今日の収穫は魔道書3冊だぜ。
これでさっさと逃げて研究を進めるか。
「はいストップ」
「おわっ!?」
考え事していたら目の前にメイドが現れた。
ぶつかりそうになるところをギリギリで避けたが、メイドは涼しげな顔をしてた。
「おい咲夜! 危ないだろ?!」
「魔理沙じゃない。今すぐその本を返しなさい」
「いやいや話噛み合ってないし」
「私忙しいのよ。余計な仕事を増やさないで」
「なら私に構わなければいいだろ?」
「そういうワケにもいかないの。門番は全然役に立ってないし、妖精メイドじゃ貴方に歯が立たないし、門番は使えないし…」
ボロくそ言い過ぎだろ、一応お前メイドだろ…とかツッコミたくなったけどやめた。
こりゃちょっと美鈴に同情するぜ。
あいつだってそれなりに頑張ってると思うんだけどなぁ。
「だからその本を返しなさいな」
「…死んだら返すって」
「それは困るわね。貴方の死に逝く様は見たくないわ」
「…人間いつか死ぬぜ」
「私より先に死ぬことは許さないわ」
「なんで咲夜に決められなきゃいけないんだよ」
「だって、好きな人の先に死ぬのは嫌だもの」
「サラッと言うなよ…。てか、私だって……」
咲夜が先に死んで行くのは見たくないさ。
だって、私も咲夜のこと好きだし。
本人の前じゃ恥ずかしくてあんまり言わないけど。
「ねぇ魔理沙? 良い案が思いついたんだけど、聞きたい?」
「なんだ?」
「死ぬ時は、一緒に死にましょうか」
「……お前、バカだよな」
「⑨よりバカじゃないことだけは自信を持って言えるわ」
「だろうな。そりゃ誰だってそうだぜ」
「で、この案どうかしら?」
「…却下だ」
「どうして?」
「きっと、私は咲夜と一緒には死ねないから」
「…そう」
咲夜が死んでいくのは見たくない。
でも咲夜とは一緒に死ねない。
きっと私は咲夜より永く生きていくことになるかもしれないから。
最近思い始めたことがある。
もっと魔法のことを知りたい。
そのためには今のままじゃいけないって。
人間のままじゃ、限界があるって。
本物の、アリスやパチュリーのような魔法使いになれたら…って。
だから咲夜と一緒に死ぬには、少し無理があるかもしれない。
「なんとなく、魔理沙の考えてることは分かるけどね」
「なんで分かるんだよ」
「恋人だから?」
「はいはい。口には出すな。いつか私から話すから」
「…出来れば二度と話さなくていいんだけどね」
今の咲夜の顔は、正直誰にも見せられないな。
ずいぶん悲しい顔してる。
私がさせてるんだけど、心が痛む。
「…貴方は私の大切な人よ。そんな日が来ないようにしてみせるから」
「さすがメイド長。頼もしいね」
「好きよ、魔理沙」
「ッ!? いきなりかよ…」
「思った事を口に出したまでよ?」
なんで好きになったんだろう、とか考えたら理由なんて簡単すぎてちょっとビックリした。
咲夜が私の名前を呼んだ時に見せたあの微笑みに一目ぼれしたんだ。
そうして私の頭を撫でてくれた。
それが嬉しくて、もっと触れてほしくて、名前を呼んでほしくて、咲夜のこともっと知りたくなった。
なんか、さっきまでの考えが少しバカらしくなってきた気がする。
「…咲夜」
「なぁに?」
「安心しろよ」
「魔理沙?」
「私たぶん、お前より先にも後にも死なないから」
「…え?」
「私も咲夜のこと…、好き、だから」
「…バカね。そんなこと知ってるわよ」
本物の魔法使いもいいけどさ
咲夜だけの恋の魔法使いになるのも悪くないとか思ってみたりした。
素晴らしかったです!!
いいですなあ・・・