扉を開けば一面の銀世界……ならぬ紅世界。それがあいつの部屋。
比喩でも何でもない。あいつの部屋は壁紙から家具に至まで紅い色で統一されているのだ。
そんな紅い世界にポツンと、普段着であるピンク色のドレスを纏ったあれが私の姉である。
「いらっしゃい、フラン。待ってたわよ」
「で? 用件は何? 早く済ませて」
私は不機嫌を露わにして返事した。
全くもってその通りだ。夕食の後で夜も遅い。私はさっさと寝たいのだ。それなのにこいつは私を馴れ馴れしく呼び出しをしてきた。理由を訊いても「内緒」の一点張りで断れば「ご飯抜きにするわよ?」の仕打ち、はっきり言って理不尽だ。
「じゃーん。これなーんだ?」
「ふざけるなら私、帰るよ」
「あらあら。そんな事言わないで頂戴?」
私はクスクスと笑う姉に苛立ちを覚えた。張り付いた笑顔のまま姉は戸棚から出した包みを私に手渡す。
「……ワイン?」
「その通り」
「……何これ」
「ワイン。お酒よ」
「そうじゃない!」
「いや、フランも大きくなったし。そろそろお酒というものを味わって貰おうと考えたのよ」
「……今ここで?」
「そう」
「……私と、お姉様の2人で?」
「そう。2人っきりの飲み会」
「謹んで遠慮させて頂きますわ」
冗談じゃない。こんな奴と飲み会なんてやったって楽しめる訳がない。心を許せる奴でないと駄目に決まってる。
私とこいつの仲の悪さといったら、そりゃもう凄惨である。495年の溝はそう簡単には埋まらないのだ。
「まあまあ、そう言わずに、ね?」
「はぁ……」
わざとらしく溜め息をした。
それなのにこいつはヘラヘラ笑いながら、いつもいつも私に関わろうと干渉してくる。
「いい加減、妹離れしてくれないかな?」
「なーに言ってんの。離れたら離れたで泣きべそかく癖に」
「何言ってんのはこっちのセリフだよ」
全く何を言っているのかさっぱり判らん。せめて意味の通じる会話をして欲しいものだ。
「ね? 少し位いいじゃない。フランだってお酒飲んでみたいでしょ?」
「う……判ったわよ」
はぁ。やはり大人である私が折れる羽目になった。……まぁ、お酒に興味がないと言えば嘘になる。
仕方ない。この構ってちゃんな姉に少しだけ付き合ってあげよう。
□ □ □
「……ね、ねぇフラン。ちょっと……飲み過ぎよ?」
「え~? なぁに言ってんのよ。お姉様~☆」
お酒って不思議だな~美味しいな~あう~頭がフワフワして何だか気分いい~
あー! お姉様が4人に見える! フランのだーい好きなお姉様が4人も居るう! ふぉーおぶ紅いーんどー!!
「貴女は初めてなんだからあまり飲んじゃ駄目」
「う~……」
お姉様が何か言ってるけどよく判らない……そんな事よりお姉様に抱っこして欲しいな……。甘えたいな……。
抱きついちゃお!
「ちょ、ちょっと。私は椅子じゃないわよ」
「やー! 抱っこー!」
「はぁ。酔うと随分自分に正直になるのね。お水持って来るからちょっと待ってなさい」
「やー! 行っちゃやー!!」
「こ、こら。服にしがみつかないで……明日二日酔いで酷くなっちゃうわよ」
「抱っこー! 抱っこしてぇ~……うえ~ん……!」
「わ、判ったから泣かないで、ね?」
ぎゅ~……えへへ……お姉様あったか~い。いい匂い~……。
「んにぁ~」
「ふぅ。よしよし、良い子良い子」
頭なでなで好き~。
「お姉様好き! 好き好きだ~い好き~」
「ありがとうフラン。素直になってくれて嬉しいわ」
「好き! お姉様大好き~!」
「うんうん。私も好きよ」
「フランはお姉様大好き~! 好き~!」
「あーはいはい。判ってるから判ってるから。痛い痛い。羽動かさないで」
「う~好きー好きー好きー!」
「おーよしよし。ふふっ、まだまだ甘えたい盛りね」
えへへ~お姉様の膝の上が一番好きな場所~。
「お姉様、ちゅっちゅ!」
「どうどう」
「ちゅっちゅちゅっちゅ~えへへ」
ん~お姉様が笑ってるー……。この表情が一番好き……。
あれ……なんだかまぶたが重い……。
「フラン。おねむ?」
「んー……」
「1人で寝れる?」
「やー! 一緒がいーいー……」
「ふふっ、まったく。いつになったら1人で眠れるのかしらね。お姫様?」
「そんな事言っちゃやだ……ずっと一緒が…………もぐもぐ……」
「こ、こらこら。服食べても美味しくないでしょ」
「…………」
「フラン?」
「寝ちゃったか……」
「寝ても尚、手は離さないのね。可愛い」
「あーあー服が涎で……まったく、甘えん坊なんだから」
「可愛い寝顔しちゃって。よいしょっと」
「おー。手を離してもくっついてる。すごいすごい」
「普段もこれくらいデレデレしてくれれば……いや、平生のツンツンも捨てがたいわね」
「ほらベッド着いたわよ。一緒に寝ましょうね」
「おやすみ。愛しのフラン」
比喩でも何でもない。あいつの部屋は壁紙から家具に至まで紅い色で統一されているのだ。
そんな紅い世界にポツンと、普段着であるピンク色のドレスを纏ったあれが私の姉である。
「いらっしゃい、フラン。待ってたわよ」
「で? 用件は何? 早く済ませて」
私は不機嫌を露わにして返事した。
全くもってその通りだ。夕食の後で夜も遅い。私はさっさと寝たいのだ。それなのにこいつは私を馴れ馴れしく呼び出しをしてきた。理由を訊いても「内緒」の一点張りで断れば「ご飯抜きにするわよ?」の仕打ち、はっきり言って理不尽だ。
「じゃーん。これなーんだ?」
「ふざけるなら私、帰るよ」
「あらあら。そんな事言わないで頂戴?」
私はクスクスと笑う姉に苛立ちを覚えた。張り付いた笑顔のまま姉は戸棚から出した包みを私に手渡す。
「……ワイン?」
「その通り」
「……何これ」
「ワイン。お酒よ」
「そうじゃない!」
「いや、フランも大きくなったし。そろそろお酒というものを味わって貰おうと考えたのよ」
「……今ここで?」
「そう」
「……私と、お姉様の2人で?」
「そう。2人っきりの飲み会」
「謹んで遠慮させて頂きますわ」
冗談じゃない。こんな奴と飲み会なんてやったって楽しめる訳がない。心を許せる奴でないと駄目に決まってる。
私とこいつの仲の悪さといったら、そりゃもう凄惨である。495年の溝はそう簡単には埋まらないのだ。
「まあまあ、そう言わずに、ね?」
「はぁ……」
わざとらしく溜め息をした。
それなのにこいつはヘラヘラ笑いながら、いつもいつも私に関わろうと干渉してくる。
「いい加減、妹離れしてくれないかな?」
「なーに言ってんの。離れたら離れたで泣きべそかく癖に」
「何言ってんのはこっちのセリフだよ」
全く何を言っているのかさっぱり判らん。せめて意味の通じる会話をして欲しいものだ。
「ね? 少し位いいじゃない。フランだってお酒飲んでみたいでしょ?」
「う……判ったわよ」
はぁ。やはり大人である私が折れる羽目になった。……まぁ、お酒に興味がないと言えば嘘になる。
仕方ない。この構ってちゃんな姉に少しだけ付き合ってあげよう。
□ □ □
「……ね、ねぇフラン。ちょっと……飲み過ぎよ?」
「え~? なぁに言ってんのよ。お姉様~☆」
お酒って不思議だな~美味しいな~あう~頭がフワフワして何だか気分いい~
あー! お姉様が4人に見える! フランのだーい好きなお姉様が4人も居るう! ふぉーおぶ紅いーんどー!!
「貴女は初めてなんだからあまり飲んじゃ駄目」
「う~……」
お姉様が何か言ってるけどよく判らない……そんな事よりお姉様に抱っこして欲しいな……。甘えたいな……。
抱きついちゃお!
「ちょ、ちょっと。私は椅子じゃないわよ」
「やー! 抱っこー!」
「はぁ。酔うと随分自分に正直になるのね。お水持って来るからちょっと待ってなさい」
「やー! 行っちゃやー!!」
「こ、こら。服にしがみつかないで……明日二日酔いで酷くなっちゃうわよ」
「抱っこー! 抱っこしてぇ~……うえ~ん……!」
「わ、判ったから泣かないで、ね?」
ぎゅ~……えへへ……お姉様あったか~い。いい匂い~……。
「んにぁ~」
「ふぅ。よしよし、良い子良い子」
頭なでなで好き~。
「お姉様好き! 好き好きだ~い好き~」
「ありがとうフラン。素直になってくれて嬉しいわ」
「好き! お姉様大好き~!」
「うんうん。私も好きよ」
「フランはお姉様大好き~! 好き~!」
「あーはいはい。判ってるから判ってるから。痛い痛い。羽動かさないで」
「う~好きー好きー好きー!」
「おーよしよし。ふふっ、まだまだ甘えたい盛りね」
えへへ~お姉様の膝の上が一番好きな場所~。
「お姉様、ちゅっちゅ!」
「どうどう」
「ちゅっちゅちゅっちゅ~えへへ」
ん~お姉様が笑ってるー……。この表情が一番好き……。
あれ……なんだかまぶたが重い……。
「フラン。おねむ?」
「んー……」
「1人で寝れる?」
「やー! 一緒がいーいー……」
「ふふっ、まったく。いつになったら1人で眠れるのかしらね。お姫様?」
「そんな事言っちゃやだ……ずっと一緒が…………もぐもぐ……」
「こ、こらこら。服食べても美味しくないでしょ」
「…………」
「フラン?」
「寝ちゃったか……」
「寝ても尚、手は離さないのね。可愛い」
「あーあー服が涎で……まったく、甘えん坊なんだから」
「可愛い寝顔しちゃって。よいしょっと」
「おー。手を離してもくっついてる。すごいすごい」
「普段もこれくらいデレデレしてくれれば……いや、平生のツンツンも捨てがたいわね」
「ほらベッド着いたわよ。一緒に寝ましょうね」
「おやすみ。愛しのフラン」
にやにやが抑えられません
ここで完敗した
うふ ふ