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紅魔館、門前
「今日は雲も無く空が高いですねー、日差しが気持ちいいです」
冬ならではの透き通るような空だ
「冬には鍋ですねー温まるし最後にうどんやご飯を入れて二度美味しいし」
「落ち葉を集めて焼き芋をしてもいいかも、じゃが芋も一緒に焼いても美味しいんですよね」
「……」
「…暇です」
一人で喋っていた、つまり独り言である。
冬になると来客が減るのである、客と言っても紅魔館に来る客ではなく門番に会いに来るので正式な客ではない。
「幽香さんは冬はあまり来ないし、チルノちゃんはレティさんの所だし、紫さんは冬眠しているし、藍さんはその代理で忙しいし、橙ちゃんは炬燵の中だろうし、霊夢さんもやっぱり炬燵だし冬は知り合いが本当に出てこないなー」
内勤の妖精メイドもあまり出てこないし、門番隊も交代時間まで詰め所の中。
魔理沙は来ても立ち話を直ぐに切り上げて中に入ってしまうのだ。
「誰か来ませんかねー」
そう呟きながら太極拳の動作を始めた。
本人は意識してやってはいないのだが、朝から何度も繰り返している。
ふと、その動作が止まった。館からこちらに向かう気を感じたのだ。
おもわず顔が緩む、気の種類で誰が近づいているかはすぐにわかったからだ。
「お嬢様、いらしゃいませー」
「門はいつからあなたの家になったの?」
日傘を差して門を訪れたレミリアを満面の笑みで迎えた美鈴は、
飼い主に会えた嬉しさのあまり尻尾をブンブンと振り回す大型犬に見えた。
『レミィ、ゴールデン・レトリバーは番犬には向かないのよ』
レミリアの頭にパチュリーの言葉が浮かんだ。
「それでどうしたんですか、こんな時間に?」
「別に…窓か見てたら何度も何度も太極拳しているし、誰も来ないみたいだから暇なのかと思ってね、
寝ないように注意しに来ただけよ」
「えー、そんなに何度もしてました?」
「してたわよ、ずっと見てたもの」
「ずっと見てたんですか?」
「ええ、ずっ…と…」
「……」
「…見てないわよ」
「でも今」
「み・て・な・い」
「はい、見てないですねー」
あきらかに恥ずかしさに赤くなっているレミリアに美鈴の顔が緩んでしまう。
照れているレミリアが可愛いのと、自分を気にして見ていてくれている事が嬉しくて少し恥ずかしいのだ。
「何ニヤついているの」
「いえいえ、そんな事は無いですよー、ただ美味しそうな匂いがするなーと思いまして」
ちょうどレミリアから漂ってくる匂い、レミリアが美味しそうなのではなく、手に持っているバスケットからしているのだ。
「ああ、これね」
レミリアは手にしたバスケットの布を外すと、中には中華まんがホクホクと湯気を立てていた。
「外に出るとき咲夜が持たせたのよ」
~回想~
『あら、お嬢様お出かけですか?』
『えっ、ちょ、ちょっと庭を散歩しようかと、ついてこなくていいから』
『そうですかでしたら』
『?』
『こちらをお持ちください』
『何これは』
『オヤツです、肉まんとあんまんありますから美鈴とお好きなほうをわけて下さい』
『ちょっと、門に行くなんて言ってないわよ!』
『では私は仕事がありますので失礼します』
~回想終了~
(咲夜のやつ変な気を回して…)
「お嬢様?」
「何でもないわよ、それよりこれ、咲夜が作ったから食べる?」
「はい!食べます!」
満面の笑みで尻尾を振る大型犬だった
「(気をつけないと誰かに餌付けされてしまう気がする…)」
「美味しそうですねー」
「肉まんとあんまんがあるらしいけど?」
「お嬢様はどちらがいいですか?」
「別にどっちでもいいわ」
「私もどちらでも構わないんですが…そうだ、じゃあ半分づつにしましょう!いいですか?」
「そうね、どちらの味も楽しめるし、良いんじゃない」
「じゃあ庭園のベンチで食べましょう?少し寒いですが、花でも見ながら食べましょうよ」
「そうね…(あれ、何か当たり前のように一緒に食べる流れになってる)」
庭園の日陰になっているベンチに腰を下ろすと美鈴は早速とばかりにバスケットに手を伸ばした。
「待ちなさい」
ベチッ
「あいたっ」
レミリアに手を叩かれた。
「手も拭かないで食べようとしない、品が無いわよ」
「すいません」
しょげた
きゅーんという泣き声と共に赤毛の垂れ耳大型犬が叱られているのを幻視して、
思わず美鈴の頭を抱えてワシャワシャと撫で回したい衝動に駆られた。
「(落ち着け私、美鈴は妖怪で犬じゃないんだから)」
「お嬢様ー」
「はっ」
「手を拭いたので中華まん出していいですか?」
「そうねいいわよ」
「わーい」
いそいそと中華まんの一つを取り出すと二つに割って片方をレミリアに差し出した。
「どうぞお嬢様」
「うん」
渡されたそれはあんまんだったが大きさがあきらかに半分以上の大きさだった。
「ちょっと美鈴」
「ふぁい?」
美鈴はもう口一杯に頬張っていた、冬篭りの餌を集めているシマリスのようだ。
「何でもないわ」
そう言ってレミリアも食べ始めた。
「美味しいですねー流石咲夜さんです」
「そうね甘さの加減もいいし」
あんまんは流石に出来たてというほど熱くは無いが十分暖かかった。
それでもいくら天気のいい日でも日陰は寒い、レミリアは隣のの美鈴をみたがさほど寒そうにはしていない。
レミリアよりずっと薄着なのに。
「美鈴、あなた寒くないの?その格好で門に立っているんでしょ」
「私は気を使うので大丈夫なんですよ。体の気を循環させたり、表面温度を調整したり出来るんです」
「色々便利な能力よね」
「花の気を操ることも覚えたんですよ。花を咲かせるとかは出来ませんが、
元気の無い花に活力を持たすこととかぐらいは出来ます」
美鈴が丹精こめて育てている庭園の花々に目をやった。
そこには様々な種類のバラの木が植わっていて小さな花から大きな花まで色鮮やかに咲き誇っている。
「寒くなったのにまだ咲いているのね?」
「バラは暖かければ一年中花をつけますから、でも幻想郷の冬は寒いのでちょっと難しいですよ。
だから今年は夏に蕾を摘んで株を休ませた木に覆いをして冬バラを育てようかと思うんです」
「じゃあ今咲いているのは冬バラじゃないの?」
「これは秋バラですね、もうじき終わります。
だからそろそろ花を摘んで株を休ませて春にキレイな花を咲かす為の準備をさせないといけないんです」
「秋バラとかって種類じゃないのね」
「そうですね、その季節にしか咲かないバラの種類もありますが、一本の木に春に咲いたら春バラ、
その後夏に咲いたら夏バラと言って、咲いている状態を指しているといった感じですかね?」
嬉しそうに花の話をするのを見ていると本当に花が好きなのだとよくわかる。
このバラたちは美鈴に大事に育てられているんだと思ったらちょっと羨ましくなった。
「いいわねこのバラ達は、美鈴に大事にされて」
無意識にポツリと呟いていた
「お嬢様」
「ん?」
「寒くないですか?」
「まあ、ちょっと寒いけれど」
「じゃあちょっと失礼しますね」
そう言うなりベンチに胡坐で座るとレミリアの体を持ち上げて膝の上に乗せた。
「ふきゃう!?な、なにするの!」
「こうすると暖かいですよ」
そのまま後ろから抱きかかえるように包み込んでしまった。
たしかに美鈴の体は気で調節している為か人の体温より暖かくじんわりと染みてくる気持ちよさだ。
「離しなさいよ」
「えー、嫌ですよー。それにこの方が私も暖かいですし」
「そんなわけ無いでしょうが!」
吸血鬼の体温は人より低めで、それを抱きしめていたら逆に寒くなるだけだ。
「私はこの方が気持ちいいです」
「前には抱き枕にしたり、お前は何を考えているー」
「そりゃあーお嬢様のことですかね?」
「馬鹿なこと言うなー!」
もうこれは大型犬にじゃれ付かれているのだと思うしかない。
これは犬だ、ゴールデン・レトリバーだ。赤毛の垂れ耳犬が懐いているだけ。
犬だから体温が高いんだろう、そう思わないと自分の体内からの熱でどうにかなってしまう。
犬は後ろから髪の毛に頬を摺り寄せてくる、犬だからしょうがない。
「お嬢様?」
「////(犬が喋るなー)」
「私は花を育てるのが好きなんです」
「(知ってるわよ)」
「勿論、キレイに咲いてくれたら嬉しいですけれど、それよりもっと嬉しいのはですね、好きな人がその花を見て喜んでくれることなんですよ」
「……」
「実はですね、これから育てる冬バラは好きな人にあげようと思っているんです」
「!?(美鈴の好きな人か…美鈴は人当たりがいいし、以外にもてるしおかしい事無いじゃないか。私は主人で、漫画仲間で古い友人みたいなものだし…)」
「それで花の色は真紅なんですよ」
「(花言葉は情熱的な愛ですか…何だろう、鼻がツンとしてきた)」
「まあ花が咲くのはもう少し先なんですが」
「(もうこのままぶん殴って部屋に直行しようかな)」
「えーと、まあ、その…咲いたらですね、お嬢様、受け取ってもらえませんか?」
「(よし殴ろ…)へっ?」
「////」
「えっ?えっ?(何? 美鈴が好きな人に渡すバラを私が受け取る?どういうこと?)」
「いや、門番が主に何考えているんだーとか、今更そんな気起こるかーとか、勿論そうなんですけど、
やっぱり自分の気持ち伝えたいなーなんて思ったら、私馬鹿なもんで止まんなくなっちゃって」
「(美鈴が好きな人って私なの?)」
「えっと、やっぱり迷惑ですよね…すいません」
抱きしめていた手を緩めて体を離そうとする、さっきまでの暖かさが無くなってしまう、
思わず美鈴の腕を引き寄せて自分の体を密着させる。
「お、お嬢様?」
「別に迷惑じゃないから」
「えっ?」
「だから、迷惑じゃないって言ってんの!う、嬉しかったから…」
「えっ、あう////」
「絶対キレイに咲かせて持って来なさいよ!」
「は、はーい!」
後ろから少し苦しいくらいに抱きしめられてた、体温も熱いくらいなのに少しも嫌じゃない。
美鈴がバラを持って来たらお返しをあげよう、何かとっておきの物をあげたい気分だ。
冬バラが咲くまでゆっくり考えよう、ぬくぬくとした幸せな体温に包まれてそんな事を思っていた。
もう少し先、では。
ヒャッハー、甘いぜぇ。
私の(体感した)糖度は53万ですよ……!
このままサクサク病とかなくなればいいのに
何と素晴らしい紅魔館、最高でした
だがそれが良い。
だが、それがまたたまらんね。めーレミ最高!
めーレミはもっと流行るべき
百合の花が似合うというのはこういう事だなwww