Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ごっこじゃないのよ

2010/12/10 00:09:45
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レミリア・スカーレットの朝は遅い。……とは言っても、日によってかなりいい加減なのだが。

兎も角この日、彼女がベッドから抜け出したのは太陽が傾き始めてしばらくたった頃だった。
さて今日は予定もなし。神社に冷やかしにでも行こうか、と考えていたレミリアだったが、狙いすましたかのようなタイミングで雨が館の周辺を襲った。
魔女に頼んで雲を切ってもらうことも出来る。が、特別用があるわけでもないのに天気を変えるような気分ではなかった。
雨ならば雨なりの過ごし方もある。

そんなことを思いながら、自室でストレッチをしたり、アクロバティックかつアヴァンギャルドにカリスマを演出する練習をしつつレミリアは夕刻を過ごす。
のだが、途中で咲夜の視線を感じたのでそれも中断した。
そんな所で覗いてる暇があるならおやつの用意でもしろと。視界の外の従者に念波を送ってみたが残念ながら届かなかった。

仕方が無いので図書館で暇を潰そうと地下に赴くと、そこに居た魔女は七曜ではなく七色の方だった。
「アリスじゃない。来ていたのね」
「お邪魔してるわ」
読んでいた魔導書をテーブルに置いて、アリスは顔を上げた。
「昼過ぎからいらしたんですよ」
そう言って、小悪魔が紅茶を運んでくる。
レミリアはアリスの対面に座ると、テーブルの上に鎮座するリボンの付いた小袋をつついた。
「これはお土産?」
「ええ、特に捻りのない単純なクッキーだけど。パチュリーが戻ってきたらと思ったんだけど、開けてもいいわよ」
「ん。そうよ、パチェは?」
レミリアはキョロキョロと辺りを見回すが、目的の人物は見当たらない。
途中、視線がぶつかった小悪魔にスティックシュガーを手渡された。
「パチュリー様はちょっと奥の部屋で調べることがあるとかで。もうすぐ戻ってくるとは思いますけど」
レミリアはふぅんと興味なさげな声を返して、小袋のリボンをほどき始めた。

昔、図書館にはシュガーポットも置かないのかしらと茶化したことがあるが、その時はパチュリーが『アリとか出ると本にも被害が出るし、死活問題』と至極真っ当な理由で導入を否定した。
『でも、アリスは来るわよね』と言ったら、露骨に冷めた目で見られたのは苦い思い出である。
そんなにつまらなかったかしら、とレミリアはその時のことを思い出し溜息をついた。

さてそのアリスはお構いなく、と小悪魔からシュガーを受け取らなかったので、レミリアは手元のシュガーをアリスのカップに全部注いでみた。
笑顔のまま無言でスプーンを手にするアリス。三秒ルールというのはまさにこういう時にためにあるのだろう。
自分の分の砂糖が無くなってしまったので、レミリアは小悪魔に目線で追加を要求したが、
「……塩なら」
笑顔でやんわりと断られた。この館の従者はどいつもこいつも人の話を聞かない。
その代わりというように差し出された大皿に、レミリアはクッキーを流しこんだ。
「さて。何か本を持ってきますか?」
小悪魔の問いに答える前に、ひとまず一つクッキーを摘み口にくわえてからレミリアは目を細める。
そのまましばらく動きを止めると、ちらりとアリスの方に目をやった。
「………」
なんとなく気乗りのしない、けだるそうなレミリアの視線からアリスはその意図を汲み取った。
あまり自分から言い出したくはないのだろう、と推察する。アリスはそれがなんとなく微笑ましく思えた。
まあ、彼女としてはそれよりも美味しい紅茶を返して欲しかったのだが。
啜っていた甘すぎる紅茶をテーブルに置き、アリスは口を開く。
「何か別のことをする?」
「そうね、折角アリスも来ていることだし。―――あ、美味しい」
「あらありがとう」
満足そうに紅茶を一口。レミリアは、同じく美味しそうにクッキーを頬張る小悪魔の袖をつついた。
「そういうわけだから、小悪魔」
「はい?」
「何か持ってきなさい。この際だから、貴方も一緒でいいわ」


小悪魔がこめかみに指を当てつつふらふらと下がっていくのを見届けると、レミリアはクッキーをもう一つ摘んだ。
「随分とアバウトな注文ねぇ」
アリスが苦笑する。
「いいじゃない。その方がこっちも楽だし、面白いし」
「まあそうでしょうけど」
振り回される側はたまったものではないだろうなぁと思う。が、それはそれで楽しいのかな、なんてことを館の住人達を見て思うアリスだった。



やがて、ガラガラと何かが転がる大きな音が聞こえてくる。
小悪魔が台車を引っ張ってきていた。
本の移動というよりは引越し等に使うのではないかというサイズの台車。
そこにずっしりと載っていたのは、ちょっとしたキングサイズと言えるレベルのベッド。
小悪魔はそれを乱雑に引き摺り下ろすと、一仕事終えた顔で爽やかに声を張り上げた。

「どうぞ!」
「よし、そこに座れ」

何事もなかったかのようにクルリと踵を返した小悪魔の首根っこを掴むと、レミリアは小悪魔をうつ伏せにベッドへ押し倒した。
淀みない動きで、そのまま小悪魔の右肩をひねり上げる。
「いだだだだだ! キマってます! キマってます!?」
左手でベッドをバスバスと叩く小悪魔の声は当然届かない。
レミリアは体をひねると、背後の皿のクッキーを再び摘んだ。
アリスも皿に手をつけながら、その様子をぼんやりと眺める。小悪魔の抵抗が徐々に弱くなってきた辺りで、アリスは紅茶を飲み干して一つ欠伸をした。
なんか痙攣してるしそろそろ危ないんじゃないかなぁと小悪魔の様子を観察する。

と、先程からレミリアが自分の方を見続けていることに気が付いた。
「……何かしら?」
キョトンとして聞くと、レミリアも不思議そうな顔をしていた。何故分からないのか、とでも言いたげに。
変わらず首を傾げるアリスに業を煮やしたのか、レミリアは小悪魔を締め上げたまま空いた手でベッドをポンポンと叩いた。



「ほら、アリスも」
「何を!?」
一方そのころ、出て行くタイミングを逃したパチュリーはいじけながらカメラの用意をしていた。


レミィクラスになるとベッドの上でごっことかじゃなくて本当にプロレスを始めるんじゃないかなぁと思った結果がこれです。……あれ、これもごっこなのかな?

このへんの三人は仲が良いと俺得です。お読みいただきありがとうございました。
軟骨魚類
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
いいなぁ、この3人の絡み。
アリスに一緒に遊んでほしいお嬢様かわいいw
和みました。
2.名前が無い程度の能力削除
小悪魔何もってきてるんだwww
3.奇声を発する程度の能力削除
三人のやり取りに和みましたw
4.名前が無い程度の能力削除
プロレスごっこに参加するのが嫌だから代わりにゴーレム人形を作ってあげたんですね、わかります