ある天気の良い、気持ちのいい昼下がり。
私達の神社に客人が現れました。
美しい銀髪と紺藍色の瞳をした、中性的な顔立ちの人。
来ている服は執事服で、出で立ちは非常に様になっていて、飛んできたのに衣服の乱れも見られない。
その人は私と神奈子様の前に現れて、深く一礼をした。
「こんにちわ、守矢神社はこちらであってたかしら」
「え、ええ……」
「東風谷早苗に、八坂神奈子ね?」
「いかにも」
「私は紅魔館の十六夜咲夜、紅魔館を代表して挨拶させてもらいにきたわ」
「紅魔館って、あの池の近くにある大きな館…ですか」
「ええ」
姿を見たことはあるけれど、なんだかブキミな気がしていままで関わらなかった。
それが、まさかこうして向こうから挨拶をしに来てくれるなんて。
「近所というほどではないけど顔見知りになっておいて悪いことはないでしょ?宴会で顔を合わせるかもしれないし、よろしくね」
「はい、こちらこそ…ええと、十六夜さん」
「咲夜でいい」
あまり口を開いていなかった神奈子様が腰を上げて、咲夜さんの近くに寄っていった。
「お前さん、本当に人間か?いや、いい意味でな」
「それはどうも」
「神様である私を前にしてその悠然とした立ち振る舞いは、ここがいかに常識ハズレな世界かよく思い知らせてくれるわね」
常識という言葉はあまりここでは通用しない、そう教わったけど…
神様を前にして口調も正さず今まさに握手をしようと手を差し出しているこの方は……只者じゃないと感じた。
「この握手は、友好の証?それとも、対等の地位にいることの確認?」
神奈子様が無粋な質問をすると、咲夜さんは表情一つ変えず言葉を返した。
「強いて言うなら、同じ酒を交わすに値するかどうかの確認ね」
「……くくく」
笑いをこらえきれず、いやまいったと頭を下げる。
そして咲夜さんとの握手に応じた。
「なかなかだね」
「どうも」
握手だけを済ませて、咲夜さんは私達に背を向けた。
「今日は挨拶しにきただけだから、紅茶やクッキーは用意してないの、悪いわね」」
「気にするな」
「じゃ、またね」
そして軽く手を振り、足早に飛び立っていった。
去り際もまた美しく、まるで一匹の燕のようで、風を切るように素早く無駄の無い動きだった。
しばらく私は、その光景をぼけーっとして見つめていた。
見えなくなるまで。
「早苗」
「はっ……はい」
「なに、惚れた?」
「……い、いえ」
惚れたというわけじゃないと思うんだけど……あの執事服の方は、私の脳裏に焼きついた。
「まぁそうだな、確かに、なかなか見所のありそうなやつだった、早苗も伴侶を見つけるならああいうやつにしたほうがいいぞ」
「伴侶だなんて!」
「いや、冗談だ」
私の複雑な心境も察しないで、こうして私をからかって喜ぶ。
「…なに、男選びを慎重に行うのに越したことは無い、なんなら男でなく、女だっていいしな」
「……はぁ」
「少しでも気になったならあいつのところに行ってみるといい、モノは経験だ」
「小悪魔、私の服乾いたかしら?」
「はい!ごめんなさいお待たせして」
私が挨拶に出かけてくるといった途端に、小悪魔が私の服に紅茶をぶちまけた。
丁度代えも洗濯していたので、今回は違う服を着て出かけたんだが…
「別にいいけど、やっぱりこういう男装みたいな服は窮屈ね」
「サイズも合ってないですから……でも、よく似合ってますよ、男性みたい」
「嬉しくないわね」
「で、どうでした?咲夜さん好みの方はいました?」
失礼だなこいつ。
「死ぬほど人聞き悪い言い方ね、まぁ……そうねぇ」
「博霊のとこと違って、素直で真面目そうな奴だったわ、スタイルも良さ気かな?多分……ちょっと人見知りしてたところも可愛かったし…神様とやらに邪魔されてよく見えなかったけど、向こうからすっごい見られてたから実はちょっと緊張してたのよね、なんかすっごい私のこと見てきてたのよ、なんかすっごい見てきてたから緊張したのよ、でも緊張してるなんて思われたくないでしょ?だから強がって無理してたけど、多分バレなかったわね、でもそうねー……一番目が行ったのは物怖じした態度なのに脇の開いた巫女装束を着てたってところかな、しかもあのスタイルの良さでね、反則じゃない?ギャップ狙ってるのかしら?もしそうなら大成功ね、いや正直友達になりたいわ、次宴会っていつかしら」
「え?さぁ……早く寝ろよ」
.
洩矢神社
→守矢神社?
そりゃ勘違いしてもしょうがないわ。
早苗さんは咲夜さんに美味しく頂かれてしまうのですね。
出で立ち
>「今日は挨拶しにきただけだから、紅茶やクッキーは用意してないの、悪いわね」」
・お茶や茶菓子を用意するのは招く側・受け入れる側
・」」←ひとつ多い
>一匹の燕
鳥を数えるときは「一羽」
>丁度代えも洗濯していた
・まったく別のものにかえるときは「代え」
・同等のものにかえるときは「替え」
咲夜さんのキャラと小悪魔のラスト一言が切れ味良すぎて、思わず笑ってしまいましたw
いやぁ、面白いですね!
咲夜さんが素晴らしい。
これは続編があるとしたら、期待したいものですなw
きっとこの後この二人のお話を妄想すると思うんですが、どうなるか…
小悪魔ちゃんにはでてきてほしいな!