師走、今年も終わりに近づいてきた今日、燃料を補給し終え火を付けたストーブの前で僕は本を読んでいた
今日はもう客も来ないだろう、そう高を括って僕はストーブと本の虫に成り下がっていた
「…寒すぎるだろ、何でこんな寒いんだよ、全く」
ストーブを付けてはいても吐く息は既に白く、先程外に出していた箒は凍り付いて用を為さなくなっていた
「チルノ頑張りすぎだろ」
窓を見やれば氷精が楽しそうに雪女と共に雪合戦をしていた
そして氷精から放たれた氷柱は流れ弾となり店の硝子を突き破り僕の足元へと着弾した
「うっわ!危な!」
気付けばいつの間にか割れた窓から雪が入り込んでいた
「…雪を降らさないでくれよ、全く」
割れた硝子を片づけながらガムテープで割れた窓に応急処置をすると僕は本に栞を挟みコートを着込んだ
厚手の手袋を嵌め、バラクラバを被りストーブの前に縮こまる
読み直そうとした本は既に凍り始めていたため仕方なく懐へいれ凍り付くのを防ぐ
「何処のアルデンヌだい、ここは」
誰も笑うことのない冗談を飛ばしつつストーブの火力を最大にしつつ僕は更に体を縮ませた
体温で眼鏡が曇るほどの寒さ、僕は眼鏡を外すと曇りを拭き取ると今度はかけ直すのに苦労した、フレームが手袋に張り付いてとれなかったのである
「こんの、くっそぅ、こんにゃろ!こいつめ、くぬぬぬぬ」
数分間の格闘の後、眼鏡は見事にひん曲がり使い物にならなくなってしまった
「晴れたら里へ行くか、しょうがない」
眼鏡が無くとも生活に支障はないはずだと思うが如何せん寒い
「何?おい、嘘だろ?」
先程から寒さが一層厳しくなったと思ったらストーブはいつの間にか止まり氷が張り始めていた
「何てこった!このままじゃ死んでしまう!」
僕はそう叫ぶと解決の手段を見つけるため立ち上がろうとしたが尻が椅子に凍り付き立った瞬間に転げた
「うっ!わっ!」
尻に張り付いた椅子を何とか引っぺがすと今度は凍り付いた床に足を取られ頭から転げ落ちた
体を起こそうと手をついたところも氷が張り引きはがすのに一苦労
「どうしてこうなった」
口から出る言葉はその一言
座っても立っても寝ても体は張り付き動けない、動こうとするにも一苦労
「…脱出だ、それしかない」
重い体を引きずり店の奥へと上がり込む
僅かに含まれていた水分も冷気に冷やされ居間は一面畳アイス状態になっていた
「フィギュアの世界大会が開けるね、大儲けだ」
本日二度目の冗談を飛ばしながら凍り付いた襖を開け粘土状の物体と棒状の物体を取り出した
「…これが切り札だ」
粘土状の物体は可塑性爆薬、コンポジションC3である
そして棒状の物体は雷管、爆薬を発火させるための道具だ
「これをこうしてああしてっと」
玄関の扉にC3を付け終え、雷管を挿入した瞬間、C3は崩れ去った
「…どうしてッッ?なんでッッッ!」
崩れ去った希望を僕は手で拾い集めながら絶叫した
だが凍り付いた床に欠片は見事に張り付き空しく爪で擦るだけだった
目に溜まった涙は落ちることなく冷え固まり僕の体温を余計奪い取っていった
「…僕が何をした?どんな悪いことをしたって言うんだ、この辺鄙な森で誰にも迷惑掛けず、と言うより迷惑ばかり掛けられてその仕打ちがこれか!」
そう言って叩きつけようとした拳を引っ込める、床や拳を気遣ってではない、張り付き引っぺがすのが億劫だからだ
店の隅で僕は体育座りをしただひたすら祈っていた、普段信じもしない神に
「神よ、僕は初めて貴方に祈る者です、どうか僕の願いが聞こえたなら、この寒さを消し去って下さい…」
そして僕は痛みも次第に感じなくなった唇を噛むと続けた
「…それが叶わぬなら……もう一度、彼女に…………会わせて下さい………」
流れ落ちることのない涙、凍り付き瞼は開くことはなくただひたすらに僕は闇の世界へと落ちていった
薄れ往く景色で僕が見た物は騒がしくも暖かかった日々、数えればきりがない人妖達との交流を思いだして初めて僕はこれまでずっと孤独なんかではないことを知った
しかしそんな美しい思い出ともお別れのようだ、瞼は既に涙で固く閉ざされ手足の感覚は無くなり立っているのか座っているのか寝ているのか、それすらも分からなくなっていた
「…もう……いいや」
そして僕は正常な意識を手放すことにした
「(…赦してくれ、とは言えないけど……どうか…どうか……)」
既に誰に向けたかも分からない謝罪も心で言い切ることは叶わずそこで僕の記憶は無くなった
今日はもう客も来ないだろう、そう高を括って僕はストーブと本の虫に成り下がっていた
「…寒すぎるだろ、何でこんな寒いんだよ、全く」
ストーブを付けてはいても吐く息は既に白く、先程外に出していた箒は凍り付いて用を為さなくなっていた
「チルノ頑張りすぎだろ」
窓を見やれば氷精が楽しそうに雪女と共に雪合戦をしていた
そして氷精から放たれた氷柱は流れ弾となり店の硝子を突き破り僕の足元へと着弾した
「うっわ!危な!」
気付けばいつの間にか割れた窓から雪が入り込んでいた
「…雪を降らさないでくれよ、全く」
割れた硝子を片づけながらガムテープで割れた窓に応急処置をすると僕は本に栞を挟みコートを着込んだ
厚手の手袋を嵌め、バラクラバを被りストーブの前に縮こまる
読み直そうとした本は既に凍り始めていたため仕方なく懐へいれ凍り付くのを防ぐ
「何処のアルデンヌだい、ここは」
誰も笑うことのない冗談を飛ばしつつストーブの火力を最大にしつつ僕は更に体を縮ませた
体温で眼鏡が曇るほどの寒さ、僕は眼鏡を外すと曇りを拭き取ると今度はかけ直すのに苦労した、フレームが手袋に張り付いてとれなかったのである
「こんの、くっそぅ、こんにゃろ!こいつめ、くぬぬぬぬ」
数分間の格闘の後、眼鏡は見事にひん曲がり使い物にならなくなってしまった
「晴れたら里へ行くか、しょうがない」
眼鏡が無くとも生活に支障はないはずだと思うが如何せん寒い
「何?おい、嘘だろ?」
先程から寒さが一層厳しくなったと思ったらストーブはいつの間にか止まり氷が張り始めていた
「何てこった!このままじゃ死んでしまう!」
僕はそう叫ぶと解決の手段を見つけるため立ち上がろうとしたが尻が椅子に凍り付き立った瞬間に転げた
「うっ!わっ!」
尻に張り付いた椅子を何とか引っぺがすと今度は凍り付いた床に足を取られ頭から転げ落ちた
体を起こそうと手をついたところも氷が張り引きはがすのに一苦労
「どうしてこうなった」
口から出る言葉はその一言
座っても立っても寝ても体は張り付き動けない、動こうとするにも一苦労
「…脱出だ、それしかない」
重い体を引きずり店の奥へと上がり込む
僅かに含まれていた水分も冷気に冷やされ居間は一面畳アイス状態になっていた
「フィギュアの世界大会が開けるね、大儲けだ」
本日二度目の冗談を飛ばしながら凍り付いた襖を開け粘土状の物体と棒状の物体を取り出した
「…これが切り札だ」
粘土状の物体は可塑性爆薬、コンポジションC3である
そして棒状の物体は雷管、爆薬を発火させるための道具だ
「これをこうしてああしてっと」
玄関の扉にC3を付け終え、雷管を挿入した瞬間、C3は崩れ去った
「…どうしてッッ?なんでッッッ!」
崩れ去った希望を僕は手で拾い集めながら絶叫した
だが凍り付いた床に欠片は見事に張り付き空しく爪で擦るだけだった
目に溜まった涙は落ちることなく冷え固まり僕の体温を余計奪い取っていった
「…僕が何をした?どんな悪いことをしたって言うんだ、この辺鄙な森で誰にも迷惑掛けず、と言うより迷惑ばかり掛けられてその仕打ちがこれか!」
そう言って叩きつけようとした拳を引っ込める、床や拳を気遣ってではない、張り付き引っぺがすのが億劫だからだ
店の隅で僕は体育座りをしただひたすら祈っていた、普段信じもしない神に
「神よ、僕は初めて貴方に祈る者です、どうか僕の願いが聞こえたなら、この寒さを消し去って下さい…」
そして僕は痛みも次第に感じなくなった唇を噛むと続けた
「…それが叶わぬなら……もう一度、彼女に…………会わせて下さい………」
流れ落ちることのない涙、凍り付き瞼は開くことはなくただひたすらに僕は闇の世界へと落ちていった
薄れ往く景色で僕が見た物は騒がしくも暖かかった日々、数えればきりがない人妖達との交流を思いだして初めて僕はこれまでずっと孤独なんかではないことを知った
しかしそんな美しい思い出ともお別れのようだ、瞼は既に涙で固く閉ざされ手足の感覚は無くなり立っているのか座っているのか寝ているのか、それすらも分からなくなっていた
「…もう……いいや」
そして僕は正常な意識を手放すことにした
「(…赦してくれ、とは言えないけど……どうか…どうか……)」
既に誰に向けたかも分からない謝罪も心で言い切ることは叶わずそこで僕の記憶は無くなった
店のなかは超低温ですね。ふつうの人間だったら死んでたなwww
気になった点
C3ではなくてC4では?あと霖之助の口調が少し乱暴なのは仕様でしょうか
何にせよ危険なもの持ってるな
>奇声を発する程度の能力様
そうですね、とある二千メーター峰を登ったときに気付いたら凍ってたんです
トイレは出来ないわで相当きつかったです
>2様
はい、雪山は怖いです
普通だったら死んでます、でも死なないのが霖之助です
>3様
ありがとうございます
C3で合ってます、C4はこれの子孫に当たりますね
霖之助の口調が乱暴なのは仕様です
>4様
そうですね、C3は寒冷地では固くもろくなってしまうのでチョイスさせて頂きました
>5様
てんこは可愛いです、はい