。
そう言えば随分前に幻想入りした機械だったらしいが、僕は未だにお目にかかっていない、所謂“掘り出し物”に属するが僕としては…
「…机の上を散らかさないで欲しいな」
「良いじゃない、外は寒いんだからせめて夏みたいに過ごそうよ」
「せめて春とかだったら同意できたんだがね、それに天界は暖かいんだろ?何でわざわざこんな寒い地上へ来るんだ」
「霖之助と一緒にいたいから!それだけ」
そう言って天子はライトのスイッチを切りサングラスを外すと浅黒く焼けた肌と花輪を被って僕に見せつけた。
「どう?」
似合う似合わないを問われれば似合うと答える、しかしやりすぎだと、見渡せば僕の家は全くの南国仕様に塗り替えられていた。
右を見ればパイナポー、左を見ればフラダンス人形(アリスが作ったのだろう)、下を見れば真っ白な砂が敷き詰められている。
そして極めつけは花輪を頭に巻いてウクレレを弾いている彼女だろう。
「その前にこの機械やら何やらの出所を教えて欲しいな」
「紫からー」
予想的中である。
そして更に彼女は数枚の紙を持ち出し笑顔を浮かべた。
「面白い飲み物の作り方も教えて貰ったの、作ってあげる」
そう言って僕の返答を聞かず台所へ消えていき…
「…絶対見ちゃ駄目だからね!」
と念を押し台所の扉を勢いよく閉めた。
天子が台所に籠もって数分、僕は仕方なく彼女が置いたライトや人形を弄り倒していた。
「…これは豆電球ではないのか、ふむ」
スイッチを入れるとやけに特徴的な作動音と光が耳目に残る。
「だからサングラスを掛けていたのか」
目を擦りながらライトを机に置き今度はフラダンス人形に手を伸ばす。
「流石はマーガトロイド製と言ったところか」
丁寧に仕上げられた体の各部品や髪の毛の緻密さ、これは『良い仕事ですねぇ~』と言わざるを得ない出来だと思う。
そして更に驚いたのはこの人形を机に置いた瞬間だった。
『ヘヘイヘーイ、ワーオ』
「なんだ?」
フラダンス人形が歌と共に踊り出したのだ。
多分軽い衝撃や音が鳴ると勝手に踊り出す魔法を掛けているのだろう。
「相変わらず人形に傾ける情熱と労力が半端なものじゃないな」
一体この人形を創るときアリスはどんな顔をしていたんだろう、そう思うと若干だが寒気がした。
「…考えるのは止めとこう」
相変わらず陽気な歌と踊りを披露する人形を余所にテーブルに置いてあったウクレレを手に取り適当に弾いてみる。
「いい音だ…」
楽器なぞまともに弾ける腕ではないが音を出すことなら出来る、何とも軽妙な、かつ心地の良い音が店内に響く。
後ろに視線を感じ振り向くとそこには青い液体が注がれたコップを持っている彼女が立ちながらこちらを見ていた。
「もう出来たのかい?天子」
「うん、それよりも結構上手だったね」
「ただ適当に音を鳴らしただけだよ」
そんな事よりも彼女が持ってきた青い液体についての興味の方が上回った。
「それはなんだい?」
「『ぶるーはわい』とか言う飲み物、美味しいらしいよ」
硝子製の大振りな容器に入ったそれは見事なまでの蒼色で以前読んだ外の観光地の紹介写真に映っていた海の色のような物だった。
「飲んでみてよ」
「あぁ」
そう勧められ青いその液体を飲み込んだ瞬間、僕は驚いた。
「…これ、お酒じゃないか!」
「そうだよ?お酒駄目だったっけ」
「いや、駄目じゃないが、たまげたなぁ、ジュースか何かだと思ってたよ」
僕はグラスを静かに置くとしげしげとその液体を眺めた。
透き通って、それでいて何とも深い蒼色に何処か涼やかな気持ちになった、冬なのに。
「綺麗な色だな」
「…お酒強かったかな、そうでも無いと思うんだけど」
そう言って彼女はグラスを持ち上げるとぐいとそれを飲み干した。
「あー、美味しい」
「…よくそんな一気に飲み干せるね」
「まぁね」
赤ら顔で笑う彼女に僕は改めて質問をした。
「で、何で日焼けマシンなんか持ってきたんだい?」
「そうそう思いだした、霖之助、日焼けしなよ」
そう言うと彼女はスイッチを入れ僕に突きつけた。
「うおまぶしっ、止めてくれ!」
「なんでよー」
「今は冬だぞ?日焼けなんかしてどうするんだい」
頬を膨らせ抗議する彼女に僕は質問をした。
「だって霖之助肌白いんだもん!まるでもやしよ」
「酷い言われようだね」
確かにそれは事実でもある。
それどころか先日慧音に『やっぱりお前って肌白いよな、女みたいだ』と言われてかなりヘコんだ。
「…まぁ、良く言われるけどね」
「でしょ?だったら試してみなよ、体格は結構良いんだから」
そう言って彼女は僕にサングラスを押しつけ機械のスイッチを押し電源を入れた。
「結構温かいんだね」
「そうよ、でも最初は緋想の剣で季節を変えようと思ったんだけどね、無理らしくって」
「…ははは」
そうしてサングラス越しの彼女と談話すること数十分。
「…上手に焼けました~」
「人を肉か何かと一緒にしないでくれ」
僕は夏の日差しの下で焼けたような小麦色の肌を手に入れた。
「…でも、悪くはないかもね」
「そうでしょ?」
「はぁっ!?」
布団から飛び起き僕は自分の肌を見やると安堵した。
懐かしい真っ白な肌である。
「…夢、か」
その言葉を溜息と共に吐き出しカウンターへ向かうと天子が居た。
「あ、霖之助、今日ね紫からおもしろいもの貰ったの!」
彼女が突きつけた物は『日焼けマシン』だった。
この節を借りて現状を説明するならば…
『玄関を開けると其処は南国だった』
…がぴったり当てはまる。
今僕の目の前には花輪を被ってウクレレ弾きながら上機嫌の天子が居る。
「…天子、何やってるんだい?」
「南国気分」
と漢字四文字で返答してくれた彼女の肌は見事な小麦色だった。
「色々突っ込みたいことは山ほどあるけど絞るとすればこれかな、そのライトは何処から貰ってきたんだい?」
カウンターの上に置かれていたのは電灯のような物で近くに転がっていた箱には日焼けマシンと書かれていた。
そう言えば随分前に幻想入りした機械だったらしいが、僕は未だにお目にかかっていない、所謂“掘り出し物”に属するが僕としては…
「…机の上を散らかさないで欲しいな」
「良いじゃない、外は寒いんだからせめて夏みたいに過ごそうよ」
「せめて春とかだったら同意できたんだがね、それに天界は暖かいんだろ?何でわざわざこんな寒い地上へ来るんだ」
「霖之助と一緒にいたいから!それだけ」
そう言って天子はライトのスイッチを切りサングラスを外すと浅黒く焼けた肌と花輪を被って僕に見せつけた。
「どう?」
似合う似合わないを問われれば似合うと答える、しかしやりすぎだと、見渡せば僕の家は全くの南国仕様に塗り替えられていた。
右を見ればパイナポー、左を見ればフラダンス人形(アリスが作ったのだろう)、下を見れば真っ白な砂が敷き詰められている。
そして極めつけは花輪を頭に巻いてウクレレを弾いている彼女だろう。
「その前にこの機械やら何やらの出所を教えて欲しいな」
「紫からー」
予想的中である。
そして更に彼女は数枚の紙を持ち出し笑顔を浮かべた。
「面白い飲み物の作り方も教えて貰ったの、作ってあげる」
そう言って僕の返答を聞かず台所へ消えていき…
「…絶対見ちゃ駄目だからね!」
と念を押し台所の扉を勢いよく閉めた。
天子が台所に籠もって数分、僕は仕方なく彼女が置いたライトや人形を弄り倒していた。
「…これは豆電球ではないのか、ふむ」
スイッチを入れるとやけに特徴的な作動音と光が耳目に残る。
「だからサングラスを掛けていたのか」
目を擦りながらライトを机に置き今度はフラダンス人形に手を伸ばす。
「流石はマーガトロイド製と言ったところか」
丁寧に仕上げられた体の各部品や髪の毛の緻密さ、これは『良い仕事ですねぇ~』と言わざるを得ない出来だと思う。
そして更に驚いたのはこの人形を机に置いた瞬間だった。
『ヘヘイヘーイ、ワーオ』
「なんだ?」
フラダンス人形が歌と共に踊り出したのだ。
多分軽い衝撃や音が鳴ると勝手に踊り出す魔法を掛けているのだろう。
「相変わらず人形に傾ける情熱と労力が半端なものじゃないな」
一体この人形を創るときアリスはどんな顔をしていたんだろう、そう思うと若干だが寒気がした。
「…考えるのは止めとこう」
相変わらず陽気な歌と踊りを披露する人形を余所にテーブルに置いてあったウクレレを手に取り適当に弾いてみる。
「いい音だ…」
楽器なぞまともに弾ける腕ではないが音を出すことなら出来る、何とも軽妙な、かつ心地の良い音が店内に響く。
後ろに視線を感じ振り向くとそこには青い液体が注がれたコップを持っている彼女が立ちながらこちらを見ていた。
「もう出来たのかい?天子」
「うん、それよりも結構上手だったね」
「ただ適当に音を鳴らしただけだよ」
そんな事よりも彼女が持ってきた青い液体についての興味の方が上回った。
「それはなんだい?」
「『ぶるーはわい』とか言う飲み物、美味しいらしいよ」
硝子製の大振りな容器に入ったそれは見事なまでの蒼色で以前読んだ外の観光地の紹介写真に映っていた海の色のような物だった。
「飲んでみてよ」
「あぁ」
そう勧められ青いその液体を飲み込んだ瞬間、僕は驚いた。
「…これ、お酒じゃないか!」
「そうだよ?お酒駄目だったっけ」
「いや、駄目じゃないが、たまげたなぁ、ジュースか何かだと思ってたよ」
僕はグラスを静かに置くとしげしげとその液体を眺めた。
透き通って、それでいて何とも深い蒼色に何処か涼やかな気持ちになった、冬なのに。
「綺麗な色だな」
「…お酒強かったかな、そうでも無いと思うんだけど」
そう言って彼女はグラスを持ち上げるとぐいとそれを飲み干した。
「あー、美味しい」
「…よくそんな一気に飲み干せるね」
「まぁね」
赤ら顔で笑う彼女に僕は改めて質問をした。
「で、何で日焼けマシンなんか持ってきたんだい?」
「そうそう思いだした、霖之助、日焼けしなよ」
そう言うと彼女はスイッチを入れ僕に突きつけた。
「うおまぶしっ、止めてくれ!」
「なんでよー」
「今は冬だぞ?日焼けなんかしてどうするんだい」
頬を膨らせ抗議する彼女に僕は質問をした。
「だって霖之助肌白いんだもん!まるでもやしよ」
「酷い言われようだね」
確かにそれは事実でもある。
それどころか先日慧音に『やっぱりお前って肌白いよな、女みたいだ』と言われてかなりヘコんだ。
「…まぁ、良く言われるけどね」
「でしょ?だったら試してみなよ、体格は結構良いんだから」
そう言って彼女は僕にサングラスを押しつけ機械のスイッチを押し電源を入れた。
「結構温かいんだね」
「そうよ、でも最初は緋想の剣で季節を変えようと思ったんだけどね、無理らしくって」
「…ははは」
そうしてサングラス越しの彼女と談話すること数十分。
「…上手に焼けました~」
「人を肉か何かと一緒にしないでくれ」
僕は夏の日差しの下で焼けたような小麦色の肌を手に入れた。
「…でも、悪くはないかもね」
「そうでしょ?」
「はぁっ!?」
布団から飛び起き僕は自分の肌を見やると安堵した。
懐かしい真っ白な肌である。
「…夢、か」
その言葉を溜息と共に吐き出しカウンターへ向かうと天子が居た。
「あ、霖之助、今日ね紫からおもしろいもの貰ったの!」
彼女が突きつけた物は『日焼けマシン』だった。
そしてまさかの「8・6あ」www
>それどころか先日慧音に『やっぱりお前って肌白いよな、女みたいだ』と言われてかなりヘコんだ。
kwsk。
>日焼けマシンって最初は医療機器
マジっすか。それは初耳だわ
しかし天子が日焼けすると、夏休みの小学生みたいだな。
>唯様
詳しく、ですか。
…頑張ってみます
>奇声を発する程度の能力様
はい、日照時間が少ない地域に住んでいる人が健康的に過ごせるように作られたのが最初らしいです。
>3様
僕も南国行きたいですね、現実は山ですが。
>4様
いやいや、天子は元々可愛いんです。
>5様
サングラスは目を開けたいときだけにかけるようです、本当は目を閉じたまま使うそうです。
…天子が日焼けすると、それは言わないであげて下さい。